FOXに脳を焼かれた、PMC兵士達のお話   作:アッポラピッタポン

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事実

 

 

 

 

 

 

「……で、ICBの懐刀が態々なんの様だ?」

 

「だから、ゴリアテとヘルメット団(コイツら)の輸送だっての」

 

RAPTOR1からの質問に肩を竦めながら、呆れた声を出すHUNTER1。

昔ならば、首根っこを掴んで訓練場に引きずっているが、今はそんな訳にもいかず、ただ黙って話を聞く。

 

そんな態度を知ってか知らずか、HUNTER1の話は止まる事を知らない。

 

「いやな?裏切った傭兵を監獄にぶち込んだ帰りだったんだが、丁度ヘリが空いてたから来てやったって訳だ、後は————」

 

そう言いながら、 FOX小隊の方をチラリと見る。

 

「あそこのお嬢さん達に顔合わせをしておこうと思ってな?」

 

「……成程、確かに一目でカイザーだとは分かりにくいが……」

 

「そ、現場で急に撃たれたら、たまったもんじゃないからな」

 

それを語るHUNTER1の目からは生気が感じられず、その場にいた全員から、『実体験だな……』と確信される程だった。

 

 

 

 

 

 

「……無駄話はここまでだ、さっさと持っていってくれ」

 

「おいおい、もう少し話してくれもいいだろ?」

 

まだ暫く話していたいと駄々を捏ねるHUNTER1に対して、RAPTOR1は、まだ予定が詰まっている、と軽く手であしらった。

 

それに対して、不機嫌そうに了承するHUNTER1。

「……はぁ、どうせ今度の会議の帰りに飲みに行く予定だったから良いけどよ……」

「待て、なんだその話は」

「お前ら!さっさと運べ!」

 

 

 

RAPTOR1の抗議が聞こえないかの様に、HUNTER1が命令を出すと、彼の後ろに待機していた30名近くの兵士が動き始めた。

 

「………………」

「………………」

 

無言でヘルメット団を片っ端からヘリに乗せていく。

 

その単純作業すら統一感のある動きで行われ、どこか工場の組み立て機械すら幻視させた。

 

「……相変わらず、無口な連中だな……」

 

RAPTOR2の呟きに対して、HUNTER1は変わらずに不服そうな顔で返答を返す。

 

「傭兵を兼業してるお前らが喋りすぎなんだよ、別に批判するつもりはないけどな」

 

 

「執行部隊は裏切り者達にとって『怪物』の必要があるんだよ」

 

 

 

怪物は喋ってはいけない

 

怪物は正体不明でなければならない

 

怪物は不死身でなければならない

 

 

この3つの恐怖が裏切り者を抑止する事になる、とHUNTER1は力説する。

 

ただ、力説しながらもHUNTER1は気まずそうに頬をかく。

 

「……喋ってはいけないに関しては、単に装甲が厚すぎて声が聞こえないだけで、通信だと喋ってるんだけどな」

 

「……それを言わなかったら、完璧だったな」

 

今、目の前で粛々と作業をしている彼らが、通信で自隊の隊長をボロクソに言っている事を連想させ、憐れむような生暖かい目線がHUNTER1に突き刺さった。

 

「なんか、すごい同情されてる気がするから、そろそろ帰るか」

「……次は会議で、だな」

 

「そうだな……」

相槌を打ちながら、HUNTER1はガスマスクを被ると、後ろの隊員達と見分けのつかない格好となり、軽い会釈の後に隊員達の先頭を歩き、ヘリの中へと消えていった。

 

 

 

 

消えていく最中に、RAPTOR1に個別の通信が入る。

 

『例の作戦は未だ未定だ、場所が特定できない』

『……そうか』

 

その言葉を最後に、HUNTER1は暗闇に溶けていった。

 

 (数分後)

 

 

 

 

 

 

 

砂漠の彼方に輸送ヘリの姿が消え去った頃、HOMEが輸送ヘリの跡を消すかの様に着陸した。

 

「……ようやく、終わったな」

その言葉を皮切りに、両隊が精神的な疲れを訴えだす。

 

