小林、ボーダー辞めたってよ   作:アルピ交通事務局

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第4話

 

 1月3日、東春秋の誕生日だ。ボーダーの中で彼はとても慕われている……しかし誕生日の日が新年明けて3日目である。

 M−1優勝してバズった人並みに誕生日おめでとうのメッセージが送られてきている。実際に誕生日おめでとうと祝ってくれるのは、嘗て自分が率いていた二宮、加古、三輪、月見……何時もならばここに片桐隊とかも入るが生憎な事に遠征中である。

 そこに今回は太刀川と冬島……まぁ、大体は二十歳になっているメンツである。

 

「東さん、誕生日おめでとう……1週間前から飲めるようになったわよ」

 

 誕生日がクリスマスの加古は約1週間前から酒が飲めるようになった。

 お酒の友になれるぞと言っているのだが……なんか、空気が死んでいる。空気を壊したり作ることは出来るし読むことも出来る。

 なんだかよくわからないけれども空気が死んでいる。なにがあったのかしら?と疑問を抱く。

 

「……寺島さん、聞いた?」

 

「ああ……俺の方が色々と知っているから忘れてるかどうか、ホントのホントに縁を切りたいから徹底してて完全に忘れてるか検証に付き合った」

 

「……なんの話をしてるの?」

 

 太刀川は重い口を開き、雷蔵にあの事を聞いているかの確認をした。

 雷蔵はどちらかと言えば当事者だった。詳しい詳細について知っている1人、そんな感じだ。クラッカーで誕生日おめでとう!とする年齢ではなく三輪と月見以外は飲めるので各々の酒を飲もうとする。酒に飲んでなにかを忘れようとしている、そんな風にも見える。

 

「…………小林がボーダーやめたんだ」

 

「……え?」

 

 誰が代表してその事を言うべきか、色々と悩んだ。

 一番最初に口を開いたのは東だった。小林がボーダーをやめたと聞いて加古はどういうこと?と疑問を抱いた。

 

「影浦くんみたいに根付さんをぶん殴ったりして」

 

「違う」

 

「じゃあ、二宮隊みたいに」

 

「それも違う」

 

「この前のイレギュラー門を見て引っ越しを」

 

「それでもない」

 

 ボーダーをやめたと言われてもあまりピンと来ない。

 使える手はなんでも使う、卑怯だ汚いだ言われようがなんでもする。メテオラを使った落とし穴攻撃と言う嫌がらせな戦術を取っていたりする。トリオン体の見た目を変えていいからって対戦相手のトリオン体にまで変えるとかいうクソみたいな戦法を平然と使う。その上で普通に戦ってもそこそこ強い、と言うか大抵の事は器用にこなせる。

 影浦みたいに上層部をぶん殴ったとか二宮隊みたいに不祥事を起こしたとかこの前のイレギュラー門を見て親が引っ越しを決意したからやめさせたとか色々と頭に浮かぶが東はどれも違うと言った。

 

「……じゃあ、なんで……」

 

 なにかしらの理由があるはずよね?と疑問を抱く。

 

「アイツは頑張った。頑張り過ぎっていうぐらいに頑張った。だからもう触れないでおく……お前も1週間前に二十歳になったから大人らしく干渉そのものをしないって優しさを」

 

「そんなので認められると思ってるの?」

 

 冬島が頑張ったからもう終わり、それ以上は深く干渉しないと卓蔵の話題を無くそうとする。

 自分が求めている頭文字Kで全てのトリガーに精通しており、殆どのトリガーがマスタークラス、持っているトリガーのポイントを合計したら一番最初に来るのは小林かレイジかと言われ、パラメーターだけ見ればレイジの方が上……と言うかボーダーで強い!と思われる人物の殆どの下位互換に当たるのが小林卓蔵である。

 見る人は一芸を極められないと言うだろう。見る人は器用貧乏と言うだろう……でも、そういう奴等は確実に届かない。

 目の前にいる太刀川は攻撃手最強の男だ。しかし銃が得意かと聞かれれば別だ。目の前にいる二宮はボーダー最強の射手だ。しかし剣が得意かと聞かれれば別だ。

 100%で結果は出せないがそれでも色々な事が出来る。卓蔵自身もそれを理解している。ある程度は上に通じる武器を手にしトリックプレイを使う。レイガストを投げて時間差でレイガストにくっつけたハウンドをぶつけるという中々に器用な事が出来る。

