犴と鮫   作:鷲谷ヒメリ

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切り裂かれても
焼き尽くされても
剥ぎ取られても
手折れぬものが
そこにはあった


豹の洛陽

 水底から水面へ浮き上がるように、眠りの中にあった意識が現へと浮上する。青とオレンジイエローのヘテロクロミアが、持ち上げられた瞼の下から姿を見せた。

「……んがっ」

 喉に詰まっていた息を吐き出して、破面(アランカル)———アパッチは目を覚ます。床に落ちたまま寝ていたせいか、身体が変に固まってしまっているらしい。ゆっくり時間をかけて肩を回すと、肉の内側からバキバキと音が鳴ったのでアパッチは苦い顔をして呻いた。

「いでぇ……」

 ガシガシと髪を掻く。改めて周囲を見渡すと、その惨状に思わず眩暈がした。彼方此方に散乱した普段使いしている必要数以上の枕に、ベッドから床に滑り落ちたシーツと掛け布団。行儀の悪く床で雑魚寝をする同胞達。その場の勢いとノリで、殆ど乱闘に近いルール無用の枕投げをした結果である。

「……叩き起こすか」

 自嘲と諦めの混じった顔でアパッチは立ち眩みにならないようゆっくり立ち上がった。まずはこの面子の中では一番寝起きのいい健康優良児から揺すり起こすことにする。

「アーメーミートーさーまー。時間ですよー、起きてくーださい」

 アパッチは何故か飲食用のテーブルの脚の間に頭を突っ込んだまま寝ているアメミトの身体を揺らし、起床を促した。アメミトは小さく唸って寝返るように身体を転がし、額をテーブルの脚にぶつけて痛みに目を覚ます。痛む額に手を添えて、アメミトは身体を縮こめた。結構いい音がしたので致し方無し。

「痛い……」

「でしょうね。そうなるからいつもくっついて寝てるんですよ」

「言ってくれよ……」

「言ってもどうにもならないって前にも言ったじゃないですか」

 ほら、さっさと寝癖直して髪まとめてきてください、とアパッチにせっつかれたアメミトは、適当な返事を返して化粧台へ向かった。その間に、アパッチはミラ・ローズとスンスンを軽く叩いて起こす。すんなり起きてくれた二人に身支度を促して、最後に見た目の印象とは裏腹に、寝汚い上に低血圧を抱えた難敵(ラスボス)を起こしに向かった。

「ハリベル様、起きてください。時間ですよ」

 何をどうしたらそうなるのか、寝返りで部屋の扉の前まで転がっていた第3十刃(トレス・エスパーダ)のハリベルの背中を容赦無く蹴っ飛ばす。仮にも組織内における上官に向かってすることではないが、ここまでやらないと起きてくれないハリベルにも問題はあるだろ、とアパッチは思っていた。

 数回かけて蹴り起こされたハリベルは濁った声で呻いて、蹴りを喰らった腰と鈍痛のする眉間をそれぞれ抑えてのろのろと起き上がる。アパッチはハリベルの肩を軽く叩いて、化粧台を指差した。一拍遅れて眠そうにしているハリベルの顔も、指先の動きに釣られて化粧台へ向けられる。

「紅茶今淹れますから、ちゃっちゃと髪梳かしちゃってくださいね」

「ん〜……」

 ぼんやりとした返事をして、よたよたと覚束ない足取りのハリベルがミラ・ローズとスンスンと入れ替わりで化粧台の椅子に座った。すかさずアメミトがスッとその背後に立ち、ハリベルから当たり前のようにヘアブラシを受け取って髪を梳かし始める。

「なんかすごい絡まってんだけど」

「ぅん……」

「うんじゃなくてさ」

 未だ覚醒し切らず機嫌の悪そうなハリベルの金髪をいつも通り三つにまとめ、アメミトは身体ごと自分の方へ向かせた。目尻を解すようにくるくる回すようにして揉むと、できたぞ、と告げて額に口付ける。

