犴と鮫   作:鷲谷ヒメリ

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今回ちょっととっ散らかったのでポエムお休みです


急転直下

 リリネットは立ち尽くしていた。自分をコケにした浮竹十四郎に雪辱を果たすことも忘れて、交わり合う朱と黒の炎を見つめ、そして溶かされた氷の花の葬送塔を一瞥した。

 その眼には、幼い少女らしい様相は見られない。何処か浮世離れした、吹けば煙のように掻き消えるのではないかと思わせるほど儚かった。

「……アメミト」

 リリネットはその名を呟く。思い出すのは何時だったか、スンスンのコレクションにあったツイスターゲームの順番待ちの時に、アメミトに言われた事。

———いいのか?

———何が?

———コヨーテに話さなくて。

 リリネットはその時、一瞬心臓が止まるかと思った。だって、気付かれているとは思わなかったからだ。そんなそぶりだって見せた覚えもない。

 なのに、アメミトは見抜いていた。或いは、自分もまた同じような事をしていたからか。

 だが、リリネットは首を横に振った。

———いいの。スタークは知らなくて。

———……私が言うのもなんだが、何故。

———知らない方がいいからに決まってるだろ。()()()()で、あたしたちが孤独になっていったのかなんて。

———…………そう、か。

———そっちこそ、ハリベルにちゃんと話しとかないの?いや、何したのかとか、あたしは知らないんだけど。

———それこそ、まだティアが知る必要は無い……いや、知るべきじゃ無いさ。

 ふうん、と対して興味なさそうな返事をしたのは覚えている。アメミトとハリベルの間に何があるのか、何があったのかリリネットは知らない。だから、その時は深く突っ込んだ話をすることはしなかった。どちらにせよ、すぐにアメミトの手番が回ってきたので、それ以上続けられなかったのだけども。

 リリネットは目を伏せて、一人呟く。

「———……自分の全てを知った上で受け入れて、そばに居てくれる人がいることって……すごく運が良くて、幸せなことなんだよ。アメミト」

 炎が爆ぜる音が、リリネットの声を掻き消した。

 

「う……嘘だろ……!?」

 建物の屋根とビルの屋上を猛スピードで飛び移りながら、大前田稀千代は戦慄した。

 突然空が暗くなったと思ったら巨大な氷の塔が現れて、それだけでも何事かと思ったのに一息吐く間も無く溶けて消えたのだ。次から次へと常軌を逸した事ばかり起きて、半分パニックになった頭で理解出来たのは、日番谷冬獅郎が負けたという事だった。

 稀千代は思考する。冬獅郎が敗れたという事は、十刃(エスパーダ)が一人自由になったという事。背筋に冷たいものが走る。あの女破面(アランカル)がその気になれば、交戦しているところに横から割り込んで戦況が向こうに傾きかねない。

 どうする。稀千代が気を取られている時だった。

 進行方向に、王冠を戴く骸骨が現れる。第2十刃(セグンダ・エスパーダ)のバラガンだ。それにギリギリで気付いた稀千代は、鉄柵を掴んで慌てて方向転換する。そのともすれば滑稽な姿を、バラガンは鼻で笑った。

 そして、骸骨の口から黒い息が吐き出される。バラガンの能力である"老い"の力を可視化した、"死の息吹(レスピラ)"である。

「ひい!!ア……アレだ!!来やがった!!」

 稀千代は悲鳴を上げながらも必死に走る。死の息吹(レスピラ)の先駆けが副官章に接触した瞬間、朽ち始めたそれを殆ど脊髄反射で斬って捨てた。

「どうした。態と遅く放った死の息吹(レスピラ)でも、避けられんか」

 バラガンは嗤う。死にかけの鼠が僅かな望みに縋って這いずり回る姿を面白がるように。稀千代は死の恐怖から来る汗と涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、自身の上官に惨めったらしく助けを乞うた。

