欲深きは己を腐らせ
驕れしは己を堕落させ
侮りしは己を澱ませ
怒れしは己を喪わせ
貪食せしは己を獣とし
愛するは罪悪である
戦場は変わって、
死神代行黒崎一護と、
一護の黒刀が横薙ぎに振るわれ、それをウルキオラは膝を曲げて屈んで躱す。空振った斬撃はウルキオラの背後の柱を容易く両断した。
反撃に放たれたウルキオラの、横殴りの豪雨の様な連続の突きに、一護は全て反応する。
大丈夫。鋒は見えている。その速さに反応出来る。剣の有無で戦い方は変わらない。変わるのはリーチだけ。
一護は意識を研ぎ澄ます。知覚の全てを眼に回して、ウルキオラの剣を視る。
一瞬、突きの照準が僅かに狂ったのを目敏く捉えた一護の左手は、殆ど脊髄反射でウルキオラの斬魄刀を持つ右手の手首を掴んでいた。
ウルキオラが、まさか人間に自分の動きが見切られ、あまつさえ捕えられるとは思っていなかったのか、身体を強張らせる。
そこに、一護の黒刀が逆袈裟に振り抜かれた。
ウルキオラが数歩、後ろに退がる。白い死覇装の合わせ目が斬り裂かれ、左胸の数字が露出した。胸に空いた孔の下には、一護の一閃で皮膚が裂け、僅かに血が滲んでいる。
一護はそれを見て、ほんの少しの落胆を覚えた。
「……殆ど斬れてねえ……
嘆息する一護とは対照的に、ウルキオラは裂けた皮膚に左手の指先を近付けると、出血に伴う熱の発生に戸惑う様に目線を迷わせる。
皮一枚とはいえ。斬られたのか、自分が。ウルキオラは無意識に眉を顰めた。
「けど、どうも以前よりてめえの動きは、
「……何だと?」
「……以前に戦った時のてめえは、動きが全く読めなかった。何をしようとして、何に反応して、どれだけ速いのか……どれもこれもちっとも読み取れなかった……まるで機械か石像と戦ってるみたいに無機質だった……」
一護は一度言葉を切って、挑発するように口元に弧を描く。
「……それが読み取れるようになったのは、俺が虚に近付いたのか……それとも、てめえが人間に近付いたのかも知れねえな」
一護が言い切ると同時、ウルキオラの足元の床が割れた。ウルキオラが力任せに斬魄刀を突き立てたからだ。
「……俺が……お前等人間に近付いただと……?」
そんな訳が無い。人間のような脆弱さは、
「……成程。この程度のレベルについて来れるようになった事が、余程気分が良いらしいな」
孔の内側が騒めく。
ウルキオラから湧き出でるそれが嫌悪だと、一護は察知した。次の瞬間、ウルキオラは一瞬にして一護の眼前に迫り、その頭上から斬魄刀を振り下ろす。
一護は半秒遅れて黒刀でそれを受け流し、宙返りをしながら衝撃に巻き込まれないよう退避した。そこに、
だが、それは無常にも空振りした。
間に合わないか。迫るウルキオラの剣のダメージを少しでも抑えようと、一護は上体を前に倒そうとする。
そこに、半透明の霊子の障壁が割り込んだ。織姫の三天結盾である。
ウルキオラの力が余程強かったのか、それとも咄嗟の
「……何をしている」
「…………え……?」
問われた織姫は、ただ困惑した声を喉から溢す。
「何故助けたと、訊いているんだ」
「何故って……そんなの……」
戸惑う織姫に、ウルキオラは畳み掛ける。
「仲間だからか。それなら何故、最初の一撃から奴を守らない」
何を躊躇った。ウルキオラは問いを重ねた。織姫は半歩退がって、答えに詰まる。
果たして自分は躊躇ったのだろうか。織姫は自問自答する。その答えが出るより先に、ウルキオラは口を開いた。
「解らないか。教えてやろう。お前は———」
「うるせえよ」
ウルキオラの言葉を一護が遮る。
「ためらったとか何だとか……下らねえことベラベラ喋りやがって……どうでもいいんだよ、そんな事は」
一護はそう切り捨てて、それから織姫に穏やかな目を向けた。
「助けてくれてありがとな、井上。けど、危ねえから下がっててくれ」
「黒崎くん……」
一護はウルキオラに目線を戻し、黒刀の鋒を足元に向けて構えを取った。