「よそでやってくれません?」

「紅茶甘くなりそう」

「っとにこのバカップルはさあ……」

 中級大虚(アジューカス)三人の反応はこんなもの。誰がバカップルだよ、というアメミトの抗議は丸ごと無視して、アパッチが紅茶用意できましたよ、とハリベルをテーブルに呼んだ。

「……あちっ」

「火傷しないでくださいねー」

 眉間に皺を寄せるハリベルは少しずつ冷ましながら紅茶を啜る。その様子を見守っていたアパッチは他の三人も手招きして、いつも通りの朝のティータイムが始まった。

 が、その穏やかな空気を破壊するようにドアの向こうから、雪崩のような誰かの足音が響いてくる。アメミトはなんだなんだ、と燦光する翠玉(エメラルド)を鋭く細めた。

「ハリベル!アメミト!やべーぞグリムジョー達がいない!!」

 突き破る勢いでドアを開けたのは、第1十刃(プリメーラ・エスパーダ)のコヨーテ・スターク。全速力で走ってきたのか肩で息をするスタークに、アメミトとハリベルは後で片付けるつもりだった足元で転がる枕を拾って。

「女の部屋にノックも無しに入ってくんなノンデリ!!」

「寝起きに大声出すな溺死させるぞ」

 枕が破れないギリギリのパワーで、スタークの顔面目掛けて投げつけた。可哀想。

 

「つまり、案の定グリムジョーが従属官(フラシオン)どもを引き連れて現世へあのオレンジ頭の死神代行を殺しに行った、と」

「そうなるだろうな」

「ジェットストリーム大馬鹿野郎が……」

 枕の直撃二つ分をまともに喰らって、鼻っ柱を赤くするスタークの肯定にハリベルは腕と足を組んで溜め息を吐く。スタークもアパッチが客人用にと用意した紅茶を口にして、本当にな、と同意を示した。

「藍染はなんか言ってるか?」

 アメミトが確認する。スタークは一応聞いてきた、と前置きして。

「ウルキオラに回収に行かせる気でいるみたいだぜ。全く、面倒なことしてくれたもんだよ……」

「別にアンタが行くわけじゃないんだからいいだろそこは。後で出迎えくらいはしてやるか」

 アメミトがカップに残った紅茶を一気に飲み干した。流石にグリムジョーとて十刃(エスパーダ)の一人。死にはしないだろうが代わりに、戻ったら主に東仙辺りに独断専行を咎められるだろう。アメミトとしては、グリムジョーの粗暴ではあるが破面基準で比較的素直で義理を通す性質は嫌いではないので、メンタルケアくらいしてやるのも吝かではない。

 一先ず紅茶を飲み切って本調子を取り戻したハリベルに一言断りを入れ、アメミトはグリムジョーとウルキオラを出迎えるべく第三の宮から移動する。確実に藍染のいる場所へ連れて行かれるであろうことを考えると、玉座の間に続く廊下で待ち構えるのがベターか。スタークも紅茶を飲み切ると要件はそれだけだと言って、途中まで一緒に歩いてから自分の宮へ帰って行った。

 廊下の天井を支える無駄に太い柱に凭れかかって、アメミトはグリムジョー達を待つ。一言目はなんと声かけてやろうか、と考えてるうち暫くして、アメミトの探査回路(ペスキス)が目当ての霊圧を捉えた。

「っと……おーい、グリムジョ……っ!?」

 いつもと変わらぬ調子で声をかけようとしたアメミトは、視界が捉えた光景に目を見張る。平時と変わらぬ無表情の第4十刃(クアトロ・エスパーダ)のウルキオラの一歩後ろ、怒りと悔しさと不満とがないまぜになった顔の第6十刃(セスタ・エスパーダ)グリムジョー。グリムジョーの胸には、真新しい傷が出来ていた。

(グリムジョーの鋼皮(イエロ)に傷を付けたのか?あの弱っちそうなオレンジ頭が?)

