機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH   作:筆先文十郎

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第4章-25 忍び寄る刃

 ファウンデーション王国とエルドアに核ミサイルが落ちた日の翌日。

 

 サルパ王国 ナハル・サミール三世の私室。

「……ッ!」

 サルパ国王ナハルは震える手で手紙の封を切った。それはサルパを去ろうとする直前に「時が来たら読んで下さい」とスサから手渡された手紙だった。

 ナハルは折り畳まれた手紙を広げる。

『陛下。

 

 もしこの手紙を読まれているのなら、我がファウンデーションはユーラシア連邦とコンパスの連合によって攻撃を受けたのでしょう。

 

 しかし、どうかご安心下さい。

 我々には必ず形勢を逆転させる切り札────―があります。

 それが発動した時、世界は大きく揺れます。

 

 その瞬間、オーブは必ず動きます。

 彼らは中立を掲げておりますがコンパスと深く繋がっている以上、我々が反撃に出れば必ず介入してくるでしょう。

 

 どうか陛下。その時はオーブを牽制(・・・・・・)して下さい。

 

 全面戦争を望む必要はありません。

 ただ、オーブが軽々しく動けぬよう国境に兵を置き、彼らに『サルパ王国はファウンデーション王国の味方である』と示して頂きたいのです。

 

 それだけで十分です。

 

 ファウンデーション軍はすぐにオーブへ進軍します。その時、陛下のご判断が戦局を決めます。

 

 どうか、陛下の賢明なるご決断を』

「……」

 読み終えたナハルは、手紙を静かに火にくべた。

 炎が紙を呑み込むのを見届けると、すぐさま側近を呼びつける。

「……オール基地へ戦力を移動させよ。誰にも悟られるな。極秘裏にだ」

 ナハルはスサの言葉を信じ切っていた。

 ファウンデーションが用意した切り札が切られれば、オーブは必ず動く。

 その前に兵を動かしておかねばならない──そう思い込んでいた。

 だがこの時。ナハルは重大な愚を犯していた。

 外へ向けるべき警戒を、すべて内側(・・)へ向けてしまったのだ。

 オーブに悟られぬよう。他国に情報が漏れないよう。ただただ秘密裏に動くこと(・・・・・・・・)だけに意識を奪われた。

 その結果──サルパ王国を狙う別の敵(・・・)の気配を完全に見落としていた。

 そして計画が動き出そうとしたまさにその矢先、そのツケは容赦なく襲いかかることになる。

 

 

 サルパ王国 オール基地から数㎞地点。

 潜水艦で愛機と共に浜辺へ上陸したソニファー、ソド、シースの三人は、月明かりすら届かぬ深夜の森林地帯に潜伏していた。

 今回の作戦は、オーブ牽制のために戦力が集中したオール基地を電撃的に奇襲し、短時間で戦闘不能に追い込むこと。

 そのため投入できるのは少数精鋭のみ。大部隊では潜入も奇襲も成立しない。

 さらにブルーコスモスは先のエルドア攻防戦で壊滅的損害を受けていた。

 残された戦力をこれ以上失うわけにはいかない。

 だからこそ──この三人でなければならなかった。

 そして何より、ソニファーの判断があった。

 外部への警戒が(おろそ)かになっているオール基地なら、

 

 ミラージュコロイドを持つソニファーのセレーネブリッツ。

 近接戦闘に特化したソドのソードカラミティナイト。

 狙撃特化のシースのヴォルテバスタースター。

 

 この三機が揃えば、奇襲は必ず成功する(・・・・・・)と。

「ソド、シース……準備はいいか?」

 〈おう!〉

 〈いつでも〉

 二人の戦友の声が闇に溶ける。

 ソニファーはわずかに微笑み、そして表情を引き締めた。

「──作戦を開始する」

 その瞬間、三機の影が静かに動き出した。

 この時。オール基地に破滅の刃が今まさに迫ろうとしているのを、サルパ王国の人間は誰もまだ知らなかった。

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