機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH 作:筆先文十郎
アルテミスをコウムに任せたスサはグラス率いる暗殺部隊と共にプラントに戻ると、次の行動に移した。
その一つが──アンドリュー・バルトフェルドの暗殺だった。
スサにとってバルトフェルドはプラントでイザーク・ジュールと並んで警戒すべき人物であった。
現場をまとめる能力に優れ、部下からの信頼も厚い。
数日後に行われる
それを成功させなければならないスサにとって、初動で鎮圧する働きをしかけないバルトフェルドは真っ先に排除しなければならない人物だった。
数日の休暇と調査を置いて、スサは暗殺部隊を送り込んだ。
しかし結果としてこの暗殺は失敗する。
スサを警戒していた情報将校のイザークから「スサ・スクトゥムという男は危険人物だ」とバルトフェルドは事前に聞いていたからだ。
スサが自分を狙ってくると察知し、バルトフェルドは密かに迎撃態勢を整えていた。
露骨な警備強化を行わず、副官のダコスタを始めとする少数精鋭だけに情報を共有するという外から見れば通常通りの任務にしか見えない迎撃態勢に、暗殺部隊は
結果。深夜に行われた襲撃は見破られ、暗殺部隊はバルトフェルドが用意した遮蔽物がほとんどない平地に追い詰められていた。
「いやぁ~、いい漢という者は女性だけではなく暗殺者にもモテる……そう思わないかい?ダコスタくん」
「いや、そんなこと言ってる暇があったら敵を狙って下さい!」
自ら銃を手にして暗殺部隊に発砲しながら冗談ぽく話しかける上司に、副官のマーチン・ダコスタは真剣にやって下さいという意味を込めて言い返す。
襲撃を見破られたとはいえ、暗殺部隊は優秀だった。暗殺部隊の反撃によってバルトフェルド隊に少なからず犠牲者が出た。
それでも事前に暗殺部隊の襲撃を予想し準備をしていたバルトフェルド隊に勝利の女神は微笑んだ。暗殺部隊の隊員が一人、また一人と地面に倒れ、立っていたのはグラス一人だけになっていた。
「さて、招かれざる客人さん。ここら辺で降伏してもらえるとこちらとしても助かるのだが?」
バルトフェルドはグラスの前に立つ。
「……ッ!」
標的が前にいるのにも関わらず、グラスはバルトフェルドを攻撃することは出来なかった。
バルトフェルドの銃弾によって両腕の
「降伏するなら命の保証は約束する……が。そうでないなら」
バルトフェルドは拳銃をグラスの額に定める。
「……」
グラスは考える。
(腱を打ち抜かれ両腕は死んだ。蹴りの一つでも食らわせる前にヤツと部下の銃弾が我が肉体を
「フッ」
グラスはニヤッと笑った。その瞬間、バルトフェルドはグラスが何をしようとしているか悟った。
「全員、こいつらから離れろ!!」
突然グラスから距離を取るバルトフェルドの命令に、隊員は困惑しつつも距離を取り始める。しかしその命令は遅かった。
「遅い──」
次の瞬間、グラスの身体がオレンジ色の光を放ったかと思うと目も開けられない閃光と爆音と共にはじけ飛んだ。隊長であるグラスの自爆を合図に、先に倒れた隊員達も次々と爆発。原型を留めないほどのすさまじい連鎖爆発となってバルトフェルド隊に襲いかかった。
「クッ……動ける者は負傷者を安全な場所へ運べ!」
暗殺部隊が自らの肉体に仕掛けた爆弾に動揺し固まってしまう部下に、バルトフェルドは命令を飛ばす。
バルトフェルドは暗殺部隊の迎撃に成功した。
しかしその勝利の代償は大きかった。暗殺対象であるバルトフェルド本人は無事だったものの、バルトフェルド隊は隊そのものが機能不全に陥ってしまった。
暗殺部隊との戦闘と爆発によって多くの死傷者を出し、多数のモビルスーツが損傷。
通信設備も一部破壊され、指揮系統に支障が出た。
これこそがスサの作戦だった。
「アンドリュー・バルトフェルド。あの男はそう簡単に殺せない。一番いいのは暗殺に成功すること。だが隊に手痛い被害を与えられればそれだけで充分」
事はスサの思惑通りに進んだ。
バルトフェルドは隊員の回復と事後処理に追われ、この後に起きる事件に動くことが出来なかった。
「スサ・スクトゥム……食えない男だよ」
被害の大きさに、バルトフェルドは対面したことのない男を褒めるしかなかった。