 グリムジョーの独断専行のおそらくの狙いを考えれば、その推測に行き着くのは自然なこと。しかし、アメミトは到底信じられなかった。仮にも十刃の一人であるグリムジョーに、ウルキオラをして殺す価値無しと断定された存在が、である。

「……んだよ」

 自身を凝視する翠玉に気付いたグリムジョーが覇気の無い睨みを返した。その時点でアメミトは、これはただ事ではなくなりそうだと悟る。これには流石にアメミトも、グリムジョーにかける最初の一言を吟味した。

「あのオレンジ頭、隠し球でも持っていのか」

「……ああ。黒い霊圧を斬撃にして飛ばしてきやがったぜ」

「なにそれ怖い」

 本当に自分たちが知らないことしてきてた。つまり、ウルキオラの時は実際に本調子ではなかった可能性があるのか。

「従属官どもは全滅だ。シャウロンまでやられた辺り、隊長格がゾロゾロと現世に構えてやがったらしい」

「向こうもガチじゃん。それはしょうがないわ。警戒するのは下駄帽子と黒い女の二人だけだと思って乗り込んだら、他にも主力級が雁首揃えて待ち伏せてたってことだろう?」

「たまたま丁度、奴らが現世に来たタイミングにカチ合ったようだがな」

「ついてないな。シィアンが対戦相手の時のコヨーテ並みについてない」

「例えが判り辛えよ」

 グリムジョーが呆れ果てた溜め息を吐いた。身内ネタは程々にしておけとアメミトにグリムジョーの軽い手刀が落とされる。半ば馬鹿馬鹿しいやり取りをしてるうち、すっかりモヤついていたものが明後日の方向へ散らされ、毒気が抜かれた。コイツこれで最古の最上級大虚(ヴァストローデ)なんだよな、とグリムジョーは頭の片隅でひっそり考える。

「おい、無駄話をしているな」

「……チッ、わぁってるよ」

 ジャッカルと豹のじゃれ合いに待ったをかけ、沈黙していたウルキオラが急かした。グリムジョーは舌打ちして、じゃあなとアメミトから離れる。アメミトはその背中が扉の向こうに行く前に両手を拡声器の形にして。

「藍染に怒られたら私が慰めてやるから安心しろよー。ギュッてしてやってもいいからなー」

「お前それに甘えたら確実にハリベルに殺されるやつだろ俺が!!!!」

 流石に一旦足を止めて振り返ったグリムジョーが、全力の断りを入れた。いくらなんでも痴情の縺れで死ぬのはプライド云々を差し引いても勘弁願いたい。

 二人の姿が扉の向こうに消えたのを認めたアメミトは、再び柱に背中を預けて目を閉じる。少しすると並の虚よりも多少は秀でた聴覚が、肉と骨が断たれる音とグリムジョーの悲鳴、それから何かが燃えて灰になる音を捉えた。燦光する翠玉を片方開いて、横目に扉を見据える。

 そうしないうちに、扉が開き中からグリムジョーがふらつく足取りで出てきた。腰の数字と、左腕を喪失した状態で。アメミトはそれを成したのが誰であるのかをすぐに悟った。

「……東仙か。過激だな」

 残酷さすらある処罰に、アメミトは思わず眉を顰める。単なる(ホロウ)の本能に任せたものであればともかく、一応はグリムジョーなりの理論でもって行われた独断専行であるのなら、従属官の全滅という結果こそ残念ではあるものの斬魄刀を取り上げた上での謹慎処分程度でも十分ではないかとアメミトは考える。東仙からすればアメミトのそんな思考は甘いと言わざるを得ないだろうが、アメミトはアメミトでわざわざ処罰という形式で稀少な戦力を落とす東仙が厳しすぎるのだとも思っているので、どっちもどっちではあった。

 アメミトは努めて平常通りに見えるよう振舞って、グリムジョーにちょっかいをかける風に話しかける。失われた腕を押さえて眉間に皺を寄せ、俯いていたグリムジョーは見下げ果てた目でアメミトの顔を見た。

