FOXに脳を焼かれた、PMC兵士達のお話 作:アッポラピッタポン
夜の砂漠の中に静かに佇む基地があった。
基地内から明かりが漏れているが、普段とは違い夜間にも関わらず動いていた重機の音も聞こえない。
見張りが立つべき筈の監視等には、明らかに機械ではない少女達が立っていた。
そんな中で、その基地に接近する一機のヘリがいた。
レーダーに映らない低空飛行かつ、砂埃を巻き上げない様に絶妙な高度を維持したまま、着陸予定地に向かう。
「RAPTOR1、あと30秒で着陸します」
「……了解した、この後もよろしく頼む」
ゆっくりと高度を下げて砂地に着陸しドアを開けると、夜間の砂漠特有の寒さと砂埃が肌を撫でる。
久しぶりの砂地の感覚に慣れつつ、顔を上げると500メートル程先に、星空の下で輝く人工の光が見える。
「こっから歩きか、砂嵐とかが無いといいんだがな」
「今日は風も吹かないので大丈夫だと思いますよ」
「……ありがとな、FOX2」
いつもならば適当に流される言葉に返答が返ってきた事にRAPTOR2が少し感動していると。
「FOX2、RAPTOR2の軽口は変に付き合うと面倒くさいので適当にあしらう感じで大丈夫です……」
殆ど独り言ですから、とRAPTOR6が少しの愚痴と呆れを含めながら、FOX2にRAPTOR2の扱い方を教えていた。
それを背にしながら、RAPTOR1とFOX1は事前の偵察結果と現状を双眼鏡を覗きながら確認していた。
サーマルスコープの中で白い人影があちこちを動き回っている。
「……巡回が少し増えたか」
「3日目ですから、多少は警戒が緩んでいるかと思いましたが……」
「……どうやらカイザーに喧嘩を売った事は分かっているらしい」
監視塔にもそれなりの人数が立っている事を見た後で、そう結論づけるRAPTOR1。
「……とは言え、何か特別な索敵手段がある様には見えない、このまま接近して叩いても問題は無いだろう」
「はい、問題は人数ですね、10、20、30人くらいでしょうか」
「何秒かかる?」
その問いにFOX1は笑みと共に力強く答える。
「このメンバーなら3秒程度でしょうか?」
「……だろうな、やはりキーマンは————」
「はい、そうですね」
互いに顔を見合わせた後、同じ人物を見る。
そこには、同じく基地を眺めるFOX4の姿があった……
(数分後)
『FOX4、配置についたよ』
『RAPTAR3、同じく配置についた……これマジでやるの、出来なくはないけどさ……』
自信の無さそうな、自隊の狙撃手に苦笑しつつ、ゆっくりと監視塔まで近づく、稜線から9人がそっと頭を出して、壁の下の目標を確認する。
『……RAPTOR1よりFOX4へ、そちらの狙撃の腕頼りだ、任せたぞ』
『任せてよ、いつもソッチと戦ってる時みたいにちゃんと当てるからさぁ』
その言葉にゾワッとRAPTOR達の体に鳥肌が立つ。
『FOX3……今は協力しているのだがらそういう発言は……』
何かピクピクしているRAPTAR達を見て、FOX1が苦言を呈する
『……いや、頼もしい限りだ』
隊員達は過去のトラウマをそっと頭の片隅に置いやり、愛銃を構える。
『……そちらの狙撃に合わせて攻撃する、いつでも撃ってくれ』
『了解……じゃ、撃つよー』
作戦中とは思えない間延びした声の後、
パパパパパパッ!!
