緋月昇は記録者である~きらめきの記録~   作:Feldelt

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第5話 合流

戦場に到着したとき、すでに第一波は片づけられていた。夏凜が先に見つけた西暦から来た勇者たちと思われる人間五名は固まって動いている。いい判断だ、正確に状況を判断できる頭脳枠がいるのだろう。……しかし、本当に5人だとはな……

 

おそらく、今風先輩と喋っているのが乃木若葉だろう。園子の面影がある。そして……身長は低いが手に持っている盾のような武装……それを扱っていたのは土居球子だ。その隣にいる白い勇者装束を纏っているクロスボウのような武器を持っているのが伊予島杏、まるで友奈と同じ顔、同じ身長、同じように武器を持たず素手で戦っているのが高嶋友奈だろう。

 

「嘘だろ……こ、こんなことがあるのかよ……」

「えぇぇぇぇぇ!?」

 

真面目な会話をしているリーダー二人の横で二人の友奈は驚愕に目を丸めていた。かくいう俺も、まぁ驚かずにはいられない。同じ顔なんざそうそう見ない。ドッペルゲンガーとはまさにこのことだろう。……時間軸の違う同一人物二組に慣れてしまったからか、余計に全く違う別人なのに顔が同じというのに驚いてしまったのかと冷静になる。さて、ということは最後の黒髪で鎌を持つ勇者が、最後の一人……名前はわからないが……後から聞けばいいだろう。

 

「……ッ」

「気づくか、だいぶ警戒されてるな」

 

注意深く、合流した勇者たちの喧騒の外から黒髪の勇者を注視する。体型から推察される年齢と鎌を使っているということから得られる戦闘距離。目の動きや表情の機微など読み取れるだけ読み取ろうとしたが……高嶋友奈の後ろにそそくさと動いてしまった。身長差からそれでも隠れ切れてはいないが、確実にこちらを認識し、警戒している。状況判断したのもこの子か?

 

「第二波が来ます!」

「了解、国防に入ります!」

「向こうとは連携で敵に当たることになったわ!とはいってもやることは変わらないから、とっとと済ませちゃいましょう!」

「はい!結城友奈、行きます!」

 

この状況で警戒心を捨てず団結ではなく連携を選ぶその冷静さ……西暦の勇者は、相当に過酷な戦いをしていたことが見て取れる。……なるほど、文献だけでは得られない生の情報というのはこういうのを示すんだな……

 

「緋月くん、安全なところに退いて。敵の数が少し多いわ」

「いいやここでいい。ここからじゃないと見えないからな。それに……」

「それに?」

「自衛くらいはできる。そのための霊札だ」

「はぁ。それじゃあ私は友奈ちゃんの援護に入るから……もしこっちに敵が来たら教えて」

「了解。それじゃあ、記録に入るか……」

 

 


 

新型バーテックスが増えたとはいえ、特に苦戦することもなく戦闘を終えた。

小型だというのに射手型のような遠距離攻撃を主とする個体や、盾のように硬い個体など新型も多種多様だが……よく対応出来ている。対応出来ないのは俺の報告書と新型についての考察、その他書類の山だろうか。

 

「若葉ちゃん!皆さん!お久しぶりです。お疲れ様でした」

「ひなた!無事だったか。久しぶり……?いったいどういうことだ?」

「それについての説明なら、そこの昇がしてくれるわよ」

「プロジェクター繋いでる最中だ、ちょっと待ってくれ」

 

西暦の勇者5人に向けてこの世界の説明をする。前に小学生3人に向けた説明よりもより踏み込んだ話ができたのは大赦本庁で現状説明した際の資料を使えたからだろう。

 

「わかりやすい説明、ありがとうございます」

「のぞむの奴が喋ってる時に似てたな〜、それだけはタマでも理解出来たぞ」

「つまり、あなた達は未来の存在というわけね」

「わー、よく分からないけどすごいことになってるんだね!」

 

……伝わってるのか?これ。

 

「やることはこちらでも変わらない。そういうことだな」

「あぁ。当時よりも出力の上がった勇者システムで、力を思う存分使って欲しい」

 

もはや勇者部の人間としてではなく大赦の人間扱いされている節は少し感じたが、西暦勇者もまた状況を理解したようだ。しかし……『のぞむ』って、誰だ?

