機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH   作:筆先文十郎

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ストライクガンダム(量産試作1号機)
キラ・ヤマトの戦闘データの解析・反映、最適化を目的として開発されたストライクガンダムの後期試験機の1機。
製造時期はU.C.71年5月下旬以降。
フレーム材質の改良、関節部の耐久強化、新型バックパック接続規格の試験など、量産化に必要な各種データ収集を担った。
またダガー系列の開発に必要な基礎データに、この試験機から得られたもデータが使われている。
テストパイロットには、ナチュラルに絶対服従するように仕向けたコーディネイターであるソキウス(どのソキウスかは不明)やナチュラルのベテランパイロットなど複数人が担当した。
ストライクのデータは完全に解析済みとなり、OSも量産向けに最適化されたため、試験機としての役目を終える。
その後、軍事協力の報酬としてサルパ王国へ正式に譲渡され、事実上の“処分”となった。

他にも数機作られそれらは保管、作戦に同行し消失した。


ストライクガンダムAC(アンドレット・カスタム)
所属:赤道連合・サルパ王国軍
パイロット:アンドレット・フォーチュナー
原型機:ストライクガンダム(量産試作1号機)
全高:17.72m
本体重量:64.8t
装甲材質:PS装甲(赤×白に再調整)
動力:バッテリー+補助エネルギーパック

ACはアンドレット・カスタムの略称。
サルパ王国が大西洋連邦に軍事協力を行った際、その報酬として譲渡されたストライクガンダム(量産試作1号機)をアンドレット専用に再整備した機体。

機体色が赤と白に変更された以外は、ストライクガンダムをよく知らない者からすれば本家と見間違えるほど外観が近い。
しかし内部OSはアンドレットの操縦特性に合わせて再調整されており、実際には別物のストライクとして仕上がっている。

■ 武装
● ヴァルキュリア・ゲイボルグ(対艦複合刀)
ストライクガンダムACの主武装。実体刃+ビーム刃の複合構造。アンドレットの技量の部分が大きいが、鋼鉄のランサーダートを両断できるほど切断力・貫通力ともに高い。

● 75mm対空自動バルカン砲塔システム「イーゲルシュテルン」
オリジナルのストライクガンダムと同じ物が搭載されている。

● 57mm高エネルギービームライフル(AC調整型)
威力や射撃精度より取り回し重視に調整されているビームライフル。
アンドレットはほぼ使わない。

● 対ビームシールド(軽量型)
ストライク系の標準装備。本機では軽量化され、近接戦闘時の邪魔にならないよう調整。

● グレネード・ディスチャージャー(腰部)
ストライクガンダムACに搭載された近接戦闘支援兵装。
複数方向へ同時にグレネード弾を散布することで、敵の回避方向を奪い、逃げ場のない爆発包囲網を形成することを目的とする。

本来は対ゲリラ戦・市街地制圧用に開発された兵装だが、アンドレットの操縦技量によって高機動MS戦闘用として再定義された。



第4章-29 怪物対英雄 前編

「ケヴァン、アレックス。一度しか言わないからよく聞きなさい」

 機体を走らせながら信頼する部下に考えを伝える。

「現時点で敵の増援はないわ。もし他に兵がいるなら私が来るまでの間、攻撃を加えて更なる混乱を加えた方が効果的だから。

 だからケヴァンはミラージュコロイドを持つ青い機体を捕獲。アレックスは遠距離特化の機体を撃破なさい!」

 二人の腹心にそれだけ伝えると、アンドレットは突進の勢いを乗せたまま

「死になさい」

 軽い口調から一変。基地防衛のため侵入者を排除するという、一切の感情を捨てた顔で対艦刀をソードカラミティめがけて振り下ろした。

 

 

 

「よっ、と。……あら?」

 謎の機体。アンドレットが駆るストライクの一太刀をギリギリで避けカウンターで両腕のグラムブレイカーで切り裂く、はずだった。

 避けたと思ったビームと実刃を持つ対艦複合刀、ヴァルキュリア・ゲイボルグが一瞬伸び、振り落とされた一太刀がソードカラミティのV字のアンテナの一部を折ったのだ。

 それだけではない。大きく振り下ろされた刀が地面にぶつかる直後、空中で瞬時に反転。ヴァルキュリア・ゲイボルグの重心を一瞬だけずらし、スラスターで反動を殺す。人間では不可能な軌道反転──MSだからこそ成立する必殺の一撃。

 その必殺の一撃が下から上へと追撃する刃となってソードカラミティに襲い掛かってきたのだ。

 前に進むことを許さない神速の刃によって、ソドは機体を後退させ距離を置くことしかできなかった。

「ほう。刀を振り下ろす途中で即座に握る位置を変えてリーチを伸ばす。そして追撃のツバメ返し。舞うような美しさと明確に俺を殺しに来た殺意……マンガのキャラクターかよ!」

 ソドは苦笑し、ストライクと間合いを取りながら戦場を確認する。

(ソニファーのブリッツは敵中でミラージュコロイドが使用できない状況に追い込まれ、シースのバスターは狙撃機として最大の武器であるアストラル砲を破壊された。徐々に包囲されつつあるブリッツ。

