世界の為に推しとの恋愛を諦めようとしたらヤンデレ化された件   作:赤坂緑語

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第68話:来訪者は突然な件

 

 もし、人から監禁されたことがある人や、山で遭難した経験がある人であれば大いに共感いただけると思うが――基本的に自分ではどうしようもない状況に追い込まれた時、人にできることはデカい声で助けを乞うことだけだ。

 それはもう、腹の底から、全身全霊で叫ぶことしかできないのだ。

 

 もちろん、恥ずかしさはある。

 

 特に、僕みたいにクールなキャラだと、そういうことをするのに大いなる抵抗がある。だって、それってキャラに反しているからね。

 僕はいついかなる時も動じず、微笑みを浮かべながら、英国の紳士スパイのように華麗に物事を解決するタイプの人間だ。

 これまでもそうやって鮮やかに物事を解決してきたし、これからもその予定だ。

 恥も外聞も投げ捨ててまで人に助けを乞うなんていうのは、僕の道理に反している。美学に反していると言ってもいい。

 

 けれど、それは僕一人だった時の話だ。

 仮に困っているのが僕一人だけであれば、僕は誰にも助けなんて求めず、クールに瞑想をしながら辞世の句を詠んで、最後の煙草をカッコよく吸い終わってから息を引き取っていたのだろうが――生憎と、今はそういう状況ではない。

 

 璃奈が、危ないのだ。

 

 悪魔王とどんな取引を交わしたのかは分からないが、それでも“原種の吸血鬼”と“悪魔の屁理屈”を無力化できるだけの力を授ける代わりに、何か対価を捧げたことは間違いない。

 悪魔は等価交換を好むが――その中でも悪魔王は特にその傾向が強い。

 例え自分に有利な条件であったとしても「バランスが悪りィな」なんて言って、釣り合いを合わせようとするくらいには、等価交換を好んでいる。

 いや、遵守していると言った方がいいか。

 

 そんな悪魔王に強大な力を願ったのであれば――必然的に、璃奈もまた強大な代償を支払わされることになる。

 そんなこと、させるわけにはいかない。

 絶対に。

 この檻の中に囚われている以上、璃奈は僕の話を「ここから出るための詭弁」と捉えるだろう。

 それに何より、今の璃奈には上手く話が通じない感じがした。

 彼女と再び“対等”な立場に戻るためには、何としてもここを抜け出す必要があるのだ。

 だから僕は、恥も外聞も捨て、全力で叫んだ。

 

「助けてください~~~~~~~!!!!!」

 

 屋敷中に声が響き渡る。

 自慢じゃないが、戦闘中でも容易く口喧嘩をし、相手のメンタルを崩すことばかり考えている僕の声は結構デカい方だ。

 璃奈の屋敷は住宅街から少し離れたところにあるので普通に叫んだだけでは声は届かないが、家のインターフォンを押す距離にいるのであれば確実に届いた……と思う。

 僕は「閉じ込められているんです!」と念押しのヘルプを発し、それから耳を澄ませて反応を待った。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 特に何も聞こえてこない。

 落胆しそうになる自分を必死に立て直しつつ、僕は考えを巡らせた。

 

 まず考えられるのは、璃奈が防音結界を張っていることだ。

 

 用意周到で、完璧主義者の璃奈のことだ。それくらいしていても全く不思議ではない。

 そもそも、記憶が正しければこの屋敷に張られている結界は三層から成っていたはずだ。

 よって、璃奈が結界のどこかの層に「防音」の効果を追加していたとすれば、僕の声が外に届かないのも納得はいく。

 結界は内と外を隔てるものだから、例外を設けない限りは完璧に遮断される。

 

 次に考えられるのは、思っていたより僕の声が小さかったことだ。

 この屋敷はかなり広い。流石に僕の声をもってしても外にまで届かなかった可能性は十分に考えられる。

 思わず落胆してしまうが、しかしこの程度で諦めているわけにはいかない。

 

