緋月昇は記録者である~きらめきの記録~   作:Feldelt

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第3話 召喚

上里様の話を脳内で整理する時間を取れたことは大きい。俺もより深い段階まで状況をかみ砕くことができる。

霊札も好き放題使えるならと右腕を生やしてみたが確かに何もないところから霊札を好きなように取り出すことができた。つまり、今までは構想段階でかつ枚数制限でできなかったあんなことやこんなことが実際に可能となる、か……

まぁ戦闘自体はつつがなく終わっているから本当に、いろいろ試せるということを理解して、実行するだけだろう。まずは右腕を骨折に偽装する必要がなくなったことを喜ぶか。

 

 


 

 

この世界での生活が始まってから約一週間。俺は記録した報告書を大赦に送ったり、新型バーテックスの考察を行ったり、霊札の使い方を試行錯誤するなりして過ごしていた。一週間もあればなんとか上里様……ひなたを『ひなた』と呼ぶこともできるようになりどうにかこうにか普通の中学生みたいな生活を送ることができている。まぁ、こんな事態に巻き込まれてる時点で普通とはかけ離れているが。

 

「ひなたー、勇者部全員そろってるわよ。それで話って何かしら」

「単刀直入に言えば、皆さんの頑張りが早速実を結びました。神樹様の力が少し戻ったんです」

「おぉー!」

「これから戦いも激しくなることが予測されます。なので、援軍を呼ぼうと思います」

「援軍、か。別の時代の勇者……」

「のぼるん、ネタバレは厳禁だぜ~?」

「了解……思い当たる節はあるけど黙っておくよ」

「とても不思議な体験をすると思います。それでは、呼びますよ」

 

瞬間、部室が光に覆われる。あまりにも眩しいその光に抗うため瞼を閉じたのだが、再び瞼を開けた時には讃州中学とは違う制服を着た二人の少女がいた。どちらにも、見覚えというか面影がある。

 

「あれあれ?ここはどこかな~?」

「知らない人たちがたくさん……あれは、そのっちのお姉さん?」

 

おそらく、というか確実に先代勇者の『鷲尾須美』と『乃木園子』だ。つまり、二年前の東郷と園子本人ということになる。……いくら彼女たちの元の時間は進んでないとはいえ、無法だな……

 

「私、お姉さんいないと思うけど……でも、似てる?お姉さんなのかな~?」

「私に妹いないと思うけど……でも、似てる?妹なのかな~?」

 

……頭が痛い。確実にわかってやっている。ツッコミ待ちなのが見え透いている。勘弁してくれ……

 

「これは、同一人物っぽいわね……小学生の時の園子だわ」

「こっちは……東郷さん?」

「あ、初めまして。今は東郷ではなく鷲尾です」

「こっちも小学生の東郷本人っぽいわね……」

 

抱える頭がいくつあっても足りないが、もう一度部室が光るものだから追加の召喚があったのだろう。三人目の少女も合流していた。

 

「うわっ!?なんだなんだ、瞬間移動とか不幸体質とかそういう問題じゃないだろ……」

 

聞きなれない声、見慣れない姿。されども俺には誰かがわかる。それは俺だけではなく、東郷と園子もまた、その少女が誰かを認識して目を見開いている。そうだよな、君たちはそういう反応をするだろう。

 

「銀!よかった、はぐれたかと思ったわ」

「ミノさんミノさん、なんだかすごいことになってるよ。私はね、自分と巡り合ったんだ~」

「お前ら数秒でアタシに差をつけるな、銀さんにわかるように説明してくれ」

「えぇ。えぇっと……」

 

須美が説明をしようとしたときに警報が鳴る。相も変わらず、タイミングがいいのか悪いのか……

 

「細かい説明は緋月!あんたに任せるわよ!」

「そうなると思いました、じゃあまずこれを一人一枚持ってってください」

 

周囲に霊札を展開し、変身した勇者に一枚ずつ、それと園子にも持たせる。

 

「昇、これ持ってどうするのよ。位置把握ならレーダーがあるでしょ?」

「通信機のかわりみたいなものだ。敵は数が多い。逐次端末動かしてってやるより別個で通信を担保したほうがやりやすいだろう。そのためのものだ」

「すごい、ハイテクだ~!」

「それじゃあ、今召喚された3人はこっちで説明するから……前線は任せる」

「任せなさい、さくっと殲滅してやるわ」

 

飛び出していく勇者5人を見送りながら、樹海の適当な枝に腰を下ろす。

 

「さて、どこから説明するかね」

「あの……私たちも戦わなくていいんですか?」

「状況を理解する方が先だとうちのボスが判断したから従ってるだけさ。実際、ある程度聞いてからのほうが動きやすいだろうしな」

 

そう言って俺は説明を始める。今戦っている敵がなぜ襲ってくるのか、どうしてそんな戦いが起こっているのか。何故その戦いを止めないといけないのか。須美、園子、銀の質問は的確でその質問にも答えながら説明を続けていく。

 

「あの……素朴な疑問なんですけど」

 

あらかた説明を終えたあと、銀が口を開く。

 

「今ここに、大きくなった須美と園子はいる。でも大きくなったアタシはいない。ってことは……アタシは出世して大赦の本部勤めってことですか?」

「……よく気づいたな……」

 

東郷と園子にしか聞こえないように出力を調整した霊札を用意して話始める。ここからは、俺の嘘だ。俺が先手を打っておいてやる。だから、そのことについては考えるな。そういう思いで俺は口を開く。

 

「銀、お前は今俺と一緒に大赦の本部で働いている。活発で何をするにも人助けを優先するから自分の仕事が疎かになって、そのしわ寄せがいっつも俺のところに来る。全く……ほんとに立派な奴だよ、お前は」

「本当ですか……!?あはは、嬉しいけど、ちょっと仲間外れみたいだな……」

「毎日のように東郷と園子の様子を教えてくれって言ってくるんだ、仲間外れになんてならないだろうし、なるつもりもないだろ?」

「それはもちろん!」

「じゃあいいじゃないか。俺は俺で小さい頃の銀に会ったでしばらくは話に困らなくなるしな……」

「ふふ、ミノさん。私たちはいつでも三人一緒だよ」

「えぇ、そうね」

 

そんな風に結束を再確認してる少女たちを横目に、俺は霊札にぼそりと話す。

 

「そういうことだ、そういうことにしておいた。文句なら後で聞く」

「緋月くん……」

「のぼるん……」

「戦闘はどうだ?」

「終わりました!でも、第二波が来ます!」

「了解、こっちの3人は説明を終わらせたから合流させる」

 

3人にも霊札を持たせ、戦場に赴く。確かに進行は第二波を確認していた。

 

「お疲れ様、どう?緋月の話で理解できた?」

「えぇっと……まだ追い付いてない部分もありますが……」

「私はだいじょうぶ~、ミノさんは~?」

「アタシは、半分くらいかな……戦いが終わったらもう一回須美と園子に聞くよ」

「わかったわ、銀」

「おっけーだよ~」

「それじゃ、ここからは身体を動かす番。頼りにしてるわよ!」

『はい!』

 

敵の第二波へ、勇者8人が進んでいく。……記録、なんかとってもめんどくさいことになりそうで気が重いな……あぁやだやだ。




次回、第4話「召喚、再び」

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