希望によって築かれる
弾かれた春水の剣が宙で遊ぶ。嶄鬼、と宣言して、春水は藍染の真上へ跳んだ。
「今更言われなくても知っている、と言い返されそうだけどねぇ。人は感情を原動力にしがちな生き物なんだよ。ただ、ここで間違えちゃいけないのは、より強い原動力を生むのは怒りだの憎しみだのっていう、後ろ向きな感情だけじゃ無いってことさ」
振り下ろされた春水の剣を、藍染は斬魄刀で受け止めると、そのまま刃先を下向けて滑らせる。藍染はノーマークの左手で剣印を作り、黄火閃を撃ち込んだ。春水はそれを身を捩って躱し、踊る様に藍染から距離を取る。
「愛してる。大切に思ってる。幸せだ。そういう前向きな感情が在って、それとそれを紡ぎ出す相手を護りたいという気持ちは、時に憎しみさえ凌駕するだろうね」
ふわりと、春水の死覇装の袖が優雅に揺れる。
「信念、理念、責任———それらは枠組み。中身が彼方此方へとっちらからない為の器さ。例えそこに重さは無くても、硬さはある。中身だけじゃ……感情だけじゃ、剣は折れてしまうし、何も斬ることは出来ない。まあ、つまるところ……結局人は独りじゃあ、強くはなれないのさ。憎しみにしろ愛にしろ、相手がいてこそ生まれる以上はね。そして、想いを支え、霧散しない様に留めてくれるものこそが、責任であり義務であり、信念というものさ」
花天狂骨の白刃に、春水の横顔が映る。
藍染は春水の弁舌に薄ら口角を上げ、顔に嘲りを滲ませた。
「成る程。興味深い自論だ。だが、それではまるで君が、いいや、心ある者全てが弱者であるかのようにも聞こえるね。他者を求め、他者に縋り、他者に自己の感情を委ねるのは、人の弱さだ。力を持つ者は、それを克服しなければならない。強者とは、理を叩き伏せ自らの内で、意志も、感情も、欲望も、全てを完全な形で循環させる者をそう呼ぶのだ」
「……同じ言葉を蒸し返すのもどうかとは思うけど、コレは確かに拗らせてるとしか言いようが無いな……」
春水は肩を竦める。一周回って、侮蔑よりも憐憫が内心の大部分を占めた。
「そんな風に考えているから、そんなに薄情なのかい?君は」
「何が言いたいのかな」
「だって君、リサちゃんと仲良くなってたあの足癖の悪い娘と戦っていたとはいえ———東仙が死んだ時、
瞬間、藍染の姿が消えた。
いいや、消えてはいない。春水の目の前に迫っていたからだ。春水の視界の上半分に、藍染が振り下ろした白刃が映る。春水はそれを二刀を交差させ、その交点で受け止めた。
「あ〜、怖い怖い。急に無言で斬りかかるなんて驚いた。と……同じくらい安心したよ」
ギリ、と刃が拮抗する。
「君、ちゃんとそういう顔も出来たんだねぇ」
仮面の様に貼り付けた柔和で悠然とした笑みを取り繕う事も忘れ、藍染は無表情に静かに、しかし確かな怒りを双眸に宿していた。
「……此方こそ、驚いたよ。まさか、あの日己の慢心と浅慮故に、奸計によって冤罪を受けたかつての副官を喪った君からそんな風に説かれるとはね。いいや、君がその浅慮故に喪ったのは、副官だけではないか」
藍染はすぐに、口元に貼り付けた笑みを浮かべ、眼には憤怒を滲ませたまま嘲る。瞬間に、春水の霊圧が引き絞った弓の様に張り詰めた。
春水が藍染の剣を押し返し、弾き飛ばす。そのまま二刀の鋒を擦り合わせ、破道の七十八・斬華輪を放った。藍染はそれを容易く斬り払う。
「……いや〜、困った困った。やっぱり君は性格が悪いよ。喪った事が無い……いいや、喪うと言えるほどのものを持たないからって、そういう事言っちゃあいけないんじゃないかな?」
「君にとっては残念な事に、喪失とはそれこそ弱者の象徴と言えるだろう。強者とは———超越者は何者にも奪われず喪う事も無い。超越者から奪い、喪失させる事が可能な者は、同じ超越者の他には存在し得ないからだ。私は喪うものを持たないのでは無い。持つ必要さえ無いのだよ」
「だから捨てるのかい?雛森副隊長も。東仙も。喪う事は無いが捨てる事は出来ると?」
「そうか。君には捨てた様に見えるのか。哀しい程に、視野が狭く浅いのだね」