「…………疲れた」

「作戦時間より、執行部隊と話してた時間の方が長いんだよなぁ……」

「急に出てきてビックリしたわ、本当に……」

「盾の嬢ちゃんと同じで、俺もビックリしたわ、マジで」

「回収要員としては、見た目が特徴的すぎますね……」

「まぁ、SOFの派生組織は基本的に特徴的な見た目してるからなぁ、オレ達もそうだけど」

「確かに、初めて会った時はカイザーだと分かりませんでしたね……」

「全く別の勢力だと思ってたもんねぇ?」

 

ここまでは良かったのだが、RAPTOR5の一言で、事態は面倒な方向に転がり始める。

 

 

 

「隊長!もちろん今日は奢りですよね!」

 

「…………お前は——「いやー、ゴリアテの制圧疲れたなぁ?RAPTOR7?」おい待——「良い隊長ってのは福利厚生がしっかりしてるもんらしいな?RAPTOR8?」今日は——「そうですね、カイザーでそれを言うのか、とは思いますが」話を聞——「最近してなかったし良いんじゃないか?」……HOME、今から予約は取れるか?」

「わかりました!」

 

RAPTOR1の話を見事なコンビネーションで防ぎつつ、飲み会の奢りを押し付けるRAPTOR小隊。

逆にそれを見ながら、急に始まりそうになっている飲み会についていけない FOX小隊。

変な所で日頃の訓練の成果を見せつけられ、手を頭に当てるRAPTOR1だったが、仕方がないと溜息を吐きつつ、HOMEに店の予約を頼むのだった……

 

 

 

 

 

 

「……店は……焼肉でいいな、12人で予約をとる」

「「「「え?」」」」

 

人数に自分達が含まれている事を知ったFOX小隊は驚きの声を上げるが、RAPTOR小隊がそれに気付く様子はなかった。

 

「私達も参加するのでしょうか?」

「……確かに連絡もしないのは不味いな、不知火防衛室長にも連絡してくれ」

「そうじゃなくて!なんで私達が飲み会に参加する前提なのよ!」

「なんでって言われてもな、元々作戦自体が親睦会みたいなもんだろ?」

「確かに……いや、作戦終わってるじゃない!?」

「『飲み会が終わるまでが作戦です』だぜ?」

「遠足じゃないっての!!」

 

クルミのツッコミに、弄りがいがあると言わんばかりにおちょくり始めるRAPTOR2と5と7(問題児)達を横目に、RAPTOR1はジェネラルに連絡を入れる。

 

 

『…………報告書は後で構わない』

「いや、 FOX小隊と飲み会に行く事になった……防衛室長に連絡を入れといてくれ」

『アナタはまた勝手に…………まぁその程度だったら構わない、連絡を入れておこう』

「……やけに機嫌がいいな、何があった?」

少し弾んだ声を出すジェネラルにRAPTOR1が疑問符を浮かべる。

それに対して、ジェネラルは機嫌を崩す事なく答える。

 

『今、プレジデントと防衛室長は会議(世間話の雑談)中だ、そのおかげでプレジデントが茶化しに来なくてね。仕事がしやすい、というだけだ』

 

まさかのNo.1を邪魔者扱いする事に、思わず言葉を詰まらせる。

 

「……仮にもNo.2の言葉か?」

『日頃の行いだと言え、まぁとにかく、連絡は入れておこう』

愚痴を言うジェネラルに呆れながらも連絡を終え、隊員達に向き直る。

 

 

 

「……さっさと帰って店に行くとしよう、夜の砂漠は凍える寒さだからな」

 

そう言いながら、真っ先にヘリに乗るRAPTOR1、その足取りの軽さを見て、 FOX小隊の面々は『この人も飲み会行きたかったんだ……』と察して、どこか目を遠くするのだった……

 

 

 

 

 

(数十分後)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリ内で不知火カヤから『焼肉楽しんで来てくださいね!』と良い笑顔で言われ、上司に退路を断たれた FOX小隊は大人しく、自分達より年上の筈なのにテンションの高い8人組を見ながら、着いてきたのだが………

 

 

そこにはブラックマーケットの中心部に存在するとは思えない程に、巨大で華々しい装飾を施された建造物があった。

 

建物の中心に掲げられた牛や鳥のマークが、ここが目的地である事を如実に示していた。

 

 

