普通の一般人がガチであんな環境に放り込まれたらまず無事では済まないなと思います。
私は肩に掛かったポニーテールを払い、皮のジャケットの位置を直した。
「こ、この女マジで噂通りなのかよ!?」
私一人相手に五人で袋叩きにしようとした男の内の一人は返り討ちに合い地面にのびた 四人を見て思ってもみなかったのか驚愕の声をあげた。いい年した大人が尻もちついて股間から漏らしている姿は滑稽だ。私からしたらむしろ相手の方が弱すぎて興覚めもいいところである。おそらく噂を面白半分、興味半分で聞き街に繰り出していた私にちょっかいをかけようとでも思ったのだろう。結果私の売り言葉に簡単に乗せられた連中は激昂し、新都の歓楽街の路地裏でこうなったというわけだ。
「ち、血まみれブロッサム!! 冬木市最大の暴走族「型水連合」をたった一人で潰しヤクザの事務所に単身乗り込んで全員血まみれにして戻ってきたなんて与太話があるわけねぇだろ!!それがこんなガキだなんて「グチャグチャグチャグチャ五月蠅いんですっよと」っっがぁ!!!」
分かり切ったことをタラタラ垂れ流す口に向かって私は右の革靴を蹴り込んだ。歯がポップコーンみたいに飛び散るが鉄板入りの靴には何の痛痒も感じはしない。歯のない間抜けな姿にくすくすと笑いがこみ上げてくる。
「これに懲りたら今度はこの三倍は連れてきてくださいね。あなたたち程度じゃあそのくらい人数を揃えないと味も感じないですし。さもないと・・・」
私は歯抜けになった男の耳元へと囁くように言った。
「今度は股間のぶら下げてるものも無事ではすみませんよ・・・」
前世の「オレ」はあるゲームを出した会社の熱狂的なファンであり、瞬く間にその世界観の虜になった。関連作品も全て網羅し、新作の発売には必ず列に並ぶ、いわゆる二次元オタクだった。物語の世界にのめり込むことが一会社員としての「オレ」にとって現実の苦しさ、つらさを忘れさせてくれる癒しだった「らしい」。
どういった死に方をしたのかは今も思い出すことはできないが、どこにでもあるつまらない事故によるものであったと思う。神様転生なんていうファンタジーな現象もなく転生特典なんてご都合主義な展開があるはずもなく、「オレ」はごく普通に生まれ、ごく普通に成長した。その過程で明らかに聞き覚えのある言葉、単語にさらされていく内、ついに「オレ」は前世の人格と知識を思い出した。この世界は自分がプレイしていたゲームの世界観そのものであり、自分が住む家は魔術師の一族、自分の住む都市はそのゲームの主要な舞台だった場所。そして自分がそのゲームの登場人物の一人として生を受けてしまったこと。
そのゲームの名前は「Fate/stay night」、あらゆる願望をかなえる万能の杯、聖杯を巡って七人の魔術師とサーヴァントと呼ばれる七柱の過去の英雄たちが戦うバトルロワイヤルの物語であり、「遠坂」桜とはそのゲームに登場する三人のヒロインの一人であり、三人の中で最も陰惨な運命を背負ってしまった少女であることを、「オレ」は思い出してしまった・・・。
「遠坂」から「間桐」へと養子に出される当日のことであった。
痛いぃぃぃ!?痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!死ぬっ痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!嫌だ痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!やめてっ痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!許してっ痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!助けて痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!誰か痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!ごめんなさいっ痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!……………………………………………………………………………………………………………・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なんで・・・オ・・・レ・・・・が・・・こ・・・んなめに・・・」
絶え間なく続く痛みと苦しみは、どこにでもいる一般人の「オレ」に耐えきれるはずもなくその精神を完膚なきまでに破壊した。そしてその心が逃避した結果、「オレ」は「私」となった。「私」の中で際限なく溢れてくるのはただ「普通」に死んだ先で起こった第二の生という理不尽に対する怒りであり、そんな自分のことも知らずに生を享受するその他の人間に対する憎悪、このような状況を生み出した間桐や遠坂に対し何一つ抵抗することのできなかった悔しさ。それらがないまぜとなった結果、間桐桜の怒りは「暴力」という形で発露されることとなった。
転がした五人の財布から金を巻き上げ、私は意気揚々と路地裏を出た。資産家である間桐にそんな必要は本来ないのだが、公的機関への御用の頻度にお爺さまの堪忍袋の緒がついに切れてしまいお小遣いカットという手痛い仕打ち(+虫蔵一週間耐久修練追加) を受けてしまい自分の小遣いは自分でハントすることになったのでした、マル。(ちなみに腹いせにワカメな兄さんをサンドバックにしました) 歯応えのない連中でしたけど最後の一人の怯えきった顔が最高にそそられたなぁ。でも次性懲りもなく襲ってきたら去勢しますからね、お・に・い・さ・ん♪
間桐桜は今日も街へと繰り出す。いつか来る魔術師の闘争という現実から目を背けながら、間桐蔵硯という絶対者への反逆を諦めながら、自分に救いがもたらされるかもしれないという未来を諦めながら、自身の痛みをぶつける場所を探して海月のように街を彷徨う。
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間桐桜(転生者)
なまじ原作知識を持ってしまったために早期に絶望してしまった特別な能力のない元一般人。蔵硯の凌辱まがいの調教の末に元の人格は崩壊、他者に対し自分が受けた苦痛を味わわせてやろうという逆恨み以外の何物でもない理由でケンカ暴力に明け暮れる不良娘。生半可な痛みでは「お爺さまの方がもっと痛かったですよ」と頭から血が噴き出そうが戦闘続行するまさにバーサーカー。だがその異常性も弱い自分を隠すための鎧に過ぎず蔵硯には逆らえず、某ヤクザ事務所に殴り込みに行くと組長の孫娘の超絶美人教師の竹刀の餌食となり不登校していた学校に行かされることとなるなどヘタレメンタルをみせてくれる。精神は原作桜よりも脆弱。あんな凌辱受けながら笑顔で衛宮家の女房役をやっていたメンタルが異常なのである。八つ当たりしないと正直やってられないよ。
というわけで「もしも桜ちゃんが盗んだバイクで走り出したら」でした。あんな虐待環境でぐれなかった桜は本当にすごいよなあと思ってたらいつの間にか筆がのっていました。多分この後は原作通りライダーを召喚、女版シンジばりに悪態をつきながらも親身になってくれるライダーに絆され、正義の味方のくせに自分を助けてくれなかった士郎に対し逆恨み爆発し、凛の冷徹発言からのデレ説得(殺し愛)に号泣するかと。あ、あとシンジくんは桜のストレス発散先で原作より腰が低くなっています。