「……無様な泣き声を上げおって……馬鹿め」

 ビルの隙間に忍んで、身体を長大な布で縛って固定していた砕蜂は呆れ果てる。

「この戦いが終わったら……もっと不細工になるまで、殴ってやる」

 砕蜂は大きく息を吐く。身体が重い。隻腕である以上に、必要とはいえ鋼鉄の帯を身体に巻き付けているだけに、全身の骨格に負荷がかかっているからだ。

 砕蜂が自らに巻きつけているのは、"銀条反"と呼ばれる鎧の下地に使われる帯である。態々そんなものを巻いているのは、自らの力で戦域から吹き飛ばされない為である。

「———卍、解」

 砕蜂の右手の暗器の形をした斬魄刀、雀蜂がその姿を大きく変えた。

 

「……フン……」

 バラガンはつまらなさそうに鼻を鳴らす。しばらく泳がせていたものの、あの丸い肉塊のような男からは目新しいものは出てきそうに無かった。故に、飽いたバラガンは纏った夜色のローブの袖から黒い刃の両刃斧を取り出す。

「!!!何だありゃ……!?」

 距離を取りながら、稀千代はその両刃斧の姿を目の当たりにする。

「"滅亡の斧(グラン・カイーダ)"。お前には過ぎたギロチンじゃ」

 朽ち果てて死ね。バラガンが滅亡の斧(グラン・カイーダ)を振りかぶった時だった。

 空へ向かって、細長い光の柱が伸びる。徐に振り返った先から、鈍い音を何度も鳴らして砕蜂がビルの隙間から這い上ってきた。

「雀蜂雷公鞭」

 それは一見、槍のようにも見えた。或いはパイルバンカーとも呼べるかもしれない。砕蜂の身長の倍近い長さのそれには、照準と顔の保護を兼ねた鉄面が備えられている。

「…………ほう。それが卍解というやつか……」

 バラガンはあくまでも上からの目線を保ったまま感嘆する。砕蜂はそれに応えず、重い足取りで一歩、二歩と前進した。

「———できれば、この卍解は使わずに終わらせたかった」

「……何?」

「この卍解は、私の隠密機動としての矜持に反するのだ。姿は巨大で隠れる事はできず、重過ぎて動く事もままならん」

 鈍い音を響かせて、砕蜂は雀蜂雷公鞭の先端をバラガンに向けて構える。

 次の瞬間、槍若しくは杭を支える台から、霊子が噴き出した。

「そして攻撃は———"暗殺"と呼ぶには、派手過ぎる」

 そして、爆音が響き渡ったかと思うと、槍若しくは杭が射出されバラガンへ一直線に飛ぶ。空気を丸ごと突き飛ばすような衝撃と共に、超新星爆発を思わせる光が炸裂した。

 

 爆音が鳴った方向を、スタークは流し見る。少し物思いをして、相対している京楽春水に問うた。

「……なあ、あんたらの卍解ってのは、みんなあのくらい強いのか?」

「そりゃまあ、奥の手だからねえ。卍解ってのは。みんなそれなりのモンだとは思うよ」

「じゃあ例えば、さっきうちの煽りカスにやり返されてた氷の奴の卍解と、あんたとじゃどっちが強いんだ?」

「女の子にそんな酷い事言うモンじゃないでしょうよ。まあ、そうだねえ……日番谷隊長は天才だから、まだまだ伸び代がある。今はちょっと荒削りなところもあるけれど、あと百年もしたら、流石にボクも追い抜かれちゃうと思うよ」

