機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH 作:筆先文十郎
話はエリオスがテロリストに屈しミレニアムを援護するため宇宙に上がる前、情報部デキフサ・ザケルフの報告書を読み終えた後にさかのぼる。
ガルガリン 艦長室。
「……どうやら急がなければならないようだな」
『艦を
戦うモビルスーツや軍艦がないことを指摘するシン・アスカに、マリュー・ラミアスが言った意味深な言葉がオーブに停泊する戦艦の中で一番高性能な軍艦ミレニアムの強奪と推測したエリオスはすぐに連絡を取った。
「ウズメか?」
〈……あぁ?〉
上司からの連絡に、疲労と不機嫌さを隠さない声でガルガリン整備班長兼技術士官ウズメ・アマノが応対する。
「エリカ・シモンズと顔つなぎをお願いしたい」
〈……了解。すぐ繋ぐ〉
事は一刻を争うと察したのか、それとも別のことに集中したいからか、ウズメは何も言わず通信を切った。
数分後。
〈エリオス・テイラー艦長ですね? エリカ・シモンズです〉
「エリオス・テイラーです。シモンズ女史。無理なお願いと承知でお願いします。今すぐガルガリンにプラズマブースターを装着してもらいたい」
「……」
プラズマブースター。この言葉にエリカはピクリと反応する。
プラズマブースターは強烈な推力を得て宇宙の脱出速度まで一気に加速させる、舷側に専用の大型ブースターである。
コンパスという関係が切れた大西洋連邦の
他国艦に戦略資産を渡すなど、本来ならあり得ない話だった。
そしてアークエンジェルの後継艦であるガルガリンは、本来ならプラズマブースターなど必要としない。
姉妹艦アークエンジェルやドミニオンを基礎に、現在の水準へと再設計されたその推進系は、単艦で大気圏を突破し宇宙へ上がれるだけの能力と技術を備えている。
エリカはそれを誰よりも理解していた。理解した上で、エリカは答えた。
〈わかりました。すぐに上と相談してみます〉
そう言うとエリカは通信を切った。
宣言通り、エリカはすぐに行動に移した。
エリオスがなぜプラズマブースターの装着を願い出たか察したからだ。
「間もなく起きる戦い。この戦いは一分、いえ一秒の遅れが勝敗を一気に決定づける可能性が高い」
エリカから見てエリオス・テイラーという男は慎重で無謀を嫌い、勝ち目が薄い戦いでも挑まなければならないなら可能な限りリスクを減らす艦長だ。
ブースターを装着すれば安全でかつ最速で宇宙に上がれ、宇宙に上がるために使うはずだったエネルギーを戦闘に回せる。
エリカはエリオスの考えを読み取った。
そして他国の軍艦であるガルガリンにプラズマブースターを装着することはオーブにとってメリットはあった。
ユーラシア連邦のモスクワに発射されモスクワを一瞬で焦土に変えたレクイエム。その最恐の戦略破壊兵器がオーブに向けられないという保証はどこにもなかった。
レクイエムがオーブに発射される。
それは即ちオーブという自分たちが愛する大地が焼かれ、家族や仲間というかけがえのない存在が殺されることを意味した。そしてモルゲンゲーテ社という組織が攻撃されるということも。
エリカはすぐに上司にガルガリンにプラズマブースターを装着する件を相談。
上司はすぐに緊急集会を開き
非公式ながら大西洋連邦に恩を売れる。
ガルガリンがレクイエム阻止に成功すれば、オーブの脅威は大幅に減る。
モルゲンゲーテ社も自社の存続を守れる。
このことを会議で主張。この主張が大々的に認められるとモルゲンゲーテ社はプラズマブースターの装着に向けて人員と部品の搬送を急がせた。
ガルガリンにプラズマブースターが装着されたのは、テロリストが突如ミレニアムを1時間前のことだった。