異世界から帰ってきたと思ったら火星。 作:第616特別情報大隊
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──亡命//招待客
七海たちが李麗華のマンションを訪れたのは、アドラーが彼女に連絡してから大体30分後のことだった。
「どうもハイデッガー博士は自分の亡命のために、一応準備はしたらしい」
「教授だよ。ハイデッガー博士じゃなくてハイデッガー教授」
「そうなのか? まあ、特に変わらんだろ」
七海が切り出すのに李麗華がそう指摘。
「で、だ。肝心なのはハイデッガーが自分の引き抜きを成功させるために、シンポジウム会場に囮を持ち込んでくれるってことだよ。やつはG-APPっていう電子ドラッグをシンポジウム会場に持ってくる予定だ」
「情報屋が言うには複数の強奪計画が進行中らしい。敵はハイデッガーの引き抜きだけでなく、G-APPの
七海とアドラーがそれぞれそう報告。
「なるほどね。じゃあ、あたしたちもG-APPの
「G-APPを狙う振りをしてってことか?」
「そうそう。わざとG-APP周りで警報を鳴らして、そっちに注意が向いた隙にハイデッガーをさっさと
李麗華はG-APP周辺でトラブルを起こし、警備の目を引くことを提案した。
「それはいいのだが、問題はそのもっと前だ。どうやってシンポジウム会場であるドーンに侵入するか。まずはそれだろう?」
そんな李麗華の提案に対して、アドラーは渋い顔をしてそう指摘した。
「ウォッチャーの身分で侵入すると地球の人間であるハイデッガーに近づきにくいよね。となると、招待されている企業や研究機関のIDに偽装するか……」
「単に偽造しても向こうでIDが被ったらやばいぜ」
「そうなんだよね。前の博物館侵入のときとは話が違うっていうかー」
七海が言うように本来招待されている人間と現地でばったりとなったら、IDを偽装したことがばれてしまう。そうなるのは最悪だろう。
「ならば、招待されている人間になり替わるというのは?」
「ん? というと?」
「招待客を2名、
「ああ。それなら現地でばったりってことはないな。だけど、全然関係ない人を
「七海。今さらだぞ。我々はもう既に犯罪者だ」
「そりゃそうだけど」
「その方針で行くなら、まずはシンポジウムに参加する人間の中で警備の薄そうなやつを探さないとね。で、段取りは招待客リストの入手の次に目標についての情報を集め、それから
「腹くくるしかないな。
李麗華が具体的な作戦を述べ、七海がついに同意した。
「招待客のリストをすぐに調べてみる」
「私も手伝おう。シンポジウムの主催は企業連合であり、その傘下の火星科学アカデミーだ。それなりの
「オーケー。助かるよ、アドラー」
李麗華にアドラーがそう申し出て、彼女たちが招待客リストを探すことに。
「俺はすることがないな」
「今のうちにマトリクスに潜って慣れておいたらどうだ?
「そうだな。試してみるよ」
アドラーに言われて七海が頷く。七海はまだマトリクス経由で情報を手に入れたりすれど、本格的にダイブしてはいなかった。
「では、後でねー」
「おう。気をつけてな」
李麗華たちは一度七海に別れを告げて、マトリクスにダイブ。
「へえ。マトリクスではそんなアバターなんだね、アドラー」
「ああ。別に構わないだろう」
アドラーは昔のSF作品に出て来る女性ハッカーのアバターを纏っている。
「それでは
「火星科学アカデミー」
火星科学アカデミーは火星の学術機関だ。
火星の科学技術発展のために設立され、それは事実所の火星の支配者である企業連合に強い影響を受けている今も変わらない。
火星において有力かつ優秀な科学者たちが所属し、教育と研究に当たっている。
今回のハイデッガーが参加するシンポジウムの主催者もこの火星科学アカデミーだ。
「流石に
「迂闊に公開するとそれこそあたしたちみたいなのが悪用しちゃうからねえ」
「それもそうだな」
李麗華が仕方ないと言うのにアドラーも肩をすくめて同意した。
「さて。では、どこから手を付ける?」
「まずは
ブラックアイス。侵入者を防ぐ
「偽装した通信を送って
「オーソドックスなやり方ではあるね。けど、相手は政府機関に等しい連中だし、用心してやらないと。あたしがいいものを持っているから使おう」
「いいもの?」
「とびっきりのウィルス」
アドラーが尋ね、李麗華がにやりと笑ってファイルを取り出す。
「H1de&3eekってウィルスだけど知ってる?」
「いや。聞いたことがない」
「まあ、比較的新しいウィルスだからね。こいつは
「ほう。便利そうだな。まさに今、必要なものだ」
「でしょ? これを使って様子を見てみよう」
そう言って李麗華はH1de&3eekというウィルスを複数のネットワークを経由した上で、火星科学アカデミーのネットワークに侵入させた。
H1de&3eekは一般のトラフィックに成りすましてネットワークに侵入し、火星科学アカデミーのネットワークに施された
最終的にH1de&3eekは
「よーし、よし。やっぱりブラックアイスは使用されているみたいだ。それから
「免疫のように自己、非自己を識別して、異物を排除するやつか。最近のは
「あたしたちは別に火星科学アカデミーのネットワークを乗っ取ろうとかいうわけでもないし、
「それしかなさそうだな」
「では、
アドラーは同意し、李麗華は目標の
「
「ちょっと改良が加えてあるけどね。まだこのタイプの
「了解。バックアップする。何かあればお前が脳を焼き切られる前に脱出させる」
「頼むよ」
アドラーはバックアップの態勢に就き、李麗華はネットワークへの
「さあて。
李麗華が火星科学アカデミーのネットワークに接近。
「MoLeIV投入」
そこで李麗華は火星科学アカデミーのネットワークに向けて
「
だが、まだまだ安心はできない。
「
その前に李麗華は情報を盗み取って逃げる必要があった。
「検索エージェント展開! さっさと情報を抜き取ってとんずらだー!」
李麗華はすぐさま検索エージェントを展開させて、シンポジウムの招待客リストを探す。検索エージェントはネットワークの中を駆け抜けると該当する情報を次々に李麗華に転送してくる。
「よしよし。目標のデータをゲットだ。さっさと逃げよう」
と、李麗華が脱出する数ナノ秒前に
「おっとと! ログアウト実行!」
「リストは手に入ったか?」
「ばっちり」
待っていたアドラーが尋ねるのに李麗華はファイルを手に笑みを浮かべて見せた。危険な
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