アンチ八雲紫協会吸血鬼支部長   作:覚め

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姉を自称するのはやめてくれと言っているのに、八雲紫の自称については半ば諦めている自分に驚くんですよね。


自分で驚く

「地底、行かない。ゼッタイ」

 

「話には聞きましたが…」

 

「地底の勇儀さんにも姐さんって呼ぶことになりかけた」

 

「…え、え!?」

 

今、俺の目の前にいるのは華扇さん。俺の姉を自称する妖怪の一人である。ちなみに天狗として扱われてた時に一番良くしてくれた人でもある。二番目に姉を自称した奴でもある華扇さんだが、まあ、なんというか。良くしてくれたことが裏目に出て空振りしてると思う。うん、これは俺の勝手なアレコレなんだけどね。空振りはしてた。

 

「全く…あの隠岐奈でさえ姉を…しかも勇儀…貴方本当の能力は姉を増やす能力じゃないの?」

 

「術中に嵌ったであろう奴に言われたくねーよバカ」

 

「はぁ?」

 

「華扇さんもそう思う?俺ももしかしたら能力が二つあるんじゃないかって思えてさぁ」

 

「今の発言を流すと思います?」

 

「…」

 

説教が始まった。俺の姉を自称する奴は華扇と摩多羅隠岐奈と八雲紫の三名。他にいるとすれば多分俺の知らないところで自称してる奴。その三人の中でも俺が一番関わりたくないのが華扇だ。華扇の説教が主な理由だが、しかし正直に言えばこいつ以外が俺を叱ることはほぼないと言っていい。八雲紫は絶対怒らない。摩多羅隠岐奈は極々偶に。

 

「…はい」

 

「本当にわかったのですか?」

 

「消えますね」

 

「逃しません」

 

「ちっ」

 

「まだお説教が足りてないようですね。やはり紫や隠岐奈では貴方を叱ることなどは出来ない。姉を名乗るならせめて弟の不躾な態度を正すことくらいは」

 

「華扇おねーちゃんうるさーい」

 

「ごめんなさい…」

 

こいつほんとに面白いな。そう思いながらも俺は、巷やら新聞やらで語られる『怖い姉』という人物像に全く共感できないことを思い出す。内弁慶という奴らしいが、弁慶ねぇ。親バカになぞらえて言えば、八雲紫達は姉バカになるのだろうか。過保護な面もあるにはあるが…そう考えたら怖くなって来たな。どーにかせねばならんなぁ。

 

「それで?今日は何をしに来たの?貴方が積極的に私と絡むことなんてほとんどなかったと思うけど」

 

「いや、あれだよ。そろそろ怒られるから取ろうかなって」

 

「え?」

 

華扇さんの腰を触る。抱き寄せる形ではあるが。そう。俺は華扇さんの腰に目をつけていたのだ。実を言うと俺の姉を自称する奴には一度はつけている。華扇さんは二回目だ。あの時はあっさり気づかれたのに今回は全然気付かれなかったな。あとやらしい声出さないで。お前本当に仙人やってんの?やってるらしいわ。意味わかんね…

 

「全く!人の私生活を腰から覗いていたなんて!」

 

「だから取ったんでしょ〜」

 

「っ…それは、そうですが!」

 

「ちなみに八雲紫にやったら速攻でバレて裸見せつけられた」

 

「痴女ですか!?」

 

「摩多羅隠岐奈にやったらニ童子が話しかけてくるようになった…」

 

「貴方何やってるんですか??」

 

俺も知らん。が、まあそうなってしまったのは事実なので反省して取りにきたわけだ。だからそんなに大声を出さないで欲しい。仙人というよりも閻魔の方が似合ってるくせになぜ元鬼なのか。地蔵にでもなればいいのに。つーか地蔵になっとけ。…いやこいつは無理か。元々鬼だし…公平性がないのも問題か。

 

「貴方の姉が増えるのは良くないことです」

 

「俺もそう思うよ」

 

「これ以上増やさないことですね。紫も少し難色を示してますから」

 

「紫ねぇ…わからんよ?あいつ姉ちゃん呼びしたら倒れたし」

 

「それは…まあ、それとして。で、用事はさっきのセクハラだけですか?」

 

「あーそうそう。華扇が知ってる中で俺の姉を名乗り出しそうな奴知らない?そいつら避けて生きるから」

 

「むぅ…そうてすね。まあ…ざっと三人くらい」

 

「三人もいるのか」

 

挙げられたのは、豊郷耳と聖白蓮と青蛾という人たちだ。但し書きがあるとすれば、青蛾という人は姉を名乗るか俺をキョンシーにするかで迷ったらしい。豊郷耳は摩多羅隠岐奈から聞いている。聖白蓮は誰だ。寺の住職か。寺の住職が姉名乗るのか?そりゃどんなバグなんだ??…元々弟がいたからって、他人の姉は名乗らんだろ?

 

「ざっとこの三名ですね。勇儀は多分、元々姐さん呼ばわりだからだと思いますが」

 

「…アンチ自称姉女協会作ろうかな」

 

「無関心よりもアンチの方が関心あるので私は嬉しいですよ」

 

「死ね!お前、お前もう死ね!」

 

「姉に向かって死ねとはなんですか!百年ぶり近い再会だというのに!」

 

「あーごめんなさい!許して!」

 

俺の部屋を伝って逃げる。逃げ込んだ先は神社。異変やら妖怪退治やらに出掛けてなければいるはずだが。アドバイスの礼も兼ねて、以前八雲紫に渡した酒を持って来た。月の光だけで作られた酒。妖精の力があれば誰でも作れるぜ。三妖精のうちの一体が必要だけどなぁ!!…なぁ!!

 

「よっ」

 

「つまみ」

 

「…勘良すぎない?怖いよ」

 

「はい、こっち。月見酒でしょ」

 

「あいよ」

 

「…あんまりね」

 

「うん。月の光ってだけだもん」

 

「これをお礼に?」

 

「紫はなんでも喜ぶからな」

 

「それただの姉バカでしょ」

 

言われちまったか。まあでもそれは俺も思うけどね。なんだろ、姉バカなのは良いんだけどただの会話に姉バカが出てこないからみんな驚くんだよな。俺が作ったって言えば大事に扱うし、俺がやりたいというと躍起になるし。今は少し落ち着いたかな。

 

「あ、私のお酒」

 

「うわっ」

 

「八雲紫…これは俺が作った酒だからな」

 

「もう飲み干しちゃった♪」

 

「…樽、あったろ?」

 

「あれくらいじゃ1ヶ月も持たないわ!」

 

「あー…藍、藍〜」

 

「本当のこと言ってますよ」

 

「…作るか…」




三妖精「ぎゃー!拉致!監禁!誘拐犯!」
霞野「対価として菓子と酒あげてるじゃん!」
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