FOXに脳を焼かれた、PMC兵士達のお話 作:アッポラピッタポン
トリニティのティーパーティーのホスト、桐藤ナギサの依頼から始まった護衛任務
初日からの激務を想像していた隊員達とは裏腹に、怪しさのあの字もなかった。
昼間は正義実現委員会が、夜間には警備局のロボット達が、常に警備にあたっており、その警備レベルはマンモス校と呼ぶのに相応しいものだった。
「……忍び込もうとする輩の一人や二人はいると思ったんだがな……」
「まぁ、いつも舐められがちなカイザーとは違う、って事だろ」
「このまま何事もなく……というのは現実的ではないですね」
「襲撃が起きたのは事実だからな、間違いなく下手人はいる」
「…………任務が終わるまで出てこないで欲しい……」
「そうか?俺はさっさと出てきて欲しいな!早く終わらせたいし」
「……まぁ、昼間が暇なのは確かだ」
いつもの任務の過激さに比べて物足りないのか、『早く襲撃に来て欲しい』とまで言い出す隊員がいる中、その暇な隊員達の視線は自然とテレビに向いた。
『あっ!あそこにエンジニア部の生徒らしき人が!行ってみましょう!』
「相変わらず、ニュースには事欠かない場所ですね。ここは」
「全くだ、シャーレと七囚人だけでも、コッチはてんやわんやしてるってのに」
「……七囚人か」
ヴァルキューレの矯正局に収監されていた7人の犯罪者、七囚人の名前はキヴォトスの中で知らない者はいない程に知れ渡っていた。
「シャーレが来た日に脱獄したんでしょう?変な繋がりがないと良いのですが……」
「アウル、それはフラグだ」
「……止めておきましょうか」
前にアビドスの話をした翌日に、シャーレがアビドスに向かった事を思い出し、思わず身震いする。
本当にシャーレと七囚人が関わり合っていた、など考えたくもない。
沈黙した2人の横で、RAPTOR1は不安そうに呟く。
「……再逮捕は出来るのか?」
「さぁ、SRTも動けないのに捕まえられるんだったら、最初からそうしてますよ」
SRT、という単語により話題は変わっていく。
「シャーレっていうSRTと同じ学園を跨ぐ権力を持ったのが出来たからなぁ、SRTの再開は絶望的だろうな」
学園関係なく、権力を行使出来、更には学園の戦力への命令権すら持つ、というSRTの上位互換の組織は、SRTの存在意義を消してしまっていた。
「……SRTですら各学園への不当な干渉だと言われていたが……」
「シャーレはその比じゃ無いな、やっぱりあの女には破滅衝動でもあったんだろ」
「何しろ、シャーレと入れ違いで失踪だからな、キヴォトスの混乱を収めさせることによって、シャーレへの反感を少なくしたとも言えるがな」
マッチポンプにも程があるとRAPTOR5は不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「……SRTの生徒達はヴァルキューレの警備局配備だったか?」
「公安局の次くらいには汚職が激しい所だな……可哀想に、今まで散々コキ使っといて、誰も責任をとれずに金食い虫とタンコブ扱いだ」
「難関試験を突破した末が汚職警官の仲間入りですか……世知辛い、どころの話じゃないですね」
「汚職相手は我々ですけどね……」
「だからこそだろ?」
今まで何度も敵対し、戦闘をしていた間柄だったのもあり、RAPTOR小隊がSRTに向ける感情は同情や憐憫に近い物があった。
「同じ特殊部隊としては、明日は我が身の気分ですね……」
「カイザーが倒産するか、キヴォトスから生徒が消える、くらいの確率だがな」
「まぁ、クビにならない為にも、真面目に仕事をしますかね」
「その仕事が暇なんだけどな……」
「ホーク、話を戻すな……」
夕方になる頃には雑談を終えて、各隊員が仮眠や配置についていた。
「……配置に着いたか?」
『こちらホーク、既に着いてる』
『イーグル、配置に着いた……暑い……』
『こちらレイヴン、今到着しました』
「……そうか、今から俺は古書館に向かう、何かあったら連絡しろ」
『了解した、ゆっくり……いや、さっさと見つけてこい」
「……そうだな、憂いは早く無くしておくに限る」
もし、古書館で例の物を見つけられなければ、今回の依頼を受けた意味はなくなる。
絶対に見つけるという意気込みと共に、RAPTOR1は古書館に向かう。
建物の影を歩きながらでも、直ぐに古書館に着く事が出来た。
長い伝統を誇るだけはあり、歴史書等を内蔵した古書館の大きさはトリニティ内でも上位の大きさをしていた。
「……期間内に見つかると良いんだが」
遠目からでも分かる大きさに内心げんなりとしつつ、RAPTOR1は入り口から入ろうとして、柱の影に誰かが立っていることに気がついた。
「…………はぁ、眠いなぁ。たく……シフトどうなってんだよ……」
「………」
足を止め、陰から覗いてみれば、1人の警備局らしき人物が柱に寄りかかりながら愚痴を吐いていた。
(……依頼人から許可証は貰っている、問題ないか)
懐の許可証に触れながら、その警備員の元に向かう。
「……ん?あぁ、アンタか?ティーパーティーに来た客人ってのは」
「……そうだ、許可証もある」
「……本物だな。んで、客人が何の様だ?」
「……古書館に入りたい、いいか?」
許可証を確認した警備員にRAPTOR1は古書館への入館許可を求める。
「分かった、ちょっと待ってくれ……あー、こちらガード15、客人が古書館に入るから交代要員をコッチに……了解」
「良し、入っていいぞ」
「……感謝する」
首元の通信機を使って人員を呼んだ後に、警備員はこちらに向き直る。
「あー、アンタを疑ってる訳じゃないんだが、一応俺が着いて回る事になる。構わないか?」
「……問題ない、それくらいは当たり前だ」
別に古書館から盗み出そうとしている訳ではないし、例の物もトリニティからすればそこまで重要度は高くないだろう。
「んじゃあ、開けるぞー」
少し間延びした声と共に扉が開かれる。
「これは……」
古書館の入り口を抜け館内に入ると、RAPTOR1は目に映る光景に圧巻された。
2階建ての内部に所狭しと本棚が並んでおり、どの本棚にも少し色褪せた背表紙が並んでいる。
内部は清掃が行き届いていたが、本棚の奥底には僅かに埃が見えた気がした。
「……なぁ、ここはクソ広いぞ?探すならさっさと行こうぜ」
「…………そうだったな」
警備員の言葉に我に返る。
立ち止まっている場合ではない
「……歴史書か昔の地図はどこにある?」
「あー、確か結構奥の方だった筈だ……迷いやすいんだよなぁここ」
場所を知っているらしい警備員に続いて歩き始める。
古書館は外部から見ていた時よりもかなり広く感じた。
実際、かれこれ15分は歩いている筈だが、周囲の光景が変わらない。
「結構広いだろ?偶に新入生が迷子になるらしいからな」
「……だろうな」
先行する警備員がこちらを向かずに話しかけてくる。
鬱陶しい訳ではないが、特段話す事もない。
対応に困る、という言い方が正しいだろう。
「……なぁ、あんまり客人の素性を聞くべきじゃないのは分かってるんだが……アンタさ……」
相変わらず、顔をこちらに向けずに歩いたまま、警備員が話しかける。
話題には事欠かない様だ。
「カイザーコーポレーションじゃないよな?」
背筋に、冷たい物が走った。
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