機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH 作:筆先文十郎
ファウンデーション王国とエルドアに核ミサイルが落ちた日の翌日。
サルパ王国 ナハル・サミール三世の私室。
「……ッ!」
サルパ国王ナハルは震える手で手紙の封を切った。それはサルパを去ろうとする直前に「時が来たら読んで下さい」とスサから手渡された手紙だった。
ナハルは折り畳まれた手紙を広げる。
『陛下。
もしこの手紙を読まれているのなら、我がファウンデーションはユーラシア連邦とコンパスの連合によって攻撃を受けたのでしょう。
しかし、どうかご安心下さい。
我々には必ず形勢を逆転させる切り札────―があります。
それが発動した時、世界は大きく揺れます。
その瞬間、オーブは必ず動きます。
彼らは中立を掲げておりますがコンパスと深く繋がっている以上、我々が反撃に出れば必ず介入してくるでしょう。
どうか陛下。その時は
全面戦争を望む必要はありません。
ただ、オーブが軽々しく動けぬよう国境に兵を置き、彼らに『サルパ王国はファウンデーション王国の味方である』と示して頂きたいのです。
それだけで十分です。
ファウンデーション軍はすぐにオーブへ進軍します。その時、陛下のご判断が戦局を決めます。
どうか、陛下の賢明なるご決断を』
「……」
読み終えたナハルは、手紙を静かに火にくべた。
炎が紙を呑み込むのを見届けると、すぐさま側近を呼びつける。
「……オール基地へ戦力を移動させよ。誰にも悟られるな。極秘裏にだ」
ナハルはスサの言葉を信じ切っていた。
ファウンデーションが用意した切り札が切られれば、オーブは必ず動く。
その前に兵を動かしておかねばならない──そう思い込んでいた。
だがこの時。ナハルは重大な愚を犯していた。
外へ向けるべき警戒を、すべて
オーブに悟られぬよう。他国に情報が漏れないよう。ただただ
その結果──サルパ王国を狙う
そして計画が動き出そうとしたまさにその矢先、そのツケは容赦なく襲いかかることになる。
サルパ王国 オール基地から数㎞地点。
潜水艦で愛機と共に浜辺へ上陸したソニファー、ソド、シースの三人は、月明かりすら届かぬ深夜の森林地帯に潜伏していた。
今回の作戦は、オーブ牽制のために戦力が集中したオール基地を電撃的に奇襲し、短時間で戦闘不能に追い込むこと。
そのため投入できるのは少数精鋭のみ。大部隊では潜入も奇襲も成立しない。
さらにブルーコスモスは先のエルドア攻防戦で壊滅的損害を受けていた。
残された戦力をこれ以上失うわけにはいかない。
だからこそ──この三人でなければならなかった。
そして何より、ソニファーの判断があった。
外部への警戒が
ミラージュコロイドを持つソニファーのセレーネブリッツ。
近接戦闘に特化したソドのソードカラミティナイト。
狙撃特化のシースのヴォルテバスタースター。
この三機が揃えば、奇襲は
「ソド、シース……準備はいいか?」
〈おう!〉
〈いつでも〉
二人の戦友の声が闇に溶ける。
ソニファーはわずかに微笑み、そして表情を引き締めた。
「──作戦を開始する」
その瞬間、三機の影が静かに動き出した。
この時。オール基地に破滅の刃が今まさに迫ろうとしているのを、サルパ王国の人間は誰もまだ知らなかった。