FOXに脳を焼かれた、PMC兵士達のお話 作:アッポラピッタポン
「……暇だな」
「……前にも同じこと言ってなかったか?」
「だってもう二週間だぞ?襲撃者の影や形もありはしない」
ソファに座りながらRAPTOR5が3つの手榴弾をお手玉の様に回す。
危険な事この上ないが、いつもの事なので特に誰も止める者はいなかった。
「だからこそ、警戒はしておけ。依頼なんだから」
RAPTOR2がそう言うものの、少し落ち着かない様子を見せる。
「油断はしてないが……体を動かしたいのは事実だな、戦闘訓練もできやしない」
「昼間は古書館にも入れないしな……あの警備員がいなかったら、もっと時間を食っていたかもしれない」
それを聞いたHOMEが、思い出したかの様に、ポンと手を叩く。
「あっ、その警備員の資料、取り寄せてきましたよ!」
「よく持ってこられたな」
「アンタレスの方にお願いしたんですよ、直ぐに持ってきてくれました」
アンタレスはお前たちの召使いじゃない
ジェネラルの言葉が頭をよぎり、ため息をつくRAPTOR1
「……ジェネラルの言った通りになったか」
「どうかしましたか?」
「いや、見せてくれ」
「わかりました」
HOMEが封筒から紙束を取り出し、RAPTOR1に渡す。
「おいおい、結構あるな」
「カイザーセキュリティの初期からいたらしいからな、それ相応と言えるだろう」
暇つぶしには丁度いいんじゃないか、と思いながらRAPTOR1は資料に目を通す。
「カイザーセキュリティ セキュリティガード アルファ5、セキュリティの中でも最精鋭のアルファ隊だな、コイツの同期のアルファ隊員は既に指揮官とかになってるが……」
「……本人は上に立つ器じゃないと言っていたが」
「現場指揮官の適性は有りますね、ただジェネラルみたいに後方から指揮するのは慣れてないみたいです」
そんな華々しい彼の経歴だったが、一つだけ黒星がついていた。
「……あっ、SOFのサバイバル試験が不合格ですね」
「成程、潤沢な物資がある状態で戦いたいんだろう、常に最小限のSOFは性に合わなかったのか」
サバイバル試験は知識だけではなく、精神力も問われる。
常に万全を求める彼とは相反した様だった。
「……こっちが警備局に入ってからのやつだな」
「警備局と正実が行った定期模擬戦闘の報告書もあります」
映像付きで送られてきたそのデータには模擬戦闘の詳細が載せられていた。
「……一人で三小隊を全滅、流石はアルファ隊にいただけはある」
物陰に隠れては散発的な奇襲を繰り返し、閃光弾と共に突貫。集団に潜り込んでの近接格闘を行い、土煙が晴れた頃には10人近くが倒れていた。
同じ事を3回繰り返し、最後は遮蔽物を吹き飛ばされ、集中攻撃をかけられ脱落した様だが、ヘイローのないロボット兵としては最上級の戦果と言えるだろう。
「数の差がある訓練で良くここまでやるもんだ、立ち回りには文句のつけようがない」
「新兵に見せる教育ビデオとしては十分だな、必要な物が全て詰まってる」
データをカイザーに持ち帰りたいが、トリニティからの許可は降りないだろうな、と少し残念に思っていた所。
部屋に音が鳴り響く
ジリリリリリッ!
