機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH   作:筆先文十郎

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第4章-15 根拠なき英断

 大西洋連邦はコンパスを離脱する。

 

 緊急の国際会議で、大西洋連邦の女性大統領フォスターがカガリの失言をきっかけに「大西洋連邦はコンパスと関わらない」と発言した。

 これにより大西洋連邦はコンパスから離脱が決定した。

 この決定にガルガリンに激震が走った。

 コンパスに所属する共同国だからこそ大西洋連邦所属のガルガリンはオーブ連合首長国で補給や修理を行うことが出来た。

 しかしその関係がなくなった以上、ガルガリンがオーブにいる理由が消える。

 まだガルガリンの修理が完全に終わっていない。

 そして

「……サンライズがオーブにあるッ!」

 ブリッジが騒然とする中、誰にも聞こえない声量でエリオスは呟いた。

 そして数日前の出来事をエリオスは思い出していた。

 

 

 

 数日前 艦長室。

「艦長、サンライズの強化が必要です。これから向かうオーブの施設なら可能です。エリカ・シモンズは私の親友で話を通せます。どうかオーブに到着次第、サンライズをオーブの地下施設に移送する許可を!」

 エルドアからの撤退を決断したエリオスは敵の攻撃への警戒、ガルガリンの損傷状況の確認、本国への戦闘報告、オーブへの寄港許可申請、戦闘後による乗組員の士気と秩序の維持、オーブ到着後の行動計画の策定など終わらせ副長のサムソンに後を任して艦長室に戻ったのを見計らったかのようにウズメが訪ね開口一番こう言い放った。

「……」

 こちらから呼び出さなければ来ることがないウズメが自分から来る。そのことに嫌なことを感じたエリオスは机に倒れたい衝動を何とか(こら)えた。

 

 こっちは激務で疲れているんだ! 

 

 そう言いたい気持ちを抑えて尋ねる。

「……なぜサンライズの強化を急に必要がある? もちろんサンライズを強化することには意味があるのはわかるが……」

 サンライズが宇宙・地球圏の運用や機動力、航続距離を主目的に作られたため火力不足を不安視されているのは数々の報告と今まで数多のモビルスーツを見てきたことからわかっていた。

 しかし今なぜこのタイミングなのか。

「サンライズの強化が必要だからです!」

(……答えになってない)

 これ以上聞くことを諦めたエリオスは残された体力と気力をフル活動させ、考える。

(オーブで強化改造した場合どうなる? 確かに強化改造すればガルガリンの戦力は大幅に上がる。しかしサンライズは大西洋連邦の最新鋭機。それが同じコンパスに所属するとはいえオーブは他国。サンライズから技術情報など国家機密が漏れてしまう可能性は高い。もし大西洋連邦がオーブと一戦交える事態になった場合、大きく不利になる。とても許可は出来ん!)

「駄目だ。許可は出来な……ッ!?」

 エリオスの言葉が止まった。なぜならば

 

 ビリッ! ビリビリビリッ!! 

 

 ウズメが軍服を引きちぎったからだ。軍服の下に隠された下着に包まれた豊満な胸部や引き締まったくびれ、太すぎず細すぎない太ももが露になる。

「……」

 部下の奇行に開いた口が塞がらないエリオスにウズメは続ける。

「もしここで『キャアッ! 誰か助けて! 艦長が、艦長が!!』と恐怖に震える女性を装いながら叫べば……この光景を見た者はどう思うでしょうか?」

「……艦長エリオス・テイラーはウズメ・アマノに性的暴行を加えようとした。そう見えるだろうな」

 自分の持てる全ての力を使えばうやむやに出来なくもない。しかしそれには多大な時間と労力を割かなければならない。そのようなことに貴重な時間をさけるほどエリオスは暇ではなかった。

 ウズメ・アマノという貴重な技術者を失う損失はガルガリンにとっても大西洋連邦にとってもメリットではない。

 そしてエリオス自身、サンライズの強化は急ぎべきだと第六感が(ささや)いていた。

「一つ聞いておきたい」

 ウズメの瞳をジッと見据える。

「私から見てウズメ・アマノという女は自身の身体に絶対の自信を持ち、その身体を安売りするようなことはしないはずだ。しかしパットン少佐に関わるとその自信のある身体を簡単に(さら)す。それは何故だ?」

 ウズメの美貌とモデル並みのプロポーションにヒューズ・レインや操舵士のソル・フランクリンなど数々の好色者が覗きやボディタッチなどのセクハラをしようとしたが、それらは全て失敗に終わった上にドロップキックや海老反りの状態で土下座を強要されるなど散々な目にあっている。

「……」

 ウズメは上司を罠に()める悪女の顔から、悲しさと真剣さが入り混じった表情へと変える。

「……ミレイユ・パットン。彼女は優しく、強い。普通なら心を守るために忘れてしまうような痛みをミレイユは忘れないまま前に進もうとする」

「……」

「仲間を失っても、守れなかった人がいても、恋人を失っても……ミレイユはなかったこと(・・・・・・)にしない。背負ったまま、前に進む。この先より多くの悲しみを抱えると分かっていても。それが私のような目的のためなら手段を択ばない自己中女でも」

「……」

ウズメの悲しみを押し殺しながら自身を笑い飛ばす暗い笑みに、エリオスは覚悟を決めた。

「……わかった、認めよう」

 ウズメの首から下を見ないようにしながら、エリオスは尋ねる。

「最後に確認したい。いくらエリカ・シモンズと知り合いだとしてもただでサンライズの強化に協力するとは思えん。その事に対して何か考えがあるのか?」

「私が今までかき集めた軍事データを提供するつもりです。あ、もちろん提供する情報は選びますが」

「……」

 他国の人間に情報を流す。それを何も問題ないかのように平然と話す部下のリテラシーの低さに唖然としつつも、エリオスはウズメの要求に許可を出した。

「ありがとうございます!」

 突然用意していた予備の服に着替える部下に慌てて背を向けたエリオスは、退室したことを確認すると糸が切れた人形のように机に突っ伏した。

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