俺が助ける
誰かの呼ぶ声が聞こえたから
だから 俺が護る
左腕を失い、隻腕となった悪魔が瓦礫の散乱する崩れかけた塔の床に降下する。痛みを誤魔化すように浅い呼吸を繰り返して、悪魔———ウルキオラは捥ぎ取られた左腕の断面に意識を集中させた。
黒い骨が断面から飛び出す。骨から血が噴き出して、肉と筋を形作っていった。そしてほんの僅かな時間をかけて、ウルキオラの失われた左腕は何事もなかったかのように寸分違わず再生する。
ウルキオラは再生した左腕の動きと神経の感覚を確かめた。
「……俺の能力の最たるものは、攻撃性能じゃない。再生だ」
ウルキオラは、脳と臓器以外の全ての体構造、則ち骨格、筋繊維、皮膚、感覚器官に至るまでを超速再生することが可能であった。
「お前が何故、そんな姿になったのかは解らんが。幾らお前の攻撃能力が高まろうと、腕を一本捥いだくらいで動きを止めて、様子を見ているようでは、この俺を倒すことなど不可能だ」
ウルキオラは指先を下に向けて、両手を合わせる。グッと力むように手を広げると、その間に電撃を生じる霊圧が集中した。
「
両手を広げ切ったそこに浮かんでいたのは、高密度の霊圧が火花が散るような音を立てる、霊子の槍。
ウルキオラはその槍を一護へ鋒を向ける形に掲げ、投擲の構えを取った。
「近付くなよ。そこに居ろ。できればこいつを、近くで撃ちたくはない」
言い終わるや否や、ウルキオラは一護へ
標的を素通りした槍は
音に遅れて、嵐すら生温く思える程の衝撃派が天蓋の上にいた全員を襲う。織姫とネルは吹き飛ばされないように身体を低くして、そこにミラ・ローズと雨竜が庇うように覆い被さった。
「……外したか。やはり扱いが難しいな……」
小さく舌打ちしたウルキオラは、視界の果てに見える光の柱を一瞥すると、すぐにもう一発、
「……あいつ……あんな技を何発も撃てるのか……!!」
「でも、扱いが難しいとか抜かしてたぞ。多分、使い慣れてねえんだ」
「……一護……!」
ネルは泣きそうになりながら、一護の名を呼ぶ。何が起きているのか、幼いネルにはわからないし、怖い。しかし、それ以上に、あれだけの破壊規模を持つ技を直撃させられでもしたら、一護は。ネルにはその方が、よっぽど恐ろしい。
「……一護……これ以上……むちゃくちゃしちゃダメっス……!」
祈るように両手を組むネルに、織姫は自分の手をその小さな手に重ねることしかできなかった。
宙空に佇む一護は、ウルキオラの手に
次の瞬間、その姿は全員の意識を置き去りにして、ウルキオラの背後に出現していた。
「何だと……ッ」
ウルキオラは自分が簡単に背後を取られるのを許した事に驚愕する。その一瞬、紛れもなく一護はウルキオラの
一護はずっと左手に持ったままだった、ウルキオラの左腕だったものを投げつける。ウルキオラは迷わず、自分の一部であったそれを
「こんなもので動揺を誘えると思ったか。舐めるな」
この距離では、一護諸共自分も
そう考えたウルキオラは、
今度は瞬歩でウルキオラの目と鼻の先まで接近した一護の左手が、
これが、本当に人間か?
