無趣味な俺がカードゲーム始めたら、人生楽しくなった件について   作:苦労砲丸

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人生初のカードゲームをしてみたら、結構楽しかった件について(前編)

「ククク……! 騙して悪かったなぁ、ヤマト……!! こんな形でオレの仕事に協力させちまって、申し訳なく思ってるよ……!」

 

「いや、別にいいですよ。色々教えてもらいましたし、カードをスリーブに入れるのも手伝ってもらいましたし」

 

 それから二十分後、俺はこの店のデュエルエリアで初のカードバトルに臨もうとしていた。

 専用のテーブルに腰掛ける俺へと、なんだか闇バイトにでも誘ったような雰囲気を醸し出しながら声をかけてくるキースさんへと答えながら、俺は尋ねる。

 

「でも、本当に俺なんかでいいんですか? 探せば普通にもっと相応しい人がいると思いますけど……?」

 

「何を言ってるんだぁ? お前以上の適任なんてそうそう見つからねえぞ? これまでほとんどカードゲームをプレイしたことのない人間なんて、カートンに一枚入ってるかどうかの超レアレベルじゃねえか」

 

 独特の例え方をしてくるキースさんの話に、俺は引き攣った笑みを浮かべることしかできなかった。

 

 さて……どうして俺が興味のない『エヴォルVS』をプレイすることになったかといえば、キースさんの仕事が関係している。

 どうやらキースさんはカードゲーム関連の記事を書いてはサイトに投稿しているライターらしく、この店にも取材のためによく訪れているそうだ。

 

 今回、『エヴォルVS』が発売されたということで、早速題材として取り上げた彼女は、【カード初心者でも楽しめる新作TCG!!】というネタで一本記事を書くつもりらしい。

 

 始まったばかりのカードゲームである『エヴォルVS』は、それこそ今がスタートとしてうってつけのタイミングだ。

 今回はルール解説や実際のプレイの感想を、適当に見つけた客に協力してもらって記事にするつもりだったらしい。

 

 そして、その協力者として白羽の矢が立ったのが俺だということだ。

 

「相手はこの店の常連で、それなりの期間カードゲームをプレイしているやつだ。ただ、『エヴォルVS』に関してはお前とプレイ歴は変わらねえし、使うデッキもお前と同じにしてもらってる」

 

「なるほど、条件はほとんど同じってことっすね」

 

 カードをスリーブに入れながら効果を確認したし、遊び方もキースさんに教えてもらった。

 報酬も貰えるとのことだし、軽いバイト感覚で遊んでみるのも悪くないだろう。

 

 ということで、諸々の準備を整えた俺は、初のカードバトルに挑もうとしていた。

 

「えっと、ヤマトくんだったよね? わからないことがあったら焦らず考えたり、キースさんに質問していいからさ。楽しく勝負しようね」

 

「あっ、ありがとうございます……!」

 

 対戦相手である中年のおじさん……手塚さんの気遣いに感謝しつつ、頭を下げる。

 キースさんが選んだもう一人の協力者である彼は、穏やかな雰囲気でとても落ち着いて話ができる人だった。

 

「じゃあ、始めようか。エヴォルバトル・スタート!」

 

「す、スタート……!」

 

 試合開始の掛け声を恥ずかしさを覚えながら口にする。

 やっぱこの雰囲気には慣れないなと思う俺の前で、先攻を取った手塚さんがプレイングを開始した。

 

「ふむ……じゃあ俺は、セーフゾーンにレベル1のユニット〈ベイビードラゴン〉を召喚するよ」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

ベイビードラゴン

LV1 P3000 ドラゴン

召喚コスト1 進化コスト無し

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

(〈ベイビードラゴン〉……そっちできたか……)

 

 俺たちが使っている『赤のドラゴンデッキ』には二種類の切り札ユニットが収録されている。

 手塚さんが出したレベル1ユニットから、どちらの切り札を出すつもりなのかを判断した俺は、ターンを貰うと同じように手札からユニットを召喚した。

 

「俺のターン。エナジーをチャージして、手札からセーフゾーンに〈火種のドラゴンエッグ〉を召喚します」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

火種のドラゴンエッグ

LV1 P2000 ドラゴン

召喚コスト1 進化コスト無し

 

効果……このカードが『ドラゴン』を持つカードの進化元になった時、デッキの上から5枚を見て、その中の赤の『ドラゴン』を持つカードを1枚手札に加える。残りのカードは好きな順番で山札の下に戻す