「成金趣味……」

「否定はできないねぇ……」

「本当に大丈夫だろうか……?」

「不安になってくるね……」

 

輝く店の灯りに目を細めながら口々に呟く、 FOX小隊に対して、RAPTOR5が声をかける。

 

「おーい!入んなくていいのか?」

 

その声に、現実逃避をやめて店の入り口をくぐると、

 

 

 

 

 

「……あれ?」

「中は普通だね?」

 

 

外の輝かしい印象とは打って変わって、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

全体的に黒と白でデザインされており、見た所は店内の掃除も行き届いている。

壁は防音なのか、外の喧騒を一切感じさせなかった。

 

入って直ぐの場所からでも、多くの団体客が食事を楽しんでいるのが見える。

よく見れば、連日のニュースで見かける様なカイザーの幹部などもチラホラおり、ここがカイザーお抱えの店である事は明らかだった。

 

 

 

 

見た目との差に絶句している彼女達の前に、店員が現れる。

 

「お客様、こちらへどうぞ」

「あっ、はい……」

 

柔らかい笑みを浮かべながら、店員は FOX小隊を引き連れて、RAPTOR小隊の後を追う。

 

 

 

広々としたスペースから奥に入り、個室の多いエリアに入ると、先の方から聞き覚えのある声達が、彼女達の狐耳に聞こえてくる。

 

「……遅かったな」

既に席に座り、メニュー表を持ちながら、ユキノ達を見上げるRAPTOR1

 

あまりにも堂々とした態度が、戦闘中の指揮官にすら見えてくる。

「いや……こちらとしても混乱してまして……」

 

「確かに、敵だった連中から急に飯に誘われたら混乱するか」

「まぁ、一応親睦会という体ですけど、特にマナーとかは無いので自由に過ごして下さい」

「隊長の奢りだから、食っといた方がいいぞ?」

「……という訳だ、何でも頼むといい」

 

 

 

緩んだRAPTOR小隊の姿を見て、ユキノの口調が敬語から切り替わる。

ここからは作戦外(オフ)だと。

「はぁ……もうどうしようもないな……」

「ユキノちゃん……!」

「どっにしろここまで来ちゃってるしねぇ?」

「そうよ!あっそうだ!ここって稲荷寿司あるの?」

 

 

その質問に、RAPTOR1がメニュー表を確認する。

 

「…………普通のと肉入りの2種類があるな……初めて知ったが」

 

何度か通っている筈の店の新たな一面に驚いている間に、目にも止まらぬ速さで FOX小隊は素早く着席していた。

 

(稲荷寿司がある。と聞いた瞬間に動いたな……)

 

やはり狐か、という考えがRAPTOR2の頭をよぎると、水とおしぼりを器用に乗せた店員が個室に入って来る。

 

 

「お待たせしました。ご注文お決まりでしょうか?」

「……取り敢えず、生ビールを7つと後は……注文したい物は?」

 

その問いに、全員がメニュー表に目を通し、隊員間の会話が加速する。

「嬢ちゃん達はアレルギーとかないか?」

「特には……」

 

「んじゃ、牛カルビを塩で人数分、一番食いやすいしな!」

「ご飯大盛りを5人前お願いします」

「私もお願いします」

「ハラミ、はまだ早いか、牛タンを塩で3、いや5人前」

「鶏セセリ頼むか、8人前で」

「豚バラを2人前お願いします」

「稲荷寿司を8人前で、はい、肉入りのも8人前でお願いします」

 

各々が好き勝手に注文を始め、店員がメモ帳を片手にあちらこちらに動き回る。

数十秒としない内にビールと水が全員に行き渡り、RAPTOR1がコップを掲げて乾杯の音頭をとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………作戦の成功と、これからの我々の活躍を願って——乾杯」

 

 

「「「「「乾杯!!!!」」」」」

 

こうして、猛禽と狐の親睦焼肉会は幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 (十数分後)

 

 

 

 

 

無煙ロースターがけたたましい音を立てて最大稼働しても尚、部屋の中はかなりの煙が充満していた。

だが、誰もそんな事を気にせず、食事をしながらの会話に没頭していた。

 

両者の間でする、その会話の内容と言えば。

 

