フランドール「ひゃっほい!」
な話
「なんだよ〜…」
「私と喧嘩しなかった代価よ。咲夜を働かせた代価、紅魔館を破壊させた代価…諸々含めて、過去を話して」
「はいはい。紫との出会いだけな?」
「全部」
「流石に覚えとらん…摩多羅隠岐奈とかは完全に知らないうちに付いてた人だし…」
あーまず天狗の巣。親もおらん俺は天狗達の社会に入ったわけだが、まあ、あれだな。そこでいじめられてた。翼がこれだから、周りと違うってだけでだなぁ。そんな時に助けてくれたのが八雲紫だ。その時既に鬼くらいの力は…あったのかな、まあ俺を助けてくれたわけだ。藁にもすがる思いで必死に助けを求めたのは覚えてる
「へぇ…そこから?」
「いや、数日くらい間が空いて、またいじめられた時にやれやれ仕方ないみたいな感じで出て来た時。名が売れてたのか知らないけど、八雲紫の弟を自称しろって言われて」
「名乗り始めたのはそっちなんだ」
「生きる為だ。そこから数年は何もなかった。つーか俺の名も売れた。八雲紫の弟としてな?…ちなみになんだが、こっから割ときつい話するぞ」
「どうぞ?」
あれは本当に二人きりで歩き回ってた時。八雲紫がふと思い出したように『姉弟の関係なら、少しくらい物理的な繋がりが欲しいわぁ』って。世話になってたからな、何が良いって聞いた途端に口開けられて、舌千切られて、痛みに悶えてたら八雲紫も自分の舌引っこ抜いて、俺に押し付けて来た。接着をスキマで終わらせて自分も終わらせて初めて発した言葉が『痛かった?でもこれで本当の姉弟よ』だって。
「泣くぜ」
「…まさか隠岐奈も…」
「あいつはまだ。こういう話が好きならあと一人、華扇って鬼がいる」
「そっちも!」
「華扇は…あれだ。舌を入れ替えられて、抜け出した後に出会った。随分と良くしてもらったんだが…こっちは華扇がいきなり姉を叫び始めたからな」
「へー」
「んでも、そうだな…人間で一人、俺に理解を示した奴が居たんだが…」
「どんな人?」
「…こう、全体的に緑っぽい人かな…」
まあそれは良くて。その華扇と出会って、八雲紫に連れ戻されて、そこで月との戦争もあった。いやぁ大変だったよその時は。どうやっても八雲紫は強行突破するつもりだったし。月に行って、そこの賢者に土下座して、八雲紫のところまで連れて行ってなんとか終わらせたけど。その時に片割れからすんごい罵倒喰らったよ。
「…ねえ。私は月のことが一番聞きたいの。そうやって端折らないで」
「…思い出したくないんだよ。察せや」
「へぇ〜…まあ、良いけど。今度は誰に姉を名乗らせるの?」
「勘弁!悪いが俺はこれ以上姉は増やさん」
「ふーん。じゃあ私が名乗ろうか?」
「…頼む。やめてくれ」
「はぁい」
今の三人でも結構面倒なのに。全くだこの妹君は。まだ月の方が絡みやすくはある。どっちも絡むなら嫌な部類ではあるがな。そうだ、永琳先生のところにお礼言っておくか。というわけで鈴仙のところへ移動。そのまま歩き始めて鈴仙と…優曇華の方がいいんだったな。優曇華に出会う。お前やつれた?
「…霞野さんは良いですよね。戦争だって参加してたのに、何もないみたいで…」
「あー、そういうことか。そうは言ってもなぁ…」
「私なんて、逃げてきた身なのにまだ怖くて…花火の音が聞こえるたびに、みんなが」
「俺の場合、戦争けしかけた奴が…一番好きな奴だったし。俺はいまだに天狗が怖いし」
「あ、いじめられてたんでしたっけ」
「実を言えば、お前らんとこの賢者姉妹も…姉の方はまだ怖い。」
「そうなんですね。やっぱり、戦争ってよくないですね」
その通りである。が、しかし。戦争は悪いことだけじゃない。あの戦争で月まで追い討ちをかけて人間を殺そうとする血の気の多いバカはあの時に死んだ。だから、少しだけ俺は感謝してる。お前らのおかげで姉はもう月に侵略しなくて済むのだから。あ、いかん。八雲紫だ。はーあっぶね。まあそんなPTSDな優曇華を連れて人里へ。
「優曇華」
「なんですか?」
「やっぱなんでもないわ。何したい」
「お昼寝です」
「永琳先生からは許可取ってるしな」
「え、よく取れましたね」
「ちょちょいとな。眠いならどっかそういう店探すか?」
「…いや、そういうのはダメですよ?」
「花火買ってくるわ」
「ごめんなさいですから」
結局は開拓されきった後のくたびれた雰囲気を醸し出すベンチに座って優曇華を膝枕することになった。男の膝枕はそんなに良いものではないだろうに。撫でる手妙にでかいせいで、往復が早いし。そんなこと考えてたら優曇華が眠り始めた。そこまで眠かったのか、月にいた頃はピンと張っていた耳も脱力している。
「…いかんな、俺も眠くなってくる。依姫に自慢…いや、ダメか」
「あやや!」
「っ…」
「お熱いですね御二方!そちらは薬売りさんですが…貴方は?」
「ただの妖怪」
「おっと、それは失礼。いったいどのような関係で?」
「昔からの知り合い」
「ほほう…ん?」
トラウマの天狗に話しかけられ、撫でる手が強くなったか、太ももに力が入ったか。優曇華が起きていた。開いた目はしっかりと天狗を見ていて、一体何をしたのか。もぞもぞと口を動かした後、天狗はフラフラとどこかへ消えて行った。何かしたのだろうか?まあ多分何かをしたのだろう。
「はぁ…撫でる手が止まってますよ」
「撫でる義理もないはずだが?」
「今、天狗を追い払った」
「そういうことね」
永琳「…吸血鬼の血を採血したら、数多の遺伝子が発見できると思ったんだけど…違ったわね」