ウルキオラの頭に浮かんだ疑問の答えが出る前に、天鎖斬月が振り下ろされ、ウルキオラの身体を袈裟斬りにした。
ウルキオラの身体が仰向けに倒れる。その圧倒的過ぎる力に、誰もが言葉が出ずにいた。
「まさかこの俺が……
倒れたまま一護を見上げるウルキオラは自嘲する。
そんなウルキオラの頭を、一護は右足で踏みつけた。まるで、此処から逃がさないとでも言わんばかりに。その証拠に、一護は仮面から伸びた角に
雨竜とミラ・ローズが息を飲む。
「……成程な。容赦は無しか。虚らしい事だ」
ウルキオラは一周回って感嘆した。最早ウルキオラにとっては、一護に敗れ去った自分の生き死にすらどうでもいい事だ。
「やれ」
その言葉が聞こえたのかどうかは定かでないが、一護の角に湛えられた
「やめろ、一護!!!!」
その静止の声も虚しく、
ルドボーンの身体は半分以上が凍りつき、背中から伸びる枝は最早分体を生み出す果実を実らせる事はない。ルキアの斬魄刀、袖白雪によって凍結させられたからだ。
「その能力、私の目の前で見せるべきではなかったな」
これで終いだ。そのつもりでルキアは刀の鋒をルドボーンに向けた。その時。
横から巨大な何かが、高台をその巨体でへし潰しながら突進してきた。
ルキアは咄嗟に後ろに下がって、突撃してきた何かを躱す。それは高台を抉って突き抜けると、向こう側へ飛び降りた。
「何だァ!?」
ルドボーンの分体の残りを片付けていた阿散井恋次は、突然現れた何かの乱入にたじろぐ。そのすぐ近くで、茶渡泰虎はそれが何かを思い出した。
「こいつは……!ヤミー……!!」
「ヤミー!?日番谷隊長が言ってた
「ああ……だが、妙だ……」
泰虎は眉を顰めて巨漢———ヤミーを見上げる。泰虎は決して背が低いわけではない。寧ろ同年代は愚か成人男性と比較しても、現世の人間としては相当でかい方だ。その上で、泰虎の首は大きく上向けられている。
「俺も現世でこいつと戦った……その時も相当な大きさだったが……此処まで巨大じゃなかった筈だ……!」
動揺する泰虎を、ヤミーは苛立たしげに見下ろした。そして大きな音を立てて舌打ちすると、ギリ、と軋む程に歯を食い縛る。
「くそがあ〜〜〜〜……あのメガネ野郎許さねえ……」
腕の太い血管が浮き上がる程両腕の筋肉が盛り上がる。ヤミーは怒り任せに背後の壁を殴りつけた。
「絶対許さねえぞ、ぶっ殺してやる!!!」
その怒りの咆哮の音圧に、泰虎は堪らず仰け反る。その時。
天蓋の上からレーザーのような霊圧の柱が、突き抜けて砂漠に突き刺さった。
今度は何だ、と叫ぶ恋次。一方でルキアは、それが一護のものであると悟った。だが、ルキアは同時にその霊圧が本当に一護のものであるか疑った。異質だったからだ。自分の知る一護の霊圧と、まるで別物のように。
吼え立てて周囲を見る余裕が一旦出来たのか、ヤミーは何かに勘付いたように天蓋に空いた穴を一瞬だけ横目に見た。
天蓋に大穴を穿った
「黒崎……」
一護はウルキオラを一瞥さえせず投げ捨てる。瓦礫の中に転がったウルキオラは、力無く無造作に転がった。
一護は宙空を踏み締めるように歩いて、ウルキオラに近付く。動かないウルキオラのすぐ側まで近付くと、天鎖斬月の鋒をウルキオラの喉に向けた。
雨竜は慌てて立ち上がり、一護の元へ走る。そして、一護がウルキオラに黒刀を突き立てようとしたその寸前。間一髪、一護の手首を掴んで止めた。
「……もういい……黒崎。もう決着はついた。そいつは敵だが、死体まで斬り刻む必要は無い……」
だから、もういい。そう言って一護を止めようとする雨竜の声が聞こえていないのか、或いは聞こえた上で無視しているのか。一護は尚も黒刀を突き立てようと、雨竜の手に抗った。
