想像したものを具現化する召喚術が主流の世界で、SF兵器で救世主になる   作:サモリ

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一 召喚術士、大地に立つ

 光学迷彩のドローンを通して広がる光景は、まさに戦場としか言いようがなかった。

 大地を駆け回る偉業の怪物と、それに相対する幻想的な魔獣。

 異形の怪物も、その素体は動物のそれだ。

 ただ、顔に張り付いているのは凶暴な道化師の仮面。

 文字通り、仮面だ。

 対する幻想的な魔獣は、ワイバーンやユニコーンのような、ファンタジー創作に登場するモンスターそのものだ。

 それらが、二つの勢力に別れて激しくぶつかり合おうとしている。

 

『召喚獣部隊、悪魔獣(あくまじゅう)と衝突します』

 

 俺の耳に取り付けられたインカムから、少女の声が聞こえてくる。

 それに耳を傾けながら、俺は戦闘の行方を見守った。

 優勢なのは仮面をつけた魔獣――悪魔獣だ。

 基本的に、一体の悪魔獣に対し、二体の幻想的な魔獣――召喚獣をぶつけるような形。

 そのうえで悪魔獣は召喚獣を相手していない。

 適当に振り切って、あるいは噛み殺して突破している。

 振り切られた召喚獣は悪魔獣を追いかけ、噛み殺された召喚獣は光の粒になって消えた。

 

『召喚獣部隊、突破されます。召喚攻撃術部隊、攻撃開始します』

 

 召喚獣がやられたら、次に姿を表すのは複数のローブ姿の人々。

 いかにも魔術師って感じだが、彼らが操るのは『召喚攻撃術』だ。

 彼らが手をかざすと、正面に魔法陣のようなものが現れる。

 そこから、無数の火球が()()された。

 飛び出した火球が悪魔獣に直撃し、あるいはハズレ。

 直撃した火球に悪魔獣が叫び声を上げる。

 そこに振り切られ反転した召喚獣が追いつき、乱戦が始まる。

 

「劣勢だな」

『数は同数ですけど、同数ってことはこちらが劣ってるってことですからね。……それで、セフトさん』

「どうしたんだ?」

 

 戦況が混沌としたことで、俺と通信している相手は逐一状況を伝えることができなくなったんだろう。

 セフト――つまり俺のことだ――に話しかけてくる。

 

『――今、私に映像を見せているこの変なものは……なんですか?』

「光学迷彩ドローンだよ。前にも空にドローンをあげて、状況を偵察しようとしたことがあっただろ?」

『あの、一瞬で撃ち落とされたやつですか?』

「武装してないからなぁ、ドローンだし」

 

 いや、武装してるドローンもあるだろうけど、偵察のためのドローンに武装を積むっていうのがいまいちイメージできなかったんだよな。

 

「だから今回は、姿を見えないように光学迷彩を搭載した。正確に言うと、搭載できるくらい俺の召喚術のレベルが上がった」

『姿が見えないように!? そんなとんでもないこと、可能なんですか?』

「可能だよ、なにせ光学迷彩だからな」

『光学迷彩ってなんですかー!』

 

 それはな……俺もよくわからん。

 光学迷彩って字面だけでなんか完全に透明にすることに成功している。

 と言っても突っ込まれるだけなので黙っておいた。

 

『だいたい、セフトさんの召喚術はおかしいです! どうして鉄の塊みたいなものが宙に浮くんですか!』

「それはな……俺にもよくわからん。飛ぶと思ってるから飛んだ、それだけだ」

『セフトさんは召喚術を何だと思ってるんですかー!』

 

 そして、言わなくても突っ込まれたのでそのまま返しておいた。

 

「術者が想像したものを現実に具現化する術式。具現化できるモノは術者の持ってるイメージに準ずる」

『つまりセフトさんのイメージがおかしいってことですよね!』

「それは否定しないけど、いいだろ、役に立ってるんだから」

 

 俺が転生者なのは、誰にも明かしていない秘密だからな。

 まぁ、説明してもわからないだろうから説明していないだけで、こうしてこの世界には存在しない物体を生み出してはいる。

 なので隠しているとは、口が避けても言えないが。

 

「それに、召喚術が便利なのが悪い。あくまでイメージさえできてれば、原理がよくわかってなくとも召喚できるんだから」

『原理がわからないものを、それが当たり前みたいに使わないでください!』

 

 しょうが無いだろう、別に俺はミリオタでもなんでもないんだから。

 自分が召喚している銃とか兵器の仕組みなんて分かるわけ無いだろ!

 なんならデザインだってちょっと曖昧だぞ!

