FOXに脳を焼かれた、PMC兵士達のお話   作:アッポラピッタポン

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謎の依頼

 

 

プレジデントとジェネラルがスッキリとした顔で会議室に帰還し、議題は通常の会議へと移行した。

会議の内容は先月と大差はなく

 

 

治安の悪化に伴うカイザーセキュリティの被害の増大

 

トリニティからの諜報活動の増加

 

ミレニアムからと思われる、多数のハッキング被害

 

ゲヘナによる土地や飲食店の爆破など

 

概ねいつも通りの内容だった。

 

 

「はぁ……ミレニアムは本当に厄介だな……」

「ヴェリタスにエンジニア部、オマケにC&Cですからね……天敵です」

 

プレジデントの溜息にジェネラルが頷く、近年着実に力をつけているミレニアムはカイザーコーポレーションとして厳重警戒をしなければならない相手だった。

 

「技術では既に我々の上を行っています……忌々しいですが」

「気を落とすなよ、大量生産の点では負けてないんだから」

 

分かりやすく肩を落とす兵器開発局の男を、隣にいた神秘科学局の代表が慰める。

一人の技術者として、学生に負けるのは屈辱なのだろう。

机の上の握りしめられた拳がその証左となっている。

 

「いい加減、腕試し感覚でコチラのサーバーに侵入しないで貰いたいですね」

「全くだ、セキュリティチームの連中が壁に頭をぶつけ続ける光景はもう見たくない」

 

カイザー内では最早当たり前となっているミレニアムによるハッキングは1週間に2〜3回発生しており、セキュリティチームに配属された新人が死んだ目をするのも、カイザーの恒例行事となっている。

 

 

いつもの事ながら重くなってしまった会議室の空気を、プレジデントが一掃する。

 

「今月からはシャーレという新しい要素が加わった、RAPTOR1の話によれば極めて常識的な人物らしい、彼の傘下にあるミレニアムも多少はなりを潜めるだろう。少なくとも、悪い方向には転がるまい」

 

既にカイザーとシャーレは関係が悪化しており、希望的観測でしかない事はその場の誰もが承知していたが、気分が楽になったのは確かだった。

 

 

 

(数十分後)

 

 

 

 

「プレジデント、会見の準備が整ったとの連絡が」

「そうか、直ぐに向かおう。

 

必要な報告が全て終了した後、会見の用意が出来た、と連絡を受けたプレジデントはやや億劫そうに椅子から立ち上がった。

 

「今月の会議はこれで終了だ、各自仕事に戻ってくれ」

 

「今月の……? 3日後くらいには、また緊急会議がありそうですね」

「言うなよ……虚しくなる」

「9割くらいは治安の所為だろ?」

「緊急会議が通常会議みたいな所ありますからね……」

 

「……聞こえてるぞ。最近私に対する畏怖が足りなくないか?」

 

「古代兵器にワクワクしてる人に畏怖が欠片でもあると?」

「ゴリアテも予算承認が爆速でしたし……」

「日頃の行いですな」

 

「……ジェネラル、早く会見に行くぞ……」

「了解しました」

 

少し肩を落としたプレジデントの横を通過し、幹部達は会議室から退出していく。

 

そんな中、何者かがRAPTOR1の肩を叩いた。

 

「……飲みには付き合わないぞ」

「……俺のことを酒の妖怪か何かだと思ってんのか?」

 

自身の扱いの悪さにゲンナリとした顔を見せるHUNTER1。

 

「俺だってこの後仕事があるんだ、飲む訳ないだろ……」

「……なら何の用だ?」

 

昨日の言い様を棚に上げた事に多少の怒りを覚えつつ、RAPTOR1が用件を聞くと、HUNTER1は無言で自身の後ろに指を向けた。

 

「残念ながら飲み会はまた次の機会にでも、RAPTOR1」

 

HUNTER1の背中からひょっこりと顔を出したのは、先程の会議で落ち込んでいた兵器開発局の男だった。

 

「一つ、お耳に挟みたい事が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全く車の通っていない高速道路を一台の軍用車が走り抜ける。

砂漠迷彩に身を包んだその車に、3人は乗り込んでいた。

 

目的地はアビドス砂漠外縁に存在する、カイザーインダストリー第三工場

 

ヘルメット団やスケバンでさえ近寄らないその場所は、近くの広大な砂漠と相まって、超巨大な工場兼兵器試験場と化していた。

 

互いに積極的に話す事などなく、窓の外の何処までも続く砂漠を眺める。

宇宙戦艦や巨大な砂蛇などの不可解な物を多く内包するその景色に飲み込まれそうになる。

 

そんな中、HUNTER1が会話の口火を切った。

 

「なぁ、俺もコイツもまだ何を見に行くのか知らないんだが、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」

 

それに対して声を弾ませながら、男は返答する。

 

「そうですね……では概要だけ」

 

