その血は呪われている   作:海野波香

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 ギリシャ魔法省の窓からでもその闇の半球は視認することができた。

 ルシウスが到着した時点では魔法省の人々は表向き笑顔を見せていたが、それでも疲弊の色は隠せていなかった。今も上空をグリフィンライダー連隊が旋回している。ギリシャ魔法界最優と謳われる彼らですらこの闇は晴らせない。

 常であれば到着次第すぐに大臣室まで案内されるマルフォイ家が、今回は2日も待たされた。この遅れは痛かった。それだけギリシャ魔法省が苦戦しているという意味でもあった。

 

「いやあ、まさかご足労いただけるとは! 大したことではないのですよ、ただの魔法事故です」

「とはいえ、市民の不安を思えばなにか手を貸したいと思ってな。そう焦ることはない、アエリウス、友よ。時間が許す限り語り合おうではないか」

 

 アブラクサスがギリシャの魔法大臣アエリウス・コンモドゥスと抱擁を交わすのを、ルシウスは静かに眺めていた。

 一国の主ともあろうものが、車椅子の老人を揉み手で出迎えている。

 ルシウスの影響力が及ぶ一部の世界を除いて、政界では今もなおマルフォイ家と言えば父アブラクサスを指す。それはルシウスが若かった頃の()()()が悪さしているのもあるが、アブラクサスの存在がそれほどまでに大きいというのも確かだ。

 純血派の筆頭として、アブラクサスはマグル生まれ初の魔法大臣ノビー・リーチを退任に追い込んだ。リーチは決して無能ではなかったが、魔法大臣という魔法界の象徴にマグル生まれが座することを許せない者は少なくなかった。

 幼少のルシウスを驚かせたのは、リーチを退任させたことそれ自体ではない。

 呪いにかかったリーチが退任するに至るまで、誰もがアブラクサスを疑ったにも関わらず、結局は誰もアブラクサスを糾弾しなかったのだ。

 排斥する動きすら生じなかった。アブラクサスはいつものように好々爺然としていて、リーチが退任する当日は新聞に彼の退任を悔やむコメントまで寄せた。

 その力は単にマルフォイ家の人脈というだけでなく、アブラクサスが地道に培ってきた政治力なのだとルシウスは大人になってから思い知らされた。

 単に当主を継げば自分の力になるわけではないのだ、と。

 

「あの不気味な闇そのものに害がないことはわかりました。下手人は目眩ましのつもりで置いていったようです。あの中では足跡すら残りません。特許管理局の薬品研究スタッフが分析したところ、ペルーに伝わる煙幕の魔法薬に近い構成なのだとか」

「ほう、ペルー。では下手人は南米出身かね」

「今闇祓い本部がカステロブルーシューに問い合わせていますが、足取りが掴めるかは怪しいとのことです。なんせ、ほら、あの魔法学校は南アメリカ全土から生徒を迎え入れているでしょう? まあ、難しい話は後にしましょう! ワインがお好きでしたな、とっておきを開けますよ」

「それはありがたい。ルシウス、後を頼むぞ」

「……仰せのままに、父上」

 

 魔法大臣と一緒に奥に消えていったアブラクサスを見送って、ルシウスは小さく鼻を鳴らした。

 あの闇は十中八九ハーポに由来するものだ。つまり、古代ギリシャの魔術であることに間違いはない。それをギリシャ魔法界は南米に目を逸らそうとしている。

 仕方のないことではある。彼らギリシャ魔法族はハーポがもたらした破滅とその後続いた魔法への忌避によって伝統というものを失伝してしまった。今では古代から血を継承した純粋なギリシャ魔法族などどこにも存在しないとすら言われている。

 とはいえども、自分たちの過去と向き合うことすらできないギリシャ魔法族のあり方はルシウスから見れば哀れで、滑稽だった。

 

「あのー……よろしければ、ゲストルームにご案内しますが」

 

