機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH 作:筆先文十郎
ガルガリンの艦底に固定された二基のプラズマブースターが、大気を震わせる低い唸りを上げ始めた。
ブリッジの床がわずかに軋む。
艦全体が跳ぶ準備をしているのが、誰の肌にも伝わった。
「ブースター出力、臨界値まで上昇。艦長、いつでも離脱可能です!」
オーロラの声が緊張を帯びる。
エリオスは前方のスクリーンに映るミレニアムの航跡を見据えた。
ミレニアムはレクイエム照射を回避し、そのまま宇宙へ向けて急角度で加速している。
通常の上昇ルートでは間に合わない。
ミレニアムの航跡は最適解ではなく、乱流帯を強引に突き抜ける危険な軌道だ。
それでも追うしかない。
「全員、衝撃に備えろ。ガルガリン、プラズマブースター点火!」
次の瞬間、艦底のブースターが白光を噴き上げた。
大気が裂け、艦体が跳ね上がる。
重力が一瞬だけ消え、乗員たちの身体がシートに押し付けられる。
ガルガリンはまるでミレニアムに続く第二の矢のように上昇した。
「高度急上昇! 大気圏境界まで二十秒!」
外殻を叩く空気の圧力が凄まじい。
ミレニアムの航跡を追うため、ガルガリンは本来避けるべき乱流帯へ突入していた。
艦体が震え、ブリッジの照明が一瞬だけ揺らぐ。
「姿勢制御スラスター、稼働率120%! 補正が追いつきません!」
「外殻温度、上昇中! 限界値まであと5%!」
報告が次々と飛ぶ。
だがガルガリンは揺るがない。
アークエンジェル級の姉妹艦として鍛え上げられた艦体は、ブースターの暴力的な推力を受け止め、そのまま一直線に宇宙へ向かう。
「大気圏境界突破まで……5、4、3──」
艦体を包む空気が薄れ、視界が青から黒へと変わる。
「──突破!」
ガルガリンは宇宙へ飛び出した。
ブースターの白光が尾を引き、そのままミレニアムの航跡を追うように加速する。
「ブースター切り離せ! ガルガリン、宇宙戦闘態勢へ移行!」
艦体の揺れが収まり、ブリッジに静寂が戻る。
切り離されたブースターは、役目を終えた矢のように大気圏へ落ちていった。
プラズマブースターに備え付けられた独立エネルギーパックのおかげで、ガルガリン本体のエネルギー消費は最小限に抑えられていた。
姿勢制御や艦内システムの負荷は大きかったが、戦闘に支障はない。
エリオスは息を整え、前方のスクリーンに映るミレニアムを見据えた。
「ミレニアムに続け。ガルガリン、全速前進!」
ガルガリンはミレニアムの影を追うように宇宙空間へ滑り出した。
その艦体には、無理な軌道を追った代償としてわずかな熱痕と姿勢制御の負荷が残っていた。
それでも、ガルガリンは戦える。
ミレニアムを守るため。適切な距離を維持しながらガルガリンは高速で敵陣に切り込むミレニアムを追った。