異世界から帰ってきたと思ったら火星。   作:第616特別情報大隊

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戦闘艦グラム//ストリート

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 ──戦闘艦グラム//ストリート

 

 

 李麗華は見つけたトピックの方に向かって行った。今回の仕事(ビズ)には関係なさそうだが、興味はある。

 

「よう、シュリーマン。あんたも地球への夢の旅を夢見てんのか?」

 

「フォックスロット。まさか」

 

 フォックスロットもトピックにいて、李麗華を出迎えた。

 

「スリースター・ダイヤモンド社って地球のメガコーポでしょ? 火星の開拓にもかかわったメガコーポ」

 

「そう。偉大なる最高経営責任者(CEO)は一代で富を築き上げた富豪テーラー・ダイヤモンド。俺が嫌いなタイプの金持ちだよ」

 

「テーラー・ダイヤモンドか。確かにいい噂は聞かないタイプの富豪だね。こつこつ頑張ってきたというより、親の財産とコネ、そして投機で簡単に財産を作ったってタイプだから」

 

 テーラー・ダイヤモンドはスリースター・ダイヤモンド社の最高経営責任者(CEO)をずっと務めている。

 

「で、やつが作ったのがスリースター・ダイヤモンド社。民間宇宙開発企業として地球=火星間の旅客事業を開始した。これは非常に順調なビジネスで、やつにさらに巨万の富をもたらした」

 

「しかしながら、火星が独立を宣言し、冷戦が始まると、会社は大ピンチ」

 

「ざまあみろ、金持ちだな。しかし、そのスリースター・ダイヤモンド社はまだ火星にご執心らしい。しぶとく事業再開を火星政府に飲ませた」

 

「君って本当にお金持ちが嫌いだよね」

 

「金持ちが好きなのは、そいつをカモにしているやつだけだぜ、シュリーマン」

 

 呆れた様子で李麗華が言うのにフォックスロットはそう返した。

 

「ま、今の情勢で火星に行きたいやつも、地球に行きたいやつもいないだろう。いつ戦争がおっぱじまるか分からないんだしな」

 

「それもそうだね」

 

 地球と火星が冷戦状態なのは変わらず、そんななかでふたつの星を行き来しようというもの好きは、そうそういないだろう。

 

「それじゃあ、あたしは用事があるから」

 

「またな」

 

 李麗華はフォックスロットに別れを告げて、マトリクスから引き上げる。

 

 そんな李麗華がログアウトするちょっと前。

 

 七海とアドラーはストリートでの情報収集を行っていた。

 

「相変わらずオールドスカーレットをキメた連中がいるな。ゾンビみたいだ」

 

「酷いものだな」

 

 最貧民地区は依然としてドラッグジャンキーたちで満ちている。

 

 七海たちはそれを見ながら、スプートニクがいる酒場を目指した。酒場の周りにもジャンキーはいるが、七海たちに手を出してくる様子はない。

 

「スプートニク! 調子はどうだ?」

 

「毎回それを聞くのか? で、今度は何の仕事(ビズ)を受けたんだ?」

 

「航空宇宙軍絡みだ。戦闘艦グラムとその艦長シモーネ・バルディーニ大佐について何か知ってることはないか?」

 

 スプートニクが座れというように椅子を指し、七海たちが座りながら尋ねる。

 

「俺が栄光ある航空宇宙軍の将校にコネがあるように見えるか?」

 

「そうだよな。やっぱりストリートでこの手の情報を探すのは無理があるか……」

 

「航空宇宙軍についての噂話なら聞いているがね。連中、例の火星と地球を結ぶ旅客船がくるってことでぴりぴりしているらしい」

 

「火星と地球の?」

 

 スプートニクの言葉に七海が思い当たる節がなく、首を傾げる。

 

「スリースター・ダイヤモンド社の話だろう。あれも航空宇宙軍が関係しているのか? 一応聞かせてくれ。報酬は払う」

 

「ああ。スリースター・ダイヤモンド社の気に入らねえ金持ちが準備した旅客船ってのが、元国連宇宙軍(UNSC)の空母“神鷹”だ。連中はこれを改装して“ザ・プラネット”っていう旅客船に仕立てた」

 

「元空母、か」

 

