異世界から帰ってきたと思ったら火星。   作:第616特別情報大隊

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空に願いを//伝説に乾杯

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 ──空に願いを//伝説に乾杯

 

 

 七海たちは“ザ・プラネット”からの脱出を目指してシェルに向けて急いでいる。

 

「どうやって国連宇宙軍(UNSC)の追撃をかわすかね?」

 

「頑張るしかないな」

 

「うへえ」

 

 アドラーが肩をすくめて言うのに七海がため息。

 

『七海、アドラー。国連宇宙軍(UNSC)は気にしなくていいよ。火星の重力圏に入ったことで、航空宇宙軍が国連宇宙軍(UNSC)を追い払っているから』

 

「おお。ナイス!」

 

 火星は国連宇宙軍(UNSC)の戦闘艦が重力圏に入ることを許さず、航空宇宙軍が国連宇宙軍(UNSC)を追い払いにやってきた。民間船舶であり寄港許可を得ている“ザ・プラネット”だけが火星に上陸していく。

 

「脱出だ、七海」

 

「イエス。さっさと逃げよう」

 

 七海たちは“ザ・プラネット”が火星に着陸する前にシェルで脱出。

 

 それから“ザ・プラネット”は無数のウィルスの被害者とテーラー・ダイヤモンドを乗せたままフィリップ・K・ディック国際航空宇宙港に着陸した。

 

 テーラー・ダイヤモンドは“ザ・プラネット”のシステムを火星のマトリクスに繋ぎ、一斉にウィルスを解き放つ。本来ならばそれは火星の市民とAIの全てを制圧してしまうはずであった。

 

 が、そうはならなかった。

 

「テーラー・ダイヤモンド様。タラップがご準備できました」

 

「いよいよ私が火星の真の王となるときがきたな」

 

 そうとはしらないテーラー・ダイヤモンドはタラップで“ザ・プラネット”から火星の地上に降りる。彼はこれからどう火星を支配しようかと考えながら、悠々とタラップを降りていった。

 

 そして、彼がタラップを降り切ったところでウォッチャーの軍用四輪駆動車がタラップに向けて走り込んできた。

 

「テーラー・ダイヤモンド! お前をテロ容疑で逮捕する!」

 

「な、なあ!? ど、どういうことだ! どうして火星の人間がまだ生きている!?」

 

「黙れ! 拘束しろ!」

 

 火星征服を夢見たテーラー・ダイヤモンドはあっさりとウォッチャーによってテロ容疑で拘束され、連行されて行った。

 

 その様子は火星のメディアによって報じられている。

 

『先ほどスリースター・ダイヤモンド社の最高経営責任者(CEO)であるテーラー・ダイヤモンド氏が火星当局によって逮捕されました。容疑はサイバーテロとされており、当局からはダイヤモンド氏の罪状への認否は発表されていません』

 

 七海たちはシェルの中でこのニュースを聞いていた。

 

「悪の親玉は逮捕され、ハッピーエンドだな」

 

「そうだな。仕事(ビズ)は完了だ」

 

 七海とアドラーは安堵の息を吐いて、ジェーン・ドウに指定された場所を目指していた。そこは古い地方空港で、そこに向けて七海たちは降下していく。

 

 そして、七海たちが着陸してシェルを降りると、そこではジェーン・ドウがパワード・リフト機とともに七海たちを待っていた。

 

「ご苦労様でした、七海さん、アドラーさん。この度はあなた方のおかげで、この火星を救うことができました。クライアントもそのことに非常に満足しておられます」

 

「それはどうも。俺たちも無事に任務達成できてうれしいよ」

 

 七海にとっては第二の故郷である火星の危機だった。これが防げなければ、火星は滅亡し、七海たちも死んでいたかもしれない。

 

「こちらが今回の仕事(ビズ)の報酬になります」

 

「おお。おお!? 1500万ノヴァ!?」

 

 七海が支払われたとんでもない額の報酬に目を見開く。

 

「ご満足いただけましたか?」

 

「もちろん、もちろん! 大満足だ!」

 

「それは何よりです。それでは失礼いたします」

 

 ジェーン・ドウはそう言って丁寧に頭を下げると、パワード・リフト機乗り込み、去っていった。

 

「おい、アドラー! 1500万ノヴァだってよ!」

 

「ああ。こいつは凄いな。3人で分けたとしてもひとり500万ノヴァか……」

 

「とりあえず李麗華を誘って飲みに行こうぜ!」

 

「そうだな。まずは祝杯を挙げよう」

 

 七海たちはそれから李麗華のマンションに向かい、そこで李麗華を誘うとキュリオシティに向けて祝杯のために向かった。

 

 キュリオシティはいつものように営業している。火星が滅びそうになったことを、まだ誰も知らないのだ。

 

「よう! マーズ・パスファインダーな!」

 

 七海はカウンターに腰かけるなり、そう頼む。

 

「ズブロッカをストレートで」

 

「あたしはカシスオレンジね」

 

 アドラーと李麗華もそう注文。

 

「しかし、俺たちもついに来るところまで来たな? ええ?」

 

「ああ。このまま傭兵を続けてもいいが、別の道もあるだろう」

 

「別の道っていうと?」

 

 アドラーの言葉に七海がグラスを呷ってからそう尋ねる。

 

「依頼を受ける傭兵の側から出す側への転身だ。フィクサーとしてこれからは動くというのはどうだ? 私たちは既にスコーピオンズにも、そして企業にもコネがある」

 

「なるほどね。俺はどちらかというとそういうのからはすっきり足を洗って、こういうバーを経営したいね。伝説が集まるバーって感じで」

 

「それもいいかもな」

 

 七海とアドラーはそう言葉を交わし、酒を味わった。

 

「地球に戻るのはもういいの?」

 

「あー。地球にはテーラー・ダイヤモンドみたいなクズみたいな金持ちがいると思うとな。それに今回の件で当分火星は地球との旅客事業を認めないって言ってるし」

 

「それはそうだね。ここまでされて火星が黙ってるはずがない」

 

 テーラー・ダイヤモンドのテロのせいで火星は地球により強硬な姿勢を見せるようになっている。当面は火星=地球間の行き来は認められないだろう。

 

「まあ、とりあえずは今回の仕事(ビズ)の成功に乾杯!」

 

仕事(ビズ)に乾杯!」

 

 

 傭兵たちはそうグラスを重ねた。

 

 

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