そこに、背後から奇襲を仕掛けるリサの槍。藍染は鬼道の結界でそれを防ぐと、大きく上に跳躍した。
「おっさん同士でイチャこくなやアホ!!」
「リサちゃん!?」
「待ちたまえ。それは流石に名誉毀損というものだ」
ダンッ、とリサが宙空を蹴り、仮面を被って藍染を追撃した。高速の刺突が連続で放たれ、藍染はそれを最小限の動きで回避する。
「お前だけは赦さん。この場におる全員が同じ気持ちや。自分の都合で人の大事なもん平気で踏み躙って、切り捨てて嘲笑うお前を、アタシは赦さへん……!!その御自慢の鏡花水月、使わせると思うなや!!」
仮面の奥から、リサの眼が藍染を鋭く睨んだ。
倒れかけたビルの上に立ち、それを見ていた市丸は感情を読み取りづらい薄ら笑みを浮かべたまま。
「……
リサが放った
「天譴!!!」
「天狗丸!!!」
左陣とラヴである。
天譴の剣と天狗丸が、藍染をプレス機の様に叩き潰した。
「京楽隊長!加勢するぞ!!」
「悪いねえ。流石に僕らだけじゃあ、勝てる気はしなかったからさ」
大きく息を吐いて、春水が返す。
次の瞬間、天譴の剣が破壊された。砕けた破片の先には、無傷の藍染の姿が。
「……力で叩けば、私を潰せると思ったか?甘いな……いや。恐らくは元来、"力"という言葉の認識そのものが、君達と私では異なっているのだ」
藍染は左陣を見上げる。
「教えよう。"力"というのは、こういうものを言うのだ」
藍染は瞬歩で左陣の上を取り、斬魄刀を振り上げた。左陣は卍解・黒縄天譴明王を解き放ち、迎え撃つ。
だが、それは藍染の一振りに容易く、刀身と左腕を斬り落とされた。
黒縄天譴明王の左腕が瓦礫の山に落ちる。左陣は折れた刀で藍染に斬りかかるが、藍染はそれを難無く受け止めると、そのまま左陣の脇腹を裂いた。左陣の健体が、霊子の足場を維持する事が出来なくなって落ちていく。
「……そうや」
戦いを静観する市丸は独言ちる。
「藍染隊長が怖いんは、鏡花水月を使えるからやない。鏡花水月は恐ろしい能力やけど、それ一つやったら殺されても従わへん奴は山程おる」
それこそ、反旗を翻したハリベルなどはそうだ。尤も彼女と、彼女の
「あのデタラメな
藍染は金沙羅の鞭の様な刀身を掴み、ローズを引き寄せる。
鮮血が飛ぶ。ローズの胸が横一文字に斬り裂かれていた。
「藍染隊長の全ての能力が、他の誰とも掛け離れてるからや。"鏡花水月に用心する"?あかん。不用心や。"他の全てに用心する"?あかん。まだ不用心や」
ローズの手が、金沙羅の柄を力無く滑り落とした。
「空が落ちるとか、大地が裂けるとか、津波に陸が呑まれるとか。君らの知恵を総動員して、あらゆる不運に用心しても、藍染隊長の能力は、その用心の遥か上や」
持ち主の手を離れた金沙羅の、鞭の様な刀身で藍染はラヴを投げ縄の要領で縛る。動きを制限されたラヴを、藍染の剣が一閃した。
「言った筈だ。君達は"不出来な
落ちて行くローズとラヴを見下ろして、藍染は重ねる。
「———本来、
返り血の一つも浴びぬまま、藍染はそれが自然であるとさえ思わせる程、差別的に告げた。
そこに現れる、影一つ。
「……血迷ったか?」
隻腕のままの砕蜂である。
「隠密機動。それも総司令官が敵の正面に立つとは」
霊術院では、戦いに美学を求めず、死に美徳を求めず、己一人の命と考える事を戒め、護るべきものを護る為に倒すべき敵は背中から斬るべし。そう指導されると藍染は説く。隠密機動であれば、尚の事だろうと。
「……裏切者風情が、死神の学を語るとはな。笑わせる」
砕蜂は挑発的に笑んだ。
「一度は教鞭も取った身だよ」
「貴様に教鞭を取らせるとは、ふざけた四十六室だ。そんな事だから、裏切者に足を抄くわれる」
「死者を悪く言うものでは無いよ。足を抄くわれたと言うのなら、君達もそうだろう」
「驚いたな。足を抄くった気でいるのか?この私の」
砕蜂が宙空を蹴った瞬間。影が、増えた。
その数はざっくり、十を超える。
「……分身か。見慣れたものだが、ここまでの数は初めてだよ。成る程……見世物としてはよく出来ているね」