 

「それより、戦況はかなりこっちが押されてるぞ。そろそろ俺を投入しないのか?」

『ちょっと待ってください、今のところ大型悪魔獣の出現は確認されていないので、問題ないかと』

「了解、いつでも出れるぞ」

 

 俺は、手元のタブレットを操作して、召喚する兵器を選んでいく。

 このタブレットも、召喚によって生み出したものだ。

 召喚術は呼び出したいものを如何に正確にイメージするかが、何よりも大事。

 そのために、召喚のイメージに必要なものを召喚するのはこの世界で当たり前に行われていることだ。

 俺の場合は、召喚したいものがカタログになったタブレット。

 今回呼び出すのは――これかな。

 

『……それにしても、やっぱり悪魔銃の召喚防御はやっかいですね』

「召喚術によって生み出された物体を()()()()()()()()を使って、召喚術から自身を守るバリアを貼る技術、だったな」

『現状、召喚術士の中でも最上位の術者にしかできない技術を、悪魔獣はどんな個体も例外なく使用してきます』

「おかげで、こっちの攻撃は全然通らないのに向こうの攻撃はほぼ素通し。そりゃあ厄介極まりないわけだ」

 

 ドローンの映像の中で、召喚術士達が火球を召喚して悪魔獣にぶつけている。

 しかしそれは、半透明な黒いバリアによって防がれてしまう。

 そこに召喚獣が飛びかかり、火球と同時に攻撃を加えることで何とかバリアを突破していた。

 そんな状況をよそに、俺の手元に出現したのは、宙に浮かぶ白い球体。

 どうやって浮いているのかも定かではないそれを、一言で表現するならこう呼ぶべきだろう。

 

『対策は、ただ一つ。――悪魔獣が想像もできないような召喚術をぶつけるしかない』

 

 ――ビット。

 使用者の意志に呼応して浮遊して、ビームなどを打ち出す兵器だ。

 それが、戦場に向かって飛んでいく。

 召喚術士本体へ襲いかかろうとする悪魔獣の前に飛び込んできたそれは――

 

 

 悪魔獣の召喚防御をすり抜けて、悪魔獣の核を打ち抜き一撃で即死させた。

 

 

 #

 

 

 空から降臨した白球が戦局を一瞬で塗り替えていくのを見て、その要因たるセフトと通信を行っていた少女“サミア”は思わず息を呑む。

 この光景は、何度見ても圧巻としか言いようがない。

 悪魔獣との経験を積むために出撃した、下位から中位の腕前の術者しかいないとは言え。

 召喚術士部隊が一方的に不利を負っていた悪魔獣相手に、セフトの白球は蹂躙としか言えない結果を叩き出す。

 これを、圧巻と言わず何なのか。

 

 セフト・ハーモニスタ。

 ファミリィ王国の名門召喚術士一家、ハーモニスタ家の次男にして天才召喚術士。

 彼の操る召喚術は、常軌を逸していた。

 

 普通、召喚術で呼び出すものといえば、一般的には魔獣か攻撃術だ。

 対して彼の生み出すそれは、果たしてなんと呼べばいいのか。

 彼個人はそれを「兵器」と呼称していた。

 岩石を射出する大砲のようなものと考えれば、兵器という呼称は正しいのだろうが。

 この世界の人間にとって、それは兵器ですら生ぬるい。

 もっと恐ろしいなにかに見えてしまう。

 

 本来なら、セフトは呼び出すものの異常さ故に排斥されていただろう。

 だが、今はそうも言っていられない事情があった。

 数十年前から、突如として人類を襲い始めた災厄「悪魔獣」。

 それらは、どんどん人類の生存圏を脅かし。

 今や、人類は土地の大半を「悪魔獣」に奪われていた。

 そんな状況で、悪魔獣の最も厄介な点である召喚防御をすり抜ける召喚術を操る少年が現れた。

 

 まるでそれは、救世主のようだと誰かは言った。

 様々な事情でセフトの補佐役を命じ(おしつけ)られたサミアも、それは間違いではないと思う。

 少なくともセフトは、生まれてこの方ファミリィ王国を――人類を救い続けている。

 彼がいなければ、王国が陥落していたかもしれない危機は枚挙にいとまがない。

 

 だが同時に、彼こそが本当の「悪魔」なのではないかと怯える者もいる。

 それくらい彼の操る「兵器」は異質で、不気味なのだ。

 まるで、人を殺すためだけに作られたかのような恐ろしさがある。

 彼自身、それを解っているのか王国の指示には忠実だ。

 

 故にこそサミアは思う、その救いと異質の両立こそ「救世主」の証なのではないかと。

 世界を救うほどの力を持ちながら、その力故に人類から恐れられる。

 その点では、セフト・ハーモニスタは――本物の救世主だ。

 少なくとも、今の人類にとって。

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