↑聞こえて来たのは誰の声ですか?私は貧乏神(妹)です。
「ほー。ここが聖白蓮がいるという…場所は把握した。青蛾って人と神子は仙界とやらにいるっぽいから、ここだけ気をつければ良いか」
さて、どうするかな。飯食って帰りたいのが本音だけど。今この寺の前にいる理由が、聖白蓮が人里にいることだからな。逆に言えば聖白蓮が人里にいなかったらここに来てないから。人里で飯を食えねえんだ。苦しい一日が始まるって寸法だ。泣かせろよ小僧。おらっ!泣かせろ!…なんで増えるであろう姉に警戒せねばならんのだ…
「こんにちは!!」
「うわっ」
「あ、ごめんなさい」
突然轟音が鳴り響いたと思えば…これが妖怪の声かよ。おかしいんじゃねえのか?こう、大事な倫理観がないんじゃないのか?鼓膜破る奴を門の前に立たせないでくれ。俺の姉を自称する奴が危惧するだけあって、その身内もバケモンだ。声量だけで鼓膜を破ろうとする奴がいるとは。寺に入る入らない以前の話だろこれ。
「…はあ。俺ってばどうしてこんな目に。まともな姉が欲しいよう」
人里の路地裏で項垂れる。いやまあ、うん。人里の路地裏は路地裏なのか疑いはするが。そんな俺の目の前に何やら珍妙な女が。こいつは、八雲紫から聞いたことがある。うっすいスカート、フードのついた服、所々にある差し押さえの紙。貧乏神か…確か、紫苑と言ったか。姉の方でもあるな。…妖怪におけるまともな姉とはこういう奴なのか?
「あ、元から不幸な人発見」
「俺は妖怪だ」
「何があったのー」
「…お前さ、人の姉を自称したい?男でも女でもさ」
「…なりたくないでしょ、普通」
「だよな!!そうだよな!はぁ…俺の姉を自称する奴ってどうすれば良いと思うよ?」
「普通じゃないから距離取るとか」
「それが出来たら苦労しねえぜ…」
「それもそっか」
このお姉さん割とまともだな。話してたら妹の方も来た。俺と紫苑を交互に見て、俺の方をかなり長く見て、絞り出したかのように顔を思いっきり歪めて俺にこう言った。
「姉さんはやめときなさい」
紫苑、お前…妹が過保護なのかお前がヤバすぎるのか判断できねえぞ。どっちだ?どっちが正解だ。というか待て、俺と紫苑がそういう関係に見えるのか?なんだこいつ恋愛初心者か?あーいや、でも妹の方がここにいるのなら別に好都合ではあるか。姉にした質問と同じ問いをしてみるかね。
「はあ?人の姉を自称したいかって…そうねぇ…別に。姐さんだけでも大変なのに、貧乏神の妹やら弟が出来たらもう大変よ。姉さんは飢えるわ」
「えっ」
「…姉さんがいなかったら?」
「考えられないわ」
こいつ…まさか、シスコン…!?もしそうだとすれば、まあまず姉を排除出来ずに物事を考えるだろうな。こりゃこの姉妹に聞いた俺がダメだったか。フランドールにも聞いてみたいが、あそこは入ろうにも門番の後がな。素早いメイドが厄介なんだよ。邪魔だし殺せないし。なんだろ、能力が関係してるのかな。天狗にも能力使って素早くなる奴いるけど。
「ふーん…つまりは、姉を自称する奴が増えそうで怖いってことね」
「そそ。」
「…増やしたら?」
「えぇ…」
「意外と良いかもしれないでしょ。現にいま自称してる奴らは良いわけでしょ?」
「まぁ…それは、な」
「何よそれ。じゃあ増やして許可して、を繰り返せば良いじゃない。」
「本音は?」
「頼る先は多い方がいい!…ま、これは私たち貧乏神の体質もあるかもね」
なるほど、ヒントをもらった。ついでにアンチ八雲紫協会を宣伝させてもらう。いまならお二人は神支部代表だ。どう?入らない?え、姉が入ると組織そのものが廃れる?…妹さんだけで良い?ダメ?ダメかぁ…え、何?並外れた運を持つ天人がいれば多分入会できる?並外れた運…?天人…?八雲紫から聞いた天人しか知らんが…
「天人様といると全然不幸にならないんだよねー」
「そりゃとんでもない豪運ね」
「そうだなぁ…その天人が入ったら教えるわ。まあ貧乏神に関わる天人なんてそうおらんでしょ」
「ぅぐっ」
「姉さん!!」
クリーンヒットだったか。こりゃ失敬。だがまあ、加入条件がその天人となればわかりやすい。特徴は知らんが、天人ってあれだろ。見てわかるくらい変な奴。だと思うんだが…確かそうだったと記憶している。何せ見たことがほとんどないのだから。まあそれは良いか。そもそも幻想郷自体へんなやつばっかだし。
「…さて。いまあそこから見てるのって誰?」
「ん?あー、聖。ごめん姉さん、私ちょっと行ってくる」
「はーい」
「聖…それでは俺もこれにてお暇する」
「えっ」
逃げ出す。相手は俺についてなんの考えもしてなかっただろうから、多分気にも留めないだろう。話せば違うかもしれないが…いやいや、話し合いは悪手。摩多羅隠岐奈はそれで姉を名乗ろうとしてたからな。ダメだそれは。流石にダメ。で、俺の部屋にいるわけだが。月の賢者の片割れ、その妹が。
「月の賢者を招いた覚えないんだが」
「奇遇ですね。私も招かれた覚えがないので帰していただけます?」
「…まあ、お前が居ると八雲紫だって顔を出さないから嬉しくはあるんだけど。姉君はいないの?」
「いません」
「茶は?」
「長居するつもりもありません」
「…じゃあ来んなよ…」
「だから!来たくて来たんじゃありません!!」
霞野「ぶぶ漬けでも食わせるか」
依姫「じゃあ帰してください」