無趣味な俺がカードゲーム始めたら、人生楽しくなった件について 作:苦労砲丸
「さて、パックを開けながら『エヴォルVS』の封入率の話でもしてやるか」
「封入率? なんすか、それ?」
「一ボックスにどんなカードがどのくらい入ってるか? って話だよ」
ククク、と喉を鳴らしながらハサミでカードパックを開けるキースさんが言う。
よくわかんない話だなと思いながら、同じくパックを開ける俺へと彼女は話し始めた。
「『エヴォルVS』のカードにはレア度が設定されてる。コモン、アンコモン、レア、ダブルレアにトリプルレアだ。後に名前を挙げた方がレア度が高い」
「じゃあやっぱ、トリプルレアに強いカードが集まってるって感じですか?」
「基本的な考え方はそれでもいいが、低レアの中にも必須級のカードがあることもある。とあるカードゲームでは、最低レアのコモンなのに一枚千円なんて値段が付いたカードがあったりする。レア度が全てじゃないってことだな」
「なるほど……」
中身は見ずにとりあえずカードパックを開けていく俺は、キースさんの話にふむふむと頷いた。
カードアニメでもレアカード至上主義みたいな敵キャラが多く登場するが、大体はそれを否定する主人公の巧みなカードコンボに敗北を喫するし、やっぱり大事なのはレア度よりもプレイングなんだなと考える俺へと、キースさんが本題の話をする。
「それで、各カードがどれくらい封入されているかって話だが……RRRが一ボックスに三枚程度、RRは十枚くらいだな。『エヴォルVS』はBOXにニ十四パック入ってるから、二パック買えば何らかのレアカードが当たるようにはなってる」
「そうなんですね。良心的だなぁ……」
「ククク……ッ! 甘いな、ヤマト。これはあくまでレアカードがどれだけ入っているか? って話だ。当然、各レアのカードは複数存在する。同じRRRのカードでも、お前が欲しがってるモンとは限らないんだぜ?」
キースさんが悪い笑みを浮かべながら俺へと言う。
確かに同じRRRでも俺が欲しがっている赤のドラゴンカードとは限らないし、そうなった場合は実質ハズレみたいな感じになってしまうだろう。
そもそも、カードにもよるがデッキに入れるなら複数枚投入するのが普通だし、欲しいカードが一枚だけ当たったところでそこまで意味はないのかもしれない。
(だからみんな、カードを買いまくるんだなぁ……)
ということを考えている間に、全てのカードパックを開け終えていた。
大勢のお客さんたちの視線を浴びる中、俺はパックを手に取り、中身を取り出す。
「さあ、記念すべき最初のパックだ。何が当たるかな?」
そんな緊張を煽るようなキースさんの言葉にドキドキしながら、俺はバッと手に取ったカードたちを広げる。
一パックに六枚封入されている『エヴォルVS』のカードたちを確認した俺は、一番後ろに入っていた若干光っているカードに注目した。
「えっと、これは……?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
火守りのサリア
レベル2 P3000 ヒューマン (
召喚時コスト3 進化時コスト0
効果……自分の赤のドラゴンが場を離れる時、代わりにこのカードをトラッシュゾーンに送ってもいい
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ククク……ッ! ドラゴンを守れるカードだな。赤はユニットを進化させて戦っていくデッキだから、育ててるドラゴンを守れるカードは大事だぜ」
「幸先いいっすね! えっと、次は……?」
いきなり俺のデッキと相性がいいカードが出てきたことを喜びながら、二パック目、三パック目と開けていく。
残念ながらレアカードは出なかったが、ここまで確認した十八枚のカードを改めて見てみた俺は、あることに気が付くと共にキースさんに尋ねる。
「なんか、出るカードが赤と黒と緑のカードばっかりなんですけど……? 他にも青色とかありませんでしたっけ?」
「そっちは第二弾の方に収録されてるぜ。この第一弾のカードは、今お前が挙げた三色のカードが封入されてるんだ」
「あっ、そうだったんですね。ちなみにどうしてそんな色分けになったかわかりますか?」
「赤、黒、緑の三色はわかりやすいというか、シンプルで扱いやすい特徴の色だな。逆に第二弾に収録されてる青、黄、紫の三色はややトリッキーな動きをする色だ。初心者向けの第一弾、カードに慣れてる奴向けの第二弾って感じだと思ってくれ」
「なるほどな~……!」
俺はまだ赤のカードのことしか知らないし、なんだったら赤のカードのことすら詳しくないが、やっぱり色ごとに色んな特徴とか戦略があるのだろう。
後で当たったカードたちを見て、どんな効果を持っているかを確認するのも面白そうだな……と考えていた時だった。
「おっ! 光ってるカードだ!」
「RRのカードだな。だが残念、当たったのは黒のカードだ」
四パック目にして初めて高レアリティのカードが当たったのだが、キースさんの言う通り、黒のカードだった。
俺が集めているのは赤のカードだし、こいつは使えないな……と思っていたら、パック開封を見学していたお客さんの中から一人が手を上げ、俺に声をかけてくる。
「あっ! 俺、そのカード欲しかったんだ! 後で交換してくれないか!?」
「えっ? ああ、いいっすけど……」
「ありがとう! 赤のドラゴンを集めてるんだよね? いい感じのやつを用意しとくよ!」
俺がカードの交換を了承すれば、その人は嬉しそうに笑いながら自分のカードを確認し始めた。
自分が使えないカードでも、他の誰かにとっては必要なカードなんだとその反応を見て理解した俺へと、キースさんが言う。
「ククク……ッ! みんなの前でパック開封すると、こういうことがあるからな。今のお前が使えないカードでも、他の誰かが欲しがってるかもしれねえ。そういうのはトレードに出して、お前が欲しいカードに変えちまうのさ。もちろん、嫌だったら断ってもいいし、シャークトレードには気を付けないといけねえが……ここは治安も良いし、そういうことをする奴もいねえから大丈夫だろ」
キースさんがギャラリーを集めたのは、こうなることを見越してだったのだろう。
やっぱりこの人は初心者に優しいなと思いながら、俺は次々とパックを開封していく。