無趣味な俺がカードゲーム始めたら、人生楽しくなった件について   作:苦労砲丸

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第1章
新しい趣味を始めてみたら、初心者に優しい(上におっぱいがデカい)キースさんと出会った件について


【四月発売の新作TCG『エヴォルVS』にイラストレーターとして参加させていただきました! カッコいいドラゴンをデザインしたので、是非とも手に入れてください!】

 

 ――きっかけは、SNSでフォローしてる絵師のそんな呟きだった。

 別に熱心に追いかけているファンというわけでもないし、カードに興味があったわけでもない。

 ただ少し、その呟きと一緒に載せられていたドラゴンの絵を格好いいと思っただけだ。

 

 燃え盛る炎を背に、翼を大きく広げて立つ紅蓮の竜。

 手に巨大な剣を持っているおかげで人型に見えるその竜は、俺の中の男心というやつを激しく刺激した。

 

 しかも、その竜のカードは今度発売されるスターターデッキで簡単に手に入るという。

 これがカードパックを買いまくらなきゃ当たらないレア中のレアとかだったら悩むところだったが、千円程度で手に入るというのなら買うだけ買ってみようという気持ちにもなる。

 

 というわけで、俺こと谷本大和(たにもと やまと)は、人生で初めてカードショップにやって来た。

 三階建てのその店は、販売エリアと実際にカードで遊ぶエリアが分けられている、かなり本格的なカードショップのようだ。

 

 定期圏内にこんな店があったんだな~と思いながらレジに向かった俺は、お目当てのスターターデッキを探していく。

 

(へぇ……色んな種類のデッキが発売されてるんだなぁ……)

 

 探していたデッキはすぐに見つかった。

 『本日発売!』という派手なPOPで飾り付けられたその棚には、お目当てのドラゴンデッキの他にも幾つかのデッキが並べられている。

 獣たちで構成されたデッキやかわいい魔法少女たちのデッキ、お化けやロボットのデッキなど、カードゲーマーのニーズに合わせて多種多様なデッキが販売されているようだ。

 そして、並べられているデッキたちの数が相当少なくなっているところを見るに、既に多くの人たちがこのデッキを購入したということなのだろう。

 

(まあ、それもそうか。結構注目されてるもんな……)

 

 取り立てて大きな問題もないこの世界。娯楽にあふれている現代だが、その中でも一番の人気はカードゲームだ。

 カード情報を読み込んで立体映像として出力する技術が発明されてから、カードゲームは子供から大人まで、みんなが楽しむ大人気コンテンツへと成長した。

 

 プロカードゲーマーなんて職業が生まれてしまうくらいにはカード人気が高まっている昨今、この『エヴォルVS』もそういった時流を読んで生み出されたゲームなのだろう。

 絵師も人気どころを揃え、宣伝もありとあらゆる形で実施。毎週水曜日の夕方にはアニメまで放送されているようで、人気が爆発する気配がぷんぷんしている。

 

(まあ、俺には関係ないんですけどね~)

 

 そんな感じで世界中で流行しているカードゲームだが、俺は全くと言っていいほど遊んだ経験がない。

 友人たちが遊んでいるところを見たことはあったが、別段興味が湧かなかった。

 

 興味がわかなかったのはカードゲームだけでなく、娯楽全般においてそうだ。

 無趣味の寂しい奴と言われても仕方がないくらい、俺は遊びと縁のない人生を送っていた。

 

 ちなみに友人も少ない。そりゃあ、カードゲームが流行りに流行っているというのに、それを一切やらない男が周囲から浮くだなんてのは当たり前の話だ。

 だからといって無理にカードを始めるつもりはなかったし、今回のこのデッキもカードを鑑賞するために買っただけでプレイするつもりはさらさらない。

 

 カードショップの空気にも慣れないし、さっさと目当ての物を買って退散しようと考えた俺は、デッキを手にレジへと向かった。

 

「すいませ~ん。これ一つくださ~い」

 

「はいは~い! 少々お待ちくださいね~!」

 

 新作カードゲームの発売日ということで、店員さんも忙しくしているようだ。

 無理に急かすのも悪いし、少し待っていれば来てくれるだろうと……そう思った俺が、レジ前で待機していた時だった。

 

「おい、そこのお前」

 

「はい……っ!?」

 

 不意に声を掛けられた俺は、振り向いた先で驚くべきものを目にして唖然としてしまった。

 とても……とても綺麗な女性が、こちらを見つめていたからだ。

 

 いや、正しくはそれに驚いたのではない。確かに綺麗なお姉さんに声を掛けられたことに驚きはしたが、それだけで言葉を失うくらいにびっくりしたりはしない。俺を驚かせたのは、その女性の格好だ。

 

 黒いジャケットを羽織っている彼女だが、その下は何故か星条旗ビキニという意味不明な格好である。

 下はデニムのホットパンツを履いており、当たり前のようにへそも胸の谷間も丸出しという露出度マシマシな上にスタイル抜群のその姿に、俺は目を点にしてしまった。

 

(え? 何あの人? アニメから飛び出してきた人? それとも痴女? あるいは俺が知らないだけで、カードゲーマーってああいう格好の人が多いの?)