かん高いベルの音は隊員達の警戒心を最大限に引き上げた。
「…………依頼人からの呼び出し音か……初めてだな」
「偶に報告で会いますけど、向こうから呼び出されるのは初めてですね」
依頼人、桐藤ナギサからの呼び出し、しかも、この昼間の時間に。
「……クロウ、ついてこい」
「俺かよ!?こんなあっつい中!?」
「さっき暇だって言ってたじゃないですか、行ってきたらどうですか?」
「そりゃ……そうだな」
RAPTOR6の言葉に毒気を抜かれたのか、大人しくなったRAPTOR5
「早く行くぞ、依頼人がお呼びだ」
「……了解」
十分前の自身の言動を恨みつつ、桐藤ナギサの元に向かうのだった。
前回とは違う、真昼のトリニティ。
多くの生徒が学業や部活動、青春などに全力をかけている頃だろう。
そんな中、中庭を望む事の出来るティーパーティーのホスト達の部屋にナギサはいた。
「……ふぅ、今の所は大丈夫そうですね……」
情報部から送られてきた資料に目を通す。
二週間前から雇っている、傭兵団Rについてだ。
トリニティの生徒会がブラックマーケットの傭兵に依頼をしている等と発覚しては大問題になる。
ホストの剥奪はもちろんのこと、最悪の場合は退学処分が下される。
当然、そうはなりなくはない、自分の持てる全ての力を使い、情報は遮断している。だが、相手方からバレてしまっては意味がない。
それを危惧していたのだが——
「まさか、噂の一つすら立たないとは……」
学園の不審者情報に掲載される位は許容範囲だったのだが、影すら映らない。
それどころか、情報部ですら完璧に現在位置を把握出来ていない。
「実力は確かですが……ここまで来ると少し不安にすら思えますね……」
裏社会トップの傭兵
この触れ込みを聞いた時には、あまり気乗りがしなかった。
報酬さえ払えば裏切る事はない(第三者からの依頼金の上乗せで寝返る可能性はあるが、ナギサの資金力を超えるのは並大抵ではない) ため信頼出来るとは言っても、他の問題点があった。
ブラックマーケットの治安は悪い、そこの頂点というのだから、ゴロツキやチンピラの様な性格をしているのではないか。
自分がティーパーティーのホストである事に漬け込み、過度な要求をされるのではないか。
と、様々な不安が頭をよぎったが、百合園セイアが襲撃されたという不安が勝り、藁にも縋る気持ちで依頼を出したのだ。
それが功を奏した、と言えるだろう。
少なくとも今の所は
初対面での威圧感こそ緊張したものの、恐怖を感じることはなく。
言葉使いは傭兵を感じさせるものだったが、声色がこちらを心配している様に感じられた。
日々の報告書には、警備の穴と思われる場所をマークして送って来てくれている。
仕事は確かで、情報も流出しない。
数ヶ月前に雇った警備員と合わせて、良い出会いをしたものだ、とナギサは紅茶を口に含む。
「…………今日のロールケーキは会心の出来ですね。良い紅茶には良い茶菓子を……」
久しぶりにミカさんと一緒に食べるのも良いかもしれません、と言おうとした所で、
「…………そろそろいいだろうか」
RAPTOR1が背後から声をかける。
「ひゃあ!!」
「隊長……流石にそれはオレでも肝が冷えるかと」
「……すまない」
「ゴホッ!ゴホッゴホッ!」
勢いよく咳き込むナギサと、その後ろで申し訳なさそうに佇む二人だった。
「……申し訳ありません、お見苦しい所をお見せしました。」
口から溢れた紅茶を拭きながら、ナギサは謝罪する。
頬というか顔全体が赤くなっており、先ほどの事が余程堪えたらしい。
「いや、完全にこちらの不手際だ、申し訳ない」
「……隊長、ホントに気をつけましょうね?護衛する相手気絶させたら大問題ですよ?」
「いえ、呼んだにも関わらず気付かなかった私にも非があります。ここは互いに手打ち、ということで……」
「「……感謝する(します)」」
「……本題に入ります。」
三者の間に気まずい空気が流れるも、なんとか元に戻す事に成功し、ナギサは呼びつけた理由を話す。
「……実は今日、シャーレの先生が此方にいらっしゃいます。」
シャーレという単語に動揺しつつも、RAPTOR1は話を切り返す。