「お褒めに与るとは光栄だな。隠密機動は、見栄えを褒められる事の無い仕事だ。礼の代わりに———その見世物で、止めを刺してやろう!!!」
十を超える砕蜂の影が、一斉に藍染に向かう。藍染は斬魄刀を構え、迎撃しようとした。その時。
無数の刺の生えた鉄球が、藍染の刀を下から弾いた。藍染は柄を取り落とす事こそ無かったものの、全く意識していなかった場所、警戒していなかった者からの襲撃に目を剥く。
鉄球を繋ぐ鎖の先に居たのは、膝が震え、顔は青褪めながらもしっかりと藍染の姿を見据える、稀千代だった。
藍染の注意が一瞬稀千代に向かったその刹那、砕蜂の斬魄刀、雀蜂の一撃がガラ空きになった胸へと突き立てられる。砕蜂は雀蜂を一度抜き引いて、低い姿勢で藍染を下から睨め付けた。
「弍撃、決殺」
雀蜂が、全く同じ場所に突き立てられる。一瞬の静寂。砕蜂は雀蜂の能力で、藍染の身体が消し飛ぶのを待った。しかし。
「……"弍撃決殺"か……面白い技だ。だが、届かない」
藍染の左手が、雀蜂を装着した砕蜂の右手を掴んでいた。
馬鹿な。確かに同じ場所に二度、雀蜂を突き立てた筈なのに。砕蜂は戦慄する。
「死神の戦いは霊圧の戦い。君如きの技の能力など、私の霊圧で全て、抑え込んで見せよう」
砕蜂の腕を掴んだまま、藍染は斬魄刀を上段に構えた。そこに。
「
藍染の左肩を貫いたのは、春水の花天狂骨。
藍染は咄嗟に振り返ろうとし———しかし、出来なかった。腰から上、どころか首すら動かなかった。
「これで君は、動けない」
春水が花天狂骨の能力である、"童の遊びを現実にする"能力で発動したのは、鬼に捕まった者は味方に触れられるまで動けないというルールの、"凍鬼"。この遊びの中では、鬼役の攻撃を受けた者は味方に触れられるか、"遊び"が終わるまで動けない。
斬魄刀を抜く。入れ替わるように反対側の斬魄刀を振りかぶり、春水は藍染の首を狙った。
「その……程度で……ッ、私を封じたと思ったか!!」
藍染は力尽くで、霊圧尽くで"凍鬼"を振り切り、春水の剣を躱す。小さな舌打ちが、春水の口から溢れた。
それでも、春水は一歩、大股で踏み込む。
「嶄鬼」
逃がさない。此処で討ち取る。春水は嶄鬼を宣言。大きく跳躍して藍染の上を取ると、右の斬魄刀を振り上げた。
藍染は春水の剣をバックステップで避けようとして、違和感に気付く。視界の隅に逆撫を回す真子の姿を捉え、しまった、と焦燥を覚えた。
足がぐらつく。藍染は洞察する。視界に変化は無い。真子は反転するのは視覚だけとは断言していない。一対一の戦闘において最も有効なのが、視覚の反転であるというだけだ。では、今反転しているのは。
(
目と耳、そして筋肉の動きがあべこべにされている。正常に立つ事すら不便を覚える。これでは、剣を躱せない。
振り下ろされた春水の剣が、藍染に届くその寸前。
「待て、京楽さん!!止まれ!!!」
一護の声が、世界を捲り上げた。
血飛沫が舞い上がる。その血は一体誰のものか。
「…………は?」
知覚が塗り替わる。春水の剣が斬り裂いたのは、藍染では無く。
「……嘘、やろ……」
藍染が春水の剣を避けた時の二の矢として、鉄漿蜻蛉を構えていたリサだった。
何故。何時から。
呆然としながらも、現実とその要因を解析しようとする春水の背後に、藍染が現れる。
「いつから、と言った顔をしているね」
春水が振り返る。それと同時に同時に、真子が斬魄刀を構えて駆けた。
「君達も知っての通り、私の鏡花水月の能力は"完全催眠"。如何なる時でも如何なる時でも五感全てを支配し、あらゆる状況を錯覚させる事ができる」
それこそ今のように、いない者をいるように見せかけ、互いの距離が十分に離れているように思わせられる。藍染はそう語る。
「せやったら、一体いつから……鏡花水月を遣うたんや!!!」
真子が叫ぶように問うた。それに藍染はならば、と問い返す。
「一体いつから———
返された問いに、真子は刮目する。まさか、リサが真っ先に斬り込んだ、その最初から———。