 迫りつつある敵に、アストラル砲より再発射に時間がかからないものの威力も射程距離も劣る武器で対処しなければならないバスター。

 そして目の前のストライクが現れたことで基地の混乱も収まり始めている。実際、見当違いな場所を守ったり何をすればいいのか分からず止まっていた敵が徐々に俺達の所に集まりだしている)

 

 敵に大打撃を与え、その混乱を利用して撤退する。もし引き時を誤れば、数に圧倒され我々は全滅する。

 

 作戦が始まる直前にソニファーが言っていた言葉が、ソドの脳内に思い返される。

 ストライクによってブリッツはミラージュコロイドを強制的に解除させられ敵のど真ん中で姿を現すという危機的状況に追い込まれた。

 バスターは最大の武器、アストラル砲を封じられた。

「さて、どうするか……」

 そう呟いた時、ソニファーの通信が入る。

〈ソド。私が囮となる。その間にお前とシースは逃げろ〉

「……」

〈基地から離れているシースはもちろん、まだ敵が集まりきれていない状態でなら、お前なら敵を倒してここから逃げられるはずだ。さぁ、早く!〉

「……ソニファーよ」

 ソニファーの言葉を聞いて。ソドは、笑った。

「逃げる? それはどこの国の言葉だ?」

〈……〉

 ソドの言っている意味が分からず、ソニファーは何も答えられない。そんなソニファーにソドは続ける。

「俺の薄っぺらい辞書に『逃げる』という文字はない! ましてや、惚れた女を見捨てて逃げるという選択肢はな!」

 ソドは正眼に構えるストライクに向けて機体を走らせながら、叫ぶように言う。

「ソニファー! お前もシースも殺させねぇ! ヒーローマンガの主人公のごとく、さっさとストライク(コイツ)を倒して撤退するチャンスを作ってやる! それまでちょっと耐えてくれや!」

 ソドのソードカラミティとアンドレットのストライク。両者の刃が再び交わった。

 

 

 

「ふふ、頼りになる戦友か……」

『惚れた女』を『頼りになる戦友』と変換したソニファーはクスっと笑う。

「相変わらず面白い男だ、ソドは」

 頼りになる戦友を惚れた女という冗談を言うことで、絶体絶命の危機に冷静さを失いそうになっていた自分に余裕を取り戻させる。

 自分を冷静にさせるために戦友が言葉にした心遣いに、ソニファーは感謝した。

「さて。それじゃあ愛する男(・・・・)のためにも頑張りますか」

 ソドの言葉が本心と気づかないソニファーは、ケヴァンと自分に集まりつつある敵に完全に包囲されないように気を配りながら反撃を開始した。

 

 

 

「覚悟を決めるしかないようだな」

 ソドとアンドレットが再び刃を交えたのと同じ頃。

 アストラル砲を捨てたシースは折り畳み式の中距離精密射撃ライフル”ヴェルデ・ミドルレンジ・スナイプライフル”──通称ミドルスナイプを構え、バスタースター特有の広域視野で基地の様子を確認。丘を駆け下りていた。

 ストライクの出現によって混乱が収束し始め、冷静さを取り戻した敵がソニファーとソドへ集中し始めている。

 このままでは二人が押し潰されるのは時間の問題だった。

 本来なら狙撃機であるバスターは、基地から最も離れた位置にいるため確実に撤退できる。

 だがその選択肢はシースの頭の中には完全に消し去られていた。

(ミケールが死んだ今、残党軍と化したブルーコスモスをまとめられるのはソニファーさんだけ。そしてソドさんは……俺の戦友だ。二人を失う選択肢なんて、俺にはない)

 

 傭兵時代からの無二の戦友と、その戦友が心から愛する女性。

 

 二人を見捨てるという選択肢はシースには最初からなかった。

 シースは迷いを断ち切るように息を吐き、ミドルスナイプを構えたまま前へ出た。

 狙撃機としての最大の武器である距離(・・)を捨ててでも、敵の注意を分散させるために。

「……来いよ。俺が相手だ」

 多少の被弾は覚悟の上。

 バスタースターの装甲は薄い。

 だが、シースの射撃精度は誰よりも秀でている。

「そこだ!」

 不用意に突出した敵機を、ミドルスナイプの一撃で正確に撃ち落とす。

 その瞬間、敵の動きがわずかに乱れた。

 

 まだ敵はザハール司令や重要施設を遠距離から狙撃した武器の(たぐい)の武器を持っているかもしれない。

 

「不用意に前に出るな!的を絞らせないよう各自展開!包囲するんだ!」

 警戒したアレックスが部隊を制止させる。

 敵部隊の動きが鈍くなったことに、シースは少しだけ頬を緩ませ、その緩んだ頬を慌てて引き締める。

(これで……少しは持つ。が、二人を生き延びさせるためにはもっと敵を引きつけないと!)

 次の敵影に照準を合わせつつ、シースはさらに前へ踏み込んだ。

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