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

「うわ~、ドラゴンエッグ引けてたか~! となると、ちょっと厳しそうだな……」

 

 俺が出したユニットを確認した手塚さんが苦笑を浮かべながら呻く。

 ここから先の展開を見通せるのかと驚きながら、俺は彼にターンを回した。

 

(このターンまでは静かなだよな。本格的に動くのは、3ターン目からだろうし……)

 

 手塚さんはセーフゾーンにいるユニットをバトルゾーンに移動させれば、俺に攻撃を仕掛けることができる。

 ただ、攻撃を仕掛けた場合にもライフチェックというリスクがあるわけだ。

 

 ライフから捲れたユニットのパワーが手塚さんのユニットよりも上だった場合、攻撃を仕掛けたユニットは破壊されてしまう。

 折角育てたユニットが簡単に破壊される事態を避けるためにも、もう少しユニットを育てておいた方が無難だ。

 

 だから、手塚さんはセーフゾーンからカードを動かすことはしないだろうなという俺の予想通りに、彼は〈ベイビードラゴン〉をレベル2のユニットに進化させ、同じくレベル2のユニットを一体手札から場に出しただけでターンを俺に回してくる。

 

「俺のターン……手札からレベル2のユニット〈火竜 イグニス〉を〈火種のドラゴンエッグ〉に重ねて進化します」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

火竜 イグニス

LV2 P4000 ドラゴン

召喚コスト3 進化コスト0

 

進化元効果……このカードのパワーを+1000する

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

 

 順当なレベルアップでユニットを強化しつつ、ドラゴンエッグの効果でデッキからカードをサーチする。

 さらに進化時には山札から一枚カードをドローできるため、俺はカードを一枚使って二枚のカードを増やすことができた。

 

 それに、まだエナジーは手付かずで残っている。

 俺はそれを使い、盤面を整えていった。

 

「手札からレベル2のユニット〈マグマレックス〉を召喚。俺はこれでターンエンドです!」

 

「ふ~む、綺麗にデッキを回すね。初心者とは思えない動かし方だ」

 

 手札の補充やコストの使い方、そういった部分を褒めてもらえた俺は気恥ずかしさを覚えながらも微妙に嬉しくなり、微笑んだ。

 褒められるのってやっぱり気分がいいなと思う俺であったが……そんな俺の頭に、重くて柔らかい何かが乗せられる。

 

「さあ……ここからが本番だぞ、ヤマト?」

 

「ぶふっ!? き、キースさん!?」

 

 背後でバトルを見守っていたキースさんが、星条旗ビキニに包まれた爆乳を俺の頭に乗せながら声をかけてきた。

 予想外の行動と重くて柔らかいキースさんのおっぱいの感触に戸惑う俺へと、彼女はこう言葉を重ねる。

 

「このターンで手塚のエナジーは6になる。動き出すには十分な量だ。そして、セーフゾーンに置けるカードはレベル2まで……ママのおっぱいを吸って大きくなったあいつにも、独り立ちの時期がきたってところだな」

 

「お、おっぱいって、この状況で言います!?」

 

 キースさんの言いたいことは俺にもわかっていた。

 ここまでのプレイングは動き出すための前準備。コストとなるエナジーも揃い、セーフゾーンのカードも十分に育ったこのターンから、相手は動いてくる。

 

 頭の上に乗っかるキースさんの爆乳のせいでペースが崩れてしまったが、どうにかこうにか気持ちを落ち着かせる俺の前で、手塚さんはついに動き出した。

 

「ではまず、バトルゾーンの〈マグマレックス〉でヤマトくんに攻撃!」

 

「う、うわっ!?」

 

 立体映像で再現された赤い恐竜の爪で引っ掛かれた俺は、思っていたよりも迫力のある映像に驚きながらライフゾーンに手を伸ばした。

 その一番上のカードを捲った瞬間、赤い光が輝く。

 

「あっ! カウンター能力発動! 〈溶岩流〉!! この効果で、相手の場のパワー6000以下のユニットは全部破壊できるんだけど……!!」

 

 相手に攻撃を受けた際、ライフからノーコストで発動できる『カウンター』効果持ちのカードを引き当てた俺であったが、タイミングが悪い。

 攻撃を仕掛けてきた〈マグマレックス〉は破壊できるが、セーフゾーンにいるユニットは効果の対象外だ。

 