「ウルキオラ。意外と喋るんだな、お前。もっと無口な奴だと思ってたぜ」
黒い刀身に、黒い霊圧が絡みつく。
「それで、お前一体何に悩んでんだ?」
一護が、ウルキオラも自覚していない迷妄を突いた。弄ばれたようなものではあっても、剣を交えれば一護にはその胸の内が読み取れる。それは一歩間違えれば、相手の心に土足で踏み入る行為になり得るが、一護は不用意に暴いたものを明らかにはしない。そんな一護が言葉にしたという事は、そういう事だと織姫は察する。
黒い霊圧が刀身を飲み込んだ。月牙天衝か、とウルキオラは見切る。
だが、仮面を出していない月牙天衝など、俺には通じない。そう一見慢心のようにも見える発言をして、ウルキオラは瞼を僅かに降ろした。悩んでいる、など見当違いも甚だしい。自分に迷いなどない。何に煩わされ悩むこともない。心などという不確かで不明瞭なものなど無いからだ。その筈だ。
しかし、ウルキオラの想定外が起きた。
「月牙纏威衝」
黒い月牙天衝が圧縮、収束する。一回り大きな霊圧の刀身を形成し、留まったそれに、ウルキオラは目を見開いた。
ビルの高さすら越える大きさの
成程、浅知恵だとウルキオラは鼻を鳴らす。敵を飲み込むほどの規模だけの放出では勝てないと見て、圧縮、収束して密度を上げる事で届かせようとしているのか。ウルキオラの知らぬ内、それの成功体験も有るようだ。
だが、所詮は人間の悪足掻きでしかない。
ウルキオラは一護の月牙纏威衝を、受け太刀の刃で滑らせながら弾いて逸らす。
「忘れたか。お前は仮面を出した月牙でさえ、俺を倒せなかった。仮面を出さない月牙など、どう使おうが無駄な事だ」
ウルキオラが吐き捨てる。それでも一護は月牙纏威衝を維持したまま、果敢にウルキオラに挑みかかった。
それを不安そうな顔で見ていた織姫は、一護に言われた通りに戦闘に巻き込まれない壁際まで退がっていた。
「……黒崎くん……」
ほぼ無意識に一護の名を呼ぶ。その時だ。
後ろの壁がその姿を消して、織姫の無防備な背後から二人分の手が伸びる。織姫が気付いた時には、伸ばされた二人の手が織姫を拘束していた。
「捕まえた」
下手人は、藍染に執着していた女
「あたしのこと憶えてる?憶えてないかもね。あんたみたいな化け物が、あたしみたいなフツーの奴のこと憶える必要無いものね!」
右手で織姫の口を掴んで塞ぐロリは、血走った眼を大きく見開いて吐き捨てる。
「でも、そうして階段の上に腰掛けてられる時間も終わりよ。藍染様は言われたわ。あんたは"用済み"だって。わかる?」
ロリは勝ち誇った。藍染にとっての利用価値が消費され切った織姫に何をしようと、ロリが藍染に詰められる事は無くなったのだと。
「あんた、終わったのよ。あんたがあたしから奪っていった何もかも、あんたから毟り奪ってやるわ……!!」
織姫にとっては心当たりの無い、見当違いな逆恨みを口にして、ロリは織姫の白い死覇装を腕力だけで強引に引き裂いた。
「井上!!」
その音に気付いた一護の意識が織姫の方へ向く。ウルキオラは、現在進行形で斬り結ぶ自分以外のものに一護の意識が向かったことに、言いようのない不快感を覚えた。
一護が踵を返して、織姫を助けようと床を蹴る。ロリは一護の気配が向かってくるのを察すると、織姫の左目に右手の指をかけた。
「来るなっ!!近付いたらこいつの目玉、抉り取るわよ!!」
ロリの脅しに一護は、ならば近付かなければいいと月牙纏威衝を形造る霊圧の一部を解く。
「———月牙」
だが、そこにウルキオラが割り込んだ。
一護が放った威嚇射撃程度の月牙天衝が、ウルキオラの一刀に弾かれる。
一護は解けた霊圧を固め直して、ウルキオラに月牙纏威衝を振り下ろした。ウルキオラはそれを事も無げに受け止める。
「どけ……!」
「退かせてみろ。俺以外の奴と戦いたければ、俺を殺してからにしろ」
鍔迫り合いの向こう、ロリとメノリに暴行を加えられる織姫の姿が目に入った一護は激昂した。いいから退け、と。そこに。
