犴と鮫   作:鷲谷ヒメリ

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叡智の扉は
誰の前にも開かれる
されどその扉を潜る事ができるのは
好奇心という鍵を
捨てる事をしなかった者だけだ


断章:新生ウェコムンド
探究の誘い


 尸魂界(ソウルソサエティ)虚圏(ウェコムンド)の和平協定が成される、その一週間前の話である。

 瓦礫の山の中、二人の女破面(アランカル)が大型霊蟲の引くリアカーの荷台に、瓦礫を積み込んでいた。瓦礫の山は、虚圏(ウェコムンド)に乗り込んできた死神との戦いで、特別頑丈に造られた研究室を残して崩壊した、第8十刃(オクターバ・エスパーダ)ザエルアポロの住居兼研究施設であった第八の宮だったもので、作業員はロリ・アイヴァーンとメノリ・マリアという、眼帯の様な仮面を左右違いのお揃いで着けた義姉妹。

 二人は、虚圏(ウェコムンド)の女王に君臨した第3十刃(トレス・エスパーダ)ティア・ハリベルに、先の戦争に於いて藍染の計略によって拐かされた、現世の能力者である井上織姫への暴行の罪に対する刑罰として、向こう二週間から一ヶ月の強制労働を課せられていた。

 ……それ以外にも、少々馬鹿馬鹿しい且つ手痛い目には遭ったが、それは一旦割愛する。

「あー!!もう嫌!!なんであたしがこんなことしなきゃなんないのよ!!ハリベルのクセに!!」

「仕方ないよ……元々ウルキオラと一緒に、崩姫(プリンセッサ)の世話を任されてたんだから……」

「だとしてもよ!あんなバケモノみたいな性格した人間の女一匹苛めたくらいで、こんな重罰受ける正当性なんてないでしょ!!」

「これからは尸魂界(ソウルソサエティ)とも現世とも友好的な関係を築いていくって言ってたし、できるだけ遺恨は残したくないんじゃないかなあ……」

 フン、と鼻を鳴らし、ロリは瓦礫を少し乱暴な手付きで荷台に投げ入れる。

「なぁ〜〜〜にが遺恨よ!どうせ現世の人間にあたし達なんか視えないっつーの!死神だってどうせ、(ホロウ)と見たら問答無用で斬りに来るに決まってるし!大体ねえ……」

 ガシャン、と大きな音を立てて、ロリは瓦礫の山を蹴りつけた。その音に驚いた大型霊蟲が跳ねる様に後退って、荷台に積んでいた瓦礫が崩れて振り落とされる。

「あの鮫女なんてねぇ!藍染様が御不在の今になって空いた席に勝手に座ってるだけじゃない!!何が"私が王だ"、よ!!あんたなんかが統治者だなんて、あたしは絶対認めないっての!!」

「じゃあ、グリムジョーと一緒に反逆すればよかったんじゃないの?まあ、纏めて撫で斬りにされそうだけど」

「あんな野蛮人に乗せられるなんて余計に嫌に決まってるじゃない!!負けてるし!!」

「野蛮人って……」

 あの即位宣言の日、グリムジョーはその場で他の破面(アランカル)達を煽動し、当然の如くハリベルに挑み掛かった。結果は火を見るよりも明らかで、瞬きをした時にはもう既に、全員海の藻屑と化した。幸か不幸か誰一人死んではいない。ハリベルは元よりアレでも穏健派だ。

 あの時垣間見えた、燦光する碧玉(グリーンジャスパー)は今も脳裏に焼き付いて離れない。"私に従え"と命じる眼光に、メノリは悟った。逆らってはならないと。

 冷たくざらついた地面に叩き伏せられた無数の破面(アランカル)の姿に、ロリは戦慄した。あの圧倒的な力を一体今まで何処に隠して、これからどう使おうというのかと。

 結果として、二人は王を名乗るハリベルに首を垂れることを選択した。特に藍染に忠誠を誓う———忠誠とは別の感情の方が強かろうが———ロリにとっては例えそれが耐え難い屈辱だとしても、粛清される事の方が恐ろしかった。

