FOXに脳を焼かれた、PMC兵士達のお話   作:アッポラピッタポン

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制圧

 

 

 

ようやく(作戦開始から4分程度)一仕事が終わり、作戦が終了する、というタイミングでのゴリアテの乱入。

 

元々の目的がゴリアテの無傷での鹵獲であり、無理に攻撃して破壊する訳にもいかず、両隊長は頭を悩ませていた。

 

『……HOME、ゴリアテの搭乗者は?』

基地内で暴れ回っているカイザーの技術の結晶に憐憫を覚えるが、現状の解決を優先する為に意識を切り替える。

 

『ヘルメット団のリーダーと見て間違いないですね……SOFの撮影した偵察にも映ってます』

 

『……そうか、FOX1そちらはどうだ?攻撃は出来そうか?』

通信越しの呆れ声に若干の同意をしつつ、RAPTOR1は僅かな希望と共にFOX1にも意見を仰ぐ。

 

『攻撃だけなら……しかし機体は木っ端微塵になりますね……』

しかし、その希望は木っ端微塵となってしまった。

 

 

 

『あぁもう!焦ったいわね!操縦席に盾投げてやろうかしら……』

面倒になったFOX3が物陰から出て、盾を投げる構えを見せるが……

 

『FOX3、落ち着け……だが確かにこのままでは基地も吹き飛びますね』

『相手方がガトリングしか使い方が分かってないのが幸いだな……』

『……動きを止めたのなら、何とかなるかも知れないが……』

呟く様なRAPTOR1の言葉にFOX2が反応する。

 

 

『……RAPTOR1、動きを止めたらいいんですね?』

『……出来るのか?』

『はい、多分ですけど……この基地って無人戦車ありますよね?』

『……10両程度ならあったが……』

RAPTOR1が自身の記憶を頼りに答えると、

 

『少しお借りしてもよろしいですか?』

『……まぁいいだろう……HOME、FOX2に無人戦車へのアクセス権を渡してくれ』

『もう渡しました!』

『……FOX2、まさかアレを?』

『うん、カイザー製のでするのは初めてだけど……』

 

 

『ん?あっ、そういう……』

『アレか……普通にビビるんだよな……』

『10両あれば、確かに止まるか?』

 

FOX1からの確認への応答によって、何をするのか理解したRAPTOR小隊は、再びトラウマを起こしかけるが、そんな事はお構いナシにRAPTOR1は RAPTOR5に呼びかける。

 

『数秒止まるのなら十分だ、RAPTOR5……まだ閃光手榴弾を大量に持ってるな?』

『そりゃ持ってますけど、ガラス越しじゃあ、大して止められませんよ?』

 

RAPTOR5のやんわりとした否定にRAPTOR1は確信と共に答える。

 

『それだけで十分だ……全隊員に作戦を共有する』

 

 

『FOX2の足止めの後、閃光手榴弾で動きを止め……』

 

 

僅かに言い淀んだ後に、RAPTOR1はFOX小隊には天敵ともいえる、ある言葉を口にする。

 

 

 

 

『特殊弾を使用し、一撃で対象を沈黙させる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦を聞いた両隊の反応は様々だった。

 

『あー、確かにアレ使えばゴリアテは無傷ですね』

RAPTOR8の言葉を遮る様に、FOX3が疑問符を浮かべる。

『確かに止まるけど……なんでそんなの持ってきてるのよ……』

 

『…………保険だ、最悪の場合にはブリーフィングルームで撃つ予定だった……』

 

いつもより間を空けたRAPTOR1の言葉は、多少の後悔に塗れていた。

通信を聞いたRAPTOR2が、目の前の隊長の顔を確認しようとするが、その顔は夜の暗さに隠れて、何も見る事ができなかった。

 

空気が固まり掛ける中でそれを崩したのは、皮肉にもゴリアテの歩行音だった。

『FOX3、今は作戦中だ。その話は後でもいいだろう』

『……それもそうね、どっちにしろ今はそれを使うしかないわよね……』

『ま、後でちゃんと話してねぇ?』

 

FOX1の助け舟によって、ひとまず場は収まった。

『……感謝する、謝礼は必ずしよう』

 

感謝の言葉と共にアンダーバレルショットガンに弾を1発分装填する。

 

『では始めようか……あのデカブツを黙らせるぞ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PMC兵士が退避した後、先程よりも静まり返った基地の中央で、ゴリアテは侵入者を探し続けていた。

 

 

 

「……気絶したウチの団員しかいねぇな、PMCはどこ行ったんだ?まさか、援軍でも連れてくるつもりか?」

 

勝手な憶測をしながら、それを鼻で笑う。

 

「何人でも来やがれ!もうヘルメット団も要らない!コイツさえあれば私は————何だ?」

 

キュイィィーーン!!