 僕はもう一度大きく息を吸い込んだ。

 そして、檻の外にある窓を振動させるべく、口を開いて――

 

「ッ⁉」

 

 思わず吸い込んだ息を全て吐き出してしまった。

 大きく咳き込む。

 僕は咳をしながら、窓を見た。

 

 そこには――

 

「女の、子……?」

 

 ――少女が、へばりついていた。

 

 年齢は……分からない。僕と同じくらいにも見えるし、もっと上にも、もっと下にも見える。

 ただ一つ確かなのは、彼女が“苛烈”という言葉をそのまま形にしたような美しさを持っていることだ。

 きめ細やかで美しい褐色の肌。黄金の瞳。燃え上がる炎をそのまま切り取って貼り付けたような紅蓮の髪。

 着ているのは、くたびれた灰色のパーカーだが、ダウナーなその恰好が妙に似合っている。

 

 そんな具合で、何とも言えないミステリアスな魅力を持った少女が、窓にベタッと()()()()()()()

 まるで重力を忘れたかのように、無表情で、無気力に。

 

「えっと……」

 

 僕は思わず声を漏らした。

 恐怖よりも先に、理解不能な光景に脳がついていかない。

 助けを呼ぼうと思っていたら、何故か見たこともない少女が窓に張り付いていた。

 どうすればいいんだ? 僕は何を言えばいい? 

 

「……」

 

 少女は窓にへばりつきながらじっと僕を見つめて……それから人差し指でチョンと窓を指さした。

 思わず首を傾げる。

 窓に押し付けられてムニュッと潰れている頬をゴニョゴニョと動かしながら、少女は人差し指で頻りに窓を指している。

 

 あれはもしかして……「開けろ」と言っているのか……?

 

 だが、「開けろ」と言われても、僕だってこの檻から外に抜け出せない身なのだ。

 僕は目の前にある黒い檻を指さして「開かない!」と大きな声で言った。

 少女は窓にへばりついたまま首を傾げる。

 僕はようやく、己の推測が正しかったことを知った。

 

 即ち、この屋敷の結界に「防音」効果が付帯されているという推測だ。

 だから、これだけ距離が近いにも関わらず互いの声が全く届かないのだろう。

(例外は恐らくインターフォンだけだ。璃奈も宅配が届かないのは困るだろうから、それだけは残していたのだと思う)

 

 少女もそのことを何となく理解したのか、窓を指さして「開けろ」とは言わなくなった。

 代わりに窓にへばりついたまま、じっと僕を見つめてくる。

 僕も彼女をじっと見つめる。

 

 ……なんだ、この状況は。

 

 檻に閉じ込められた男と、窓にへばりついた少女がただ見つめ合うという、不毛なのかよく分からない時間が流れる。

 混乱が一周回って冷静になってきた僕は、一旦少女から視線を外して部屋の中をぐるりと見渡した。

 ただ見つめ合っていても仕方がない。何か役に立つものがないか探すことにしたのだ。

 部屋の中は綺麗に整えられていて、快適に過ごすためのものが色々と用意されているけれど――こういう時に役に立ちそうな物は一つも置いていない。

 

 流石は璃奈。こういうところでも抜かりがない。

 僕は頭を掻いて溜息をつきながらテーブルの上に視線をやって――見つけた。

 この状況で役に立ちそうな唯一のものを。

 僕は慌ててそれに飛びついた。

 

 テーブルの上に置かれていた、紙とペンに。

 僕はそこにこうメッセージを記した。

 

【僕はここに閉じ込められている。君は誰?】

 

 長い文章を書いたら文字が小さくなってしまって、あの窓から見えないかもしれない。

 だから簡潔に状況と知りたいことだけを記載して、相変わらず窓にへばりついている彼女に向かって翳し、紙を指さした。

 少女の黄金の瞳が先程よりも大きく見開かれる。

 じーっと紙を見つめていた少女はやがて、口を開いた。

 それから何かを口走ったかと思うと――唐突に窓から飛び降りて、僕の視界から消えてしまった。

 