 先に場に出していてくれれば、二体まとめて破壊できたのに……と、リスクを回避するプレイングを取った手塚さんの読みの上手さに舌を巻きつつ残念がる俺は、とりあえず相手の場のユニットを破壊した。

 

「いや~、危なかった。セーフゾーンにギリギリまでユニットを置いておいて正解だったね。じゃあ、こいつもそろそろ場に出そうか。セーフゾーンのユニットをバトルゾーンに移動し、そのままLV3〈マグマザウルス〉に進化だ!!」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

マグマザウルス

LV3 P8000 ドラゴン

召喚コスト5 進化コスト2

 

効果……『剛体』(このカードはライフチェック時のバトルでは破壊されない)

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

 

『ガオオオオオオオオオオッ!!』

 

「うおっ、すっげぇ……!」

 

 溶岩を身に纏った、武骨な四足の恐竜の咆哮を聞いた俺が感動を覚えながら呟く。

 こういう映像を見せられたら、そりゃあ世界中の人たちがカードゲームにのめり込んでいくわけだと……そう納得する俺だったが、手塚さんはそんな俺の感動が去るよりも早く攻撃を仕掛けてくる。

 

「マグマザウルスでヤマトくんに攻撃! ボルケーノ・ストライク!!」

 

「どわあっ!?」

 

 手塚さんの宣言に合わせ、〈マグマザウルス〉が口から溶岩を吐いて攻撃してくる。

 実際に熱は感じないが、想像以上の迫力を持つそれに悲鳴を上げた俺は、ハッとすると共にライフチェックを行った。

 

「ライフチェック……〈マグマザウルス〉! パワーは同じ、だけど……!」

 

「そう。〈マグマザウルス〉は『剛体』持ち。ライフチェック時のバトルでは破壊されないのさ!」

 

 本来ならば、ここでパワーが同じ同士のユニットがぶつかり合い、双方が共に破壊されるはずだった。

 しかし、〈マグマザウルス〉の効果によってライフチェック時のバトルでの破壊は無効化され、手塚さんのユニットは無傷で場に残り続けている。

 

「最後に手札からオプションカード〈集合の狼煙〉を発動。デッキからカードをサーチするよ」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

集合の狼煙(オプションカード)

コスト3

 

効果……デッキの上から3枚を見る。その中から、赤のカードを一枚手札に加える。残りのカードはトラッシュゾーンに送る

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

(最後にしっかり手札補充もされた。流石は長年カードゲームをプレイしてる人だな)

 

 エナジーを無駄にせずにカードを使えるだけ使ったプレイングをしてきた手塚さんは、やはり熟練のカードゲーマーだ。

 一気にライフを二点も削られたことはショックだが、まだ負けたわけじゃない。

 むしろ、こっちだってこのターンから動き出すんだぞと自分に言い聞かせながら、俺はデッキからカードをドローする。

 

「俺のターン! まずは〈マグマレックス〉で手塚さんに攻撃します!」

 

「了解。ライフチェック……うわ、ドラゴンエッグか~! 普通に負けてるんで、〈マグマレックス〉はそのままだね」

 

(よし、ツイてる!!)

 

 ダメ元で攻撃を仕掛けた俺は、ライフチェック時のバトルで〈マグマレックス〉が残ったことに心の中でガッツポーズをした。

 運は俺に味方してくれているぞと思いながら、俺はセーフゾーンからユニットを移動させる。

 

「セーフゾーンのイグニスを移動し、そのまま進化! 〈炎竜 バーンライト〉!」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

炎竜 バーンライト

LV3 P7000 ドラゴン

 

召喚コスト5 進化コスト2

 

効果……このカードが『ドラゴン』を持つカードの進化元になった時、デッキの上から5枚を見て、その中の赤の『ドラゴン』を持つカードを1枚手札に加える。残りのカードは好きな順番で山札の下に戻す

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

(とりあえず、こっちもレベル3のユニットを場に出せた。問題は、ここからどうするかだ……)

 

 〈炎竜 バーンライト〉は進化素材に〈火竜 イグニス〉を使っているおかげで、パワーが+1000されている。

 これでパワー8000。〈マグマザウルス〉に攻撃すれば相打ちで倒せるが……それは避けた方がいい。

 