「……目的は?」
「裏切り者を見つける為に、補修授業部という部活を作ります。先生にはその監督をしてもらいます。」
「成程?候補者の選定は既に終わっていると?」
その言葉に頷くと、ナギサはテーブルの上の封筒を手渡す。
RAPTOR1が封筒を開けると、中には人名の書かれたリストがあった。
「……4人だけか、案外少ないな、下手人の候補は」
「……襲撃のことには気付いていたんですね……かなり力を入れたのですが……」
「職業柄敏感なだけだ、気に病む必要はない。クロウ、確認しろ」
「裏切り者候補は、浦和ハナコ、下江コハル、白洲アズサ……阿慈谷ヒフミ」
「はい、その4名の内の誰かが襲撃者です。」
「…………成程、その根拠を聞いておきたい」
見知った名前へと混乱をおくびにも出さず、RAPTOR1は根拠の提示を求める。
ちなみにRAPTOR5は
(まぁ、ヒフミならやる能力はあるか……)
と妙な納得を感じていた。
「……浦和ハナコさんは2年生になってから、明らかに自分から成績を落としにいっています。元ティーパーティーの候補ということもあり、多くの機密情報を知っています。意図が不明な為、候補に上がりました。」
「……幹部候補の不審な動きか、当然だな」
(ネフティス相手に絶賛スパイを送ってるコッチとしちゃあ、見慣れた理由だな……)
聞き慣れた理由に相槌を打つRAPTOR5。
「二人目の下江コハルさんは……本人は何もしていませんが、所属する正義実現委員会の副部長のハスミさんを縛る為に、親密な彼女が選ばれました。ハスミさんはゲヘナ嫌いで知られていますので……」
「……手綱を握る、という訳だな」
(相手の身内を人質にする、カイザーでしょっちゅうやるやつだな……)
目の前のナギサの罪悪感を感じている顔を見ると、なんの躊躇いもなく人質をとる自分たちにも刺さっている様な気がしてならないRAPTOR5。
胃がキリキリする音を聞きながら、次の人物について耳を傾ける。
「白洲アズサさんは、学内での暴力行為の多い方で、よく正義実現委員会に捕まっています。そして、トリニティ入学以前の記録が一切ない事も重なり、候補になりました。」
「………」
(急に怪しい奴来たな……ん?この顔どっかで見かけた気が……学園内か?いや、隊長も見覚えがあるっぽいな……)
犯人の確率が高い人物の登場に呆れながらも、どこか見覚えのある顔に考え込むRAPTOR5、隣を見れば自分と同じ様に僅かに首を捻るRAPTOR1の姿があった。
「最後に……阿慈谷ヒフミさん、は……」
急に言葉に詰まり、俯くナギサに二人は疑問符を抱く。
「……友人か?」
「……はい、そのようなもの、です。彼女がどう思っているかは分かりませんが……私はそう思っています。」
ですが、とナギサは俯いたまま言葉を吐き出す。
「……情報部から、彼女がブラックマーケットに入り浸り、犯罪集団と関わりがある、という情報が入ってきました……」
「…………そうか」
(優秀な情報部だな……っていうか犯罪集団と関わり?……あのグッズの為ならやりそうだな……)
「……お二人にお伺いしたいのですが……ブラックマーケットで阿慈谷さんを見かけたりは、しませんでしたでしょうか……」
顔を上げ、落ち込んだ顔を見せたナギサに二人の空気は凍りついた。
契約に従って、全てを話すべきだろうか。
しかし、今目の前の少女にその情報を与えて何になるのか。
ティーパーティーのホストという立場で、数少ない友人であろう阿慈谷ヒフミが犯人の可能性があれば、更に疑心暗鬼に陥るだろう。
ならば
「……クロウ、見覚えはあるか?」
「いや、全く。こんな目立つ服してたら覚えてますよ、オレは」
「そうですか……」
安堵した様な表情を見せたナギサを見て、選択を誤らなかった事を確信して、二人も安堵するのだった。
ちなみに、本作での強さの序列は
ロボット、動物市民 <一般生徒<ヘルメット団、スケバン<PMC兵<治安維持組織モブ<SOF、セキュリティ<ネームド生徒<RAPTOR小隊等<学園代表格 となっています。
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