リサから飛び散った血の雫が、春水の頬に付着して、重力に従って流れ落ち赤い線を引く。心臓がその鼓動を速めて、全身の血管を流れる血が煮沸したかのように熱を帯びた。
今すぐ此処で、斬らねばならない。最早隊長としての義務などは芯からは押し退けられ。ただ湧き上がる怒りと憎悪で、責任という器を満たして、そして割った。
「藍染!!!!」
一度目は、奸計に嵌められ陥れられ。
二度目は、狡猾な罠に堕ちて自らの手で。
斯様な仕打ちを受けて果たして、誰が赦す事が出来ようか。果たして同じ立場に置かれたとして、誰が春水を咎められようか。誰が、怒りのままに剣を振り抜く事を止められようか。
それでも、その全てを嘲笑うかのように。
「———隙だらけだ。全て」
一瞬のうちに。春水も、真子も、砕蜂も、稀千代も、心臓のすぐ真横を深く斬り裂かれた。
「殺しはしない。君達程の力があれば、その傷でも意識を失う事すら困難だろう」
血に塗れた斬魄刀を見せつけるかの如く掲げ、藍染は落ちていく春水達を見向きもせず、最後の敵を見据える。
「見ているがいい。為す術も無く地に伏して、この戦いの行く末を」
そこに、藍染の遥か後方で巨大な火柱が立ち上がった。その中から、影を揺らめかせるのは、総隊長たる山本元柳斎。
「———ようやく総隊長のおでましか。だが、遅過ぎたな。最早、戦力に数えられる隊長は君一人だ」
振り返った藍染は、抑揚の無い声で言った。元柳斎が倒れれば、護廷十三隊は文字通り崩壊する。既に勝機を逸した以上、寧ろ出てくるべきでは無いと。
元柳斎は斬魄刀を構える。
「傲るなよ。小童。己が無知蒙昧である事を知らぬ貴様程度の力で、この儂を斬れると思うてか」
「無知蒙昧とは心外な事を。尤も、斬れるなどとは思っていないさ。既に、斬っている」
「ほざけ!!!」
元柳斎は斬魄刀を振り上げた。それよりも早く、藍染は元柳斎の背後へ回り、振り向き様にその脇腹を斬魄刀で貫く。
"一"の文字を背負った隊長羽織を突き抜けた刀身から、血が滴り落ちる。藍染が引き抜こうとした瞬間、元柳斎の左手がその手を鷲掴みにした。
「藍染惣右介、捕えたり」
元柳斎の宣言と共に、藍染の右手の骨が悲鳴を上げる。藍染はそれでもしかし、何と言うことも無い態度を取り繕った。
「……面白いね。捕えてどうする。君の掴んだその腕は、本当に私の腕なのかい?」
「……眼で見て、肌で感じるだけならそれもあろう。じゃが、腹に刺さった斬魄刀の、霊圧を読み違う事など無い」
周囲の空気から湿気が消える。藍染と元柳斎、互いの喉から水分が奪われる。
「……機を逸したとぬかしたな。逆じゃ」
チリ、と視界の端で火花が散る。
「機は今、熟した」
瞬間、模造品の街のあちこちから、ほぼ同時に巨大な火柱が立ち上がった。
「炎熱地獄……お主の今迄の戦い、その全てがこの為の隙となったのじゃ。彼の死灰と刃を交えねばならぬ時には、少々手を拱いたがの」
藍染は立ち昇る炎の群れを見回し、嘆息する。
「部下達が斬られている隙に、これを仕掛けていたという訳か……老獪な事だ」
「老獪結構。お主には、儂と共に炎熱地獄で死んで貰う」
自らの命を捨てがまる覚悟の元柳斎の眼に、藍染は冷たく軽蔑の滲む眼を向けた。
「退がれ、黒崎一護!!!」
元柳斎は藍染を捕えたまま、振り向く事無く一護に叫ぶ。一護は何故、という疑問を浮かべて元柳斎の背中を見た。
「護廷十三隊でもないお主を、巻き添えにする訳にはいかん」
「……ジイさん……?でも……」
一護を遠ざけようとする元柳斎を鼻で嗤い、藍染は問う。
「他の隊士達はいいのかい?このままでは全て、この炎熱地獄とやらの巻き添えだぞ」
元柳斎は動揺を誘おうとする藍染の問いかけには一切揺らがず、切り返す。
「皆、覚悟はできておる。一死以って大悪を誅す。それこそが護廷十三隊の意気と知れ」
炎が揺らめく。藍染と元柳斎諸共、炎が全てを飲み込もうとした、その時だった。
「ア〜〜〜〜〜……」
背後に、異様な