「うちで飲んでいく?なんならバラガンとこから酒くすねてこようか?」

「命知らずかテメェは。いらねえ」

「遠慮するなよ。古来から傷心にはヤケ酒が効くというものだからな。悲嘆も悔恨も自責も酒と一緒に腹の中に流し込んで、クソと一緒に便所に流してしまえ」

「聞いたことねえし女がそんな堂々と便所とかいうんじゃねえよ。だからいらねえって言ってんだろ」

「なんでだよ。今なら美女四人の御酌もセットで付いてくるぞ」

「お前は慰めるフリして遠回しに俺を殺そうとしてるのか?」

「なんでそうなる!」

 とにかくいらないから、気を遣わなくていいから、といった旨のことを荒っぽい語調で念押して、グリムジョーは隻腕になったことで損なった平衡感覚に苦戦しながら立ち去る。

「……ったく、アイツと喋ってると凹んでる暇も寄越してくれねえのかよ」

 呆れ果てた声ではあったが、数字を剥奪された直後にしてはグリムジョーの表情はそこまで暗くはなかった。

 

 ハリベルがベッドに腰掛けて知恵の輪に苦戦していると、ただいまー、とアメミトが第三の宮に帰還した。金髪を掻き上げて目を伏せ、溜め息を吐くその様子にハリベルは手を止めてどうかしたかと問いかける。

「別に大したことじゃないんだがな。グリムジョーの奴慰め甲斐がないったら……」

「あはは……まあ、盛大に跳ねっ返りなところがあるからな。アイツは」

「数字取られた上に腕まで消し飛ばされてるんだから、大人しくヤケ酒に甘えとけって言ったんだがなあ……」

 アメミトのその言葉に、ハリベルは流石に目を見開いた。どうやらグリムジョーは独断専行と従属官の損失を加味して、かなり厳しく罰せられたらしいと察する。

「思ってたよりだいぶ悲惨なことになってるな……今度ちょっと優しくしよう……」

「そうしてやって」

 アメミトは当然のようにハリベルの隣に、殆ど身体をくっつけた状態で座った。ハリベルは知恵の輪を解くのを諦めて、アパッチとオセロをしているスンスンに投げ渡す。ちょっと、という抗議の声を無視してアメミトの頭を自身の肩に寄り掛からせた。またイチャついてるよこの人たち、とアパッチが呆れたような顔で頬杖をつく。

 ぼんやりとしたアメミトの手がハリベルの手に重ねられた。ハリベルの手の指と指の間を手持ち無沙汰になぞって、ボーッと遊ぶアメミトの金髪を、ハリベルは空いている方の手で梳く。この紅茶急に甘くなったな、とスンスンは表情の抜け落ちたまま目を伏せた。オセロの盤面は黒が優勢。白を握るスンスンは難しい顔をして、形勢逆転の一手を脳内で幾つもシミュレーションした。

 場の空気だけで甘ったるくなった紅茶を飲んでいたミラ・ローズが、思い出したように立ち上がる。カタン、とアパッチの黒石を自身の白石にひっくり返したスンスンがそれに気付き、声をかけた。

「あれ、ミラ・ローズどこ行きますの?」

 訊ねられたミラ・ローズは軽く伸びをして、どう答えるべきかを一瞬考えてから答える。

「ん、あー。ガキどもと遊んでくる」

「ああ、行ってらっしゃい」

 そういうことなら、と"ガキども"の詳細を知っているスンスンもそれ以上は訊かず、第三の宮を出ていくミラ・ローズを見送った。オセロの盤面は、右半分の角をアパッチに取られた状態だった。

「あ、そういえばアメミトが戻ってくる少し前なんだが」

「ん、どしたの」

 どんどん脱力して、終いにハリベルに膝枕される体勢になったアメミトはハリベルの顔を見上げる。ハリベルはアメミトの金髪を手櫛で梳きながら告げた。

「なんか、ザエルアポロが急に来て。藍染が新たに破面を作るらしいから見に来たければ来るといい、と。どうも他の十刃にも触れ回っているらしい」

「……わざわざ虚の破面化を通達するようなことは今までなかった……となると、余程その新しく破面化する虚は特別な奴なのか?」

「かもな」

 いや起き上がらないのかよ、という指摘をアパッチは紅茶と一緒に飲み込んだ。

 