 若い補佐官の情けない声に、ルシウスは内心で眉間に皺を寄せた。

 サイズの合っていないローブ。傾いた帽子。どうやら正規の補佐官ではないようだ。おどおどした表情と彷徨う視線はこの部屋にいることそのものに慣れていないことを示している。

 それでいて、靴は履き古された上等な革靴を履いている。丁寧に直されてはいるが、薄っすらと何かの噛み跡と融けた跡が靴の側面に残っている。落ち着かない様子で動く指には杖だこが見えた。

 どうやら魔法大臣はこの有事にあたって補佐官を護衛に置き換えたらしい。

 

「いや、結構。失礼だが、大臣室に転属する以前は魔法生物管理部に?」

「え? ああ、はい、そうです。その……何か失礼がありましたかね。なんせ現場上がりなもんで、こういうののお作法はさっぱりで」

「とんでもない、君は職責を全うしている。立派なことだ。慣れない仕事でお疲れのことでしょう」

「そうですかね、へへ、まあ」

 

 相好を崩した補佐官は、少し安心したように襟足を掻いた。

 

「安心しましたよ。マルフォイ家の皆さんって言やあ、ギリシャ独立を表に裏に支援してくださった国賓も国賓じゃないですか。自分みたいな紛いもんがお相手したら怒られるんじゃないかとばかり」

「誰もが果たすべき役割を果たしている場において、当家の役割はそれを邪魔することではないと私は考えていましてな。君、名前は」

「ニコス・バルツァです」

「バルツァか。ロドス島管理委員会のタキ・バルツァ委員長とはご親戚かな?」

「タキおじさんのことをご存知で! いやあ、光栄です。俺はタキおじさんに育てられたようなもんなんですよ。あの島にはいろいろな魔法生物がいるでしょう? 聖ヨハネ騎士団の連中に随分退治されっちまいましたが、それでも最近は豊かな生態系ってやつが戻ってきてて――」

 

 どうやらバルツァは魔法生物を心から愛しているようだ。

 そんな彼には申し訳のない話だが、ルシウスは魔法生物になど塵ほども興味はなかった。不潔で知性の欠片もない獣がどれだけ死のうと知ったことではない。

 ルシウスが関心を向けているのは、彼が帰りたくてたまらないであろう古巣の魔法生物管理部だ。ギリシャにおいて魔法生物管理部という部署は決して侮ることのできないポジションにあった。

 

「確か、ギリシャ魔法界では伝統的に魔法生物管理部が有事の実行力を持つのでしたな」

「え? ええ、そうです。闇祓いもいるにはいますがね。いいやつらではありますが、実力としちゃはっきりいって寄せ集めですよ。うちのグリフィンライダー連隊に敵うやつはひとりもいません」

「それはそれは。ぜひ見学したいものだ。確か今の部長はニアルコス氏でしたな? ニアルコス家が代々営んでらっしゃる海馬レースには息子が大層興味を持っていましてな。今年の夏には見学できなかったものだから、土産話のひとつも持ち帰らないと拗ねられてしまう」

「おお、そうでしたか! 今の時間なら部長は席にいると思いますよ。ご案内しますか? 間違いなく歓迎してくれますよ!」

 

 ルシウスが微笑むと、バルツァは浮足立った様子で大臣執務室の扉を開けた。

 いつになく廊下が騒がしいが、それでもルシウスの姿を認めると誰もが道を譲った。たとえ有事にあって苛立っていても礼儀は忘れない、その点においてギリシャ魔法省の官僚は教育が行き届いていた。あるいはマルフォイ家の名にそこまでの価値があるということか。

 ほのかに芽生えた暗い満足感をルシウスは胸中に押し留め、戒めた。今はこのようなところで愉悦に浸っている場合ではない。今の自分にはもっと大きな目的があるのだから。

 魔法生物管理部の大きな黒い扉を開くと、ルシウスの耳に怒鳴り声が飛び込んだ。

 