 とはいえ、それとこれとはまた話が別である。

「ていうか労働が罰だとか言ってるけど、だったら現世から戻ってきてすぐに、凸凹した石だらけのラグの上歩かせるのは余計意味わかんないんだけど!現世の健康器具とか絶対ウソ!あんなの素足で踏んで体調良くなるわけないじゃない!!メノリだってそう思———」

 喚き散らしていたロリが、片割れに同意を求めて振り返る。だが、それを言い切ることはできなかった。

「……メノリ?」

 いつの間にか、メノリの姿はロリの視界から消えていた。

 

 

 薄暗い空間に、線状の光が差し込む。軋み上げる音を立てて開いたのは、第8十刃(オクターバ・エスパーダ)ザエルアポロがその生涯をかけて蒐集、或いは製造した研究資料が保管されていた倉庫。死神によって大半が持ち去られたそこに、メノリはそっと足を踏み入れた。

 ロリほどではないが、変わり映えのしない単純作業に飽いて、鬱憤に近いものが蓄積していたのはメノリも同じだった。それを晴らす為に、ハリベルに対する不平不満を洗いざらい吐き散らすロリに対して、メノリは違う作業をして気を紛らわせる方を選んだ。その方が多分、後で色々詰められずに済むと考えたので。

 ヒトが入ると自動で灯りが付くようになっていたらしい。メノリが完全に倉庫の中に入ると、壁に取り付けられている乳白色の光球が室内を照らした。机と棚の上は何に使うのか予測出来ない器具が無造作に置かれていて、所狭しと壁伝いに並ぶ強化ガラスのポッドの中身は、死神が戦利品として持ち出したらしく空になっている。それ以外には、どうやら死神の興味を惹かなかったらしい研究レポートを閉じたファイルが、雑多に立てかけられていた。

 コイツは中々楽しいことになってきたぜ。目尻を痙攣させ、引き攣ったような笑みを浮かべたメノリは、白い死覇装の短い袖を肩まで捲り上げて頬を軽く両手で叩き、気合を入れた。

 机と棚に置かれていた器具は、どうやら元々この倉庫に置いてあったものではないようだ、という事は倉庫の中を一回り見て理解した。仕舞うべき棚も箱も見当たらなかったからだ。

 あるとすれば、死神、或いは侵入者との戦闘の前に倉庫の中から必要なものを取りに来た際に、ちょっとした作業を行う為に持ち込んだか。

 尤も、メノリにはザエルアポロの考えなどトレースできるものではないのだが。アレは破面(アランカル)基準で見ても、些か大切なネジが飛んでいる。

 メノリは一旦、元々この部屋には無かったものを一まとめにして、空いている箱に丁寧に整列させておく事にした。整理していくうちに、これらを仕舞う場所も工面できるだろうと踏んでのことである。

 次に取り掛かったのは、立てかけられたレポートのファイルの整理である。これらは一応背表紙に番号こそ振ってあるものの、間が数冊ほど飛んでいるものや数字が重複しているものもいくつか見られ、メノリは頭を抱えた。仕方が無いので、無くなった番号は死神に持って行かれたものとして諦め、重複している番号の中身を確認しつつ分別する事にした。

 一番若い番号のファイルを開く。最初の数行に目を通したメノリは、途端に頭から当初の目的が吹き飛ぶような衝撃を受けた。

 

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 メノリの表情はみるみる内に、初めてディズニー映画を観る子供のような情景と好奇心、興奮に染まった。倉庫の整理という業務は頭から追い出され、その代わりいっぱいに詰め込まれたのは、先人が遺した知の奔流。

 時間を忘れ、口を半開きにして、メノリはレポートにのめり込む。メノリを探す中で倉庫の扉が開いていることに気付いたロリが、名前を呼ぶ声にも気付かない程の集中力で、紙の上のインクを一字一句読み漏らさぬよう何度も何度も繰り返し読み返した。脳に焼き付くまでそれを繰り返すと、読み終えたレポートのファイルを閉じた端から、また次のファイルを開いて同じように読み始める。

 ああ、なんて事。メノリは歓喜した。知恵の泉を飲み干す事がこんなにも幸福な事だなんて。探究の旅がここまで魂を掴んで離さないなんて。ああ、楽しい。愉しい。(たの)しい!

