異世界から帰ってきたと思ったら火星。   作:第616特別情報大隊

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戦闘艦グラム//シェル

……………………

 

 ──戦闘艦グラム//シェル

 

 

 オービタルシティ・パイオニアまでの旅路は、大手航空宇宙旅客企業の運営する高級シャトルの、さらにファーストクラスだった。

 

「快適だな」

 

 七海はサービスで出されたシャンパンなどを味わいながらそう言う。

 

「しかし、パイオニアには一体何があるんだろうな」

 

「さあ? パイオニアは航空宇宙軍のドックなどもある宇宙基地だ。もしかしたら小型の戦闘艦ぐらい供与してくれるのかもな」

 

「へえ。興奮してきたぜ」

 

「単純なやつ」

 

 七海がそう言うのにアドラーはあきれ顔。

 

 それからシャトルはパイオニアへと到着。

 

 パイオニアはアドラーの説明にあったように、宇宙基地としての機能を有しているようだった。航空宇宙軍やウォッチャーの戦闘艦が行き来し、ときおり民間の船舶も行き来していた。

 

「ジェーン・ドウはここのどこに行けって?」

 

「こっちだ」

 

 七海が尋ね、アドラーが七海を誘導する。

 

 彼らが入り込んだのはウォッチャーに割り当てられた区画で、戦闘用アンドロイドが警備する区画であった。

 

「おいおい。ここに入るのか? ハチの巣にされねえ?」

 

「大丈夫だと信じるしかないな」

 

 七海たちはおっかなびっくりで区画に足を踏み入れ、戦闘用アンドロイドが反応する。しかし、戦闘用アンドロイドたちは七海たちをスキャンすると、それだけで七海たちを通してしまった。

 

「通っていいみたいだ」

 

「ウォッチャーとジェーン・ドウは繋がっている、か。驚くほどのことではないな」

 

 ジェーン・ドウは企業のフィクサーだ。その企業が雇っている民間軍事会社(PMSC)とつながりがあったとしても、アドラーの言うように驚くことではない。

 

 七海たちはウォッチャーの有する敷地内を進み、ジェーン・ドウに指定された場所に来た。そこはシェルのハンガーだ。何体もの軍用シェルが駐機され、いつでも出撃できるようにメンテナンスされている。

 

「ようこそ、七海さん、アドラーさん」

 

「ジェーン・ドウ。来たぞ。グラムに接近する方法を渡してもらえるんだよな?」

 

 喪服のようなドレス姿のジェーン・ドウは、この武骨な兵器の並ぶハンガーには場違いなように映っていた。彼女は七海たちを丁重に出迎え、七海は周囲を見渡しながらそう尋ねる。

 

「ええ。こちらに準備させていただきました」

 

 ジェーン・ドウがそう言って示すのは──。

 

「軍用シェル。それもシリウス・ダイナミクスの最新であるヴァルキリー2A1か」

 

 アドラーが驚いて見上げるのは、これまで七海たちが相手にしてきたシェルよりも洗練されたデザインの、歩行戦闘車両(WFV)たる軍用シェルだった。

 

「こちらを貸与させていただきます。このパイオニアからグラムの現在地までは十分に航続距離内ですので、問題はないかと」

 

「俺たちこのカッコいいロボット使っていいの!? マジで!?」

 

 七海はシェルが使えると分かって大興奮。

 

「貸与ということは後で返せということか」

 

「はい。しかし、無傷でお返しいただく必要はありません。戦闘でのダメージはちゃんと考慮しております」

 

「それは助かるな」

 

 アドラーもジェーン・ドウにそう言いながらシェルを見上げる。

 

「しかし、戦闘艦相手にシェルって接近できるのか?」

 

「ある程度はな。デフレクターシールドは強力なものがついてるようだし、機動性も問題ないだろう。それにグラムは単艦で行動している以上、どうしても守りには穴が生じる。行けるぞ、七海」

 

「オーケー。ならやってやろうぜ、相棒」

 

 七海たちはそう言って拳をぶつけ合う。

 

「グラムは既に密輸品を捕獲した可能性があります。迅速に対処をお願いします」

 

「すぐに向かうよ。操縦は任せていいよな、アドラー?」

 

 ジェーン・ドウが言うのに七海が頷き、アドラーに尋ねる。

 

「任せておけ。七海、お前は副操縦席に」

 

 アドラーはそう言ってシェルの操縦席に乗り込み、七海が副操縦席に乗り込んだ。

 

「兵装チェック。全兵装使用可能、よし」

 

 アドラーは早速シェルと接続して機体のチェックから始めた。

 

「推進系、リアクター系、異常なし。いいぞ」

 

 シェルの無重力空間での操縦を担うスラスターなどがちゃんと機能することや、もちろんエネルギー源になるリアクターが安定していることも確認。

 

「よし。システムとのリンク完了だ」

 

 そして、アドラーはチェックを終えた。

 

「いよいよか」

 

「ああ。出るぞ」

 

 七海が頷く中でアドラーがシェルをハンガーからフライトデッキの射出用電磁カタパルトまで移動させる。

 

管制(コントロール)よりブラボー・ゼロ・ワンへ。直ちに指定されたカタパルトまで進出せよ』

 

 フライトデッキではAIが管制を行っており、アドラーと七海はその誘導に従って電磁カタパルトまで到達。

 

