異世界から帰ってきたと思ったら火星。 作:第616特別情報大隊
……………………
──カルテル//ジェーン・ドウ
七海たちに
「アドラー、
「ジェーン・ドウからか……」
「やめておくか?」
「そうもいかないだろう」
七海たちは企業のフィクサーであるジェーン・ドウを警戒してはいるが、下手に
そうであるが故に李麗華に連絡したのちに、ジェーン・ドウが指定したレイ・ブラッドベリ地区にある喫茶店に向かった。
「いらっしゃいませ」
「待ち合わせをしている。七海とアドラーだ」
「畏まりました。こちらへどうぞ」
接客用アンドロイドに誘導されて、七海たちは個室に入る。
「またお会いできて光栄です、七海さん、アドラーさん」
個室に入るとジェーン・ドウが丁寧に頭を下げて七海たちを出迎える。
「
「ええ。あなた方にお願いしたい
「まずは内容について聞こう」
ジェーン・ドウが
「もちろんです。我々はとある犯罪組織との間にトラブルを抱えています。それを解決したいと思い、
ジェーン・ドウはそういうと七海たちにデータを送信してきた。
「アセンション・ゼロ? ドラッグカルテルか」
「はい。ドラッグカルテルのアセンション・ゼロこそ我々がトラブルを抱えている相手です。我々は彼らの殲滅を目指しています」
「待ってくて。俺たちにドラッグカルテルを全滅させろってことじゃないよな?」
七海が慌ててジェーン・ドウにそう尋ねる。
「ええ。そのようなことは言いません。あなた方にはアセンション・ゼロの殲滅に先だって、彼らが有している技術が漏洩しないように対処していただきたいのです。トラブルの原因と言うのが、その技術ですので」
ジェーン・ドウは落ち着いた様子でそう語る。
「アセンション・ゼロはとある企業から盗んだ技術で電子ドラッグを製造しています。我々はそれを止めたいので、彼らを殲滅する予定です。ですが、組織が瓦解する際の混乱に紛れて技術が持ち出される可能性もある」
「私たちは技術の確実な抹消が目的か。具体的な技術の内容は?」
「これを参照されてください。技術を有しているだろう技術者や技術に関係する単語が含まれいます。AI解析にかければ、どれが関係した技術であるか、それが明白になるはずです」
「これは我々のハッカーに見せてもいいか?」
「構いません。どうぞ」
ジェーン・ドウの許可を得て、アドラーが情報を李麗華に送信。
「さて、
「殲滅作戦は2日後以降、7日以内には実行されます。それまでにはお願いしたいです。また成功の目途は指定した技術者の殺害と技術を確認した際のログとさせていただきます。いかがですか?」
「分かった。やろう」
「ありがとうございます。それでは健闘をお祈ります」
七海たちは
「しかし、今度はドラッグカルテルか。どうにもドラッグ関係の仕事が多い気がする。そう思わないか、相棒?」
「そうだな。ドラッグの中でも電子ドラッグ。それを巡って何か争いが起きているようだ。私たちのような末端の人間には全体像は見通せないが、これからも何かこの手の
「嫌な予感がする」
七海たちはまずは
「李麗華。データは受け取ったか?」
「受け取ったよー。けど、驚いちゃった」
「何が?」
李麗華のマンションに招かれた七海たちが首を傾げるのに李麗華が語る。
「これ、G-APPに使われている技術だよ。この前、私たちが解析したのと同じ」
「え。マジか?」
「マジだよ。ほら、見てみて」
驚く七海たちに李麗華がジェーン・ドウから渡された情報を下に組み立てた分析AIが、G-APPに関係するデータを解析した結果を示す。
そこではG-APPはジェーン・ドウが渡した情報に完全に関連性があるものだった。
「やはりというか。企業から盗まれた技術と言うのはG-APPのことだな。恐らくはドーンで私たちとは別に
「そして、ジェーン・ドウはそれを危惧している、か」
「繋がりがあったな」
一連の
「それが分かったということだが、特に
「そうだな。まずはアセンション・ゼロについて調べておこう」
いつものように
「あたしはマトリクスで調べておくよ」
「ああ。俺とアドラーは
「任せた!」
七海とアドラーは情報屋の下に向かい、李麗華はマトリクスにダイブする。
「検索エージェントも走らせておくけど、BAR.黒猫に何か情報はあるかな?」
李麗華はアセンション・ゼロに関する情報を収集するための検索エージェントを放ちつつも、BAR.黒猫で自分の手で情報を集めることも始めた。
「いろいろな話題がある
李麗華はそう言ってログを検索にかける。ヒット。
「“2087年抗争について語ろう”か。アセンション・ゼロも2087年抗争にかかわってたんだ。へえ」
どこか懐かしがりながら李麗華がログを眺める。
2087年抗争は火星で起きた大規模な犯罪者同士の抗争だ。これが終結した結果、今の勢力図が形成された経緯がある。
『ドラッグカルテルに関してはアセンション・ゼロがほぼ権利を独占したな』
『スコーピオンズはドラッグに手を出さなかった。そのおかげだろう』
『スコーピオンズはレッドスターと揉めててそれどころじゃなかったさ』
2087年抗争にはあのスコーピオンズも参戦していた。
『そもそも火星でドラッグカルテルをやるのは、地球でドラッグカルテルをやるのとはわけが違う。まずオールドドラッグは扱えないし、電子ドラッグに関してはその性質上、独占するのは難しい』
『だな。地球のドラッグカルテルはオールドドラッグの原料になる植物を自由に栽培できるが、火星じゃそうはいかない。植物の栽培を独占して利益を独占するという、地球のドラッグカルテルと同じことはできない』
『それでいて電子ドラッグは技術者がいれば誰も作れる。だから、独占はやはり困難』
『ドラッグカルテルの独占を意味するカルテルって部分が成立してないな』
列席者たちがそう意見を述べていく。
『だから、そこまでどの勢力も自分たちがカルテルだと名乗らないのだろう。ドラッグカルテルを名乗って当局に目を付けられるのは無駄なるリスクだ』
『しかし、アセンション・ゼロはドラッグカルテルを名乗り、ドラッグビジネスに専念している。連中はどういう仕組みで利益を上げているんだ?』
『地球との密貿易だよ、兄弟。連中は地球のカルテルにコネがある。微々たる量ながらオールドドラッグを仕入れているし、電子ドラッグも手に入れてる』
『なるほどな』
トピックでそう語られていた。
「地球との関係。地球のメガコーポであったメティスと、そこに技術者であったハイデッガー、そして彼の作ったG-APP。何かしら関係があるのかなー?」
李麗華はそう言って首をひねる。
「よう、シュリーマン。相変わらず
「フォックスロット。なーに? 手伝ってくれるの?」
「いいや。俺は俺で調べ物の最中だ。あんた、オールドスカーレットって電子ドラッグについて何かしらないか?」
「オールドスカーレット?」
聞きなれない単語に李麗華は首をひねる。
「新しく出回っている電子ドラッグで滅茶苦茶やばいらしい。怖いもの見たさと
「新しい電子ドラッグ、か。具体的にはどうやばいの?」
「分からん。ただこいつをキメた人間は天国のような快楽と引き換えにあの世に行っちまうだと。それも一発でな」
「うえへ」
にやりと笑ってフォックスロットが答えるのに李麗華は肩をすくめた。
「まあ、何か聞くことがあったら俺にも教えてくれ」
「そうするよ。じゃあね、フォックスロット」
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