「――どうして認めてくれないんですか、部長! 7番金庫は空だった、つまりハーポが解き放たれたってことです、そうでしょう? そしてやつはイギリスに向かってる! いつまでも私達をアテナイの空にとどめておく理由はないはずです!」

 

 見覚えのある魔女だった。

 騎乗用の革のコートを着たまま、今にでも杖を抜きそうなほど激昂しているのは、ダフネとアステリアをグリフィンに乗せていたグリフィンライダー連隊のストラトスだ。

 そして、それに相対して禿げ頭に冷や汗を伝わせているのが、ギリシャ魔法省魔法生物管理部の部長であるニアルコスだった。お世辞にも仕事ができるタイプではないが、実家は海馬の養殖とレースを営む実業家。出世街道に乗れるだけのガリオン金貨を用意できたというわけだ。

 

「ストラトス……少し頭を冷やしたまえ。仮に7番金庫に格納されていた呪いの道具が外に運び出されたとして、下手人がギリシャを出たと決まったわけではあるまい」

「出たとわかってからでは遅いんです!」

「では、君は下手人が金庫を出てからの足跡を見つけたのかね?」

「それは……」

 

 ルシウスは一目で状況を理解した。

 報告書によれば、7番金庫の崩壊とそこに収まっていた金のカラスの像を見つけたのはグリフィンライダー連隊の隊員だったという。おそらくはストラトスがハーポの脱獄を知らせたのだろう。

 それにもかかわらず、ギリシャ魔法省上層部はこの状況を魔法事故として片付けようとしている。

 彼らは7番金庫の腐ったハーポを闇の魔法道具だと認識している。誰かがその魔法道具を持ち出し、この災害を招いた。だからその下手人を確保して魔法道具を回収すればいい。それが彼らのロジックだ。

 根拠もある。数千年もの間、腐ったハーポは金庫の中で沈黙していた。人間なのだとすれば正気を保つことはできないし、人間だった魔法道具なのだとすれば自力で脱出するはずがない。外的な要因が影響しているのだ。そして、彼らはその外的な要因こそが問題だと考えている。

 あの恐ろしさを知っているルシウスからすればギリシャ魔法省のスタンスは愚かそのものだ。

 そして、ストラトスはそのスタンスに正面から喧嘩を売っているというわけだ。女の身で大した度胸だった。

 ルシウスとしてはストラトスのようなタイプは馬鹿にこそすれど、嫌いではなかった。自分の信念を貫く人間にはそれ特有の眩しさがある。ルシウスや、彼女を丸め込もうとしているニアルコスにはない輝きだ。

 しかし、その小さな憧れをあからさまに表に出す気はなかった。

 今ストラトスに加担すれば疑われるのはルシウスとダフネだ。今の時代にハーポの恐ろしさを実感して生きている魔術師などいるはずがないのだから。

 ルシウスが小さく咳払いすると、魔法生物管理部のニアルコス部長が立ち上がった。

 

「これは……ミスター・マルフォイ! お越しとは気づかず……とんだ失礼を。ストラトス、お茶を用意してくれたまえ。お茶菓子のお好みはございましたかな?」

「お気遣いなく。今最も多忙であろう部署でお茶をいただくのはそれこそ失礼というものでしょう」

「とんでもない! マルフォイ家の方にお越しいただいたとなれば部下の士気も上がりますよ。バルツァ、案内ご苦労だったな。大臣のところに戻っていいぞ」

「は、失礼します!」

 

 敬礼の勢いで傾いた帽子をなんとか直してから、バルツァは大臣室のほうに向かって今来た廊下を駆けていった。

 ストラトスは今もニアルコスを睨んでいたが、それでもルシウスの前で上司を罵倒するほど愚かではないようだった。ニアルコスは絹のハンカチで額を拭きながら立ち上がった。

 