 春水はあくまでも世間話のようにしみじみと答える。

「……そうか」

 その返答に、スタークは纏う空気をひりつかせた。

「それじゃあ、今はまだあんたの方が強いって事だ」

 スタークの空気の変化を察知した春水は、十四郎に隊長羽織の上に着ていた派手な着物を投げ渡す。驚きながらも受け取った十四郎は、どうしたのか訊こうとして止めた。

「ちょっと持っててくれるかい。奴さん、漸く遣る気みたいなんでね」

 傘の影がかかったその眼が、本気だったからだ。

 スタークは斬魄刀を鞘に収める。

「あんたらの卍解ってのが、見てみたくなった」

 完全に刀身が鞘に収められ、スタークはリリネットを呼びつけた。リリネットは一瞬驚いて身体を跳ねさせるが、すぐに意図を察して溜め息を吐く。結局、こうなるのか。

「しょうがないなあ。そんなんだからみんなに煽られるんだぞ!」

「余計なお世話だ」

 リリネットは空を蹴ってスタークの下へ跳ぶ。軽口を叩き合って、リリネットは春水を流し見た。

「……?どうしてその子を?」

 春水は素直に疑問を口にする。刀を収めた事と、リリネットを呼びつけた事。一体どういう繋がりがあるのかと。

「俺達は、二人で一人だ」

 スタークが答える。それに、十四郎が信じられないといった顔をした。

「虚から破面に進化する時、他の破面は肉体と刀に虚の力を分ける。けど、あたし達はちょっと違う」

 リリネットが言葉を継いだ。巻貝真珠の眼が物憂げに、少しだけ伏せられる。

「あたし達は自らを、()()()()()()()()()()()()()んだ」

「俺達が一つに還る時、俺達の力も解放される」

 スタークの左手がリリネットの頭に被さった仮面に乗せられた。リリネットは哀愁を帯びた表情で目を閉じ、その姿は、スタークに吸い込まれるようにして消える。

「蹴散らせ、群狼(ロス・ロボス)

 スタークが、その名を宣告した。

 春水は対抗して斬魄刀、花天狂骨を解放する。霊圧の光が晴れた先にいたのは、両肩と両肘を帯で繋いだコートを纏い、袖と靴を獣毛で覆ったスターク。その左眼には、眼帯のような形の仮面を着けていた。そして両手には、自動式拳銃によく似た形の二丁の拳銃。

 スタークの解放とほぼ同時に、十四郎に取り上げられていたリリネットの刀が解けるように消えていった。

 

 水が滴り落ちる音がする。水浸しになった屋根の上に無造作に転がる冬獅郎を、ハリベルは冷えた目で見据えていた。

 冬獅郎は動けない。大規模な水量に小柄な身体を圧し潰されて、肋骨と手足の骨が多かれ少なかれ折れていた。喉からヒューヒューと掠れた笛のような呼吸音が鳴るが、肺に空気が届いていない感覚がある。

 油断したつもりはなかった。慢心もなかった筈。ただ、冬獅郎の自認としては、ハリベルの底意地の悪さが想定以上だった。

 ハリベルは目だけを動かして周囲を確認する。バラガンは慢心が祟って、魔改造したナパーム弾を撃たれたかのような爆炎に飲み込まれた。スタークは漸く重たい腰を上げて、隊長二人を相手取っている。そして、最愛(アメミト)は死神の総大将相手に空気すら焼き焦がすような、炎のぶつかり合いを演じていた。

「ということは……隊長一人とその副官がフリーか……うわ、やだなぁ」

 アメミトのとこ、援軍行きたかったのに。

 面倒臭そうにガリガリと髪を掻く。隊長の方は隻腕になっているから、何とかなるだろうかと希望的観測を浮かべた。

「……一先ず、囮で解放直後の初撃スカされた分の溜飲は下がってるんだよな……カッとなってつい刺身で喰うぞとか言ったけど、よく考えたら幹部殺したら戦後処理面倒臭いか……遺恨とか」