 

後方からの異音に気付き振り返ると、そこにはこちらに真っ直ぐ突っ込んで来る、一台の戦車がいた。

 

戦車の巨大な車体も、それを超える巨躯を持つゴリアテの前では赤子同然であり、故にヘルメット団のリーダーはその蛮勇を嘲笑いながら、両腕のガトリング砲を戦車へと向けた。

 

「あははっ!たかが戦車一台で私と戦おうってか?蜂の巣にしてやるよ!!」

 

 

だが彼女は、それがゴリアテ(巨人)を打ち倒すダビデだとは考えもしなかったのだ。

 

 

ガトリング砲のスイッチを押した瞬間に戦車は急加速とドリフトを開始した。

 

「クソッ!気持ち悪い動きしやがって!」

 

弾丸の間を縫う様にして戦車はゴリアテに接近する、だが当然ならが戦車にはゴリアテに対する有効な攻撃手段はない、主砲をビーム砲の付け根に命中させられたのなら話は別だが、接近した時点で仰角が足りず狙い撃つ事は出来ない。

 

それを知っているからこそゴリアテは大胆に行動できる。

 

「ハッ!わざわざ近づいて来るなんてバカなヤツめ!この距離なら殴って潰してやるよ!!」

 

足元までノコノコとやって来た戦車に対して、ゴリアテは右の腕を振り上げ、振り下ろす。

 

 

ゴシャァァ!!バキバキバキィィ!!

 

 

腕は戦車の砲塔を上から叩き潰し、車体まで貫通させる。

戦車は原型を留めずに、砲身を有り得ない程上に上げて沈黙した。

 

 

「あー、気持ち良かった!!またこねぇかな?」

 

 

気持ちよく叩き潰した目の前の残骸に対してそんな感想を呟きつつ、ゴリアテは戦車から腕を引き抜こうと足を止める。

 

 

 

止めてしまう。

 

 

 

 

残骸を覗きこもうと、ガラスに顔を近づけたヘルメット団のリーダーは、視界の端に見慣れない物を捉える。

 

 

筒状の何かが、飛んで————キィィィィン!!!!

 

 

 

それが閃光手榴弾だと気付いた時には、既に爆音と共に視界を奪われ、体がひっくり返ったかの様な感覚に陥る。

 

「ガァ!?——クソッ!!汚ぇ真似をしやがってぇ!!」

 

 

数秒後に取り戻すであろう視界と三半規管を待つ事なく、少女は手探りでゴリアテの操縦桿を掴む。

 

閃光手榴弾などキヴォトスではコンビニで買えるレベルの日常品、何回も使ったし、使われた事もある。

 

確かに脅威ではあるが、一度慣れてしまえばなんて事はない、何故か攻撃もしてこないし、視界さえ晴れればコッチのものだ。

 

 

 

 

 

 

しかし、何故攻撃してこないかを想像出来ないのが、彼女の限界だった。

 

 

 

視界と共に戻って来た聴覚が、またも異音を聞いた。

 

先程の戦車の地響きの様な音とは違い、むしろリズムさえ感じる音。

 

それがゴリアテの上を歩く何者かの足音である事に気付くと同時に、足音は自分の真上で止まった。

 

 

自分の上にいる不届者を確認しようと、少女が未だ僅かに揺れる視界を上げると

 

 

 

 

 

 

 

 

月の光を背に立っている、何かの姿があった。

 

黒く、輪郭は全体的に尖っており、頭部にある15の複眼が淡く緑色に発光している事しか確認出来なかった。

 

だが、それはまるで、猛禽の嘴がコチラを啄もうとしているかの様な印象を受ける。

 

少女の頭に美術館の美しい芸術品を見る、あまりにも場違いな感想を呟こうとした時に

 

 

 

 

何者かの銃の下から光が放たれるのと同時に、少女は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

特殊弾

 

 

 

 

それはカイザーの技術研究局と兵器開発局の合同研究によって生み出された。

 

当時、目下の課題だったSRTは非常に強力な火器を多数保有しており、カイザーがいくらRAPTOR小隊の火器を強化した所で限界があった。

 

そこで、SRTの火器ではなく、それを使うSRT生を弱体化させる為の兵器が必要とされた。

 

閃光と爆音の方向の収縮によって、通常の閃光手榴弾の3倍の威力を達成し、訓練を受けていない者がこれを受ければ、1時間は動く事もままならない兵器が誕生した。

 

 

即座に実践に投入させ、RAPTOR小隊と交戦したSRTを苦しめる事になった。

 

勿論違法のため、PMCやカイザーセキュリティがコレを使う事は出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

ビーム砲が頭を垂れて、ゴリアテは完全に沈黙する。

 

 

外からコックピットを開けて、中にいた少女を縛って放り出す、地面に叩きつけられた音を聞いてから、RAPTOR1はゴリアテから飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地に静寂が取り戻され、破壊された戦車の横には縛り上げられたヘルメット団が積み重なっていた。

 

『……RAPTOR2、基地の被害はどうだ?』

『窓ガラスが数枚割れて、あとは中庭に銃弾が埋まってるくらいだな』

『被害はほぼ無しか……』

 

被害が殆ど無かったことに安堵するRAPTOR1に FOX1が近づいてくる。

 

「お疲れ様でした、RAPTOR1」

 

「……お互い様だFOX1……無事に作戦が終了して何よりだ…」

 

 