「半年前の作戦の時に、オレと隊長以外が直ぐに頭を吹っ飛ばされた時はメチャクチャ面白かったな!!」

 

当然、過去の作戦についてだった。

互いの共通の話題であり、それが一番盛り上がっていた。

 

「何が面白かったんだよ……RAPTOR2が車に轢かれてた方が面白かっただろ?」

「あったわねそんな事……オトギの笑い声がうるさかったから覚えてるけど」

「あんなの誰が見ても笑うでしょ!?」

呆れ声を出すクルミに対して、オトギが大声で反論する。

 

 

「後ろから突っ込んで来て、ギャグ漫画みたいに回転しながら吹っ飛んだもんなぁ」

「思い出させるなよ!あの後整備班の連中にレンチで殴られたんだからな……」

「私も盾壊された時、結構言われたわね……『もっと大事に使え!』って……確かに盾で殴ったりしてるけど……」

「はははっ!!良かったなRAPTOR7!お前のスラグ弾、効果があったらしいぞ!」

「マジか!嬢ちゃんに蹴られ続けながら、ブチ込んだ甲斐があったってもんだな!乾杯!」

ウェーイ!とジョッキを激突させ、一気にビールを飲むRAPTOR2とRAPTOR7、細やかな勝利の美酒を味わっている様だった。

 

「乾杯!じゃないわよ!それに蹴りなら私よりニコの方が凄いわ!この前だって、片足で宿舎のドアを吹っ飛「FOX3?」……何でもない」

ニコに睨まれて、縮こまりながら肉を口にするクルミ。

副隊長(おかん)は怖い。

それを見ながら、RAPTOR5がケタケタと笑う。

 

「おー怖、でもやっぱり一番キツかったのはSRTに潜入した時だったな、死ぬかと思ったわ……」

「……こちらとしては苦々しい話ですね」

 

僅かに顔を歪めるユキノとは対照的に軽く笑うRAPTOR1、飲んでいる水がビールの様に美味く感じる。

「……俺達の最初で最後の完全勝利だ、誇らせてもらおう」

「その代わりに、次会った時にいつもの倍くらい叩きのめされましたけど……」

「……そうだったな……」

「流石に負けられませんでしたので……」

 

RAPTOR6の言葉で元の味に戻ってしまった水をチビチビと飲む。

口直しの要領で、焼き終わった肉を口に放り込む。

 

「……まぁ、あの作戦の為だけに態々、囮の悪徳企業に匿名で通報したからな……」

「FOX小隊のいない隙を狙った……筈だったんですけどね……思ったより警備の突破に時間が……」

RAPTOR8が懐かしそうに言うと、ユキノの方に向かい直る。

 

「そう言えば、様々なSRTの生徒と戦って来ましたが、まだ我々が会っていない方はいるのでしょうか?」

 

その純粋な疑問は、ユキノと、肉を追加注文していたRAPTOR1、両隊長の興味を引いた。

 

「……確かに、殆ど全員戦っているんじゃないか?」

「そうですね、2.3年生は全員が……1年生は無かったかと」

 

ユキノの回答によって、3人の会話は後輩の事へと移行していく。

 

「……後輩か、ウチはSOFが後輩にあたる……か?」

「我々がSOFの1期生、という意味ならそうなりますね」

「SOF……あぁ、カイザーセキュリティと見分けがつかない……」

「確かに似てますが、結構分かりやすいですよ?」

「そうですか?装備は殆ど……」

「話しかけた時にフレンドリーだったらセキュリティで、会話が最小限だったらSOFです」

「……偏見がすぎるぞ、RAPTOR8」

 

あまりもの暴挙に苦言を呈すRAPTOR1。

苦笑いをしているユキノに質問を返す。

 

「……逆にそちらはどうだ?目を掛けている後輩はいるのか?」

「特段、とても目を掛けている後輩がいる訳では……一応、既にかなりの実力を持っている小隊がありますが……」

 

「ほう?彼のFOX小隊の隊長にそう言わせるとは……」

「かなりの実力者ですね」

 

RAPTOR1とRAPTOR8からの褒め言葉を受け取りつつ、ユキノは気まずそうに頬をかく。

「確かに実力はあるのですが……問題行動も多く……この間は隊員の1人が無差別乱射で商店街を半壊させまして……」

 