 低音で唸りながら、ハリベルは首を傾げる。冬獅郎は目だけを動かしてハリベルを睨み、内心で舌打ちした。

 藍染を倒すどころか、こんな頭から終わりまでふざけた奴に大技を破られて負けるなんて。冬獅郎は屈辱に顔を顰める。

 しょうがない、と呟いて、ハリベルは大剣を冬獅郎に向けた。

「とりあえず、変に動いて横槍入れられないように、利き腕消し飛ばしておくか」

 刀身に水が迸る。鋒に向かって収束した水が馬上槍の穂先のような鋭い錐形に整えられていく。

(ラ・ゴー)———」

 水が———戦雫(ラ・ゴーダ)が発射されようとした、その時。

 大きな音を立てて、空が割れた。

 戦域にいた全員が、音の方に意識を向ける。割れた空は軋みを上げて徐々に開き、暗闇が奥から覗いた。そこから現れたのは。

「……アーーーーー〜〜〜〜〜…………」

 乳児のクーイングのような、未発達な言葉とも言えない言語を発する破面(アランカル)。その背中には身の丈に近い大きさの斬魄刀を縦に背負っている。

 暗闇は、黒腔(ガルガンダ)であった。

「……何だ……あいつは……?」

「…………得体の知れないのが、出てきたねえ……」

 スタークと対峙していた十四郎と春水は、警戒の段階を引き上げた。

「うわ……来ちゃったか……」

「全く……せっかちな奴だ」

「……ワンダーワイス……」

 露骨に面倒臭そうな顔をするハリベルと、やれやれと肩を竦めるアメミト。それに対してスタークは、破面(アランカル)———ワンダーワイスが参戦した意味を理解してしまう。

「……アウーーー」

 ワンダーワイスは首だけで後ろを振り返り、何かを呼ぶように声を出した。すると、ワンダーワイスの後を着いてくるように、巨大な何かが黒腔(ガルガンダ)から身を乗り出す。

「何だ……あれは……!?」

 現れたのは、虹彩の見当たらない一つ眼の巨大な怪物。恐らくは大虚(メノス)なのだろうが、自我を持たない最下級大虚(ギリアン)の仮面を手の指に爪の代わりに癒着させた姿は、あまりにも他の(ホロウ)と比べて異質が過ぎる。

 ペタペタと、靴を履いているはずなのにまるで裸足のような足音を立てるワンダーワイスは、ふと十四郎の方を見た。そして、僅かに口角を上げると、軽く宙空を蹴って響転(ソニード)で姿を消す。次の瞬間。

 十四郎の背後から、ワンダーワイスがその胸を右手で貫いた。

「ア"〜〜〜〜〜〜……」

 ワンダーワイスは徐に、十四郎の身体に突き刺した右手を引っこ抜く。その背後から、余裕を無くした表情の春水が瞬歩で迫り、ワンダーワイスを斬ろうと斬魄刀を振り下ろした。

 だが、そこにスタークが銃を春水の背中に突きつける。余裕を失った春水の背後を取るなど、スタークには朝飯前だった。

「……悪りいな」

 そう一言断って、スタークは虚閃(セロ)をゼロ距離で放つ。直撃を喰らった春水は、胸を貫かれた十四郎諸共住宅街へ落ちていった。

ワンダーワイス(コイツ)が出てきたってことは、藍染サマがもう待てなくなっちまったってことだ」

 聞こえてないか。そうぼやいて、スタークは残念そうに目を伏せた。

「春水!!十四郎!!」

 元柳斎の意識が、落下していく二人に向く。だが、それを許さない者がいた。アメミトである。

「私を相手にしておいて、余所見とは酷いじゃないか。ええ?」

 黒い灰を纏った鉤爪が振り下ろされる。元柳斎は咄嗟に横に跳んでそれを躱すが、髭の先が僅かに掠めた。元柳斎はすかさず灰———蝕灰獣(コロシオルガニスモス)に侵された髭の先を斬って落とす。斬り落とされた白い髭が、黒く蝕まれて霊子に解けて散った。

 ワンダーワイスが息を大きく吸い込んだ。そして、前傾姿勢で腹に力を入れ、獣のように咆哮を上げる。空気を震わせるそれに霊圧が乗っていることに、何人かが気付いた。

 その咆哮により、雀蜂雷公鞭の直撃による爆炎が吹き払われ、中から無傷のバラガンが姿を現す。砕蜂は爆炎を払われたこと以上に、バラガンが殆ど手傷を負った様子の無い事の方に衝撃を受けた。