 そして──。

 

『射出スタンバイ。3、2、1、ゴー!』

 

 AIのカウントダウンののちに七海たちを乗せたシェルが射出され、宇宙に放たれる。

 

「うお! マジで宇宙空間に放たれちまった!」

 

「本番はこれからだぞ。今、グラムの現在地の座標が来た。飛ばすからな!」

 

 七海が衝撃に驚く中で、アドラーがグラムに向けてシェルを駆る。

 

 シェルは加速し続け、戦闘艦グラムへと迫った。

 

『七海、アドラー? 今、シェルに乗ってる?』

 

「ああ。乗ってるぞ。ジェーン・ドウが準備したやつだ」

 

『凄いね。それからグラムについて興味深い情報があるから渡すよ。グラムはどういうわけか航空宇宙軍の全ての通信に応答しなくなった。10分前からね』

 

「通信に応答しなくなった?」

 

『そ。どうにも妙なんだよ。ついに航空宇宙軍は暗号を使わず呼び掛け始めたけど、一切応答しない。航空宇宙軍司令部はグラムの反乱を疑ってる』

 

「何というか。やな予感がしてきたな……」

 

 危険な密輸品を受け取ったグラムが、その直後に沈黙した。そして、七海たちはそんなグラムに向けて進んでいるのだ。

 

『それからグラムは通信に応答しないけど、レーダーなどの機器は動いているみたい。七海たちも間もなくグラムの索敵圏内に入るよ。十分に警戒してねー』

 

「はいはい。そうしますよっと」

 

 そこでシェルの操縦席内で警報音が響いた。

 

「どうした!?」

 

「レーダー照射を受けている。グラムからだな」

 

「敵が気づいたってわけか」

 

「そうなる。さて、ここで敵がどう動くかだが……」

 

 アドラーがそう言って操縦席のモニターを睨む中、別の警報音が響く。

 

「今度は射撃管制用レーダーだ! 撃ってくるぞ!」

 

 すぐさまアドラーがデフレクターシールドを展開しながら回避運動を取る。そこにグラムから高出力レーザーが飛んできた。

 

「うおっ! やべえぞ! 前に戦ったコルベットより強力なレーザーだ!」

 

「ああ。宙域防衛のための戦闘艦でも、あのコルベットより高性能だろう。しかし、こっちもそれなりに優秀なシェルだ。負けはしない!」

 

 アドラーは出力を全開にして一気にグラムに向けて迫る。

 

『七海、アドラー! 見えてるかもしれないけど、グラムが艦載のシェル2機を発進させたよー! こいつらゴースト機で誰も乗ってない!』

 

「無人機ってことか。いよいよ不気味になってきたな?」

 

 グラムが艦載していたシェル2機を後部航空甲板から発進させた。シリウス・ダイナミクス製のヴァルキリー1A2だ。今、七海とアドラーが乗っているヴァルキリー2A1より旧式機である。

 

「撃破して進むぞ」

 

「オーケー!」

 

 アドラーが右手のエネルギーブレードを展開させてそう言い、七海も敵の動きをしっかりと監視する。

 

 グラムが発進させたシェル2機は七海たちに向けて突き進んでおり、残り2分でお互いの所持する火器の射程だ。アドラーが交戦を恐れることなく進んでおり、相手のシェルも同じようにリアクターを全開に進んでくる。

 

交戦(エンゲージ)!」

 

 まずアドラーが所持していた口径30ミリ電磁ライフルで相手のシェルを銃撃。敵のシェルはデフレクターシールドで身を守りながら、回避運動を取ろうとする。

 

「どうするんだ、アドラー! デフレクターシールドで防がれちまうぞ!」

 

「分かっている。まずはデフレクターシールドの指向性エネルギー場を飽和させないとな。かなり揺れるぞ!」

 

 アドラーは七海にそう警告してから回避運動を取るシェルを追う。

 

 敵のシェルの方からも銃撃が加えられ、アドラーはデフレクターシールド展開させながら、その攻撃を防ぎ、肉薄する。

 

「アドラー! 俺のFREJAをシェルに繋いだ! これで敵の未来位置が分かるはずだ! 使ってくれ!」

 

 さらにここで七海は自身の戦闘支援AI“FREJA”をシェルに接続した。

 

「いいぞ! まずは1体だ!」

 

 敵のシェルの未来位置を予想し、懐に飛び込んだアドラーがエネルギーブレードで敵機を引き裂く。デフレクターシールドは一瞬で飽和し、敵機はエネルギーブレードに引き裂かれて爆発した。

 

「やはり自動防衛システムの動かしている動きだな。この程度の戦闘AIは大した相手ではない。このまま切り込むぞ!」

 

「おう! やってくれ!」

 

 確かに敵のシェルの動きは単調で、洗練された動きではない。

 

 そんな敵のシェルに再びアドラーが攻撃を仕掛け、敵機はデフレクターシールドを展開しながら電磁ライフルを乱射。七海たちの乗るシェルのデフレクターシールドが飽和状態に向けて進んでいく。

 

「うお! なんか警報がまたなり始めたぞ!」

 

「大丈夫だ! 無視していい! これで終わりだからな!」

 

 そして、アドラーは最後の敵機に向けてエネルギーブレードを突き立てた。

 

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