 虚夜宮(ラスノーチェス)を出たミラ・ローズはいつものように、ピカロたちとの遊び場である石英の木の広場に来ていた。探査回路で周囲をざっくりと探って、大きめの声で呼びかける。

「おーい、ピカロー。遊びに来たぞー……ん?」

 視界の向こう側に、砂煙が立ち昇りながら何かが駆けているのを見つけた。探査回路を研ぎ澄ませれば、それが誰なのかすぐに悟れる。追われているのが誰なのか察したミラ・ローズは思わず苦笑して、見学に徹しているピカロの一人に歩み寄った。

「よっ、名優(テアトロ)。先に遊んでたんだな」

「あ、ミラ・ローズ!遅いよー」

 ふわふわ揺れるシルバーの巻き毛の少女の姿のピカロ———ピカロ・名優(テアトロ)はミラ・ローズの方を振り返ると、パッと表情を明るくして腰の辺りに抱きつく。ミラ・ローズは抱きついてきた名優(テアトロ)を受け止めて柔らかく笑うと、その銀髪を乱さないよう丁寧に撫でる。

「悪い悪い。追いかけてるのは捕物師(コレドー)か?それとも追跡者(ペルセギア)?」

「両方だよー」

 そんな話をしているうちに、逃げていた者が名優(テアトロ)との会話に出てきた捕物師(コレドー)追跡者(ペルセギア)に捕まったらしい。ドォンッ、とおおよそ追いかけっこで生じるものとは思えない音がして、二人分の悲鳴が聞こえてきた。

 名優(テアトロ)を抱き上げて、ミラ・ローズは悲鳴が聞こえて来た方へ歩いて行く。既に大勢のピカロが集まって、そのうちの何人かは捕まった誰かに襲い掛かるかのように群がっていた。

「あ!ミラ・ローズ!こっちこっちー!」

 三つ編みを二つ結えた黒髪の少女ピカロ———ピカロ・先導者(ギアー)がミラ・ローズに向かって大きく手を振る。ミラ・ローズは名優(テアトロ)をそっと砂地に降ろして、周囲を囲むピカロたちを宥めつつ引き倒されたままの姿勢で群がられている者に目を向けた。

「ちょ、ピカロ!待て待て待て引っ張るnあああ!!!!」

「待つでやんす!!やめるでやんすーー!!!!」

 一人は自慢の金髪を好き放題引っ張られ、もう一人は次々に背中に乗っかってくるピカロの重さに待ったをかける。とはいえ、ピカロは子供そのものの精神構造をした破面である。やめろと言われてやめるわけもなく、却って揉みくちゃにされる結果に終わった。

「……大丈夫か?」

 暫く弄ばれる二人を見守って、ピカロたちが満足してからミラ・ローズは屈んで安否を確かめる。金髪の方が軽く痙攣しながら右手をじわじわと掲げた。

「な、なんとか……」

「そうか……なんかごめんな」

 苦笑して、ミラ・ローズは二人の上半身を引っ張り上げて起こす。疲れ果てた二人は常夜の空を仰いで中年オヤジのような声を吐き出した。最も彼らも虚なので、実際の年齢は中年どころの話ではないのだが。

「あ!ミラ・ローズ様!こんにちわっス!」

 ピカロの集団をかき分けて、一際目立つ燻んだ緑のローブを着た破面の少女が駆け寄って来た。ミラ・ローズは屈んだまま駆けてくる少女に向かって両手を広げる。

 腕の中に飛び込んできた少女を、しっかりと抱き留めて、ミラ・ローズは頭蓋骨のようなヒビ割れた仮面を撫でた。

「おー、ネル。お前も元気そうで何よりだよ。ピカロと遊んでくれてありがとな。ペッシェ、ドンドチャッカ」

 ミラ・ローズに撫でられて、ヒビ割れた仮面を被った破面の少女———ネル・トゥは御満悦そうに蕩けて笑った。




この最上級大虚共すぐイチャつくんですけど
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