火山の噴火でマグマが岩盤を穿って飛び出したかのように、巨漢の
瓦礫が大きな音を立てて、まだ無事な床にぶつかる。巨漢は通行の邪魔になる瓦礫を片手で無造作に放り投げ、下半身を床に空いた穴から引き上げた。
「ウ〜〜ル〜〜キ〜〜オ〜〜ラ〜〜あ。手伝いに来てやったぜ〜〜」
「俺が何時手出ししろなどと言った?ヤミー」
ニヤニヤと愉快そうに笑う巨漢、ヤミーにウルキオラは、心なしか呆れたような目を向けた。ヤミーはつれないこと言うな、と不遜に笑ったまま、一護を指差す。
「その死神のガキ、随分強くなったみてえじゃねえか。俺にもやらせろよ」
ウルキオラはヤミーの様子を見て、それから頭から爪先までを観察すると、会得がいったように顎を引いた、
「……そうか。どうやら
「何だよケチくせえなあ、ウルキオラ!!つーか、あの弱っちいライオン女裏切ったのかよ。ハリベルのキューシンリョクってやつも大したことねえな」
「
「おめえの中で俺は犬か何かかよ、ウルキオラぁ!!」
ぞんざいに扱われたことにヤミーは少しだけ腹を立てる。そこでふと気付いた。警戒するようにヤミーを睨みつける、弱小な霊圧に。
「ああん?」
ヤミーは周囲を飛び回る蚊をはたき落とすように、先ずはメノリを手の甲で払って吹き飛ばした。メノリの細い身体が、柱に叩きつけられる。
「メノリ!!!」
突然目の前で行われた凶行に、ロリが悲鳴を上げた。あまりにも自然体で振るわれた暴力に、自分達のしていたことが子供の遊びにさえ思える。
「ウルキオラぁ!なんでこのメス犬共がこんなとこ居やがんだぁ!?」
「そいつらに訊け」
「それもそうだな」
ウルキオラにバッサリ切り捨てられたヤミーは、一先ずその提言に従ってロリの前にしゃがんだ。しゃがんで尚、その巨体は見上げる程にある。
「オイおめえら。ザコのくせになんでこんなトコ来てんだァ?ジャマくせえぞ」
だから死ね。そう言ってヤミーは人の頭などそら豆のように握り潰せそうな大きさの左手を徐にロリに伸ばした。
ヤミーの視点で、ロリの全身が左手に完全に隠れた瞬間、掌に鋭い痛みと、瞬間的な発熱が生じる。床に落ちた赤い雫は、ヤミーの血だ。ヤミーが痛みに対して反射的に左手を引っ込めると、そこには短剣の形をした斬魄刀を抜いたロリの姿があった。
「井上!!」
一護は再度織姫を助けようと飛び出そうとする。しかし、ウルキオラはそれを許さない。
「くどいぞ。俺を殺してからだと言った筈だ。人間の癖に、記憶力が無いようだな」
「くそ……っ!」
一護を阻むウルキオラの向こう側、ほぼ無意識に
「毒せ、
解号と共に
「……あんたに……あんた、なんかに……!やられる為に、ここに来たんじゃないのよ!!ヤミー!!!」
ロリが左の戦鞭をヤミーの頭に叩きつけるように振り抜く。ヤミーは軽い調子でそれを躱し、空振った戦鞭が柱をへし折った。
途端、ヤミーの耳が妙な音を拾う。チラ、とへし折られた柱を横目に見てみると、戦鞭が直撃した断面が溶けていた。
「あたしの毒で、あんたもウルキオラもアメミトも、どいつもこいつも!!グチャグチャに爍かして、殺してやるわ!!!」
気に入らない。
だが、ヤミーにはロリ程度が
ヤミーがつまらなさそうに、たかが左の握り拳を叩きつけるだけで、ロリの華奢な体躯はあっさりと床に沈んで潰れる。ヤミーはロリの毒で
「くそ……っ、あんた……あんたみたいな……カス野郎に……」
「あァん!?」
ロリの捨て台詞に近い恨み言に、ヤミーはその細い身体を背中から壁に叩きつけることで応える。壁に穴が空いて、瓦礫が塔の外に落ちて行った。
「聞こえねえなあ〜〜〜〜?」
揶揄うように嗤ってみせるが、ロリはぐったりとして最早声も出せずにいる。それを死んだと判断したヤミーは、退屈そうにロリを壁に空けた穴から投げ捨てた。
汚れを払うように両手を叩いたヤミーは、織姫に向かって歩いていく。
「よォ、ウルキオラ。この女はもう殺していいんだっけか?」