「話は終わりだ、ストラトス。お茶と茶菓子だ、わかったな?」

「部長がご自分でご用意されてはいかがですか」

「調子に乗るなストラトス、お前を隊長に任命したのは一時的なことであるということを忘れるなよ。さ、ミスター・マルフォイ、こちらへ!」

「寛大な対応に感謝を。……ミス・ストラトス、よければ同席してくれないかね? 君にはグリーングラス姉妹の面倒を見てもらった恩がある」

 

 一瞬、ストラトスはルシウスに顰め面を向けた。コンパニオン扱いされたと感じたのだろう。

 しかし、続く言葉にストラトスは目を見開いた。

 

「この事態を早急に解決するためには、危機感を共有できる人間でないと話にならん。違うかね?」

「それは、つまり」

「ギリシャ魔法界はもう少し腐ったハーポへの警戒心を強めたほうがいいと私は考えている。君も同感だと思ったが、思い過ごしだったかな?」

「……失礼しました。ご一緒させていただきます」

 

 ルシウスが頷くと、ストラトスは先んじてニアルコスが開いた扉の先へと入っていった。

 

「おい、何のつもりだストラトス!」

「私が頼んだのです、ニアルコス部長。状況を正確に理解している人間は多いに越したことはない、そうではないかな?」

「一体何を……」

「我々イギリス魔法界はギリシャ魔法界が解き放たれた脅威に向き合っていないことを憂慮している。……そう、極めて憂慮している。ましてや、その脅威がイギリスに向かっているとなればなおのことだ」

 

 豪奢な応接室で赤いビロードのソファに腰掛けながら、脳裏によぎったのはダフネのことだ。

 ここ数日、ダフネへの疑念が湧き上がって離れない。いくつかの魔法と魔法薬を自分に試した後、それでも疑念が消えないことを確認したルシウスはそれが呪いによるものであると判断した。そうでなければ、今更自分がダフネを疑う理由がない。

 闇には慣れている。闇が膨らませてくる湿った疑念と不安も、ルシウスには馴染み深い友人のようなものだ。狼狽えることはなかった。

 それに、この手の心を操る呪いについてはイギリスで一番といっていいほど使い慣れている自負がある。自らが闇に染まっているからこそ、ルシウスは自分が不気味な闇に包まれていることを容易く自覚できた。

 この程度はルシウスにとって躓く小石にもならない。

 しかし、状況はダフネにとって不利な風向きになりつつある。

 必要なのは状況を変えることだ。ダフネとは関係のない形で腐ったハーポの事件を終結させなくてはならない。

 ルシウスはダフネに覇道を進ませるつもりでいた。ダフネの覇道にそのような疑念は不要だ。彼女はただ堂々と、手を汚すことなく、前を向いて進んでいればいいのだ。

 だから、このギリシャで小役人を捻り潰すくらいはルシウスにとってどうということのない仕事だった。

 

「し、しかしミスター・マルフォイ、例の金庫に格納されていたのは古代ギリシャの魔法道具がひとつだそうではないですか。目録にもそうある! 犯人がイギリスに向かったなどと、どうしてわかりましょう!」

「そう呑気なことを言っていられるのも今のうちですな。私はその魔法道具を生み出す魔法に長けた人物をひとり知っている」

「どのような効果なのですか、ミスター・マルフォイ」

「余計な口を挟むな、ストラトス!」

 

 ルシウスは小さく首を傾げて、そして答えた。

 

「本店の目録に転記されていた古い記録が確かなら、保管されていたのは分霊箱。術者を不死にする、古い闇の魔法だ」

 

 ここでは全てを正直に話すべきではないだろう。

 幸いにしてルシウスは今、グリンゴットと同じ旗の下にいる。彼がダフネをギリシャ支店に案内したことを考えるのであれば、本店の資料に腐ったハーポについての記録が残っていることは間違いないだろう。名前を借りるくらいは構うまい。