「……!狛村隊長!」

 イヅルが張った結界の中で、十三番隊三席の虎徹清音がギョッとした声を上げた。清音はイヅルと共に、アメミトの蝕灰獣(コロシオルガニスモス)に侵された一角の治療に当たっていたのだが、まだ万全の状態では無い左陣が結界から出ようとするのを慌てて止めようと声かける。

 しかし、それを制したのはイヅルだった。

「既に出来る範囲の処置はしてあります。行って下さい……」

「……吉良」

「行って下さい!!!この状況で、僕等だけが生き残っても……皆が全滅したら意味が有りません!!勝つ為にも……行って下さい!!狛村隊長!!!」

 左陣はイヅルの訴えに拳を握る。すまない、と一言断って、結界を飛び出した。

 一つ眼の怪物が口を開ける。藍染達を囲う炎の檻に向かって息を吹きかけ、その勢いの強さに炎は忽ち掻き消えた。

「———厭な匂いやなァ、相変わらず」

「同感だな」

「死の匂いってのは、こういうのを言うんやろね」

「結構な事じゃないか。死の匂いこそ、この光景に相応しい」

 遂に、誰もが恐れていた事態が起きた。

 藍染惣右介。東仙要。市丸ギン。護廷十三隊に血の絶縁状を叩きつけた謀反人達が、今、自由の身となった。

 死神達は絶望する。十刃(エスパーダ)は誰一人落ちていない状況で、最も警戒すべき敵が解き放たれた。

 

「待てや」

 

 そこに、割り込む声があった。

 藍染はその声と、覚えのある霊圧がある方向に目を向ける。

「久しぶりやなァ、藍染」

 そこにいたのは現世の洋装に身を包んだ、一見まとまりの無い集団。共通しているのは、全員が刀を———斬魄刀を手にしている事。

 彼らは、そう。百年前に起きた魂魄消失事件、及び浦原喜助にかけられた(ホロウ)化実験の冤罪事件の折に失踪した、護廷十三隊のかつての隊長と副隊長。"仮面の軍勢(ヴァイザード)"である。

「……平子真子……!やはり現世に……身を潜めておったか……」

 元柳斎は予想だにしない乱入者に、珍しく刮目した。真子は飄々としたまま、特に気にした様子もなくキャスケットを片手で弄ぶ。

「……何だ、アイツら」

「……死神の癖に、(ホロウ)臭い……」

「次から次へと……羽蟻ばかり来よるわい」

「……」

 十刃の三人と、アメミトは仮面の軍勢(ヴァイザード)を見て訝しげに顔を歪ませた。

 真子が元柳斎の下へ瞬歩で跳ぶ。鞘に収めた斬魄刀を肩に担いで、アメミトと対峙する元柳斎にヘラヘラと絡んだ。

「……恨みを……晴らしに来おったか」

「藍染になァ。あんたのことは別にや。にしたって珍しいやん。あんたがこないに最前線で戦こうとるんも」

 真子はチラ、とアメミトを一瞥する。その異質な霊圧に、流石の真子も眉を顰めた。

 噴火寸前の火山の中みたいやんけ。胸の内でそう呟いて、短く息を吐く。

「そらここにメッチャ強い結界張らんならんわなァ。お陰様で、外で見張っとったコイツ見つけられへんかったら、永久にこの周りグルグル回り続ける羽目になるとこやったで!」