「待て!!」
ウルキオラに阻まれて動けない一護が叫んだ、その時。
ヤミーが空けた壁の穴から、白装束の弓使いが姿を見せた。
ヤミーが顔だけで振り返るとほぼ同時、霊子で造られた矢が左肩に突き刺さる。
「石田!!!」
一護はそれが誰なのか、一瞬で気付いて名を呼んだ。
弓使い———石田雨竜は、穴から塔の中に飛び込むと、軽やかに床に着地する。
「なんだテメエ、ゴラァ!!どっからわいて出やがった!!!」
完全に不意を突かれて左肩を射られ、激昂したヤミーが雨竜に迫った。
「あれだけの力で撃って、貫通しないのか……頑丈だな。だけど、その先は気をつけて」
雨竜が警告した、その瞬間。
ヤミーの足下が、発破と共に爆ぜた。
「胡散臭い科学者に貰った、対
脳裏に厄介な人間性の死神を思い浮かべながら、雨竜は爆炎を背に遅過ぎる忠告をした。
雨竜が一護に合流した頃、遅れて後を追う影が大小一つずつ。第五の塔の下層から上層まで一直線にぶち抜いた穴から駆け昇っていた。言うまでもなく、
「ネル、大丈夫か?疲れてない?」
「平気っス!おねえちゃんの方こそ、疲れてねっスか?」
ミラ・ローズに背負われたネルが、短い腕を懸命に伸ばしてミラ・ローズの頭を撫でた。
大丈夫だよ、と返したミラ・ローズは、大きく息を吐いてから天井を見上げる。
一護達がいる階まで一直線にぶち抜かれた穴は、恐らく一護が階段を探すのを面倒がって突き抜けた痕跡だろう。気持ちは解るし、後から追いかける側としては楽で良いのだけれども。
もう一踏ん張りだ、と意気込んで屈伸し、床を蹴って跳び上がろうとしたその時。
上層から、塔全体が揺れる程の破砕音が響いた。ミラ・ローズは背中にしがみつくネルを咄嗟に右手を回して支え、左手を床について揺れに耐える。
「な……なんだ……!?」
動揺しながらミラ・ローズは穴の空いた天井を見上げた。細かい欠片がパラパラと俄に降り出して、ヒビが走ったと思ったその時。
天井が割れた。いいや、砕けた。
ミラ・ローズは反射的に飛び退く。それと入れ違うように落下してきた巨大な影が、勢いそのまま床を粉砕して更に下へと落ちていった。おそらく、あの勢いなら最下層までこのまま一息に落ちていくだろう。
「……おねえちゃん。今の……」
「…………ヤミー、だな。なんかめちゃくちゃデカかったけど……」
唖然とした顔のネルとミラ・ローズが顔を見合わせる。いつの間に、とか何処から、とか色々と気になることはあるが、一旦傍に置いておくことにした。
いつから居たのかは不明だが、ヤミーまで合流していたとなるといくら一護でも圧倒的に不利な筈。しかし、そのヤミーが落とされて来たということは、誰か一護の仲間が加勢したということ。
ミラ・ローズは息を吐いて
「どういう状況なんだ……?」
首を傾げつつ、ミラ・ローズは改めてこれ以上行く手を阻みそうな物も事象も無いことを確認すると、上を見上げて今度こそ天井の大穴へ向かって飛び上がった。
その道中、覚えのある霊圧の変化を感じ取る。一護が
そしてすぐに、強大な二つの霊圧が猛スピードで更に上へと昇って行くのを感知すると、まさか、と生唾を飲み込む。
「……頼むから、あたし達が行くまで死ぬなよ。一護」
祈るように呟いて、ミラ・ローズは速度を上げた。
一護は常夜の空に浮かぶ三日月を視界の端に捉えて、自分が外に出たのだと気付いた。
天蓋の上を飾る柱の上に着地したウルキオラは、一護を見下ろして言う。
「虚夜宮の天蓋の下で、禁じられているものが2つある。一つは
どちらも強大すぎる余り、
ウルキオラが斬魄刀を、その鋒を前に向けて構える。
「———鎖せ、
解号を述べた瞬間、黒い影が破裂した水風船の水のように弾けた。柱の下に居る一護に、黒い雨が降り頻る。そして、仮面越しに見たものは。
三日月を背に、巨大な蝙蝠のような黒い翼を広げて佇むウルキオラ。その頭部の仮面は、左右対称に変化している。
「動揺するなよ」