自分達の後方から、サイレンサー付き狙撃銃の6連射の音が通り過ぎていき、監視塔に立っているヘルメット団達を襲う、彼女達は声を上げる間もなく床に崩れ落ちた。
彼女が撃ち漏らした相手もRAPTOR3の2連射によって撃ち抜かれ、監視塔及び壁の上に立っていた人員は誰も居なくなっていた。
壁の上から数人落下し、既に気絶している巡回中のヘルメット団達の中に埋もれていった。
思わず感服の声が出る。
『……よくやるものだ、400メートル先から6つの目標を同時に撃つとはな』
『味方になると途端に頼もしいな』
『どうもー、いつも訓練してるからねぇ』
『…………』
黙りこくっているRAPTOR3をおちょくり始めるRAPTOR5とRAPTOR7
『拗ねんなよRAPTOR3、お前も十分やってるさ』
『そうそう、お前のツンデレは需要がないっての』
『FOX3、まだ敵が残ってるぞ』
『『待て待て待て!!』』
文章で見れば慰めに聞こえるが、通信機越しでもわかる程笑い声が漏れていたため、RAPTOR3の怒りを煽ることとなった。
『……和やかな空気ですね……』
『……後にしろ、さっさと入るぞ』
『『『……了解』』』
FOX1からの言葉を選んだ苦言を聞き、頭を抑えながらもRAPTOR1は鶴の一声と共に小隊員を黙らせて、壁に接近していた。
壁に向かってグラップリングフックを発射し壁の上に辿り着くと、そこには明瞭に見える基地の姿とそこには似合わない多数のヘルメット団の姿があった。
『……ここからは時間との勝負だな』
その言葉にFOX1が同意を示す。
『えぇ、予定通り私達は屋上から順に制圧します、では』
お先に失礼します、という言葉と同時にFOX小隊は壁から跳躍し、屋上へと乗り移っていった。
『……俺達も行くぞ、目標、正面入り口』
『了解、援護します』
「相変わらず無茶苦茶な連中だな……」
(確かに40メートルくらい飛んでたな)
態々、通信を切ってまで独り言を溢す副隊長に呆れつつ、全員が心の中を同じくした。
その後、巡回中のヘルメット団の目を潜り抜け、時には物陰に連れ込んで転がしたりしながら入り口にたどり着き、突入準備を整える。
『こちらRAPTOR小隊、突入準備が完了した、先陣は任せて貰おう』
『了解しました……始めましょう』
僅かながらに緊張感が走る、きっと自分達がこれに慣れる日は来ないのだろう。
『RAPTOR8、やれ』
『了解』
その言葉に RAPTOR8が首元の変声装置を弄りながら、扉の前に立つ。
『なぁ、そろそろ交代時間だろ、開けてくれよ〜』
少女達の声に寄せながら、扉をノックした。
数秒後にガチャ、という音と共に扉が開く。
「何言ってんだよ、交代時間はま……はっ?ガッ!?」
最後まで言葉を言わさずに首を掴み、後ろに投げ、その頭をRAPTOR1が小銃で数発撃ち抜いた。
門番が沈黙した事を確認し
『突入しろ』
RAPTORは基地内に姿を消した。
『Aサイトクリア』
『Bサイトに14名、制圧する……クリア』
『Dサイトに移動する多数の反応を確認、迎撃する』
『RAPTOR5が援護に向かっている』
『こちらRAPTOR8、地下階段を確認、人質の救出に向かう』
『RAPTOR2了解、援護に向かう』
「RAPTOR3よりHOME、俺とFOX4に弾薬支援ドローンを要請する』
『HOME了解、到着まで30秒』
『RAPTOR1、1階の制圧が終了、外部に気付かれた様子はありません』
『……了解した、俺も地下に向かう、 RAPTOR5、 RAPTOR6は2階への階段を見張れ』
『『RAPTOR5、RAPTOR6了解』』
通信を混雑させながらも、1分も経たずを1階を制圧し、地下へと降りていく、
あまり掃除の行き届いていない、詰まった空気の充満している独房へと降りていく。
階段の角に立っていた見張りをストックで殴った後に、独房の扉の開閉ボタンを発見した。
HOMEがFOX小隊に通信を入れる。
『RAPTOR小隊よりFOX小隊へ、これより人質の解放を開始します、警報がなりますのでここからは正面戦闘となります』
『こちらFOX小隊、了解した。上階の制圧は既に終了した、そちらに合流する』
その言葉を聞きながら、ボタンを押した。
ビィーー!!ビィーー!!ビィーー!!
けたたましい警報音と金属の擦れる音が響き、独房の扉が開かれる。
中から次々と囚われていた兵士が解放され、外の様子を伺いながら頭を出した。
ひと段落ついたか、と少し安心感を覚えた時に一番奥の独房から誰も出てきていない事に気付く。
近づいてみると、中に人の気配を感じ、独房を覗く。
「…………何度でも言うが……私は何も話さんぞ……」
SOFが設立されて以来、あまり見る事の無くなっていた光景に言葉が詰まる。
そこには、虚な目をしたカイザー兵士が手錠に繋がれていた。
胴体のフレームは歪み、両膝から下は部屋の隅に転がっており、左腕は根本から千切れ、顔にも弾痕が多数残っていた。
薄汚れた軍服の肩についた階級章が、彼が基地の司令である事を物語っているのみだった。
「…………ぐっ……部下に手を出してみろ……殺す……首だけになろうがヘイローを壊してや……る……!」
既に意識が朦朧としており、こちらが誰かも分かっていない様子だが、その闘志は未だに健在であり、手錠を外せばそのままこちらに襲い掛かりそうな勢いだった。
足を止めていた事に気付き、急いで駆け寄る。