「聞こえないのか、黒崎……!止めろと言ってるんだ……!」
そんなことをすれば、一護は本格的に人間ではなくなってしまう。それはダメだ。だから雨竜は懇願するように声を振り絞った。繰り返し、止めろ、と。
一護の黒刀の鋒が少しずつウルキオラの喉に近付く。喉仏に届くか届かないかのところまで来た段階で、雨竜は叫んだ。
「黒崎!!!」
一護の顔が僅かに雨竜を向く。それと同時に、天鎖斬月が雨竜の腹に突き刺さった。
「石田くん!!!!」
織姫が喉が裂けそうな程の声を上げる。ミラ・ローズはネルを半ば投げるようにその場に置き去って、雨竜と一護の間に割り込むように駆け出した。
余程の勢いで突き刺さったのか、雨竜の身体は数メートル背中側に飛んだ。尾骶骨から床に落ちた雨竜の前に、
「何してんだ、一護!雨竜はあんたの仲間だろうが!敵と味方の区別もつかなくなっちまったのか!?」
ミラ・ローズが訴える。一護は夢遊病患者のように千鳥足に近い足取りで雨竜とミラ・ローズの方へ身体を向けた。
「……ケル」
ノイズとエコー混じりの声がした。それが一護の声だと織姫が理解するのに、数秒要した。
「助、ケル。俺、ガ、助ケル」
譫言のように吐き出された片言の言葉に、織姫は理解する。してしまった。
自分が、一護に助けを求めてしまったせいだと。
足手纏いになりたく無くて、無理を承知でルキア達に修行をつけてもらったのに。
護りたくて、自分が選べる手札から考え得る限りの最善手として
なのに、何故。最後の最後で一護に頼ってしまったせいだと。
一護が
「待って、黒崎くん!!!」
織姫は叫んだ。万に一つの可能性でも、一護に声が届いて欲しいと藁にもすがる思いだった。
それとほぼ同時に、飛び出していったのは、ネル。
「ネルちゃん!?」
腹に突き刺さった黒刀を引き抜こうとしていた雨竜がギョッとして声を上げる。
一護はネルが視界に入っていようがお構い無しに、その
怖い。ネルは足が止まりそうになる。だが、その恐怖を無理矢理に抑え込んで、決して止まりはしなかった。ドルドーニと比べても、天地の差がある威力の
口を大きく開けた。舌先に
口の中が灼ける。喉がひりついて苦しい。それでもネルは、一護の
「……ネ……ネル……」
大剣を掲げたまま唖然とするミラ・ローズの視線に返す余裕は、ネルには無い。ネリエルであったならばともかく、幼いネルは飲み込んだ
だから、飲み込んだ
ネルは両足を大股に開いた。背中を丸めて前傾姿勢を取ると、口を覆っていた両手をそっと離した。
「……〜〜〜〜〜ッ、があっ!!!!」
ネルが
ある意味では当然である。ネルの口は一護の
ネルは———ネリエルは、かつて
ネルが撃ち返した
「は……い……いちご……っ」
「ネル!」
膝から崩れ落ちるように倒れたネルを、ミラ・ローズが慌てて駆け寄り抱き上げた。
油の切れた自動人形のように、痙攣しながら一護は足を一歩前に進める。その背後。
霊子の槍を右手に携えた、隻腕隻翼のウルキオラが躍り掛かった。
そして一瞬のうちに、ひび割れた仮面の左側の角を、槍の一振りで割り折った。
それが最後の一押しだったのだろうか。一護の顔を覆っていた仮面は、存外呆気なく砕け散る。一護はそのまま脱力して、前のめりに倒れた。
「黒崎くん!!」
倒れた一護に、織姫が駆け寄る。何度も名前を呼ぶが、一護は応えない。
ウルキオラはそれを一瞥して、孔の内側に経験の無い感触を覚えながら背を向けた。
消し飛んだ下半身の内、最低限動く為に右脚を最優先で再生させた。もう片方の脚と左腕も再生を始めているが、内臓は無くなったまま。今のウルキオラはハリボテ同然だった。
今の一撃で終わらなければ、死んでいたのはウルキオラの方だろう。