元柳斎は脊髄反射よりも早く、背後の気配に向けて剣を振るう。そこにいたのは、
炎を纏ったその一撃は、しかしワンダーワイスに難無く片手で受け止められた。
元柳斎は目を見開く。剣を受け止められた事は勿論だが、それ以上に、刀身に纏っていた炎が、真空の中に入れられたかのように消え失せたからだ。
ワンダーワイスの張り手が、元柳斎を地上のコンクリートジャングルに叩き飛ばす。元柳斎は受け身を取ると素早く起き上がり、周囲を警戒するように構えた。
元柳斎の頭に浮かぶ疑問は一つ。何故、流刃若火な炎が消えたのか。
「教えようか」
声に出す前に、それに答える声があった。他ならぬ破面達の首領、藍染である。
「君の流刃若火は最強の斬魄刀。それは間違い無い。まともに戦えば、戦闘能力は私より上だろう。だが、他の全ての能力を捨てて、ただ一点のみに特化させれば、その最強にも対抗できる」
炎熱地獄の炎もまた、勢いを失って遂には消えていく。それを成しているのは他ならぬ、異形の姿に成り果てたワンダーワイス。
「ワンダーワイスは、唯一の改造
ワンダーワイスはその為に、言語能力に始まり知識、記憶、理性に至るまで、人格というものを構成する為の全てを喪失していると藍染は語る。
「とはいえ、流刃若火を封じたからといって簡単に倒されてしまっては、改造の意味が無い。素体は徹底した厳選と育成管理によって作り上げた
藍染の視線の遥か先、瓦礫の山の向こうにひっそりと、半死半生の状態で倒れる拳西がいた。どうやら
「全てと引き換えに手にした能力の前に、君は最早為す術を持たない。さらばだ、山本元柳斎」
ワンダーワイスが、元柳斎へと襲い掛かった。
「……アレが……ワンダーワイス……」
炎熱地獄の熱で生じた滝のような汗を拭い、スタークは
何らかの目的有りきで、崩玉による
「……結局、あの人にとって俺達は……使い捨ての駒でしかねえって事かよ」
「今気付いたのか、コヨーテ」
顔どころか目線すら向けず、アメミトは目を伏せて呆れたように言った。
「あの男にとって肝心なのは、自分が納得のいかない世界を納得のいくように変える事だ。その過程で誰がどれ程の数踏み躙られようと、それ以外に存在意義の無かったものとして処理してるんだから。アイツにしてみれば
そう言ってから、アメミトは伏せていた目を開く。アスファルトに突き立てた二刀を引き抜き、胡座を解いて立ち上がった。
「三十分だ。これ以上は待たな———」
「ええ。今終わりました」
アメミトが右の斬魄刀を向けて言い終わるよりも先に、烈が立ち上がりアメミトを見据える。
「臓器にも骨にも血管にも、勿論表皮にも。切れ目一つ残っていません。疑うのであれば、どうぞご確認下さい」
烈がそう告げると、アメミトは一瞬目を見開いてから斬魄刀を納刀し、横たわって眠るハリベルに駆け寄った。
「ティア!ティア!大丈夫か!?」
片膝をついたアメミトは、ハリベルの上半身を抱き起こす。軽く揺さぶりながら、必死に呼びかける姿に、烈は場違いな微笑ましさを覚えた。
ハリベルの眉間に皺が寄る。小さな呻き声が喉から漏れると、ハリベルはゆっくりと瞼を持ち上げた。
「ぅぁ……アメミト……?」
「あぁ……よかった……!ティア……!」
目を覚ましたハリベルに安堵したアメミトは、目尻に涙を浮かべて抱き締める。無意識に力を余分に込めているせいか、ハリベルは思わず肺から空気を押し出されたような呻き声を出してしまった。
「待っ……アメミト……力強いって……」
ハリベルがアメミトの左の二の腕を弱々しく叩いた、その時。
消えていたはずの炎が、爆ぜた。
「!?な、何だ!?」
スタークが身構える。アメミトはハリベルを庇うように左手をハリベルの膝裏に回して抱き抱え直すと、その頭を強引に自らの胸に押し当てた。
そして気付く。ワンダーワイスの霊圧が消えている事に。
そこにいる誰もが、これから起こる惨状を予測して恐怖する。
次の瞬間、街が爆ぜた。
シロちゃんがハリベルにボコられると京楽さんvs藍染による地獄の地雷原ダンスダンスレボリューション対決が発生するの酷い