機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH   作:筆先文十郎

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第3章-16 ミケール逃亡

 岩山の砦跡。

「も、申し上げます!」

 ミケールの前に、蒼白な顔をした部下が駆け込んできた。

「グレーニ中尉、ジャンヌ中尉が戦死なさいました……」

「……」

 状況は最悪だった。

 キラが味方のはずのユーラシア連邦を攻撃したという謎の行動。

 ソニファーが動かないと踏んだファウンデーション軍の進軍。そのファウンデーション軍がコンパスに襲い掛かるという事態によって立て直しの時間が出来たとはいえ、コンパスとファウンデーションによって戦力を削られたブルーコスモスに勝ち目は無くなった。

「よし、ここを離れるぞ」

「えぇ!?」

 ミケールの言葉に、部下は目を見開いた。

「しかし大佐! 今なおエルドアではリーブラン少佐の奇襲部隊にフォイア大尉率いる中央隊、ソド大尉とシース中尉などが戦っております! 今ここで大佐が逃げて──」

 

 パァンッ! 

 

 額にめり込んだ銃弾によって、部下は永久に言葉を閉じた。

「私は『ここを離れる』と言ったんだ? 今一刻を争うというのに下らんことを言う奴は、ブルーコスモスには不必要だ」

 ミケールは固まる兵士達をジッと見る。

「お前達はコイツと同じ不必要な人間(・・・・・・)か?」

 銃で撃ち殺した部下を指さすと、動けなくなっていた兵士が一斉に動き出した。

「まったく……」

(拾ってやったソニファーを筆頭に、どいつも使えない奴らばかりだ……)

 心の中で吐き捨てながら、ミケールは指令室を出た。

 

 

 

「いいか、我々が最後の砦だ! 我々が耐えた分だけ我々の勝利は近づく。全員死力を尽くせ!」

(くそ……少佐だけでなく大佐からも連絡が取れなくなった……何があった……!?)

 ミケールからの指示は途絶え、全体を統率する者がいない。

 その中で中央隊を預かるフォイアは、焦燥を押し殺しながら戦線を縮小し、少しでも長く戦い続けられるよう部下たちへ指示を飛ばしていた。

「全員、砦に集結して守りを固めるんだ!」

 ミケールが脱出の準備をしているなど、フォイアは夢にも思わない。彼はただ仲間を信じ、戦場を守るために声を張り上げていた。

 右翼隊のグレーニ、左翼隊のジャンヌ。苦楽を共にした両隊長の戦死報告が胸を刺す。

(……本当は、二人の死を(いた)みたい。だが今は……今は戦況を見極めるしかない!)

 ソニファーの策が失敗したことを知らないフォイアは信じるしかなかった。

 信じなければ部隊が崩れる。

 その恐怖心を、彼は信頼(・・)という名の薄い糸で必死に押しとどめた。

(リーブラン少佐の策が成功すれば、この戦況もひっくり返る……ひっくり返るはずだ!)

「リーブラン少佐の策に間違いはない! 全員、ん? 何だ、あれ──」

 その疑問の続きは、空で炸裂した核の閃光によって永遠に奪われた。

 砦ごと呑み込む白い光。

 フォイアの身体は、声も、誇りも、仲間への想いも、すべてが一瞬で消し飛んだ。

 そしてそれは同時に──今まさに軍事ヘリで逃亡しようとしていたミケールが、核の炎に骨すら残さず焼かれたことを意味していた。

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