その恐ろしい話に思わず鳥肌が立つ

「……無差別乱射?……SRTの火器を?」

「地区1区画が吹き飛ぶのでは?」

 

よく逮捕されないものだ、と舌を巻きつつも、会話の内容は転々と変わっていく。

 

 

 

 

 

アルコールが入っているのもあるだろうが、RAPTOR小隊の面々はどんどんテンションが上がり、時計の長針が1回転する頃には……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……Zzzzz……Zzzzz……」

 

「……だから……砂漠で蛇を……見……Zzzzz…」

 

「……勘弁して下さい……ジェネラルの勲章を……缶バッジに」

 

RAPTOR小隊は隊長を除き、全員が机に突っ伏していた。

 

 

「どんな寝言よ……」

「逆に気になるねぇ」

「ぐっすり寝てるね……」

「あぁ、戦闘時と違いすぎて頭が回らない……」

 

先程までのテンションの落差についていけていないFOX小隊の横で

 

「……寝ている奴らを全員仮眠室に。あぁ、もし起きたら、大人しく待っていろと伝えてくれ」

 

RAPTOR1からの連絡で来た店員達によって、2人がかりで個室の外へと運ばれていった。

 

7人が居なくなり部屋が広く感じる、今は煙もなくなり、部屋が鮮明に見る事が出来る。

気付けば、個室の外からも声は聞こえなくなっており、自分達がかなりの間ここにいた事を感じさせた。

 

先程よりも明るく感じる照明の明かりの下で、RAPTOR1が口を開く。

 

「……かなり時間がかかってしまったが、謝罪を先にするべきだったな……」

 

その言葉と共に頭を下げる。

 

先程とは打って変わって、真剣な声音で

 

「……特殊弾は俺の独断で持ち込んだ……非常用と言えば聞こえは良いが、結局の所は君達を信用出来なかっただけだ、申し訳ない……」

 

「…………別にもう気にしてはいません」

「はい、お陰で作戦は無事に終わりましたし……」

「そうね、結果論だけど作戦には必要だったわよ」

「……無かったら、もっと時間がかかってたかもだしねぇ」

 

 

 

 

突然の謝罪を驚きつつも受け入れるFOX小隊だったが、クルミが少し言いづらそうにRAPTOR1に声をかける。

 

「……別に代わりに、とかそういうのじゃないんだけど、1つ質問してもいいかしら?」

 

「……一部の機密情報以外なら、何でも答えよう」

 

 

RAPTOR1の同意を確認し、クルミは、いやFOX小隊は、今日会ってからずっと言えずにいた、RAPTOR小隊の違和感を口にする。

 

 

 

 

それは————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「RAPTOR4はどうしたのよ?」

 

欠番の隊員の詳細

 

 

 

 

 

あまりにも当然の疑問

 

 

 

しかし、その番号を聞いた瞬間に、RAPTOR1の動きが固まる。

 

 

RAPTOR1の脳裏に、男の影が映る。

 

 

隊の中で一番プライドの高かった、けれども腕は確かだった男の顔を思い出す。

 

 

 

 

 

RAPTOR1は顔を下に向け、数秒の沈黙の末に、

 

 

 

 

 

「…………離隊した」

 

 

 

たったの一言を搾り出すのみだった。

 

 

 

だが、それで納得できる筈もなく、クルミの問いは勢いを増す。

「何でかを聞いてるのよ!」

 

 

 

その語気に後押しされた様に、過去の情景がより鮮明に思い出される。

 

 

 

——隊長、すいません、先に行っていて下さい

 

 

 

あの男の心境に気づけなかった。

 

 

 

 

「RAPTOR4は————」

 

 

 

 

 

もし気づいていたなら

 

 

 

 

 

——えぇ、私はRAPTORを抜けます、この腕では戦えませんから

 

 

 

 

あの男の左腕はまだあったのだろうか

 

 

 

 

「RAPTOR4、は————」

 

 

 

心中での後悔と震える声を押し固め、RAPTOR1は事実を伝える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……1年前に行われた、『アリウス自治区救出作戦』の際に、左腕を欠損した……」

 

自分が隊員を死なせかけた、という事実を。

 

 

 

 

 

 

 

 




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