表:天馬エクスプレスの委託ドライバー 裏:ホロウレイダー 作:ペペ口ソチ一ノ
ホロウに飲み込まれた星で唯一残った奇跡の都市『新エリー都』
ルミナススクエアのような華々しい場所もあれば、暴力団がのさばるスラム街まである混沌とした都市。そこで俺は日々トラックに乗ってせっせと天馬エクスプレスの委託ドライバーとして生きている。依頼を受けたらどこまでもをモットーに相棒のボンプであるタンタンと一緒に新エリー都を走り回っている。
そんな俺だが、内緒でホロウレイダーをやっている。といっても、エーテル資源や旧文明の遺産を採掘するホロウレイダーとかではなく、ホロウ内に荷物を届ける運び屋ホロウレイダーだ。依頼は様々でホロウ内のギャングや反乱軍に鎮静剤や生活用品を届けたり、ボンプ商人の仕入れを手伝ったりしている。こういう依頼は裏稼業ってこともあって一般の依頼より実入りがとても良い、もちろんエーテリアスに襲われたりする危険性もあるが軍用ボンプのタンタンのおかげで今のところ、命の危機を感じたことはない。
でだ、今回受ける依頼は表の依頼でなく裏の依頼だ。
依頼主は赤牙組のミゲルっていう奴で昔は気前のいい奴でギャングって言うより地元のヤンチャボーイズって感じで仲良くさせてもらっていたんだが、どうも一時から人道に反する行為をするようになってからは、お互い連絡を取り合うこともなくなって疎遠だった。
それから数年、今回どうしてもってことで依頼の連絡をよこしてきた。今となっちゃ赤牙組は付き合いがあるだけで損になるようなギャングだ。普段なら絶対に依頼を受けないが、あいつが道を踏み外すのをただ見ているだけだった俺はどこか負い目を感じていた。この機会を逃したら一生会わないかもしれないと思って、会って話をすることを条件に依頼を受けた。
「ンナナ(どうしたんだ相棒。浮かない顔で窓の外を見つめて、もうすぐで約束の場所に着くぞ)」
運転中のタンタンが、俺の顔を横目で見て問いかけてくる。
ちなみに、俺のトラックは左の座席がボンプ、右の座席が人が運転できるように改造してある特別な2tトラックだ。他にも沢山改造している、かけがえのない仕事道具だ。
「今回の依頼主は昔の友達でな、しばらく疎遠だったんだ。だから、なんて話かけたらいいか考えてたんだ」
タンタンとは5年以上の付き合いがある。心から本心で話せる大切な相棒だ。
「ンナンナナ(驚いた。相棒に友達がいたなんてな。仕事の付き合いしかしない相棒が友達と呼ぶってことは、さぞいい奴なんだろう)」
ただでさえ丸い目をもっと丸くして言いやがる。失礼な奴だ。そりゃここ数年は仕事付き合いでしか他人と会話していないが、まったく友達がいないというわけではない。ただ、仕事が忙しくて友達に会う機会がないだけだ。ほら、ノックノックを開けば沢山の、、、取引先が、、、
「ああ、相棒が家に来る前だ。初めての裏の依頼があいつ、ミゲルだったんだよ。ミゲルから裏の仕事をいろいろ紹介してくれたおかげで、今の裏のコネクションがあるて言っても過言じゃない。その時は、いい奴だったさ、けど今じゃどうしてか、人の道を外れたことばかりをしてるらしい。昔仲良くしていたメンバーのほとんどは愛想をつけて離れた。俺もその一人だ。だからか、会って何を話せばいいのか分からないのさ。
最初こそ仕事の関係だったが、思い返せば新エリー都に来てからの初めての友達がミゲルだった。一緒に飲みに行けばお互いに愚痴を言い合ったり、家で遊んだりした。そうそう、天馬の委託ドライバーが忙しいのに給料が悪いって言うと、赤牙組の専属ドライバーになれよと誘ってくれた。けど、ほんの数か月だ。本業のほうが忙しくなって連絡を取らなかった。そしてら、周りが噂してたんだ。赤牙組は変わったって。そしたら、怖くなってそのままズルズルとだ」
あいつが変わってしまった。
怖かった。
「ンナナナ(クズになってしまった友達か。人間ってのは何があるか分からないな。俺らボンプは異常があれば中身をリセットして修正できるが、人間ってのはどうしてそうもいかねぇ。頭でもぶん殴ってやれば治るんじゃねえか)」
「ハハッ、それで治ってくれたらどれだけいいことか。けど、悪い案でもない。この依頼が終われば、殴り合う気で話し合ってみるか」
「ン~ナンナ!(その調子だぜ相棒!目的地に到着だ。俺はトラックを見張ってるからさっさと依頼を受けてきな!)」
「運転ご苦労様、やっぱお前は最高の相棒だよ。それじゃあ行ってくる」
ウィンクをしてくるタンタンにウィンクを返して、トラックから降りる。相棒の言葉は俺を勇気づける。変わったからなんだ、話をしてみれば実は昔のあいつのままだったりするかもしれない。噂はあてにならないことは俺が一番知っているじゃないか。
そう思うと悩んでいたのが馬鹿バカしく思える。とっとと、あの馬鹿に会って、とっとと依頼を達成して、話し合おう。
建物に向かおうとした瞬間
DOGAN!!!