「そのせいで火星は奇襲攻撃があるんじゃないかと警戒している。航空宇宙軍もそのせいで神経質になっているらしい。ちょっとした不審な動きにも、すぐさま対応している。宇宙海賊どもも今はなりを潜めているな」

 

 空母を改装したという旅客船。火星はそれがまだ兵器のままなのではないかと警戒し、航空宇宙軍も神経質になっているという話であった。

 

「しかし、火星と地球を行き来するのってどれくらいで行けるんだろうな?」

 

「スリースター・ダイヤモンド社は一般客室で250万ドルだと言っている」

 

「マジかよ。全然手が届かねえ」

 

「庶民の娯楽じゃないからな」

 

 七海が呻くのにスプートニクはそう笑った。

 

「情報に感謝する。報酬だ。また何かあれば」

 

「ああ。あんたらはお得意さんだ。いつでもきな」

 

 アドラーが立ち上がって情報料を払い、七海と酒場を出る。

 

「航空宇宙軍はぴりぴりしてる、か。あまりいい知らせじゃないな」

 

「ああ。普段から強硬手段に訴える連中だが、このせいでさらにトリガーが軽くなっているかもしれない。グラムが完全に孤立して行動しているならば問題は少ないのだが」

 

「密輸やってるぐらいだから、お仲間は連れてないと思いたいな」

 

 航空宇宙軍が警戒態勢にあるというのは、航空宇宙軍の戦闘艦グラムに攻撃を仕掛けようという七海たちにとっていい知らせではなかった。

 

「そもそもどうやって俺たちが火星の早期警戒ネットワークの外に展開しているグラムに接近するかってのもあるんだが。ジェーン・ドウから何か連絡はあったか?」

 

「何もない。どうにも怪しい雲行きだ」

 

 ジェーン・ドウがグラムに接近するための手段を準備すると言っていたが、その方法についてはまだ連絡は何もなく、七海たちも把握できていない。

 

「まずは李麗華のところに戻って、情報を照合しておこう」

 

「そうだな」

 

 七海はそうアドラーに提案し、ふたりは李麗華のマンションに。

 

「李麗華。そっちはどうだった?」

 

 李麗華の部屋に入るなり、七海がそう尋ねる。

 

「あまりこれと言って有力な情報はないよ」

 

「そうか。こっちもだ」

 

 李麗華が肩をすくめるのに七海も同様に肩をすくめる。

 

「こっちで分かったのは戦闘艦グラムは、宇宙海賊などの相手をするための宙域防衛艦であって、艦隊決戦向けのばりばりの戦闘艦ではないということ。それがまずひとつ」

 

 李麗華が分かった情報を七海たちに伝える。

 

「あと、航空宇宙軍の汚職ってことで取り立たされているのは、ほとんどが宇宙海賊からの賄賂を受け取っているというもの。密輸はあまりメジャーなものではないみたいだよ。これで最後ね」

 

「まあ、李麗華の情報は比較的いい知らせか」

 

 七海たちは李麗華の報告にそう頷いた。

 

「では、俺たちの番だな。航空宇宙軍は地球から客船が来るってことで警戒態勢らしい。いつもより警戒状況が上がっているから些細なことにも反応するだろうって」

 

「客船? スリースター・ダイヤモンド社の?」

 

「そう。その会社の“ザ・プラネット”って客船が来るらしいぜ」

 

 そう七海が情報屋から仕入れた情報を披露する。

 

「それも関係してくるのか。複雑だなー。そもそもどうやってグラムに近づくかってのはジェーン・ドウ任せだし。どうしたものなんだろうね」

 

「分からん。出たとこ勝負になりそうだ」

 

 ジェーン・ドウからはまだ連絡がない。七海たちをグラムに送り届ける方法は、他ならぬジェーン・ドウが準備するはずなのだが。

 

「七海。ジェーン・ドウから連絡があった」

 

「お。いよいよか。で、どうやって俺たちをグラムまで?」

 

「それが軌道衛星都市のひとつであるオービタルシティ・パイオニアまでくるように、だそうだ。そのためのシャトルのチケットも添付されている」

 

「また軌道衛星都市か……。分かった。向かおうぜ」

 

 七海はそう言い、アドラーとともにオービタルシティ・パイオニアへ。

 

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