 取り残された僕は唖然としながら、先程少女が動かしていた口の動きを真似してみる。

 読唇術に詳しいわけではないので正確ではないけれど、恐らく彼女はこう言っていた。

 

『コンビニ行ってくる』

 

「いや……えっ……?」

 

 僕は最寄りのコンビニまでの距離を現実逃避気味に思い出しながら、アホ面を晒していることしか出来なかった。

 

 

 

♰♰♰♰♰ ♰♰♰✜♰♰♰ ♰♰♰♰♰

 

 

 

 さて、冷静になって考えてみよう。

 

 彼女が「コンビニに行ってくる」と口にしたのであれば、恐らくここには戻って来ることになるだろう。「さようなら」ではなく「行ってくる」なのだから、日本語の文脈的にはそういうことになる。

 

 どうしてコンビニに行くのかについては……まぁ、流れ的に何となく察しはつくが、今は置いておくとしよう。

 

 問題は、だ。

 

 彼女が何者で――そして、どうやって天羽邸の結界をすり抜けたかだ。

 何者かについては、正直なところ一切分からない。

 見当もつかない。

 何故なら、彼女のような容姿の女性は全く見たことがなかったからだ。

 主要キャラクターについては容姿も含め、あらかたの情報が脳内に入っているのが僕だ。それが強みであり、それが故に失敗したこともあるわけだが、あの少女については知らない。  

 本当に分からない。

 

 恐らくだが、原作には登場しなかった人物なのだろう。

 眼が金色だったから、悪魔関係者なのは間違いない。

 後は、二階(部屋の位置は分からないが、天羽邸は二階建てなので多分そう)に素手で登って窓にへばりつけるだけの膂力を持っていること――くらいしか今のところは分からない。

 色々と推測できることはあるが、今の時点では考えたところで無駄だろう。 

 

 では次に――どうやって天羽邸の結界をすり抜けたのか、だ。

 

 天羽邸には璃奈お手製の強力な結界が張られている。

 侵入者の探知はもちろんのこと、侵入阻止、場合によっては迎撃までこなせる万能結界だ。

 本来であれば、天羽邸に近づくことさえ出来ないはずなのだが(だったらなんで助けを呼んだんだよって話だが、あの時は混乱していたんだ……)、あの少女はその結界をすり抜けて窓に(文字通り)へばりついていた。

 

 結界を探知されずにすり抜ける技術。

 黄金の瞳。

 断言できる。絶対に、碌な来訪者ではない。

 

 だから、彼女が戻って来るのをじっと待っている僕も碌な奴ではないのだろう。

 

 本当に天羽璃奈の意に沿うのであれば、あの謎の少女に構うことなく、全てが整えられたこの部屋でボーっとドラマか映画でも観ていれば良かったのだ。

 だが、そうするわけにはいかない。

 理由は先程も説明した通り――璃奈に危険が迫っているからだ。

 それだけは阻止しなければならない。

 

 例え、悪魔の手を借りてでも。

 

 そんなことを考えながら紙にペンを走らせていると、不意に気配を感じた。

 顔を上げ、窓に視線を向けると、先程の少女が再び窓にへばりついていた。

 

「戻って来るのが早いな……」

 

 呆れたように呟きながら少女を見ていると、彼女は左手だけで身体を支えながら何やらゴソゴソし、それから新品らしきメモ帳を取り出した。

 

「やっぱりコンビニに買いに行っていたのか……」

 

 流れ的に薄々そんな気はしていたが、まさか本当に僕と文通?をするためにコンビニまで走りに行っていたとは……かなり行動力がある少女のようだ。

 少女はメモ帳を片手で捲ると、そのページを窓に押し付けた。

 僕は目を凝らして何て書いてあるかを読み取る。

 そこには、少し読みにくい字でこう書いてあった。

 

【お前をここから出したい。何すればいい?】

 