ウルキオラの姿に唖然としていた一護は、言われて我に帰ると天鎖斬月を構えた。
「構えを崩すな。意識を張り巡らせろ。一瞬も気を緩めるな」
助言のような言葉を発して、ウルキオラは自分もまた一護を注視する。
一瞬のようにも一劫のようにも思える睨み合いの刹那、ウルキオラの右手に霊子が細長い形を作りながら集まった。
それを一護が察知した、次の瞬間。
一護の目と鼻の先に、ウルキオラの姿があった。
ウルキオラの右手には霊子の槍。見た目からは刃が無いようにも見えるが、だからこそ全体が刃であるのだと一護は瞬時に悟る。
だからこそ、一護はウルキオラの霊子の槍に、月牙纏威衝を叩きつけた。
膨大な霊圧同士の激突で、空気が震える。血を流して膝をついたのは、黒い死覇装。
「……反射的に月牙を出したか……懸命な判断だ」
右目から上が斜めに破られた仮面の縁から噴き出す血の鬱陶しさに顔を顰めて、一護はウルキオラを睨みつける。
「そうしていなければ今頃、貴様の首は俺の足許にあった」
割れた一護の仮面の破片が、天蓋に落ちて消滅した。
一護は戦慄する。
対するウルキオラは悠然と構え、余裕を持って分析を始める。
「……"
残念だ。平坦な声でそう言うと、ウルキオラは霊子の槍を投擲した。
目視も霊圧感知も役に立たない速度で投擲された槍が、一護の右肩を抉る。勢い余って後ろに吹き飛んだ一護は、黒刀を天蓋に突き立てて速度を殺すと仮面の割れ目に左手を当て、意識を集中させて修復した。
腕越しに、黒い翼を広げて低空飛行で迫るウルキオラの姿が見える。その右手には新たに生成した霊子の槍が握られていた。
ウルキオラの霊視の槍と一護の黒刀がぶつかり合う。
「……黒崎一護。月牙を撃て」
鍔迫り合いながら、ウルキオラは一護に要求した。何を言っているのか、その意図を掴みかねた一護は目を見開く。
ウルキオラは続けた。
「その姿がお前の最強の姿。月牙がお前の最強の技なら、今ここで俺に撃ってみろ。力の差を教えてやる」
互いに剣を弾き飛ばし合う。一護はウルキオラを図りかねていた。殺したいのか、そうで無いのか。何故一々、こちらの戦意を削ぐ選択肢ばかりを選ぶのか。とはいえ。
「……そんなもん、言われなくても……そのつもりだ!!」
一護が天鎖斬月を両手で構え、頭上に掲げる。黒い霊圧が刀身を飲み込み、なお余りあって増幅した。
「———月牙、天衝!!!」
黒い月牙天衝が、津波のようにウルキオラを飲み込む。しかし、ウルキオラは霊子の槍で容易くそれを斬り裂いた。
「……やはりな。所詮は人間のレベルか」
身体は愚か、大きな翼にさえ傷一つ無いウルキオラは、失望したように一護を空中から見下す。解放前ですら、ウルキオラを倒し切る程の威力ではなかったのだから、当然か、とも。
「だったら……これでどうだよ!!」
一護はすかさず、月牙天衝を黒刀に纏う。さっきよりも膨大な黒い霊圧を、落雁のように刀身の形に圧縮し刃と成す。その密度は、今までで一番の。
一護は足下の天蓋にクレーターができるほどの力で踏み込み、跳んだ。
「月牙纏威衝!!!」
下から向かってくる一護が月牙纏威衝を振り上げる。ウルキオラは霊子の槍を構え、それを受け止めた。その衝撃で、一瞬周囲の大気に満ちる霊子の一切が吹き飛ぶ。
「……確かにお前の黒い月牙は、俺達の
「
「……そうか。お前は未だ見ていないのか」
ウルキオラは言って、空いた左手の人差し指を一護に向けた。
「……そういえば、お前はさっき的外れにも、俺が悩んでいるなどと言ったな。それが真実、お前のただの勘違いだと教えてやろう」
ウルキオラの指先に、黒い霊圧が集う。一護の背筋に、冷たいものが走った。
「見るがいい。これが解放状態の
一瞬、ウルキオラの指先に集まった霊圧が豆粒ほどの大きさまで縮む。いいや、圧縮される。
「"
次の瞬間、夜の闇よりも暗く深い虚閃が、一護を飲み込んだ。
どこ削ってどこ変えてどこ追加するか悩みすぎたら文字数に対して時間かかり過ぎた