異世界から帰ってきたと思ったら火星。   作:第616特別情報大隊

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戦闘艦グラム//ゾンビアポカリプス

……………………

 

 ──戦闘艦グラム//ゾンビアポカリプス

 

 

 最後のシェルを撃破したアドラーと七海。

 

「よし、敵の迎撃はこれぐらいだろう。急いでグラムに乗り込もう」

 

「オーケー。カッコよかったぜ、アドラー」

 

「そうだろう?」

 

 アドラーは七海の言葉ににやりと笑うとグラムに向けて飛行を続けた。

 

 そこでグラムから再びレーザーが照射されてきて、アドラーが回避行動をとる。

 

「まだ敵の歓迎が終わってないみたいだな」

 

「だが、大したものじゃない。一気に突っ切るぞ」

 

 グラムからのレーザー攻撃を回避しながら、七海たちはグラムの飛行甲板に強引に着艦。そこから人工重力場に侵入し、そこでシェルから降りた。

 

「何というか、もっと乗組員が迎撃に来ると思ったんだけどな」

 

「そうだな。いくらなんでも静かすぎる」

 

 七海とアドラーは静まり返ったグラムの中を見て、そう呻いた。

 

「って、何か動き出してないか? 気のせいか?」

 

「いや。エンジンが点火された。間違いなく動いている」

 

 七海が僅かな揺れを感じて言うのにアドラーがそう返した。

 

 まさにグラムはエンジンを点火して動き出し、この火星の早期警戒ネットワークの外という宙域から、移動しようとしている。

 

「どこに向かっているっていうんだ?」

 

「分からん。戦闘指揮所(CIC)を目指そう。そこにいけば何か分かるはずだ」

 

「ああ。だが、それと同時に密輸品の確保とバルディーニ大佐の始末もしないとな」

 

「やることはたくさんだな」

 

 七海たちは仕事(ビズ)の達成を目指してグラムの中を駆ける。

 

 まず彼らが目指したのは戦闘指揮所(CIC)だ。そこにはバルディーニ大佐もいるかもしれなかったし、それにこのグラムがどこに向かおうとしているかを把握することもできる可能性があったからだ。

 

 そう思って七海たちはグラムの中を進み始めたのだが──。

 

「見ろ、アドラー。あれは見たことがないか?」

 

「ある。最悪なことにストリートでな。例のオールドスカーレットをキメたジャンキーどもと同じような動きだ」

 

「やっぱりそうだよな」

 

 七海が見つけたのはゾンビのように艦内を徘徊する乗組員の姿だった。

 

「どうする?」

 

「どうするもこうするも、攻撃して来たら反撃するだけだ」

 

「そうだよな。じゃあ、行くか!」

 

 アドラーが言うのに七海が覚悟を決めて乗組員たちの方に向かう。

 

「襲ってきませんように、襲ってきませんように」

 

 七海がそう祈りながら乗組員たちの前に姿を見せると、虚ろな目をした乗組員たちが一斉に七海たちに向けて突撃してきた。

 

「あー! やっぱりこうなるのかよ! クソッタレ!」

 

 七海は瞬時に“加具土命”を抜き、乗組員たちと交戦を開始。

 

「七海、援護する!」

 

「サンキュー、アドラー! このまま戦闘指揮所(CIC)まで突っ切るぞ!」

 

 次から次に押し寄せてくる乗組員たちを撃破しながら七海たちは前進する。幸い非武装の乗組員たちにできるのは肉薄して攻撃することだけであり、それならば身体能力強化(フィジカルブースト)を使用している七海が圧倒的に優位であった。

 

「行け、行け、行けー! おらおら!」

 

 七海とアドラーが艦内で暴れ回る中、警備ドローンが飛んでくる。ドローンは武装しており、レーザーで七海たちを攻撃してくる。

 

「クソ! ドローンが次々来やがる!」

 

「耐えろ、七海!」

 

 アドラーが飛行するドローンを撃墜し、七海たちは強行突破。

 

『七海、アドラー。グラムが動き始めているのを掴んだよ。不味いことに火星に向かっている。この速度ならば15分後には火星の重力圏に入る』

 

「そうなるとどうなるんだ?」

 

『今の状況じゃあ、火星に墜落する。その前に航空宇宙軍が撃墜するかも』

 

「マジかよ」

 

『だから急いで。戦闘指揮所(CIC)に行って艦載AIにアクセスできれば、あたしの方でどうにかできるかもしれないから』

 

「了解だ。急ぎましょう」

 

 李麗華に言われて七海が戦闘指揮所(CIC)に急ぐ。

 

 乗組員を蹴散らし、警備ドローンを撃破し、七海たちは戦闘指揮所(CIC)に向けて進み、そしてついに戦闘指揮所(CIC)の前に到着した。

 

「ドアはロックされている」

 

「俺が開けるよ。そら!」

 

 七海は“加具土命”でロックされていた扉を切り開いた。

 