 狙撃手を除けば1番のテクニシャン、テクニック驚異の11,指揮能力8と、特殊戦術9と上げにくいパラメーターが非常に高い。

 

 素直に才能があると加古は認めている。

 その根源にあるのが近界民に対する憎悪だったりする。それは三輪も持っているので、その憎悪を糧に成長している……そこまではボーダーに居る近界民憎しな城戸派な人間と同じだ。

 

「彼は誰にも手を借りなくて上に来たのよ?」

 

 昔のボーダーは知らないが今のボーダーが出来た時、直ぐに入隊したから覚えている。

 20人行くか行かないかの秘密の組織だった頃から、戦闘員以外を含めていきなり100倍ぐらいに増加したボーダー。

 昔のボーダーから居た人物、特に忍田本部長や林藤支部長なんかは戦ったことが無い人達に対して戦い方のレクチャーをした。天性の才能でやってる二宮に戦術が強い東をぶつけたりと色々とした……そんな中で卓蔵は違った。

 太刀川には忍田と言う師匠が居る。迅にも最上と言う師匠がいる。おっさん連中や昔のボーダー以外のボーダー隊員の中で一線を走ってる隊員達は大抵は師匠が居たりする。でも、小林卓蔵は違った。

 

 彼を不憫に思った。でも組織を大きくしないといけない、そうじゃないと何れ迫りくる脅威を乗り越える事が出来ない。

 そう思った城戸が、忍田が、林藤が、自分なりのアプローチをしようとした。せめて戦い方を教えよう。憎悪が原因で判断能力を間違えない様にしよう。色々と考えた。でも、その全てを拒んだ。

 

 誰かにアドバイスを貰ったわけじゃない。誰かに教えてくださいと頭を下げたわけじゃない。

 それでも上に上がった、駒の質が段違いな当時無敵のA級1位の東隊の次に強いA級2位、そしてA級3位はレイジと小南の玉狛第一と言う結果を残した。小南はありえないだなんだ言っていたが、それでもしっかりと結果を残した。

 

「それで……どういうことなの?」

 

「…………コレは、小林の為に言えない。あいつ自身も最後の最後で教えてくれた、それまでは小林は方向性が違うだけの天才って思っていたけど違っていた」

 

 小林が頑張った、それだけで終わらせない。

 なにがあったのかを聞かないと満足しない……もっともなにがあったか聞いても満足しないのが彼女だが。冬島は小林の名誉の為に言うことは出来ない。

 

「加古さん……卓蔵から預かった手紙があります……俺一人でどうにかする事は出来ない……」

 

 昨日からの心のモヤモヤを必死になって抑えている三輪は小林が託した手紙を取り出した。

 昨日の自分は今コレを読んだとしてもなにも出来ない、ただそう思うだけだがここには色々と語れる人達が居る。

 出来れば嘗て小林のオペレーターをやっていた藤丸ののが居てくれたらいいのだが残念ながらこの場には居ない。でも、感情的に動きそうなタイプだから居ないなら居ないでそれは良かったと思っている。

 

「【コレを読んでいると言う事はもう俺はボーダーに関しての記憶を殆ど失っている。多少のエピソード記憶が失っていても構わないと思っている。もし仮にこの手紙を渡す時に雑な対応をしているのならばごめんなさい。気持ちの整理を上手く出来なかったんだろう】」

 

 三輪は手紙を開き、読み出す。

 

「【結論から言って俺はもうコレ以上は我慢したり頑張ったりすることは無理だと思う……旧東隊の人や太刀川さんや雷蔵さん、ののさんは知っていると思うが俺はボーダーが嫌いだ。ボーダーのあり方が嫌いじゃないんだ……俺は俺なりに考えた。城戸司令達旧ボーダーの人間は何かしらの形で近界民とコンタクトを取っていたんじゃないかとか……そう思うと憎悪が消えない。俺の日常を消したボーダーや近界民に対して】」

 

「小林の憎悪、か……」

 

「……ボーダーが原因で大事なものを失った、だったな」

 

 ボーダーに対して憎悪を抱いている。それがなんなのかを冬島達は知っている。

 