決着はついた。ウルキオラにはもう続けて、雨竜やミラ・ローズと闘う余力も無い。せめて誰もいないところで静かに死ぬべきだと、その場を立ち去ろうとした、その時。
ウルキオラは思わず足を止めて振り返る。宙を舞う一護の髪は霊子に変わり、一護の胸に空けられた孔の上で渦を成す。
そして、轟音を轟かせて一斉に、一護の孔へ飛び込んだ。
そうして瞬く間に、霊子が一護の孔を塞ぐ。何がどうなっているのか。雨竜と織姫が困惑する一方、ウルキオラとミラ・ローズはそれが何なのかに思い至る。
「———超速、再生……?」
まさか、という気持ちを宥める為に、ミラ・ローズは無意識に口元に右手を添えた。
織姫が恐る恐る一護の名を呼んで、手を控えめに伸ばす。次の瞬間、一護は両手で勢いよく、身体を起こした。
「…………俺は…………!?」
その声に異常は起きていない。ノイズもエコーも無い一護の本来の声に、織姫は何処か安心したように息を吐いた。
一護は自分の胸を直接触れて確かめる。そこには確かに、孔が空いていた筈だった。しかし、一護の記憶と予想に反して、傷一つ残っていない。
一護は困惑しながらも、織姫に目を向けた。
「井上……無事か?」
その言葉に、一護がいつも通りの、自分の知る一護に戻ったのだと確信を得た織姫は、涙を滲ませて頷く。一護はそれに一瞬安堵したが、すぐにハッとして雨竜達の姿を探した。
見つけたのは、腹に突き刺さった天鎖斬月を抜いて痛み止めを打つ雨竜。それから、ミラ・ローズの腕の中で口から血を流すネル。
「……ようやく……目が覚めたか……」
「……いちご……よかったっス……!」
胸を撫で下ろした雨竜と、心底安心して破顔するネルを見た一護は、しかし背筋が凍る思いをした。当たり前だ。雨竜に天鎖斬月が突き刺さっていたということは。
「その傷……俺がやったのか……?」
眼が揺れ動く。心臓が不規則に拍動する。自分が、仲間を傷つけたのだという事実が、一護を追い詰める。
「……しぶとい奴だ……」
罪の意識が一護の意識を引き摺り込みかけていたところに、冷や水をかけて引き戻す声。振り返った先には、左側の手足を失ったウルキオラ。
ウルキオラは
「取れ。勝負をつけるぞ」
一護は瓦礫の散乱した床に突き刺さった黒刀とウルキオラを順に見て、両手を握りしめる。ウルキオラは霊子の槍を創り出し、感覚を慣らすように振り下ろした。
「……石田を刺したのは……俺か……?」
「知った事か」
「ネルに怪我させたのも……俺か……?」
「だから知らんと言っているだろう」
「……てめえの左腕と左脚を……斬り落としたのも、俺か……?」
三つ目の質問に、ウルキオラはくどいと眼で訴えた。それを肯定と受け取った一護は。
「だったら、俺の左腕と左脚を斬れ」
「黒崎くん!?」
何を言っているのか。織姫だけでなく、雨竜とミラ・ローズも目を見開いた。
「さっきまでてめえと戦ってたのは、
「黒崎……!お前……何を言ってるか解ってるのか……!」
「一護……お前……」
ウルキオラは何を戯言を、と眉間に皺を寄せる。だが、一護の眼が本気であると理解すると、短く息を吐き出した。
「———いいだろう……それが望みなら、そうしてやる」
そう応えて、一護に近付こうとする。その時。
残っていた右側の黒い翼が、先端から崩れ始めた。一護はそれを見て、息を飲む。
「……ちっ……ここまでか」
長居し過ぎた。元々余力など残っていなかったのを押して、ケリをつけようとしていたのだから致し方無い。
だから、ウルキオラは指図した。殺せ、と。
「早くしろ……俺はもう歩く力も残ってはいない……今斬らなければ、勝負は永遠につかなくなるぞ……」
「……断る」
だが、一護はそれを拒んだ。ウルキオラは、何を言っているのかわからなかった。
「……イヤだって、言ってんだ……!」