 真子がおざなりに親指を後ろ側に向ける。そこにタイミングよく、一番隊副隊長である雀部長次郎が姿を見せた。

 独断で真子達を結界の中に入れる判断をした事を謝罪する長次郎に、元柳斎は皆まで言わせず流した。

「……平子真子……今はおぬしらを"味方"と、考えて良いかの」

 問われた真子は元柳斎から視線を外し、藍染を見据える。

「……そんなもん、決まってるやろ。あかんわ」

 その返答に元柳斎は斬魄刀の白刃を真子に向けかけた。真子はそれに気付いた上で右足の踵を上げて、爪先で霊子の足場を叩く。

「俺らはあんたらの味方ちゃう。俺らは藍染の敵。ほんでもって、一護の味方や」

 真子はそのまま瞬歩で仮面の軍勢(ヴァイザード)の下へ戻る。話は終わったか、と仮面の軍勢(ヴァイザード)の一員であるサングラスの男、愛川羅武が確認を取った。

「……終わってへんけど、もうムリやろ」

 真子は一つ眼の怪物の方に目を向ける。向こうもそろそろ、シビレを切らす頃合いだろうと。

「ウ〜〜〜〜〜〜ア〜〜〜〜〜、アァアアアアアアアアア」

 ワンダーワイスが声を上げた。それに応えるように、一つ眼の怪物が口を開ける。そして、怪物が口を下に向けると、黒い何かを大量に吐き出した。

 死神達の背中に悪寒が走る。黒い何かには、仮面が混ざっていたからだ。

「まさか……」

「あれが全部、最下級大虚(ギリアン)か……!!」

 黒い何かから、最下級大虚(ギリアン)が次々に這い出でる。真子はキャスケットで顔の右側を僅かに隠した。

「———いくで」

 真子の号令で、仮面の軍勢(ヴァイザード)達はそれぞれの仮面を出現させる。(ホロウ)化である。一斉に抜刀し、一気呵成に最下級大虚(ギリアン)の群れへと突撃した。

 先駆けは仮面の軍勢(ヴァイザード)の中でも一際小柄なツインテールの少女、猿柿ひより。雄叫びを上げながら最下級大虚(ギリアン)の一体に躍りかかり、真正面からその仮面を叩き斬る。そのままその後方に連れ立っていた最下級大虚(ギリアン)達の頭を、虚閃(セロ)でまとめて消し飛ばした。

 後に続くように、六車拳西が素手で最下級大虚(ギリアン)の仮面を殴り砕く。背後から迫った最下級大虚(ギリアン)に、一瞥もせず斬魄刀を逆手で突き立て内側から破壊した。その横では久南白が軽やかに跳び回り、足技で最下級大虚(ギリアン)の仮面を次々割っていた。

 一方で、有昭田鉢玄はおそらく縛道と思われる鬼道の結界で複数の最下級大虚(ギリアン)の頭を捉える。柏手の音と共に、最下級大虚(ギリアン)の頭が静かに折れて落ちていった。それを邪魔くさそうに斬り捨てた矢胴丸リサは、結界に収められた最下級大虚(ギリアン)の頭を踏み台にして駆け上がると、虚閃(セロ)を撃とうとする最下級大虚(ギリアン)の上半身をすれ違いざまに千切りにした。

 鳳橋楼十郎は両手を広げ、最下級大虚(ギリアン)を招く。糸に引き摺られるようにして楼十郎に近付いて行く最下級大虚(ギリアン)は、徐々に見えない何かに頭を圧縮されていった。そして楼十郎の指がピアノを弾くように跳ねると、最下級大虚(ギリアン)の身体は深海に沈められた発泡スチロールのように圧し潰された。

 そのすぐ近くで、素手で最下級大虚(ギリアン)の仮面にヒビを入れ、力尽くで真っ二つに割ったのは羅武である。

「す……っ、凄え……!!めちゃくちゃだ……めちゃくちゃ強え……!!」

「一体……何なんだ、こいつらは……!?」

 百年前の事件を知らない死神達は驚嘆する。真子は粗方最下級大虚(ギリアン)を片付けると、瞬歩で藍染の正面に位置取った。

「どや。随分(ホロウ)化を使いこなすようになったモンやろ?」

 真子は(ホロウ)の仮面に手を添える。(ホロウ)化を解くと、不気味な程に感情の乗っていない藍染の眼を見据え、口角を上げた。

「……藍染、終いにしようや」

 真子の斬魄刀が、藍染に振り下ろされた。




原作のマッチアップ的にリサとひよりがハリベルとやり合うんですけど既に勝ち目あんま無さそうな気がしてる

全く関係ない余談
アメミトのイメソンはALI PROJECTの「GOD DIVA」
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