 僕をここから出したい、か……味方かどうかも定かではないが、互いの目的は一致しているようだ。

 僕はメモ帳を捲り、事前に用意していたページを開いて彼女に見せた。

 

【ここから出たい。窓を破ることは出来る?】

 

 じっと窓からメモを見つめた少女は、すぐに首を大きく振った。

「NO」とでも言うように。

 そして少女は左手で身体を支えたまま右腕を大きく振りかぶり――思い切り、窓に叩きつけた。

 

 すると、何か目に見えない緩衝材に衝撃を吸収されたように空間が波打ち――少女は無表情ながら、どこか不機嫌そうな表情で手を引いた。

 なるほど。何となく分かって来たぞ。

 少女は璃奈の結界の第一層(もしくは第二層?まで)をすり抜けてここまで侵入することは出来るけれど、次の層はすり抜けることも、破ることも出来ないようだ。

 少女はメモ帳を窓に押し当て、器用に右手でペンを走らせてから、記載した内容を僕に見せた。

 

【できない。()()()()()、やったらお前、死ぬ】

 

 ……ん? 一行内に矛盾したことが記載されていて、思わず首を傾げてしまった。

 しかし、すぐに内容について理解する。

 少女はこう言っているのだ。

 破れなくもないが――本気を出せばこの家ごと吹き飛ばすことになるので、僕を巻き込まない保証がないのだ、と。

 

 少女が何者かは知らないが……恐らく、この檻を破ることは出来ないだろう。

 僕の推測が正しければ、これは悪魔王お手製による封印の檻なのだから。

 だが、仮に少女にそこまでやってもらっても、結局は天羽邸に穴が空くだけで僕は外に出られず、そして侵入者を感知した天羽が鬼の形相で戻って来るだけだ。

 それでは意味はない。

 僕は考えを切り替え、少女に頷いて見せてから紙を捲って窓に向かって示した。

 

【君は誰? 誰の指示でここに来たの?】

 

 そもそもの話だ。

 彼女の背後にいる人物が分かれば、もう少し具体的に助けを要請できるかもしれない。

 悪魔王に抗することが出来る存在が早々にいるとは思えないが、それでも状況を把握し、伝言をお願いすることは出来るだろう。

 ……誠に遺憾だが、メフィラに助けを乞うことだって出来るかもしれない。

 窓にへばりついたまま紙をじっと見つめていた少女は、先程と同じようにメモ帳を窓に押し当てながら片手で何かを書き込み、それからペンを口で加えて紙を僕に見せた。

 

【いえない】

 

 ……えぇ?

 僕は多分、結構変な顔をしていたと思う。

 恐らくこれだけ明確に何かしらの目的をもって登場したにも関わらず、少女は名前も背後にいる人物のことも教えてくれないのだという。

 とんでもない不親切だと思ったが、しかし何となく言葉が引っ掛かった。

「言わない」ではなく「言えない」。

 この差異は大きい。

 もしかしたら、少女は背後にいる人物と何かしらの“契約”を交わしているのかもしれない。

 だから、言いたくても言えない。

 であれば筋も通る。納得……は出来かねるが、まぁ、今の段階では深く聞いたところで仕方がないだろう。

 僕の表情を伺っていた――のかどうかは分からないが、少女はタイミングよく紙を捲り、恐らく事前に書き込んでいたであろう内容を僕に見せてきた。

 

【お前を閉じ込めたのは誰?】

 

 恐らくこの質問が来るだろうと予測していた僕は、事前に書き込んでいたページを開いて彼女に見せた。

 

【気が付いたらここに閉じ込められていた】

 

 ――敢えて璃奈が犯人であること、そして“悪魔王”が関与している可能性があることは書き込まなかった。彼女が味方かどうか分からない現状で、璃奈を危険に晒すわけにはいかない。

 まぁ、この屋敷に閉じ込められている時点で、犯人はほぼ誰か分かるようなものなんだけどね……夕方になったらその犯人も帰って来ることだし。

 僕のメモを見た少女は視線を逸らして考え込む。

 やがて、コンビニで買ってきた新品のメモ帳に何かを書き込むと、僕に見せてきた。

 

【まぬけ】

 

「はぁ⁉」

 

 僕は思わず地団駄を踏んだ。

 こちとら必死に考えを巡らせて、メモで状況を知らせたのに【まぬけ】だって⁉

 いや、そりゃあ、状況だけ見たら僕は間抜けかもしれないよ?