一護は振り絞るような声で繰り返す。
「……こんな……こんな勝ち方があるかよ!!!」
納得がいかない。一護は腹の底から叫んだ。
ウルキオラは目を丸くして、そして腹立たしげに舌打ちする。
「……最後まで……思い通りにならん奴だ……」
ウルキオラの肉体の崩壊は、胴体にまで及び始めていた。ウルキオラは顔を僅かに織姫に向ける。
「……ようやくお前達に、少し興味が出てきたところだったんだがな」
ウルキオラは徐ろに、織姫に手を伸ばした。
「……俺が怖いか。井上織姫」
織姫は一瞬驚いて、言葉に詰まる。恐らく初めて、対面で名前を呼ばれたからだ。だから、織姫は素直な気持ちを返すことにした。
「こわくないよ」
ウルキオラは織姫の返答に、少しだけ孔の内側に———否、胸の中に何かが満ちる感覚を覚えた。
———ああ、そうか。奴が言っていたのはこの事か。この掌にあるもの。この眼が映し出す、誰かの姿。その全てが心で。それを認識しているのは、則ち。
「———俺は、此処に居る」
ほんの少しだけ、ウルキオラの口の端が上向く。嗚呼、なんとも勿体無いことをした。やっと理解できたのに。自分は此処で終わるのだと、ウルキオラは残念そうに受け入れ———。
「……———ッ、ざっけんなぁあああああああああ!!!!」
崩れ始めた右腕を、ミラ・ローズが右手で掴んだ。
予想だにしない行動に、ウルキオラだけでなく織姫も、一護も、雨竜も、ネルも目を丸くして驚愕する。ミラ・ローズはなりふり構わずウルキオラの右腕を掴んだまま、左手で肩を捕まえる。
「何を死に逃げしようとしてんだお前!!そんな名残惜しそうな顔しておいて、自分が死ぬことを受け入れるフリして諦めるなよ!!」
「……諦める?……俺が……?」
はく、と珍しくウルキオラが戸惑いがちに、ミラ・ローズの言葉を繰り返した。そして気付く。右腕と肩を掴むミラ・ローズの両手から、霊圧が流れ込んでくるのを。
「興味出たんだろ、織姫達に!未練があるんだろ、今此処に居るお前自身に!だったら足掻け!みっともなくていいからしがみつけよ、生きる事に!物分かりのいいカッコで、自分がしたい事も欲しいものも手放すんじゃねえ!!」
「……!」
訴えられて、ウルキオラは心臓が跳ね上がる感覚を覚えた。全身の血管を流れる血が加速する。頭を後ろから殴られたような衝撃ですらあった。
「カッコつけてキレイな死に方なんか絶対させない。惨めでも無様でも、意地汚く生きてもらう!でないと、お前に内臓まろび出る勢いでぶった斬られた分やり返せねえだろ!!」
「おい」
結局自分本位じゃないか。感嘆して損した。ウルキオラは僅かに眉を顰める。それを無視してミラ・ローズは織姫に、ウルキオラに双天帰盾をかけるよう指示を出した。
ウルキオラは怪訝な顔をして、ミラ・ローズの手と顔を交互に見遣る。
「……俺を生かす事に、報復以上のメリットがあるとは思えんが」
「うるせえな。別に利益や見返りが欲しいから生かすわけじゃねえの」
ミラ・ローズの額に汗が滲む。やはり、所詮は
「一護、まだ霊圧余裕ある?」
「……まあ。余裕かどうかはさておき、このまま戦いになってもまだ動けるくらいには」
「じゃあ、ウルキオラに霊圧突っ込んで。あたしがやってるみたいに」
「お、おう……」
一護はミラ・ローズに言われるがまま、ウルキオラの反対側の肩に両手を乗せた。これでどうにかなればいいのだが、と思わずにはいられない。
「……これ以上、同族が死ぬのは流石にしんどいんだよ。だから、死ぬんじゃねえ」
不意に溢された呟きに、ウルキオラは瞠目する。
黒い翼が崩れ切り、指先が少しずつ溶け出した頃。
赤い光の粒子が、常夜の空を照らした。
第3十刃関係者とかいう関わった者全てをめちゃくちゃにしていく女達