「無事……ではないな、すまない」
「誰……だ、救援……か?」
「SOFだ……すまない、もっと早くに来るべきだった」
「……部下……は?、ゴホッゴホッ!!」
「見た所、全員無事だ……よっぽどお前の脅しが効いたらしい」
「ハッ、ざまぁ……み……」
安堵で糸が切れたかの様に、基地司令は倒れ落ちた。
「おい待て!クソっ!しっかりしろ!」
基地司令の意識の有無を確認しながら、ヘリの要請を出す。
『RAPTOR1よりHOMEへ、基地司令を発見したが状態が不味い、緊急輸送を要請する』
『了解しました、直ちにそちらに向かいます、着陸地点の確保を』
『分かった、全隊員へ、中庭を制圧しろ』
『RAPTOR2了解、おら!さっさと行くぞ』
上階で戦闘が始まった事を確認し、基地司令を背負って上に戻ろうとするRAPTOR1の背中に声がかけられる。
「すいません!SOFの方……ですよね?」
振り返ると、解放されたPMCの兵士30名がこちらを見ていた。
脱出はこちらの指示に従え、と言おうとしたが、彼らの目にも基地司令と同じ物を見たRAPTOR1は現地の最高指揮官として、命令を下す。
「……成程、了解した。お前達も正面戦闘に加われ」
その言葉は閉じ込められて以来、隣の独房から聞こえてくる呻き声を聞き続け、不甲斐無さに怒りを持っていた彼らには十分過ぎた。
「はっ!!ありがとうございます!」
「行くぞ!1人も逃すな!」
感謝の言葉もそこそこに兵士達は自らの武器を持ち、階段を上がっていった。
基地を奪還するまで、そう時間は掛からないだろう。
一方その頃、ヘルメット団は完全に指揮体制を瓦解させていた。
「クソッ!何なんださっきから!?」
「うるさいなぁ!言ってる暇があったら撃ってよ!」
「その撃つ相手が居ないんだってば!」
「言い合ってる場合か!負傷者を背負って逃げるぞ!」
言い争いながらも体制を立て直そうとしている最中にPMC兵士達が建物から出ていく。
当然、それを見つけたヘルメット団は攻撃を行おうとする、が
「っ! 前にPMCがいるぞ!」
「居たなら撃……は?」
「あ、アイツら……」
「私達の仲間を盾に……!?」
平時の彼らだったのならば、例え敵が攻め込んで来た際にも気絶した敵には目もくれなかっただろう、だが、完全に怒りに飲まれている彼らは手段を選ばなかった。
即ち、ヘルメット団の肉盾運用を開始した。
倒れているヘルメット団の中から、敢えて未だ意識がある者の両手を縛り、掴み、自身の体を守る。
相手からの銃撃の度に盾は痛みによって叫び声を上げ、それに怯んだ者を撃ち、新しい盾にする。
あちこちから、味方の断末魔が聞こえてくることで、ヘルメット団の士気は落ちる所まで落ち、バラバラに敗走を始めた。
無論、そんな子兎にも劣る存在を狐と猛禽が見逃す筈も無かった。
『RAPTOR3よりRAPTOR1へ、巡回中の敵は全て撃破した、これより内部制圧の援護に向かう』
『……了解した。こちらもヘルメット団の拘束に人手が欲しい』
『了解……HOME、作戦開始から何分経った?』
『今聞くんですね……3分50秒ですね』
『めっちゃ長く感じたんだけどな……』
作戦が終わりかけ、少し緩んだ空気を出すRAPTOR3に通信が入る。
『……悪いが、後5分は掛かると思え』
『?何でそんなに————この音は?』
巨大な何かが動く様な地響きと共に、基地の方から土煙が上がる。
『ゴリアテが動き始めた』
(数分前)
第二倉庫への道を走る1人のヘルメット団の姿があった、その少女の凹んだヘルメットに貼られているシールが他の者とは違い、団の中でも上の地位にいた事を示していた。
その少女は外の空気を吸おうと、外出した際に襲撃が始まったため、誰にも見つからずに倉庫へ向かう事ができた。
途中でPMC兵士に遭遇し発砲されたが、当たりどころが良かったのか、PMC兵士の放った弾丸は、彼女のヘルメットの形を歪めたのみだった。
「はぁ……はぁ……クソッ!ふざけやがって……!」
誰に向けた怒りかも分からない言葉を吐きながら倉庫に向かう。
基地を占領した直後、たまたま入った倉庫で見つけた見た事ない程巨大な兵器
「あれを使えば……!」
基地を奪還しに来た奴らを追い返せる、と心の中でほくそ笑む。
そんな事を考えている間に倉庫に辿り着き、急いで機体のコックピットを目指す、滑り落ちそうになりながらも、キャノピーを開けて中に入り込む。
しかし、キャノピーを閉めて初めて、自分がこの兵器の動かし方など全く知らない、という事に気がつく。
「と、とりあえず、適当に動かして見るか……?」
カイザーの整備兵が聞いたのならレンチ片手に殴りかかってくるであろう言葉を吐きながら、操縦桿や横にあるスイッチを押す。
この時、カイザー側にとって不幸だったのは、ゴリアテが最新技術を盛り込んだ試験機だった為に、『誰でも操縦のし易いシステム』を組み込んでいた点であり、点検の最中だった為、認証システムも機動していなかった事であった。
かん高い起動音と共に、機体が揺れる。
「うっ!うわぁ!?……ハハっ!思ったより、簡単に動くじゃん!」
自身の頭をぶつけそうになっている事すら忘れて、少女はゴリアテの操縦に没頭する。
こうして、基地内にゴリアテが放たれる事になった。
誤字脱字ありましたら、ご報告お願いします。
ちなみにオトギの狙撃については、カルバノグ2章より、サキの「なかなか動けなかった」発言からの独自設定です。