昔話をすると言ったな。あれは嘘だ
いじめられていた。というよりも、翼が貧弱だから取られて、それで天狗と認められずに追い出されていた、が正しいか。そんなある日に、俺の周りを囲むようにスキマが現れた。それが俺と八雲紫との出会いだったんだなぁ。その時は随分と煽られたのだが。この程度で弱音を吐くなんてと言われたのも覚えている。
「…え、それだけ?」
「すんごい前だからな。俺もあいつもそんな鮮明には覚えてない。悪口だけだよ」
「えー…つまんな」
その後、何があったのかは知らんが俺の前に立つようになったことだけは覚えている。俺が再びいじめられたとなればスキマから出てきて周りを蹴散らしていた。そうなれば、俺をいじめるような奴は少なくなって行き、遂には消えたわけだ。消えた後に八雲紫が俺の姉を自称するようにもなった。何故か?それは知らん。
「で?姉を自称してたのに今みたいな関係性になったってことは、それまでに何かあったのよね?」
「あった。バリバリあった。そこから千年は確かに一緒だった。俺の力も付けてもらったし。」
「その目も?」
「これは自前だ。いじめられてた時にくり抜かれて、また付けた」
「…天狗ってキモいわぁ」
まず千年くらい経った後だな。それくらい経つと、八雲紫が名を轟かせたり式神を作ったりと色々し始めてな。その時俺は自分で生きていけるからって離れてたんだけど、連れ戻されてな。その時ちょっと嫌だったから理由をつけて離れようとしてね。茶の名のつくもの同好会を作ったわけ。そこに八雲紫が参加するのが条件だったけど。
「それが八雲紫アンチ協会の…なるほど」
「アンチ八雲紫協会な。んでさ、その時の式神が一応八雲藍だったわけなんだけどな?なんて言われて連れ戻されたと思う?」
「…八雲紫が待ってる、とか?」
「『弟様、紫様がお待ちしております』って。弟様だぜ?姉でもないのに」
「えぇ…あの隙間妖怪も拗らせたわね」
「いや、それよりも知らんやつに弟様って言われるのが嫌だった」
「せめて本名よね」
その後はもう俺の嫌なことのオンパレード。八雲紫が久しぶり〜って言ってきてな。いやもう、3ヶ月程度しか離れてないんだよなって。いや元からおかしいとは思ってたんだけどさ。やっぱり離れようかなーって。そこから少しして月との戦争が起こって、参加して。八雲紫謀って月の賢者と仲良くなったと思って、仲違いして。アンチ八雲紫協会作っていまに至る
「ごめん月の戦争とか知りたすぎるんだけどなんで省略したの??」
「いやあ…あれは俺も嫌な思い出だから」
「えー…でも、知りたいわぁ。ねえ?フランもそうでしょ?」
「えっ」
「急に私の胸触ってきて、その謝礼に話すくらいはしても良いんじゃないの?」
「はぁ!?お前何人の妹の胸触ってんのよ!咲夜!全力で追い出すわよ!パチュリーも呼んできて!」
「わかりました」
「あかん逃げよ」
俺の部屋に…あれ、入れない。まずいな?何かされたか。能力自体は封じられていないから、多分俺の部屋の方に何かされた。あそこに干渉出来るのは…摩多羅隠岐奈か八雲紫くらいか。タイミング的に八雲紫だな。逃げ道塞がれたぞ、完全にまずい。足で逃げるしかないな。よし逃げよう。背中に目をつけて…よし逃げようか
「うりゃっ」
「窓割って逃げた!」
「今昼なのに!?」
「あいつは大丈夫らしいのよ。それはそれとしてパチュリー!」
「大砲ね、発射」
あれ、背中につけた目が一番やばいことを示しているな?魔力で塗り固められた球が飛んできてる。あ、これ直撃コースだ。つっても横に避けたら今度は何が飛んでくるか。蝙蝠になって逃げるのは無理。体の何割か絶対削れる。再生に時間かかるし。とは言っても迎え撃つのは…少しどころかかなり無茶だ。
「うわっ!?」
「…あんなもの、後戸の国に飛ばしてしまえば何もないのさ」
「摩多羅隠岐奈か…いや俺の背中に扉開けるなよ。」
「紫も中々に乙女な素振りを見せる。」
あ、やっぱ俺の部屋に仕込んだのは八雲紫なのね。それはどうでも良いから退いて。下に降りて、走って逃げ去る。博麗神社…まあ、あそこまで逃げ込めば誰も手出しはできんだろ。だからさっさと俺の背中についた扉を閉めろ。助けてくれたことには礼を言うから。なんかしてやるから、さっさと黙って扉閉めろ。開けたら閉めるのが礼儀だろ。
「それは失礼した」
「あ、出て来るのか」
「ところで、私も弟が欲しくてな…」
「親に頼め、親に」
「いないから、義理の弟にだな」
「やだよ」
「私は縁結びの神でもあるのさ」
「じゃあ俺と八雲紫の縁をちょちょいと」
「それは無理だ。何せ元から絡まってるんだからな。切ってもまた絡まる」
まるで俺が八雲紫以外と縁がないみたいな言い方はやめて欲しい。いやでも、確かにアンチ八雲紫協会以外での関わりなんてそれこそ摩多羅隠岐奈と月の賢者の妹くらいしかないか…いやいや、宝ってそんなことあり得んぞ。あり得てたまるか。八雲紫を介さないと俺は繋がりすら持てんとは…いやでも風見幽香いたよな?あいつは?
「あれは存在が」
「違うのかよ」
「ま、諦めるんだな。八雲紫以上の縁はないし、八雲紫を介さないと縁は持てないんだよ、お前は」
「そんなに言っても弟にはならないからな?」
「良いじゃないか。私の弟になっても。神の弟だぞ?」
「いやそうなると八雲紫と摩多羅隠岐奈が義理とはいえ同じ家系図に入るから」
「あ、そっちなの?」
摩多羅隠岐奈「良いではないか」
霞野「お、おやめください御代官様…」
八雲紫「待てい摩多羅隠岐奈!!」