機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH   作:筆先文十郎

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第4章-3 陥落アルテミス

 エルドア攻防戦が起きる一週間前。

「閣下、よろしいでしょうか」

 スサはジャガンナートの部屋を訪れていた。

「スサか。何のようだ?」

「……」

 頭を下げたまま何も言わないスサにジャガンナートは何かを察すると、スサと一緒に入ってきた兵士に退出するように目配せをする。

「……わかりました」

 自分達がいなくなればスサは閣下に危害を加えるかもしれない。

 そう思った兵士だったが閣下の命令に逆らうことは出来ないと黙って部屋から退出する。

「で、話とは何だ?」

 スサはすぐには答えなかった。

 その沈黙が、部屋の空気をわずかに重くする。

 ジャガンナートは無意識に姿勢を正した。

 まるで、この場の主導権がスサへ移ったかのようだった。

「私をアルテミスに派遣させて下さい」

「何のために?」

「我々に仇なす存在の目を閣下とファウンデーション、二つに向けさせるためです。強固なアルテミス要塞にファウンデーションが入れば。ファウンデーションを無視できない敵は多くの戦力を割かなければならない」

「……」

 スサの説明に一定の理解を示す。そして釘を刺すようにジャガンナートは言った。

「しかし兵は回せんぞ?」

「大丈夫です。私とその兵だけで十分です」

 自信満々のスサの言葉にジャガンナートは考える。

(この男は計算高い。おそらく少数で攻略できる算段がついているのだろう……たしかに敵の目が他に向けば動きやすくなるのは事実。加えて、失敗しても痛手はない。成功すれば敵戦力が分散しないといけないなど利益は計り知れず、失敗して死んだところで惜しむ必要もない)

 ジャガンナートはそう判断した。

「わかった。出撃を認めよう」

「では」

 一礼して部屋を出るスサ。一人残されたジャガンナートは呟く。

「スサの言う通りアルテミス要塞を陥落できればメリットは大きい。落とせず死んだところで我々に被害はない」

 ジャガンナートは鼻で笑い、指先で机を軽く叩いた。

「せいぜい期待に応えてもらおうか……お手並み拝見といこう。スサ・スクトゥム参謀総長殿」

 

 

(ククッ、そうやって利用しているつもりでいるがいい。用済みになれば……)

 ジャガンナートの心を読んでいたスサは自室でほくそ笑むジャガンナートに向けて嘲笑した。

 

 

 アルテミス要塞 指令室。

「各自問題はないか?」

 〈ハッ! こちらは問題ありません!〉

 アルテミス要塞の司令官はモニターで各箇所の報告を受けていた。

「よし。今日も無事に過ごせそうだ」

 司令官が安堵した、その時だった。

 アルテミス要塞の指令室にアラートが響いた。

「何事だ!」

 司令官の問いかけに部下からアルテミスに十数機のモビルスーツが接近していると報告される。

 モニターに映る。

 そこには黒に各部の装甲色に銀色が施された機体ブラックナイトスコード ガネーシャを先頭に、先頭の機体に酷似した真っ黒な機体スレイヴが十数機続いていた。

 司令官はすぐに決断した。

「総員配置につけ、モビルスーツ部隊は全機発進せよ!」

 

 

 アルテミス要塞 内部。

「参謀総長が来られたか」

 スサの襲来に慌ただしくなる要塞内で、補充兵に成りすましていたコウムは動き回る兵士に怪しまれないように動きながらとある部屋に入りパソコンを起動させる。

「では、決行する」

 コウムは作業を開始すると同時にポケットに入れたボタンを押した。

 

 

「作戦参謀からの合図だ」

 宇宙服を着た兵士達、補充兵に(ふん)した暗殺部隊の隊長グラスが胸ポケットに入れた微弱の振動に決起の合図を受け取る。

 兵士達はガスボンベを背負い「お前ら、何をしている!?」と怪しんだ正規の兵士を瞬時に殺害すると、給気システムの通風口を開けてガスを次々と投下していった。ガスは奥の循環装置に吸い込まれ、基地の主要な場所へと送り込まれていった。

 

 

 アルテミスに到着したスサは出撃する戦艦やモビルスーツ隊を前に侮蔑の笑みを浮かべる。

「このスサに全戦力に等しい戦力をぶつけて来たか。その判断は間違いない。間違いない……が!」

 ガネーシャを動かしながらスサは言い放つ。

「このスサのガネーシャとスレイヴを相手にするには桁が一つ足りなかったな!」

 こうしてアルテミス守備隊とスサとの戦い、否。一方的な虐殺が始まった。

「凡人がいくら集まろうと、天才の前では(ちり)に等しい」

 スサはシュラが認めるほどの技量を持つと同時に、複数の事を同時に行えるほどの頭脳を持ち合わせていた。

 その頭脳を持ってガネーシャはスレイヴと共に、一機一機が神経をシンクロさせているのでは!? と相手が錯覚するほどの連携でアルテミス守備隊を一機、また一機と撃墜していく。

 数分後。スサ一人によって出撃したアルテミス守備隊は全滅した。

 

 

「ば、バカな……我が守備隊がここまで一方的に……。な、何者だ……あいつらは……!?」

 謎の機体とその一団によって守備隊を短時間に全滅させられたことに司令官は固まるしか出来なかった。

「バリアだ……バリアを展開してギリギリまで時間を稼ぐんだ!」

 その後救援を! と言いかけた言葉を部下の報告がさえぎる。

「司令、大変です! 隔壁が閉まっております!」、「こちらからの指示を受け付けません!」、「各所から応答がありません!」

「ど、どうなっている!?」

 理解できない司令官に更なる混乱が起きる。

「う、うぅ……ウグッ!」、「な!? く、苦しい……ガハッ!」、「あ、喉が、焼ける……」

 兵士達が喉元を抑え、次々に血を吐きながら崩れ落ちる。

 そして

 

「あ。ガハッ! い、息が……出来ん、グハッ! ────」

 

 先に倒れた部下の後を追うように大量に吐血し崩れ落ちる司令官。

(敵は悪魔だ……人間のフリをした……──)

 その顔は苦悶に満ちていた。

 循環装置から要塞内全体に流された毒ガスによって、要塞内にいたユーラシアの兵士の半数以上が死亡。かろうじて生き残った兵士も防毒マスクをつけたコウム率いるファウンデーション兵に殺された。

 スサが現れて一時間足らずで、アルテミス要塞はファウンデーションの手に堕ちた。

 アルテミス要塞を手中に収めたスサはコウムに「アウラ様が来ても恥ずかしくないように除染及び清掃を徹底しろ!」と言いつけるとジャガンナートの元へと戻っていった。

 本国から定期通信もコウムが万全に対応したため、アルテミスがファウンデーションの手に堕ちたことは誰にも知られることはなかった。

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