 小林は普通の家の出身だ。

 先祖がなんかスゴいとかそういうのはない。

 親は三門市の市役所の職員だ。母親は週3でパートに出ている。中学1年生の妹が居る。従兄弟は二宮匡貴だ。

 

 小林の親は放任なところがあるがしっかりするべきところはしっかりしている。

 大手の学習塾に通わせているだけでなくパソコン教室……その結果、私立の進学校に進学し勉強を問題無く乗り越えている……とまぁ、ここまでは普通だろう。親ガチャが成功していると言われればなんとも言えないが。

 

 彼が中学1年生の頃にたまたま出掛けていた。両親は仕事、妹は友達とショッピングに行っていた。

 自分はなんとなく、ただ気紛れに出掛けていた……暇だったとも言える。でもそのおかげで大規模侵攻から生き延びる事が出来た。

 

 大規模侵攻で家族は失わなかった。

 でも代わりに色々な物を失った。コツコツと貯金を貯めて買ったマイホーム、妹の友達などを失った。

 近界民の存在を知った……酷い人は家族は死んだ。殺された。拉致されたと聞いた。でも、自分達はしっかりと生き残った。だから前を向いて歩こうと決意し……絶望に落とされた。

 

「【今でも覚えている。城戸司令が唐沢さんを連れて町内会の会合に来たのを。ボーダーが土地を買い取るから出て行ってくれと言われたのを。ボーダーの基地を設立すると言われたのを……思えばそれが悪夢の始まりだったかもしれない】」

 

 ボーダーが本部の基地を設立する。

 基地を設立するから既にそこに住んでいる人達は出て行ってくれと、勿論無茶は言わない。新しい新天地は用意する。土地も定価の倍額で買い取るという破格の値段交渉をした。でも、そういう問題ではない。あの惨劇をこの土地で繰り返すのか?と様々な反対の意見があった。それでもボーダーは国家運営の組織や国連の組織でなく民間企業として独立に成功した。国の認定付きだ。

 

 どんな手を使ったのかは分からないがそれに成功した。

 立ち退き命令や今なら3倍の価格で土地を買い取ります等の値段交渉をしたが、小林は必死に歯向かった。自分達の街が日常が壊されるのだから当然だ。あの惨劇は1回だけでいいと。

 

 小林の父は三門市の市役所の職員だ。

 ボーダーに関係する部署が作られるからそこに配属してくれと頼まれた……そして反対運動をしている人達を押さえてくれと、土地を買い取る為の反対運動を終わらせる。それが最初の仕事だった。

 当然、小林の父はその仕事やボーダーに対して思うところがあり反対した。でも、仕事は仕事だ。そしてボーダーという組織が居なくなる事があればもっと最悪な事になると言われて苦渋の決断をした。その際に反抗しまくったのた卓蔵と妻、要するに卓蔵のお母さんだ。

 

「【唐沢さんに近界民から金銭的価値がある物を強奪していいと言われ拷問も好きにすればいいと言われた。その場を誤魔化したりいざという時は1人の大人として止めるんだろうと思った、でも、それを信じるしか受け入れるしかなかった】」

 

 戦争屋に加担するだなんて正気じゃない。

 神戸とか名古屋とか東京とかに行けとは言わない。門を誘導する云々だったら嘗て日本にあった軍艦島学校みたいな感じにすればいい。

 

 両親が毎日喧嘩をしている。

 それと同時に妹は軽いパニック障害を起こしている。トリオン兵が暴れたのが原因で起きた建物の倒壊に巻き込まれて死んだ友達がどうしてもフラッシュバックする。

 

 マイホームを買ったばかりだ。一括ではないから当然ローンがある。

 異世界からの侵略者によって家が破壊された……果たして日本の住居のなんの保険が適用されるだろうか?結論から言って適用されなかった。残ったのはローンという名の借金だけでその借金を返したりするのに土地を売ってくれと頼まれた。

 

 毎日喧嘩を繰り返す両親、母は遂に限界を迎えて離婚届を出した。

 コレ以上は付き合うのは出来ないとなり、離婚した。父親の方に卓蔵が、母親の方に妹が引き取られた。

 なんでこんな事になったんだと思っていると学校が再開した。そして卓蔵の友達全員が三門市は危険だから出て行くと言われた。

 