隊長達が互いの無事を喜んでいる後ろでは

 

 

『HOME、作戦開始から何分だ?』

 

『今丁度10分になりました、すぐに終わりましたね!』

 

『ヒュウ!10分で228人を制圧して、人質を解放、ゴリアテを無傷で制圧か、パーフェクトだな!』

 

『RAPTOR5、これもFOX小隊の力添えあって、ですよ』

 

『わーてるよ!盾の嬢ちゃんもありがとな!ガトリング砲弾いた時は笑わせてもらったぜ!』

 

『だからクルミだって!……まぁ、アンタ達も悪くなかったんじゃない?』

 

『盾の嬢ちゃんがデレたぞ!』

 

『マジか!?やっぱりツンデレだったか!』

 

『見ろよRAPTOR3、あれが需要があるツンデレだ、格が違う』

 

『……FOX4、頭に3発くらい頼む』

 

『さっきから思ってたけど、なんで私?』

 

『精神的な面で』

 

『なるほどねぇ?』

 

『あはは……皆さん、程々に……』

 

『FOX2も遠隔操作での戦車のドリフトはお見事でした!』

 

『ありがとうございます、HOMEさんがアクセスを許可してくれたお陰です』

 

 

 

和やかな(?)会話が行われていた。

 

「……まだ一応作戦中なんだが……」

「まぁ、本当に『常在戦場』とはいきませんから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこうしている内に、輸送ヘリの音が近づいて来る。

 

 

ヘルメット団をヘリに乗せる準備をしている時に異変は起こった。

 

『えっ?unknown……?そちらに接近中!数は6、予想接敵時間は20秒!』

 

HOMEからの戸惑いの言葉に全員が即座に反応して、戦闘態勢をとる。

 

復旧した基地の防衛システムが起動して、対空ミサイルがヘリを捉える、が

 

 

『あ、あれ?識別が……これは味方機の……』

 

HOMEのその言葉の答え合わせをするかの様に、基地の防衛システムは何事も無かったかの様に元に戻っていた。

 

『油断するな、まだ味方と決まった訳では……RAPTOR1?』

FOX1が銃を構え直すのとは反対にRAPTOR1は銃口を下げた。

 

『いや、間違いなく味方だ、あれは』

 

段々と見えて来る6機のヘリの全貌、黒い機体色の輸送ヘリ、機体の横にはギロチンを持ち、ネズミを捕まえているタコのマークと、その上のICBの3文字が見て取れる。

 

 

RAPTAR小隊を外敵から身を守る盾と置くなら、その部隊はカイザー内部を守る刃と言えるだろう。

 

 

カイザーを裏切った傭兵や反乱分子を秘密裏に鎮圧する為の部隊。

 

 

カイザーコーポレーション 情報統括局(ICB)隷下

 

 

執行部隊(バシリッサ)……』

 

RAPTOR1の呟きは基地上空へと消えていった。

 

 

 

 

 

基地の中央に次々に輸送ヘリが着陸していき、ヘリの後部から1人の男が出て来る。

 

 

全身を中世の騎士の様に黒い鎧で覆われていながら、頭部にはガスマスクと怪しげに光る2つの赤い目、手には彼のゲヘナの風紀委員長と同じMG42を携えていた。

 

男がRAPTOR1の方に歩き出す、ザッ、ザッ、と重量を感じさせる足取りは、その装備の装甲がハッタリではない事を表していた。

 

 

警戒する隊員達を尻目に、RAPTOR1とRAPTOR2が男に向かい歩き出す。

 

両者があと数歩で接触しようとした所で、同時に立ち止まり、向かい合う。

 

 

 

 

『……………………?』

 

男が疑問を抱いた雰囲気を出しているのを見て、2人は頭を軽く抑える。

 

「……ガスマスクをとれ、何も聞こえないぞ」

 

「お前マジで……毎回やってないか?持ちネタかよ」

 

その言葉に男は慌てて、ガスマスクを外す。

 

 

「通信で会話してるつもりだったんだが……」

 

「回線が違うのに何言ってんだ?コイツ?」

 

「じゃあ俺、ヘリから降りながら独り言言ってたヤバい奴じゃんか……」

 

「……お前がSOFに入れたのは何かの間違いだったんじゃないか?」

 

「相変わらず口が悪いな……」

 

周囲を置いていく会話を続ける3人は、互いに顔を見合わせる。

 

 

 

 

「久しぶりだな、エコー1、エコー2」

 

「今はRAPTORだ、エコー3」

 

「そうだったな、俺も今はHUNTER1だからな」

 

そこでRAPTOR1は振り返り、口を開けたままの隊員に、この正体不明の男の説明をする。

 

「……コイツはエ……HUNTER1、執行部隊の隊長で……俺の元部下だ」

紹介と共にHUNTER1が一歩前に踏み出し、片手を挙げる。

 

「以後よろしくな……第一印象は変な人で固定されたと思うけど……」

 

「第二印象も変な人だろ」

 

「やかましいわ」

 

RAPTOR2に悪態を吐きながらもこちらに手を振る男の顔は、初めの不気味な雰囲気を完全に無くしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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