 いつの間にか瞬きさえ忘れていた。このままこの智慧の海で溺れていたい。叡智の荒野を彷徨い歩き、名も知らぬ花を摘み集めたい。喉の渇きも何もかもをシャットアウトして、いつの間にかその場に座り込み、脳だけが走り続けていた。そんな時。

「———リ……メノリ!!」

 肩を強く鷲掴まれ、大きく揺さぶられ、メノリは現実に引き戻された。

「…………ロリ……?」

 カラカラに乾いた口の中で、舌先が上顎に粘着テープのようにくっつきかけながら、メノリは振り返る。そこには、珍しく焦った表情のロリがいた。

 ロリは乾燥して薄ら充血したメノリの眼を見て、苦々しい顔をしてから大きく息を吐く。

「さっきから何回も呼んでるし、背中だって叩いたのに全然反応しないんだもの……何やってるのよ、もう……」

「え……呼んでたの?全然気付かなかった……っていうか、なんか目が痛い……」

「でしょうね。充血してるもの」

 メノリは目と目の間を指で揉み込む。知の源泉な没入して忘れていた生理的苦痛が蘇り、目尻に涙が滲み出た。

「目が乾いた時って蒸しタオルだっけ……?もう今日は仕事切り上げて休みましょ」

 ほら、と差し出されたロリの手を、メノリは取ろうとして———ふと、とある考えが過ぎった。

「……ねえ、ロリ」

「ん?何よ」

「藍染様って、死神と(ホロウ)の研究してた……よね?」

「あー……そうだっけ?そういえば崩玉で死神と(ホロウ)の魂の境界を、超越……?するとか、そんなことを仰っていたような……ないような……」

 ロリは目線を明後日の方向に泳がせて、あやふやな記憶を掘り返す。正直に言えば、ロリは難解な話には興味も無ければ、理解できる頭の回転速度も無かったので、藍染の真剣そうな横顔しか思い出せずにいた。あとなんか、東仙が助手のようなことをしていた気もする。

 メノリはロリの手を借りずに立ち上がると、早足で倉庫を出た。

「ちょっと……メノリ?どうしたのよ。どこ行く気?」

 ロリの問いに振り返りもせず、メノリは歩きながら返す。

「ハリベルのとこ」

「なんで!?」

 あっという間に遠ざかっていくメノリの背中に焦りを覚えたロリは、そういえばメノリが倉庫にあったファイルを持ったまま出て行っている事に気が付いて、慌てて後を追いかけた。

 

 

 藍染統治下では十刃(エスパーダ)の会議に使われていた大部屋に、二人の破面(アランカル)が長机を挟んで向かい合い席に着いていた。

 片や十刃落ち(プリバロン・エスパーダ)唯一の生き残りであり、未完成の崩玉によって生み出された中では最も完成度の高いとされた破面(アランカル)、ガンテンバイン。

 もう片方は先日即位宣言を行い、それに異を唱えたグリムジョーを筆頭とする破面(アランカル)達を力で薙ぎ払った虚圏(ウェコムンド)の新たなる王、ハリベル。

 通常ならば最も上座に座っているであろうハリベルは、敢えて下座側に座っていた。上座だとガンテンバインがどこに座っても遠いか、斜めに顔を向けなければならないのが一つ。それから、山積みの書類を置いておくのに、上座は少々手狭であるのが一つ。それらの書類は全て、尸魂界(ソウルソサエティ)との協議の内容であったり、後の和平協定の為の虚圏(ウェコムンド)側から提示する条件をまとめたものである。その傍らに、パン屑が散らばった皿が一枚置かれていた。