 

「不死……? では、まさか」

「はは、ミスター・マルフォイ、その冗談は面白いですな。まさか腐ったハーポが生きているなどと、誰もそんなことは思わんでしょう!」

 

 笑い声を上げたニアルコスは、しかし、ルシウスが無言で微笑んでいると次第にその禿げ上がった頭に汗を伝わせた。

 

「……まさか、まさか、まさか。ご冗談でしょう?」

「さて。イギリスではその術者をどう殺すかで頭を悩ませていましてな。ギリシャ魔法界が同じ悪夢にうなされないことを祈っておきましょう」

 

 そう、脱獄したのはハーポの分霊箱だ。

 ()()()()()()

 つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 もちろん、ヴォルデモートがそうであるように、腐ったハーポもまたまともな状態では生存していないだろう。身動きすら取れない、虫けら以下の存在になっていることすらありうる。

 しかし、あの分霊箱が本体と合流すれば、分割された魂は合流し、力はさらに増すのではないか?

 

「聞いた話では、グリフィンライダー連隊の前隊長はグリンゴッツギリシャ支店で金に変えられてしまったとか。不幸なことだ。我々は心配しているのですよ、ニアルコス部長。あなたがたに任せたままで、本当に事態は終息を迎えるのか」

「なっ……」

「ええ、あなたがたにも面子はある。それは承知しています。コンモドゥス大臣も他国の介入は望ましくないとお考えでしょう。しかし、(マルフォイ家)であればその限りではない……違いますかな?」

 

 ルシウスの態度から本気さを感じ取ったのか、ニアルコスは青ざめていた。

 半ば金で部長席を買い取ったような男だ、このような有事に対応するだけの覚悟は持ち合わせていなかっただろう。哀れな話ではある。しかし、一度舞台に上がったからには踊るのが役者の仕事だ。

 ストラトスが前のめりになって口を開いた。

 

「ひとつ聞かせてください、ミスター・マルフォイ。……腐ったハーポは一体何の目的でダフネちゃんを――」

 

 その時、扉がノックされた。

 

「なんだ! 今大事なお客様を――」

「ミスター・マルフォイにお客様です!」

「私に?」

 

 扉が開かれ、その向こうには表情を強張らせた男が立っていた。

 燃えるような長い赤毛に高身長、そばかすの浮いた顔は実力と実績に溢れた若い男特有の自信に満ちていた。それでも彼の自信は状況をひとりで打破できるという思い上がりには繋がっていないようで、どこかに可能性を探るような光があった。

 問わずともわかる。ウィーズリー家の子だ。

 彼はルシウスの姿を認めるとより一層表情を強張らせ、しかしなんとか薄い笑顔を作って手を差し出した。

 

「グリンゴッツ魔法銀行エジプト支店配属、呪い破りのビル・ウィーズリーです。グリンゴット総裁の指示で、これより……あなたの指揮下に入ります」

 

 あらゆる舌打ちと地団駄と悪態をこらえながら、ルシウスはビルの手を握り返した。

 よりによってこのタイミングでグリンゴットが無視できない貸しを作ってきた。これはつまり、彼はダフネを裏切らないという表明でもあり、同時に派閥内でルシウスの頭を押さえつけようという威圧でもある。

 しかし、頼りがいのある実働部隊を求めていたのは確かだ。

 よりによってウィーズリーなどとストレスの溜まる名前を聞かされて、ルシウスのはらわたは煮えくり返りそうだった。それでも、あのグリンゴットが寄越した人材が無能であるとは思えない。

 

「ああ、待っていた。期待しても構わないかね……ミスター・ウィーズリー」

「僕の仕事に関してなら存分に、ミスター・マルフォイ」

 

 半ば挑発するような笑みを浮かべる若者の手を強く握って、ルシウスは微笑んだ。

 戦いの時が迫っている。

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