機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH 作:筆先文十郎
ガルガリン 艦長室。
「……」
ガルガリン艦長、エリオス・テイラーは先ほど行われたオルフェ・ラム・タオによる演説を思い返していた。
自分達ファウンデーション王国は理不尽な核攻撃を受けた被害者であること。その報復としてユーラシア連邦に向けて大量破壊兵器『レクイエム』を起動したこと。
人は己の能力や役割を知らず、身の丈に合わない過分な欲望を抱くからこそ、妬みや奪い合いが起こり結果、血で血を洗う戦争が幾度も引き起こされてしまうこと。
悪しき元凶であるナチュラル打倒するための決起をコーディネイターに呼びかけたこと。
その愚かな連鎖を断ち切る唯一の救いは、遺伝子によって個々の最適な役割と運命を定める『デスティニープラン』であり、かつてギルバート・デュランダルが提示し世界が一度は拒絶したこのシステムこそが、真の平等と恒久的な平和をもたらすこと。
そのデスティニープランを正しく運営・統治するためには、人類を超越した絶対的な指導者が必要である。それこそが、優れた遺伝子を持って生まれた自分達『アコード』であること。
ラクス・クラインも
全世界に『自分達と共にディスティニープランを実行するか、滅びるか』の二者択一を突きつけたこと。
「ふう……」
オルフェ・ラム・タオによる全世界への発信を思い出した後。エリオスはデキフサ・ザケルフから送られてきた報告書を最後の一行まで読み終えると、椅子の背にもたれ、再び深く長い息を吐いた。
紙面に並ぶ文字はただの報告書ではない。
自分が抱いていた「もしかしたら……」という予感を、はるかに上回る重さを持っていた。
黒幕が『自分たちこそ被害者だ』と訴えるファウンデーション王国であること。
『アコードは心を読める』、『人の精神に干渉する能力を持つ』という事実。
ラクスがアルテミス要塞にいる可能性。
オーブ地下格納庫にフリーダム、デスティニー、インパルスが存在していたこと。
戦うモビルスーツや軍艦がないことを指摘するシン・アスカに、マリュー・ラミアスが『艦を
ムウ・ラ・フラガは確認できなかったが、『密命』を帯びて動いているらしいこと。
「……全てが繋がった……」
まるでその場で見聞きしたかのような詳細な報告書に、エリオスは「あいつは化け物か……」とザケルフの情報収集能力に脱帽しつつ額を押さえ、ゆっくりと目を閉じた。
キラ・ヤマトの暴走。
報復にしては行き過ぎたユーラシアの核ミサイル発射。
ミレイユが聞いた声。
核の落下地点。
ブルーコスモスの伏兵。
繋がる素振りはありながら、どこか噛み合わずにいた全ての点が──今、一本の線になった。
そして。
「ヤマト准将も、ラミアス艦長も、コノエ艦長も……敵ではなかった」
その事実を理解した瞬間、胸の奥に重く沈んでいた疑念が霧のように晴れていく。
同時に。共に戦った同志を疑い、信じることができなかった自分をエリオスは深く恥じた。
「
黒い炎を模した仮面を被り、現在はソニファー・リーブランと名乗る義妹──セレーナ・ハーベストが脳裏に浮かぶ。
キラたちが生きていたこと。
疑いの目を向けていた彼らが、信じるに値する人間だったと気づけた事実。
そして──ファウンデーション王国こそが黒幕であり、『自分達の主張をラクス・クラインが支持している』という大義名分を得るためだけに、自国と国民を焼き払ったという事実。
守るべき国と国民を、自らの手で焼き払った国家。
国と民を守る盾となり剣となるため軍人となった自分の価値観を、真っ向から否定する存在。
「……腐っているな!」
エリオスは拒絶したいほどの嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
抑えきれない怒りを落ち着かせ、エリオスは『キラたちが生きていた』という事実を伝えるためミレニアムのコノエに連絡を取ろうとする。が、その行動を止める。
マリューの『艦を
その調達する方法が何であるかがわかったからだ。
エリオスは意味深に呟いた。
「……どうやら急がなければならないようだな」