 ハリベルの目は、できるだけガンテンバインを視界に収められるように、顔の角度を正面向けたまま手元を見ている。

「———というわけだ。お前には悪いが、俺はお前の配下になるつもりは無い。同志を連れ、お前の統治下から独立させて———……あー、すまん。ちょっといいか?」

「ん、何だ?」

 ハリベルの目が手元からガンテンバインへ向けられる。ガンテンバインは少し息を緩く吐いて、ガリ、とアフロのような髪型の頭を掻いた。

「その……なんだ……落ち着かないから、飯と書き物の手を一旦止めてもらっていいか?」

「え、ああ。ゴメン」

 ハリベルの左手が皿に伸びた。音も無くその上に置かれたのは、食べかけのホットドッグ。右手の羽ペンはそのままだ。

「ながら食いはあまり関心しないな。そんなところ他の連中に見られてみろ。叱られるならまだいい方で、幻滅されても知らんからな」

「や……ここ数日本気で忙しくてな。ゆっくり飯食う時間もあんま取れなくて。あと私の従属官(フラシオン)のことを言ってるなら、元々割と舐めくさられてて今更幻滅もクソも無いから心配するな。これだけ署名書かせてもらっていい?」

「それはそれで問題だろ」

 とうとうガンテンバインはガックリと肩を落とし、項垂れて大きな溜め息を吐いた。

 ハリベルは手早く手元の書類に自分の名前を書くと、それをホットドッグの皿の前方に積まれた書類の山の一番上に重ねる。羽ペンのペン先をインク壺に沈め、改めてガンテンバインに向き合った。

「それで、虚夜宮(ラスノーチェス)出て独立するから自治権認めてくれって話だっけ」

「お前よく話ちゃんと聞いてたな。聞き流されてるのかと思っていたぞ」

「マルチタスクできないと、王なんて務まらないからな」

「そういうものなのか?」

「そうだが」

 怪訝そうな顔をしたガンテンバインは、何か言いかけてしかし、今言うべきでは無いと思い直して飲み込む。

「……まあ、バラガン陛下とお前とでは王としての在り方が違うというのは、理解するが。それで……」

「ああ、いいぞ」

「そうか……やはり無理……は?」

「独立。私と敵対しないのなら認めない理由が無いしな。現世にも法から逸脱しない範囲であれば、都市毎の自治権を認める制度もあるようだし。政令指定都市……って制度だったかな」

 後で書類作るから少し時間をくれ。あっさりと要望を飲んだハリベルに、ガンテンバインの方が却って頭を抱えた。忙しいって言ってる割に、流れるように自分の仕事を増やすのはいいのか、とも。

「お前……もう少し横暴に振る舞っても誰も文句は言わんだろ……どうせお前に勝てる奴はいないと、あの時周知されたのだから」

「暴君は度が過ぎれば、民衆の反感を育てて破滅を招く。物分かりいいくらいで丁度いいんだよ。長く統治者でいる為には」

 ハリベルは未処理の書類の山に手を伸ばし、二、三枚上から手に取って手元に並べた。どうやら、真面目な話はこれで終わりということらしいと、ガンテンバインは汲み取る。

「調印式とやらは、いつなんだ」

 このまま何も言わずに席を立つのは収まりが悪く、ガンテンバインは雑談を振った。ハリベルはインク壺から引き抜いた羽ペンで書類に書き込みながら、来週だ、と答える。

「それまでに完成させないといけない書類もままあるからな。スタークは書き物に関しては思ったより役に立たなかったし。ウルキオラは字ぃ汚いし。アメミトは別件で浦原喜助と交渉中だし」