 

 色々と理解不能な状況なのだが、他のお客や店員たちが全く動じていないところを見るに、彼女は不審者というわけではないのだろう。

 これがデフォルトの界隈ってなんかすごいなと呆然としながら思う俺へと、星条旗ビキニの女性が質問を投げかけてくる。

 

「お前……そのデッキ、買うのか?」

 

「えっ? ああ、はい……」

 

「買うのはそれだけか? 他に何か買ったりしないのか?」

 

「そ、そのつもりですけど……?」

 

 何故、俺は問い詰められているのだろうと思いながらも、思わず正直に答えてしまう。

 そんな俺をまじまじと見つめていた星条旗ビキニの女性は、何かを考え込むように目を細めた後……小さな声で呟いた。

 

「なるほど……お前、初心者だな?」

 

「えっ? わっ!? おわあっ!?」

 

 そう呟いた次の瞬間、その女性はずいっと俺との距離を詰めてきた。

 ぶるんっ! と音を響かせるくらいに大きく揺れた胸と、近付いたことではっきりと見えるようになってしまった谷間を目の当たりにして驚きの声を上げる俺へと、ニイッと笑みを浮かべた彼女が言う。

 

「新発売のカードゲームが出るから、自分も初めてみようと思った……って顔じゃねえな。イラストが気になって買いにきたってところか」

 

「な、なんでわかるんですか!?」

 

「オレは大勢の初心者(ニューピー)を見てきたからな、そいつの面で大体の事情は判別できる。お前、名前は?」

 

「た、谷本大和です……!」

 

「そうか。ヤマト、とりあえずだがトレーディングカードにはこいつが必需品だってことを覚えておけ」

 

 そう言いながら、星条旗ビキニの女性が自分の胸の谷間に手を突っ込む。

 その刺激的過ぎる光景に思わず目を逸らした俺へと、彼女は何かを差し出してきた。

 

「ほら、カードスリーブだ。買ったカードはこの中に入れるんだよ。そうしないと、歪んだり傷付いたりしちまうからな」

 

「そ、そうなんですね……」

 

「とりあえず、こいつはプレゼントしてやるよ。デッキのカードはこいつで保護してやれ」

 

「いや、受け取れませんって!」

 

「遠慮すんなって、オレは山ほど持ってるからよ」

 

 そう言いながらニイッと笑う女性だが、そういう意味ではない。

 女の人が胸の谷間から取り出した品を受け取るだなんて、あまりにもアレ過ぎるではないか。

 

 魅力的ではあるが、受け取ったらマズい気もするそれを強引に押し付けてくる女性と格闘している間に、ようやく店員さんがレジにやって来た。

 会計を済ませている間に女性からスリーブを受け取る羽目になってしまった俺へと、彼女が言う。

 

「おい、ヤマト。この後、時間空いてるか?」

 

「えっ? 特に予定はないですけど……?」

 

「よし。じゃあちょっとオレに付き合ってくれ。大して時間も取らせねえし、この店のデュエルスペースで済む話だからよ」

 

「はぁ……?」

 

 やや不本意な形ではあるが、こうしてスリーブも受け取ってしまったことだし、この人には恩がある。

 怪しいが悪い人ではなさそうな彼女の頼みを引き受けた俺が間抜けな声を漏らす中、近くをすれ違った男の子が星条旗ビキニの女性へと声をかけてきた。

 

「あっ! キースさんだ! こんにちは~!」

 

「おう、こんにちは。今日も楽しくカードで遊べよ~……!」

 

(あっ、やっぱり普通に受け入れられてる人なんだ……)

 

 小学生くらいの男の子が見るにはあまりにも刺激的な格好をしている彼女だが、特に問題と思われていないことから察するに、この店では当たり前の光景みたいだ。

 やっぱり悪い人じゃなさそうだな……と考える俺へと、本日三度目の悪い笑みを浮かべた女性が言う。

 

「ククク……ッ! 自己紹介が遅れちまったなぁ? オレは喜井スミレ。キースさん、って呼んでくれ……!」

 

「あ、はい。わかりました」

 

 とりあえず返事をしつつ、俺はキースさんの後に続いて、店の上の階へと昇っていった。

 

 

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