「今回お二人に見て頂くのは、特殊作戦用に製造されたロボットです、会議でも話題になったゴリアテの様なもので、試作が出来たので採用して頂けるかどうか、と言った所ですね」

 

「「……?」」

 

男の回答は、2人にとっては違和感の強いものだった。

 

「……待て、それなら俺達だけで行くのは違うだろう」

 

RAPTOR1の溢した言葉にHUNTER1が同意する。

「そうだな、SOFが生まれて2年、多くの派生が生まれた、対神秘特選群(シクラメン)戦術飛行中隊(ファイアフライ)独立狙撃中隊(アンタレス)……コイツらも連れて行くべきじゃないのか?」

 

車内にはいない、他の同期達の顔を思い返していると、男は気まずそうに笑った。

 

「……実は、他の方々は既に見ております。しかし、断られてしまいまして

 

対神秘特選群には

『大型の対神秘装甲が出来るまで採用は見送りたい』

 

戦術飛行中隊には

『コイツは空を飛べるのか?飛べない?ならいらん!』

 

独立狙撃中隊には

『申し訳ないが単独行動に向かなさ過ぎる』

 

ダメ元でSOF以外にも検討してもらったのですが……

 

デカグラマトン大隊にも

『小さ過ぎる!ゴリアテぐらいのサイズは欲しいな』

 

カイザーセキュリティにも

『護衛対象ごと潰してしまう』

 

と断られてしまい、お二人が最後なんです」

 

「「何故作った?」」

 

ハハハハハハハ、と乾いた笑いを上げる男と嫌な予感が止まらない2人をバックに、車は工場の側に向かって行くのだった。

 

 

 

 

 

 

前方の横たわる砂を蹴飛ばしながら、車は入り口まで到達する。

 

途中にあった検問を顔パスで突破した一向は、そのまま第三工場の内部に入って行く。

 

入って直ぐのガラス張りの通路の下を覗いて見れば、数十本のコンベアの上を弾丸が転がっていき、奥の方で作業員が弾薬箱に新鮮な弾丸を詰め込んでいた。

 

「流石はキヴォトス有数の大工場だ、他じゃ中々見られないだろうな」

 

「光栄です。ですが、まだ前座にすぎませんよ」

 

そう言う男の声色には、喜びの感情は乗っていなかった。

言われ慣れているのか、はたまた出来て当然だと思っているだけか。

 

前を歩く男の表情を伺う事は出来ない。

 

 

 

「ここから先に例の兵器があります」

 

通路の最奥で、男が両開きの白い扉を開ける。

カードを使いロックを解除すると、その重厚そうな見た目とは裏腹に呆気なく扉が開いた。

 

扉の先の光景を目に入れるよりも早く

 

 

「馬鹿野郎っ!何処見てんだ!」

 

2人の耳には怒号が届いた。

 

 

「オーライ!オーライ!そのままそのまま!」

「おーい!リフトが通るぞ!そこを退け!」

「安全確認!よーし!」

「危ねぇな!入院したいのか!?」

「ったく、ペース上げろ!慌てず急いで、だ!」

「間に合うか?じゃねぇよ!間に合わせろ!」

 

 

 

既に太陽の落ち切った夜間とは考えられない程の喧騒

 

そこから、目に映った物は

 

 

四角の箱型の構造物の上に、楕円型の巨大な風船が乗ったかの様な大型機

 

後方では尾翼に乗りながら作業員達が調整を行なっている。

 

 

「飛行船、か?」

 

 

HUNTER1の言葉は的を得ていた。

 

 

 

飛行船

 

キヴォトスでは珍しい、大人数で飛行可能な空を飛ぶ船

 

現在のキヴォトスにおいて、自分達しかこれを作る事は出来ないと、男は豪語した。

 

「久しぶりの大規模な依頼でして、全員熱が入っているんです」

それを語る本人にも僅かに熱が籠っている様に見えた。

 

 

「……すいません、本題ではありませんでしたね。此方へ」

 

飛行船の横を通り抜け、倉庫の端へと向かう。

飛行船からの喧騒が少し小さくなったと思える場所で、先程とは正反対に静かに事が進められていた。

 

 

そこに並んでいたのは2体のロボット

ゴリアテと比べて2回り程小型の体躯、だがその威容はゴリアテに勝るとも劣らないと感じる。

 

その足元まで足を進めた後、男は2人に振り返った。

 

「特殊作戦用戦闘重機 ストライダーです。全高は7m、固定武装は内蔵型の9mmメタルストームMK5と20mmチェーンガン。

あぁ、もちろん分かってますよ?ミレニアム製の方が性能がいいんじゃないかって、ですがミレニアム製なんて自爆機能にBluetoothとロクな物がない、予備パーツもタップリありますよ。長期の作戦行動も大丈夫、近づいて見て下さい。余裕の音です、演算機能が違いますよ」

 

「……一番気にいったのは……」

「なんです?」

 

「大きさだ……満足したか?」

 

その言葉に男は大きく頷いた。

「えぇ、ありがとうございます。一度言ってみたかったんですよ、あのセリフ」

 