 友達を失った。家族と離ればなれになった。家を失った。離婚が原因でローンの返済と妹の養育費や治療費でお金を失った。

 近界民から賠償金を奪う。偉い人になってボーダーをこの街から追い出す。それを糧にボーダーに入隊した。自分が大好きで才能があると言われている事を手放してまでだ。

 

「【ホントはやりたいことがあった。でも、それは家の経済事情で出来なかった。だからボーダーをこの街から追い出す、近界民に対して賠償金をぶん取る。それだけを糧に頑張った……でも、なにも出来ない木偶の坊だった。色々とやったけど、周りの人の方が自分よりも優れている様に見える。無様なゴミカスの様に思えてきた……もし、そんな事はない!って思ったなら言っておこう。俺はサイドエフェクトのおかげでこの強さを手に入れる事が出来た。きっと他の人がこのサイドエフェクトを持っていたらもっと使いこなせて、きっと太刀川さんをボコボコに出来るぐらいには強くなれただろう】」

 

 ホントにやりたいこと?……それは三輪は分からなかった。

 サイドエフェクトを持っていた?……それは従兄弟の二宮は知らなかった。

 あの小林卓蔵が唸るだけのサイドエフェクト……なんなのかが分からない。

 

「【三輪、俺の境遇なんてお前と比べたら下位互換だ。お前は姉を殺されているんだ……俺は今でも覚えている。ボーダーの入隊試験、近界民が憎いと思っている人達が多く居た。純粋な運動神経や知識なんかでは俺達では刃が立たないレベルの人達も居た。でもそれでもトリオンが原因で落とされた。俺はこの人達が出来なかった事を成し遂げたいと思って頑張った……近界民に対して憎悪を抱いてるだけじゃなくてボーダーも嫌いだ。それだけは譲れない。だから上の人達の支援を受けなかった。東さんを師事したお前と比べてなんともまぁ、みっともなくて情けないだろ】」

 

 三輪の手紙を持つ手が震えている。

 声に出す前に先に文章全体を読もうとしている。

 

「【色々と頑張って……もうコレ以上は頑張る事が出来ないって判断した……ごめんなさい。俺はもうお前と競い合う関係性になれない。くだらないプライドを持ってた俺に対して接してくれてありがとう……ボーダーで出来た最初で最後の友達。俺はもうコレ以上は頑張れない。だけどなにも残せないってわけじゃない。お前にとって不要かもしれないけど、俺が色々と培ってきた物を映像にし解説を入れた物をUSBメモリに入れてある。パスワードは俺とお前が入隊したあの日の曜日と年月だ……俺はここで終わりだけど、お前ならもっと上に行ける。無責任かもしれないが頑張ってくれ】…………冬島さん……」

 

「小林のサイドエフェクトは言わない」

 

「冬島さん!」

 

「それを知って得する奴は誰1人として居ないんだ!小林はそのサイドエフェクトを上手く使った。それと同時に苦しめられていたんだ。強力なサイドエフェクトがあるのに……それを自分なりに上手く活用しているのにって」

 

 なんで挫折したかは分からない。

 最後に自分の背中を押して後は託したと言ってくれたのは分かった。あのUSBメモリはなんなのかが分かった。

 サイドエフェクトがコンプレックスになっていた……それすら三輪は知らなかった。いや、三輪だけでなく嘗て部隊を組んでいた太刀川や従兄弟の二宮も知らなかった。

 

「落ち着いて……冬島さん、言えないんですか?」

 

「言ったら多分、小林を傷つけていたと思う……特に玉狛の小南は色々とショックを受けるだろう」

 

「小南が?」

 

「アイツは小林の事をなんだかんだで認めてる。口ではまぁまぁとか言っているけど、ちゃんと認めてる……でも、小林は別だった。努力しても努力しても直ぐに追い抜いてくる恐怖の象徴だった」

 

 興奮する三輪を月見が落ち着かせる。冬島のどうしても言えないのかを聞くが、言えば全員が傷つく事になる。

 特に小南が無意識の内に恐怖の象徴になっていると言えばいったいどういう事なのかと疑問を抱いた。意味深に語る冬島を見てどうしても聞き出したいと思った加古は小南に電話した。

 

『はい、もしもし』

 

「小林くんがボーダーやめたって聞いたかしら?」

 

『っ…………聞いたわ…………』

 