 

「差し支えなければ、その、『のぞむ』っていう人は誰なのか教えて欲しい」

「それならあんずが詳しいぞ!」

「詳しいって程じゃないけど……よく話すかな。えぇっと、望さん──緋月望さんは大社の研究部の主任で、主に勇者システムの細かなブラッシュアップをしている人です。私達のフィードバックをもとに、細かな調整をしてくれます」

「へぇ、昇と同じ苗字なのね。先祖なのかしら」

「大赦にいたのならその可能性もあるんよ、にぼっし〜」

「それでやってることが今と対して変わってないのは……さすがと言っておこうかしら」

 

何がですかと言いながらも、自分の先祖もまた記録を仕事にしていたと思うともはや諦めまで出てくる。逃れられない血の運命ってやつか……

 

「それでは、私達はこれから寄宿舎の方に行って必要な物を準備してきますね。緋月さん」

「大赦の方への生活必需品の発注なら、もうやっている……が、今日明日では届かないぞ。自分たちでかき集めるしかない」

「じゃあアタシが寄宿舎にあるものから集めて来ます!」

「私も手伝うわ、銀」

「わたしも〜」

 

言うが早いか先に寄宿舎生活をしていた小学生組が動き始める。生活必需品ねぇ、小学生組の時は衣服とか転送されてなくて大変だったんだよな……東郷と園子のお古でどうにかなったが、同一人物だったから何とかなったわけでそれでも下着類とかは不足したし、そのせいで俺が調達する訳にもいかなくなって領収書から遡って大赦に払ってもらうとかいうクソ面倒なことになったんだよな……今回も同じことが起こるだろうし、ひなたに先に領収書が必要な話だけでもしないとな……

 

「毎回これやるのか……?いくら大赦が割となんでも勇者に協力してくれるとはいえ正規の手続きは踏まないといけないんだぞ……?うへぇ」

 

書類整理もしないといけない都合上寄宿舎組を手伝いに行く友奈に先の件の言伝を頼み、積まれた書類の整理を始める。

 

「あ、昇先輩!お姉ちゃんから伝言です!」

「ん」

「若葉さんたちと須美ちゃんたちの歓迎会をやるから、昇先輩にはカレーを作るの手伝って欲しいって……」

「……今すぐじゃないだろう、多分今は東郷と買い出しに行ってるはずだ。人数が人数だから荷物も多くなると仮定して30分から40分は時間あるな。樹」

「はい」

「カレーのためだ、書類整理手伝ってくれ……」

「はい!」

 

人使いが荒いななんて思いながらも、適材適所な人選である以上文句は言えない。米は東郷に任せられるから俺は多分肉の下ごしらえとかの担当だろうな……

 

「皿あったっけな……樹、悪いけど先輩に皿の確認の連絡入れてくれ、その書類はもらう」

「わかりました!」

「もし皿なかったら友奈と夏凜に調達して欲しいと連絡。深めの紙皿でいい。領収書必須」

「忘れてたって……じゃあ友奈さんに連絡しますね」

「頼む」

 

一回帰って包丁セット持っていかないとな、どうせ寄宿舎で作ることになりそうだし……あー、寄宿舎に皿あるかな……いやいいや。この際もういい。領収書さえ貰えれば大赦がなんとかしてくれるから……俺領収書管理までしないといけないのか。

 

「やることが、多いな……」

 

結局書類整理は様々な横槍で滞りに滞り、樹に手伝って貰ってようやく半分という進度で時間切れとなった。

まぁ、歓迎会自体は無事に始められそうで良かったよ、ほんと……

 

 

 

 

 




次回、第6話「歓迎会」

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