目の前の壁を突き破って車が飛び出してくる。見えたのはピンクの髪に赤いジャケットを着た機械人。
ストリートでは有名だ。俺も彼女らの依頼を受けたことがある。ニコ・デマラが率いる大胆不敵の何でも屋集団『邪兎屋』。どうして、壁をぶち破って走り去ったのか分からないが、彼女らが邪兎屋で、それを急いで追いかける赤牙組のメンバーを見れば何かを盗まれたってことは予想が付く。問題なのが、何を盗まれたのかで、大抵こういうのは俺の依頼に関係するものだ。追いかける車の中にミゲルの姿が見え、いや、ウソ泣きが聞こえた。
邪兎屋の実力はホロウレイダーの中でもトップクラスだ。ミゲルには悪いが勝てるとは思えない。依頼はバラシになりそうだ。今日のところは帰るとしよう。
「ただいま、タンタン。お前も見えただろ、どうやら今日の依頼はなくなったみたいだ。帰ろう」
ミゲルのノックノックに『どうやら忙しそうだから、また今度お邪魔させてもらう』と送る。
「ンナナナ(これまた、随分とお早いお帰りで。帰りは相棒が運転してくれよな)」
「もちろんだ。ラジオつけてもらっていいか。テレビエリーが一番報道が早い」
あいつらコンプラってものがないからな。何でも生中継で放送する。
タンタンがつけてくれたラジオを聴きながら家に向かってトラックを走らす。しばらくすると、速報ですの声と共に、治安局が研究所を襲った赤牙組を追いかけているということ、十四分街でホロウ災害が起きているってことが流れてくる。
「おいおい、ミゲルの奴、依頼って研究所から盗んだものを運ばせるつもりだったんじゃないだろうな。勘弁してくれよ。ってか治安局の航空隊に追われてるってことは後で話ができるかも怪しくなってきたな。面会室で再会するのは勘弁してほしいぞ」
「ンナンナナ?(お前の友達相当悪じゃないか。ん?十四分街でホロウ発生って、あいつらが走り去っていった方だな。もしかして、邪兎屋の連中ホロウを通って逃げるつもりじゃねえか?)」
「いくら大胆不敵の邪兎屋と言えども発生したばかりのホロウに逃げるほど無謀じゃねえよ、あそこらへんはビルが多いから、ビルの中に入って撒くつもりなんだろう」
しばらくしてからは、名物の口汚いアナウンサーの喚き声しか聞こえなくなってくる。ピー音で汚い言葉は聞こえないが、生放送なのにどうやって加工してるのだろうか。魔法のマイクでも使っているのか。
日が暮れてきた頃、家の駐車場に着いてトラックから降りる。中心街からは遠いけど、トラックを止めれるデカい駐車場があるのが良いところだ。
「今日はいろいろ考えて疲れた。タンタン、俺は先に休む」
「ンナナ~(お疲れ相棒。俺は明日の依頼をチェックしてから寝るぜ)」
「いつも助かる。来月は俺がやるからな。じゃあ、おやすみ」
「ンナ」
今日は仕事を何もしてないが疲れた。気疲れだろうか。明日また、ミゲルに連絡を入れよう。依頼はダメになりそうだが、ラーメンに誘うのが良いだろう。昔、俺が落ち込んでいた時は、そうやって慰めてくれた。
ほんの少しだが、止まっていた時間が進んでいくような気配がして頬が上がる。
≪最大口径のやつを選べ!!
正ーー義ーー執ーー行ーー
だあああ!!!≫
初回から裏仕事だったけど、表の仕事も沢山書いていきたいな。