 すかさずアドラーが銃を構えて突入し、七海がそれに続く。

 

「これは……」

 

戦闘指揮所(CIC)は壊れちまっているのか?」

 

 戦闘指揮所(CIC)のモニターは狂った表示を出し続け、意味不明な文字列や映像が点滅している。そんなありさまの戦闘指揮所(CIC)は機能しているようには見えなかった。

 

「艦載AIにアクセスできれば、李麗華がどうにかできるかもって言ってたが」

 

「一応(アイス)にバックドアを作っておこう。しかし、この状況では艦載AIがもはや機能しているとも思えないが」

 

 アドラーはそう言いながらグラムの(アイス)にバックドアを作成。李麗華が外部からアクセス可能にした。

 

「李麗華。バックドアはできたが、警戒してくれ。未知のウィルスにグラムのシステムは感染している。下手をすると脳を焼き切られるぞ」

 

『了解。油断せずにやるよ』

 

 李麗華はアドラーからの警告に返事をし、グラムの艦載AIへアクセスを開始。

 

『これは……艦載AIは機能を大きく損傷している。これはウィルスの仕業? けど、高度軍用グレードのAIがここまで破損するだなんて……』

 

「李麗華。火星への墜落は阻止できそうか?」

 

『ちょっと無理っぽい。この艦載AIの破損状況では、下手に修復しようとすると余計に問題がこじれて不味い状況になるかも』

 

「そうか。なら残り時間でどうにかする」

 

 七海は李麗華にそう言い、仕事(ビズ)を継続しようとする。

 

『待って。艦内の監視システムは生きてる。それによればバルディーニ大佐は自室にいるよ。今、そっちに座標を送るね』

 

「サンキュー、李麗華!」

 

 李麗華はグラムの監視システムで艦長であるバルディーニ大佐のID情報を取得。それによって彼がどこにいるかを突き止めた。

 

「急ぐぞ、アドラー。ゆっくりしていると火星に落ちちまう」

 

「ああ。バルディーニ大佐を殺し、そして密輸品を回収する」

 

「そして、仕事(ビズ)はコンプリートだ」

 

 七海たちはグラムの中を駆け、今度はバルディーニ大佐がいる艦長室に向かった。

 

「ドアはやはりロックされている」

 

「任せろ」

 

 今度も七海が“加具土命”でドアを切り開き、中に侵入する。

 

「いたぞ。こいつだろう」

 

 艦長室にいたのは、他の乗組員同様にゾンビ状態になっていたバルディーニ大佐だ。彼は七海たちを見ると、ゾンビのように襲い掛かってきた。

 

「邪魔!」

 

 バルディーニ大佐は七海の“加具土命”にばっさりと切り殺され、鮮血を舞い上げて床に倒れた。七海はバルディーニ大佐がゾンビのように起き上がらないことを確かめると、問題の密輸品を探し始める。

 

「どこだ? そもそもどういう形式で送られてきたんだ?」

 

『七海。今、グラムのログを確認していたところ。艦載AIや乗組員に異常が起きたのは、バルディーニ大佐が何かしらの記憶デバイスを接続した時点から。だから、怪しいデバイスを探してみて』

 

「あいよ。怪しいデバイス、ね」

 

 七海は李麗華に言われて艦長室に怪しいものがないかを隈なく探す。

 

「あったぞ、七海。このデータチップは火星では出回っていないモデルだ」

 

 そこでアドラーがバルディーニ大佐の死体のBCIポートからデータチップを見つけた。

 

「よーし。それを回収すれば仕事(ビズ)は達成だな。さっさと逃げようぜ!」

 

 七海はそう言ってシェルを止めてあった飛行甲板へアドラーと走った。

 

『七海、アドラー! 航空宇宙軍がグラムを撃墜しに向かっている! 接敵は2分後!』

 

「クソ、クソ、クソ! 誰の尻を拭いてやってると思ってるんだよ!」

 

 李麗華からの通信に七海が唸る。

 

 七海たちはシェルまで戻り、急いで乗り込むと強引に発艦を開始した。

 

『航空宇宙軍が対艦ミサイルを発射! グラムに命中するまで40秒!』

 

「急げ、アドラー!」

 

 航空宇宙軍の戦闘艦から発射された戦術核搭載の対艦ミサイルが、グラムに向けて飛行してくる。着弾まではすぐだ。

 

「発艦開始だ!」

 

 アドラーは電磁カタパルトで自身のシェルを打ち出した。

 

 七海たちが宇宙空間に放り出されてから数秒後、対艦ミサイルがグラムに命中。核爆発が生じ、七海たちの背後から衝撃波が伝わってくる。

 

「何とか、逃げ切れたな……」

 

「ああ。辛うじて、だな」

 

 七海が安堵の息を吐き、アドラーも深呼吸した。

 

「それじゃあ戻ろうぜ、火星へ」

 

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