「……本当に大変だな」

「ああ、全くだ」

 大変だ、と同意する割には、ハリベルの目はどこか楽しげに細められていた。いや、寧ろこれは、嬉しそう、と表現するべきか。

 そろそろお暇するか、とガンテンバインは席を立とうとする。長居して仕事の邪魔をするのも、あまり本意では無い。

 そこに扉が開く音と、ドタドタとした足音が聞こえてきた。何だ、とハリベルとガンテンバインはほぼ同時に、扉の方へ顔を向ける。

「…………メノリ?何しに来たんだ?作業終わったの?」

「そういう感じには見えないだろ……」

 やってきたのはメノリだった。走ってきたのだろう。息を切らして膝に手をつき、大袈裟に肩が上下している。

 その後から、ロリが必死そうに走って部屋に転がり込んできた。

「ちょっとメノリ!急に走らないでよ!ていうか、何考えてるのよもう……」

「あれ。ロリ着いてきたの?」

「当たり前でしょ!!よくわかんないこと聞かれたと思ったら、説明も無しに急にハリベルのとこ行くとか言い出すんだから!!目的ぐらい教えなさいよ!!」

 ガバッ、と勢いよく上半身を起こし、ロリはメノリに詰め寄る。一見いつもの二人のように見えるが、ハリベルとガンテンバインはどうやら普段とは違う様子だと読み取り、珍しいものを見る目をした。

「ハリベル。少しお願いがあるんだけど」

「何だ」

 ロリの詰問を無視して、メノリは切り出す。

「ザエルアポロの倉庫と、残ってるなら藍染様の研究資料。あたしにちょうだい」

 ロリが息を飲んだ。ガンテンバインも驚愕に目を見開いた。ハリベルはふむ、と頷くと、足を組んで背凭れに背中をピッタリと付けた。

「理由は?」

 緩んでいた空気が一瞬で引き締まるような心地がした。ガンテンバインとロリが固唾を飲むように、メノリに目を向ける。

 メノリは、臆する事無く答えた。

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 ハッキリとしたメノリの回答に、ハリベルは感嘆する。口元を覆い隠す仮面の下でフッと笑うと、組んでいた足を解いて背凭れに付けていた背中を脱力したように軽く丸め、張り詰めた空気を緩めた。それから、何も書かれていない紙を半分に折って、その折り目に沿って破く。

「いいぞ。相続を認めよう。ただ、どちらも一体何がどれだけあるのか、私も把握し切れてはいないから、アパッチに確認させるが……それで問題ないな?」

「構わないよ。それから、第八の宮の再建についても、構造から内装まであたしの主導で計画立てて実行してもいいよね?」

「わかった。ルドボーンにはそう伝えておく。他にはあるか?」

 メノリは首を横に振った。ハリベルは半分に裂いた紙に羽ペンで何かを書きつける。

 紙には、"第八の宮及びザエルアポロ・グランツ、藍染惣右介の知的財産の譲渡"と書かれていた。

 

 

 一週間後。ハリベルが生き残りの十刃(エスパーダ)とアメミトを連れて、"調印式"の為に尸魂界(ソウルソサエティ)へ出向した頃。

 髑髏樹(アルボラ)の能力、"髑髏兵団(カラベラス)"で人手を大量に用意したルドボーンによって再建された第八の宮は、その出入口となる門にかけられた掛け札に新たな名称が書かれていた。

 "虚圏(ウェコムンド)総合科学研究館"と改名されたその宮のとある一室で、一人の女破面(アランカル)が計測器の表示と睨み合いをしている。足首まである白衣を着た彼女の左手には、ファインダーに固定された記録表の紙があった。

「メノリー?言われたもの持ってきたわよ」

 自動化された扉を開け、黒い髪を二つに結った破面(アランカル)が箱詰めされた何かを持って、白衣の破面(アランカル)———メノリに声かけた。

「ん。そこの机の下に置いておいて」

 

【挿絵表示】

 

 振り返ったメノリは妖しさを滲ませた笑みを浮かべて、試験管立てに差した標本と試薬を撹拌した試験管が並ぶ机の下を、右手に持った鉛筆で指し示した。




護廷十三隊にはマユリ様がいて現世には裏腹がいるので虚圏にも科学者が欲しかった
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