「態々付き合ってやるのもお人好しだがな……」

「それはそうですね」

横で呆れた声をだすHUNTER1に理解を示しながら、男は話を続けた。

 

「では改めて、と言っても性能は先程と言った通り。付け加えるならば、様々な武装を搭載出来る事にでしょう」

「……例えば?」

 

「冷却剤に弾薬箱、対空ミサイル、30mmガトリング、果ては120mm砲まで搭載可能です」

「「…………」」

その言葉に2人は反応し、それを見た男は更に笑みを深めた。

 

「何発積める?」

「最大で12000発程」

「エネルギーシールドは?」

「もちろん展開可能です」

「冷却剤は?」

「2ヶ月間の戦闘行動を可能に」

「対空ミサイルは?」

「40発内蔵型の12発のクラスターを」

「最高速度は?」

「ブースター点火時には90kmを叩き出しました」

 

 

「「採用しよう」」

「ありがとうございます!」

 

2人からの質問攻めを耐え切った末に勝利を掴んだ男は清々しい顔とガッツポーズをしていたが、その横で2人はストライダーをじっくりと観察していた。

 

「……中々、頼りになりそうだな」

「弾薬積めるだけでもありがたいからな……閉所は厳しそうだが」

「……そこをなんとでも出来るのが俺達だ」

「違いないな……だが、よくこんな物を製造出来たな、歩行型兵器なんて」

「ゴリアテと理事のおかげです。大破しましたが、戦闘データが残っていたので」

 

「……そうか」

 

様々な場所で功績を残した理事に思いを馳せながら、2人は要求書を提出した後に

仕事場へと戻って行った。

 

 

 

 

 

「今から俺が言う事は、独り言だと思え」

ブラックマーケットへの道の途中、隣に座っていたHUNTER1が顔の向きを変えずに呟いた。

 

「…………」

「先日、ゲヘナに潜伏していた諜報員から情報が届いた」

「…………」

「まだ裏は取れていない、偽情報を掴まされた可能性もある」

「……内容は」

 

「……独り言だっての……ハァ……」

 

先述した事を忘れたRAPTOR1に溜息を吐きつつ、HUNTER1は話を続けた。

 

「送られてきた情報は、ゲヘナとトリニティが近々軍事同盟を結ぶらしい、というものだった」

「…………それを俺に話す理由は」

「理由は無い、強いて言うならお前が俺の元隊長だから、だ」

 

「……頭の片隅に入れておこう」

 

RAPTOR1からの礼に対してHUNTER1は何も言わず、車はブラックマーケットへと直進していった。

 

 

 

 

 

 

 

ブラックマーケットに戻り、帰路を急ぐ。

 

ブラックマーケットは夜の方が本番だ、とでも言うかの様に様々な照明が光輝いている。

 

仕事を終えた闇銀行の職員や、土や泥で汚れた作業員、集団で店を回っているヘルメット団によって構成された人の波を縫う様に進んで行く。

 

人通りの少ない脇道に入り、そこから更に細道に入る。

 

廃工場の横にある半地下の基地

 

いつもの階段を降り、基地の扉を開ける。

 

 

 

「すまない、思っていたよりも長引い………どうした」

 

応接室に入り、いつも通りに隊員達が座っていると思っていたRAPTOR1だったが、入ってみれば、各隊員は何故かアーマーの整備をしていた。

 

扉に一番近い席に座っていたRAPTOR6が顔を向ける。

 

「隊長が出発してから2時間程経った時に依頼が来まして」

「……依頼を受けるかどうか決めるのは俺の筈たが」

命令を無視したのか?と暗に聞くが、RAPTOR6の顔色は変わらない。

 

「まだ受けていません、依頼が書いてある紙の場所を伝えられただけでして」

「……随分と慎重な依頼人だな」

 

ブラックマーケットに於いては中々に珍しい依頼の方法だと、RAPTOR1は少し意外性を感じる。

 

「……それで、場所は?何処の廃工場だ?」

 

「それがな、RAPTOR1」

アーマーの整備が終わったのか、こちらに声を掛けてきたRAPTOR2が依頼された場所を口にする。

 

 

「場所はトリニティにあるスラムの一角だ」

「……トリニティから?」

 

「あぁ、かなり慎重な依頼方法にトリニティという立地、だからこそ真面目に整備に取り組んでた訳だが」

 

 

トリニティ

 

今までは関わりのなかった土地からの依頼

 

今朝見た夢

 

工場で見た飛行船

 

ICBが入手した近々締結されるという条約の情報

 

 

 

今日の行動全てが、何か示唆的な物を感じる。

 

「……行く価値はありそうだな」

「だろ?」

面白そうだと膝を叩き立ち上がるRAPTOR2、それに続いて各隊員達も次々と立ち上がる。

 

「……HOME、車を出せ」

「全員、出発するぞ。未知の場所だ……油断はするな」

 

 

 

 




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