「小林くんにとって小南ちゃんは恐怖の象徴みたいなのよ。なにか心当たり無いかしら?」

 

『はぁ!?なんで!?あたしが恐怖の象徴?……なんで!?嫌われてるのは分かってるけど、それとは話が別でしょ!?』

 

「それは冬島さんが知ってるわ」

 

『なんで!?なんでなの!?』

 

「いや、あの、それはだな」

 

「落ち着いてください冬島さん。小南、一度静かに……女子高生は目の前にはいない」

 

 小南は自身が恐怖の象徴と言われて納得がいかない。

 そりゃ結構な回数でボコったけどもそれとコレとは話が別だと思っている。JKと対面すればまともに麻雀が出来なくなる男こと冬島さんはパニックになるが東に落ち着くように言われた。小南が黙っていれば小南は目の前に居ないので喋れる筈だ。

 

「言えないんだ」

 

 小林のサイドエフェクトはちょっと訳ありのサイドエフェクトだ。

 あんまりベラベラと勝手に語るわけにはいかない。

 

「……冬島さん、遅かれ早かれ小林のことは話題になるよ」

 

「…………だから今の内に喋っとけってか?」

 

 雷蔵が後で色々と質問攻めにあうと予測する。

 大変な事になる前に今の内に色々と喋って言えることは言っておいた方がと詰める。

 

「熊谷ちゃんとか聞けば驚くでしょうね」

 

「…………ひ、卑怯だぞ」

 

 おっさんはJKに弱いのだ。

 その内に迅とか上層部を引っ張ってきそうなので冬島は諦めた。余計な事をベラベラ言い過ぎたと反省し、例え誰が聞いても傷つくとしても答えるしかない、そういう感じの空気が生み出されている。

 

「小林はサイドエフェクトのおかげで強くなれたんだ」

 

『サイドエフェクト?……確かトリオン能力9だから出てもおかしくないけど……それならもっと知られてる筈じゃない?』

 

「……ふー……落ち着け、JKはいない……小林は眠った時に見る夢を自由自在に操る事が出来るサイドエフェクトを持っていたんだ」

 

 小林のサイドエフェクト、それは眠った時に見る夢を自由自在に操る事が出来るというサイドエフェクトだ。

 それを聞いても特にピンと来ない一同。小南もピンと来ていない。

 

「夢の世界ではなんでもありだ。だからドラゴンボールの精神と時の部屋みたいに夢の世界では1年過ごしても現実じゃ数時間だったも可能なんだ」

 

「……まさか……」

 

「そう、そのまさかだ」

 

 夢の世界はなんでもあり、ドラゴンボールの精神と時の部屋の様な事が出来る。

 それを聞けば東があることを頭に浮かべた。

 

「小林は実際に生きている時間に加えて夢の世界で12年間生きている。夢の世界で限りなく現実に近い状態にして修行をした……本来ならば数ヶ月必要な修行云々を夢の中でやって体に無理矢理染み込ませていたんだ……でも、そういう事をしなくても他の奴等は軽々と自分を超えてくる……特に小南は、自分がパワーアップしても直ぐに上回る。努力しても努力しても直ぐに上回ってくる。しかもたった数日で、習い事をしながらだ。ホントは自分がやりたいことを我慢してそれで学校での授業云々の分の時間すらも修行に使ってるのにだ……」

 

『そんな……そんなわけないじゃない。あいつは数日あれば学習するそこそこやる奴で…………だから、まぁ、口先だけじゃないって』

 

 コレはきっとなにかの間違いだ。

 そう言ってよ。小林は優秀な奴、なんでも器用にこなせている。口先だけじゃなくて部隊として自分達を倒した。

 そう思っていたけど違う。ただただひたすらに誰よりも長い時間、努力を積み重ねてきた……そしてそれを自分が軽々と上回っていた。

 

「……小林が人の何倍も努力出来る環境や時間を手に入れた、それを駆使した上でここに居るメンツは上回った」

 

 自分が無能で才能が無い奴だと思い知らされた。

 それを聞いた加古は電話を切った。小南が泣き叫んでいた……聞いてはいけない事を、誰が聞いても傷つくことを知ってしまった。




パイセンがコレでガチ泣きしていて笑顔が曇っていると思えばヒーハー!である
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