 でも、メモのページを割いてまで書くことがそれって、おかしいだろうが⁉

 しかも、あの字だけ妙にデカくて綺麗だ!

 ふざけやがって……! こっちが下手に出ればいい気になりやがって――

 

 ……いや、落ち着け、僕。荒ぶるな。

 

 相手はわざわざ二階まで素手で登ってきて、ご丁寧にも窓にへばりつきながら僕の話を聞いてくれている少女だ。

 丁寧に接しなければ。

 紳士たれ、地藤優斗。

 僕は深呼吸して気分を落ち着かせてから、事前に用意していたページを開いて少女に見せた。

 

【僕がここに閉じ込められていることをここにいる誰かに伝えてくれないかな?

 霧島レイ

 十六夜唯

 十六夜蓮

 如月メフィラ

 ――上から順番に伝えてもらえるとありがたい】

 

 こうなってしまっては、頼りになる仲間たちに頼る他ない。

 僕はお願いしたい順番に上から一人ずつ名前を書き、そして指でなぞって見せた。

 メモを見た少女は――露骨に顔を顰めた。

 出会って数分の関係だが、何を言っているのかは僕にも分かる。

 

「うわ、めんどくせー」だ。

 

 誰に対して面倒だと思っているのかは分からない。

 そもそもその行動自体が面倒だと思ったのかもしれない。

 とにかく、少女は途轍もなく嫌そうな顔をしていた。

 僕は次のページを開いて、少女に見せた。

 

【必ずお礼はする。それに、これには世界の命運も掛かっているんだ。だからお願いします】

 

 僕はメモを掲げたまま、深々と頭を下げた。

 僕にどんなお礼ができるかどうかは別として――世界の件は紛れもない事実だ。

 この“世界”は、鏡の世界という外伝編が終わった以上、次は本編に戻ることになる。

 そして本編で血の大公の次に待ち受けているイベントと言えば――これはもう、絶対に阻止しなければならない。

 何としても阻止しなければ、本当に世界は滅んでしまう。(もうこの展開にも飽きてきただろうけれど、残念ながらこれがこの世界のデフォルトだ。基本的に気が抜くと滅んでいるものなのだ。この世界という奴は)

 

 ――とはいえ、これはあくまでも建前だ。そう言った方が相手も動いてくれる気になってくれるかもしれないという期待を込めた建前。

 

 僕の本音は、結局どこまで行っても“天羽璃奈”でしかない。

 彼女を救う為に――僕は、ここから出なければならないのだ。

 暫く頭を下げていた僕は、ゆっくりと頭を上げてから窓を見た。

 相変わらず窓にへばりついている少女は、感情が読み取れない無表情でじっと僕を見つめていた。

 少なくとも、先程のように嫌悪感全開という感じではない。

 やがて少女は溜息をつくと、メモ帳に何かを書いてから窓に押し当てた。

 

【まってろ。また、来る】

 

 具体的にいつまで待てばいいのか、次はいつ来てくれるのか。

 色々と聞きたいのは山々だったが、恐らく質問攻めにしても少女は嫌な顔をするだけだろう。

 出会って数分だが、そういう性格だってことは何となく分かってきた。

 だから僕は大きく頷いてから、もう一度頭を下げた。

 少女はじっと黄金の瞳で僕を見つめてから――やがて、すっと窓から飛び降りて去っていった。

 

 静寂が戻った部屋で、僕は深く息を吐いた。

 ――ほんの僅かでも、この閉ざされた状況に風穴が開いてくれることを願いながら。

 

 

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