機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH   作:筆先文十郎

67 / 67
前話でスサが呟いた数分後にレクイエムが発射されましたが、数時間後に変更しました。(スサの部屋からパイロットスーツに着替えクーデターの現場にいるには数分後では足りないことに気がついたから)

本当に申し訳ございません。


第4章-32 クーデター

 ファウンデーション王国宰相、オルフェ・ラム・タオによる「デスティニープラン」強制導入の宣言。

 そしてラクスが(・・・・)それを(・・・)支持している(・・・・・・)──という偽情報が世界に流れた瞬間。各国は混乱し世論は分断され、国際秩序は崩れ始めた。

 その混乱の最中を狙い澄ましたかのように、急進派ジャガンナート率いる武装勢力が動いた。

 何台もの軍事車両に兵士を満載しモビルスーツ部隊を伴った彼らは、プラント行政府へと雪崩れ込むように攻撃を開始した。

 味方からの突然の強襲に対応できず次々と倒される警備員達。

 

 クーデターを起こしプラントを中枢を掌握した後、アコードが掲げた宣言や計画に呼応し、同胞をナチュラルから解放するという名目のもと、部隊を率いてファウンデーション軍と合流。

 

 それがジャガンナートの目論見だった。その掌握を阻止しようと動くモビルスーツ部隊があった。

 

 

 

「やはりジュール隊長のおっしゃる通りだった」

 かつてイザーク率いるジュール隊に在籍し、現在プラント行政府防衛部に所属する小隊長、レイモン・ラディゲはかつての上官の言葉を思い出す。

 

 ラディゲ。ハリ・ジャガンナートとファウンデーションから来たスサ・スクトゥムという男には気をつけろ。

 

 その言葉が的中したことにラディゲは下唇を噛む。

 ラディゲは部下に命じる。

「あれはザフトの人間じゃない、敵だ! 全員攻撃に移れ!」

 その光景を遠くから見ている者がいた。

「……レイモン・ラディゲ。あのイザーク・ジュールの元部下で、一区画とはいえその守備を任せられているだけはある。この混乱する状況で迷うことなく動けるものだ」

 愛機ガネーシャに搭乗するスサだった。スサは顎に手を置き考える。

「さすがにジャガンナート達のクーデター側が負けるとは思わないが。あの男の部隊の悪あがきによって評議会に集まった議員達が逃げ出す、という可能性もあるからな」

 

 すぐに死んでもらおう。

 

 スサは目を閉じると控えるように置かれた随伴機クレイヴと共鳴を開始する。一気に巨大化した意識の触手は、ザクウォーリアに乗るとあるパイロットに伸びた。

 触手がパイロットの意識を完全に捉えたのを確認したスサは、哀れな獲物に呟いた。

《闇に堕ちろ、トラン・ドルジェル!》

 

 

 

「ハァ……ハァ……まさかこんなことになるなんて……」

 ラディゲ隊に配属されたばかりの新兵トラン・ドルジェルは呼吸が乱れるのを抑えることができなかった。

 前触れもなく始まった戦闘。それも味方だった反乱軍。

 味方だった者達と戦わないといけない。

 

 混乱、恐怖、疑念──。

 

 それらが付きまとう状況がまだ若く経験がないトランの精神を疲弊させていく。

(もしかしたらこの場にいる全員が敵かもしれない……)

 そんなあり得ない考えをした時だった。

「え?」

 トランは全身がカッとなり何かに黒い何かに呑みこまれたかのような感覚を一瞬だけ覚えた。

(何もない……何だったんだ?)

「え……ッ!?」

 突然の光景にトランは言葉を失う。反乱軍だけではなく自分が所属するラディゲ隊のモビルスーツまでも自身に武器を向けていたのだ。

(何で……何で何で何で!?)

 予想外の光景にトランは混乱する。

(殺さなければ……殺される!)

 目を赤くしたトランは周囲に攻撃を行い始めた。

 

〈ぎゃあ!?〉、〈ドルジェル、お前──〉

「何だ!?」

 部下の驚愕と悲鳴にラディゲは機体を反転させる。そこには味方を攻撃する部下トランのモビルスーツがあった。

〈うわあぁぁぁぁぁぁッッッ!!〉

「トラン、落ち着け!」

 狂乱し自分に襲い掛かる部下の攻撃をラディゲは回避する。

「落ち着け! 落ち着くんだ、トラン!」

〈みんな、みんな、みんな……敵だ!! 殺される前に殺すんだ!!〉

 自身の説得もまるで意に返さない部下にラディゲは非情な判断を下した。

「すまん、トラン!」

 再び自身を攻撃しようとビームトマホークを振り下ろそうとするザクの攻撃を横に避けながら、盾に格納してあったビームトマホークでトラン機を切りつけるとすぐに間合いを取る。

〈隊長……何で……──〉

「すまん、トラン……」

 爆発する部下の機体を悲しそうに見つめるラディゲ。反乱軍と狂乱した部下との挟撃を阻止するための決断だった。しかしその数秒が命取りだった。

「……ハッ!?」

 ラディゲは気づく。真っ黒な見知らぬ機体――スサのガネーシャが自身の間合いを真横から侵食していたことを。

(ジュール隊長……すみません……──)

 盾で防ぐこともトマホークで迎撃も出来ず、ラディゲのザクファントムはガネーシャの重斬刀の露となった。

 

 

 

「これで邪魔者はいない。ジャガンナートの反乱は成功する。……計画通りだな」

 反乱に対応しようとしたラディゲ隊を壊滅させ、ジャガンナートの反乱が成功すると確信したスサは次の作戦のためその場を後にした。

 その背中には、戦場を盤面としてしか見ない参謀の冷徹さが宿っていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。