 このユニットは、最後まで育て切ってこそ真価を発揮する。ここで破壊されると、ダメージが大きいのは俺の方だ。

 ただ、ここである程度は勝負を仕掛けておかないとマズいことを理解している俺は、思い切って手塚さんに攻撃を仕掛けた。

 

「バーンライトで手塚さんに攻撃!」

 

「ライフチェック……うっ! こっちもバーンライトだけど、ヤマトくんのユニットは進化元能力でパワーが1000上がってるから――!」

 

「せ、セーフ……!!」

 

 ちゃんと育てておいたおかげでバーンライトもギリギリ破壊を免れた。

 これでライフは同じ。返しのターンでレベル4ユニットを出され、バーンライトが戦闘破壊されることを避けるため、俺は手札からとあるユニットを召喚する。

 

「バトルゾーンに〈マグマロックレックス〉を召喚します。俺はこれでターンエンドです」

 

「しっかりブロッカーを出してきたか。考えられてるなぁ……」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

マグマロックレックス

LV2 P2000 ドラゴン

召喚時コスト2 進化時コスト0

 

効果……『ブロッカー』(相手ユニットの攻撃時、このカードをレストすることで、対象をこのカードに変更することができる)

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

(これでパワーが上がったユニットでバーンライトを攻撃されても、一度は耐えられる。二体以上を場に出すことはできないだろうから、間違いなく次のターンはバーンライトを守れるぞ)

 

 相手の攻撃を代わりに受けるブロッカーを召喚した俺は、ほぼ万全の状態でターンを手塚さんに回した。

 不安な部分はあるが、状況はほぼ互角なはずだと……そう考える俺の前で、少し考えこんだ手塚さんが予想外のプレイングを見せる。

 

「そうだな、じゃあ……バトルゾーンにレベル4ユニット〈メガマグマザウルス〉を召喚しよう」

 

「えっ、召喚? 進化じゃないんですか?」

 

「ああ、これでいいんだ」

 

 予想通り、手塚さんはレベル4のユニットを場に出してきたのだが……その方法は進化ではなく、召喚だった。

 折角、レベル3の〈マグマザウルス〉がいるというのに、わざわざ重いコストを支払った上にこのターンは攻撃できないユニットを出してどうするのかと考える俺へと、手塚さんがターンを回す。

 

「さあ、ヤマトくんのターンだよ」

 

「は、はい……!」

 

 相手のプレイングに不気味さを感じはするが、迷っていても仕方がない。

 ここは攻め一択だと、そう自分に言い聞かせた俺は場のバーンライトを進化させる。

 

「バーンライトをレベル4ユニット〈火炎竜 ブレイブドラゴン〉に進化! そのまま攻撃します!」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

火炎竜 ブレイブドラゴン

LV4 P9000 ドラゴン

召喚時コスト7 進化時コスト4

 

進化元効果……このカードのパワー+3000

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 進化と同時に攻撃宣言をした俺だが、その前にバーンライトの効果を処理する必要がある。

 デッキの上から五枚を確認した俺は、期待していなかった成果が得られなかったことに思わず悔し気な表情を浮かべてしまった。

 

(くそっ! あのカードがない!)

 

 とりあえず、再びブロッカーを手札に加えながら、ブレイブドラゴンでライフを削る。

 ライフチェックした手塚さんは、俺とは真逆の嬉しそうな表情を浮かべながらそのカードを見せつけてきた。

 

「ほっほ~! カウンター効果発動! 〈溶岩流〉でパワー6000以下のユニットを全部破壊だ!」

 

「あっ……!」

 

 俺も先ほど発動したオプションカード〈溶岩流〉。その効果によって俺の〈マグマレックス〉と〈マグマロックレックス〉が破壊される。

 先に〈マグマレックス〉で攻撃しておけば、もう一枚ライフを削れたのに……と、自分のプレイングの甘さを反省しながら、俺はついさっき手札に加えたブロッカーを再び場に召喚した。

 

「〈マグマロックレックス〉を召喚。これでターンエンドです」

 

「よ~し! じゃあ、一気に攻めてみようか! 俺のターン、ドロー!」

 

 これで5ターン目、エナジーは最大の10枚まで溜まった。

 それら全てと盤面のユニットを活かした猛攻が仕掛けられることを予感する俺の前で、手塚さんが切り札を繰り出してくる。

 

「俺は場のレベル4ユニットに最上級ユニット〈ギガントボルケーノザウルス〉を重ね、進化させて場に出す!!」

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