FOXに脳を焼かれた、PMC兵士達のお話   作:アッポラピッタポン

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日常回?


お使い

 

 

 

「またシャーレですか?因縁でもありましたっけ?」

「……面倒この上ない……」

「カイザーとしては理事の仇なんだよなぁ……」

「今度お祓いにでも行きますか?」

「行くのはお前だけだぞアウル」

「シャーレを連れ込んだ原因だからな……」

 

シャーレが来ることについての隊員の反応は概ね予想通りだった。

強いて言うならば、RAPTOR8に僅かに愚痴を溢すものが多いことだが、RAPTORではよくあるので気にすることはない。

 

「……言った通り、候補者はこの4名だが」

 

ホワイトボードに張り付いた写真をペンで軽く叩き、小気味の良い音が聞こえる。

 

「実質3人ですね、下江コハルは外しても良いでしょう」

 

「だな、完全に人質だ、一番怪しいのは……コイツだろ」

 

RAPTOR2が指を指した先には、白髪と白い羽が特徴の少女がいた。

 

「白洲アズサ……戦闘慣れしていて、更には経歴不明、中学すら分からないと来たな」

 

「調べて見ると、経歴はありますが無理がありますね、素人が作ったって感じの経歴です」

 

白洲アズサについて調べれば調べる程、疑いが深まる。

どう考えても、暗殺の為に誰かが送ってきた様にしか見えない。

 

「……とは言え、まだ確定じゃない、警戒対象ではあるがな」

 

「シャーレが見張るらしいですし、こちらは今まで通りに警備を固めればいいでしょう」

 

「違いない、どっちにしろ相手の動き待ちだ、何をするにしてもな」

 

「結局……変わらないのか……」

 

シャーレが来るにしても、襲撃犯が誰にしても、やる事は変わらないと隊員達は気合いを入れ直すのだった。

 

自分達の頭の片隅の違和感には気づかないまま

 

 

 

 

 

 

 

 

(数十分後)

 

 

「はぁ、暑いな……なんでこんなハメに、クソッ!変な事言うんじゃなかった……」

 

トリニティの街中を歩く、クロウの姿があった。

不機嫌そうに歩く彼の周りには大きな空間が出来ていた。

 

早朝に「暇だ」なんて言ったせいで、様々な用事の使いっ走りにされていた。

 

「ったく、食糧は事前に持ってきてるってのに、ドーナツが欲しいって何だよ!遠足じゃねぇんだぞ?」

 

自隊の優秀な狙撃者の脳が暑さでやられる前に、甘い物を買ってこいと言われ、叩き出された。

 

確かに、今年の夏は例年よりも気温が高く、狙撃者として屋外にいることの多いRAPTOR3の気持ちも分かるが、訓練でこの程度の暑さなら慣れている。

 

「……まぁ、今は傭兵だからな、多少はいいのか?」

 

暑さで頭が回らない、慣れているとは言っても、別に好きこのんで外に出たいわけではない。

 

「あー、やめだ、さっさと使いをこなしてクーラーのある部屋で寝るか……」

 

遠くに陽炎の様に揺らぐ目的地を見据えながら、RAPTOR5は腰に気合いを入れて歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

「えー、オールドファッション9個とチョコファッション9個、ポンデリングも9個、後は——あぁ、プレーンを……18個くれ」

(どうせ全員食べるし、多めに買っとくか、冷蔵庫の中余ってたよな?)

 

「お、お客様、少々お待ち下さい、ご用意するのに時間が……」

 

「おぉ、ゆっくりでいいからな」

慌てて奥に向かう店員を見送りながら、ショーウィンドウを覗き込む。

 

(随分と種類があるんだな……5種類位だと思ってたが)

 

縦二段にずらりと並ぶドーナツを見て、企業努力を感じとるRAPTOR5。

トリニティの中でもかなりの規模を誇るのだろう、店員の動きや建物の大きさ、清掃の具合がそれを示している。

 

「カイザー系列の店にしては、かなり気合いが入ってるな」

 

自社の社員達の奮闘を祈りながら、変わらず眺めていると、ふと視界の端に何かが入り込んだ。

 

 

『夏限定!! レモンとマンゴーのコラボ! フレッシュエンジェル!!』

 

「……これも買ってくか」

 

買ったドーナツの味にプレーンが多い事だし、少しは味の濃い物を買って行ってもいいだろう。

 

店員イチオシの文字も見える、不味いなんて事はないだろう。

 

「追加で済まないんだが……フレッシュエンジェルを9……個?」

 

9、という数字を言った途端に背中に凄まじい程の殺気を感じたRAPTOR5。

 

顔を僅かに傾け、背後を探る。

自身の後ろにはかなりの列が出来ているが、その中でも真ん中から圧を感じる。

 

「…………あそこか」

 

列に並んでいる4人組らしきのグループの内2人がこちらを強く睨んでいる。

 

特に黒猫の様な見た目をした奴と黄色髪の奴の圧力が尋常ではない、つい癖で銃を撃ちかける所だった。

 

(なんであんなにキレてんだ?フレッシュエンジェルが原因らしいが……)

 

『数量限定!!残り30個!』

 

「あっ……」

 

先程見逃していた数量限定の文字を確認し、更に残りの数で冷や汗をかいた。

 

(…………あそこらへんだと、売り切れるか売り切れないかの瀬戸際だからピリピリしてんのか……いきなり3分の1無くなったらああなるか……)

 

「お客様?先にお支払いを……」

 

「……フレッシュエンジェルをキャンセルしてもいいか?」

 

「えっ」

 

店員の困惑した声が耳に届く。

 

「いや、申し訳ない。金はそのまま払う、まさか数量限定だとは知らなくてな……」

 

「しかし、もう箱に入れてしまって……いえ、分かりました。ではお支払いを」

 

支払いを求められ、カードを懐から取り出して、そのまま店員に渡す。

 

「お客様?カードはコチラにタッチ、を……!?」

 

「どうした?」

カードを受け取った店員の挙動不審を怪しみながら、声をかける。

 

「……えっ?コレ……カイザー幹部、の……」

 

「あぁ、ジェネラルのやつだな、知ってんなら話は早い、頼むわ」

 

「か、カイザーのNo.2……視察、でしょうか?」

 

「いや、違うっての。さっきは悪かった、こっちの確認ミスだ」

 

「いえ!いえいえいえ!滅相もありません!」

 

完全に怯え切っている店員、奥からも何人か覗きに来ていたらしかった。

どう見ても、様子を見にきたお偉いさんにしか見えないらしい。

 

(やらかしたか?ジェネラルのやつは不味かったか?でも許可はもらってるからいいか……)

 

「あー、分かった。詫びとしちゃあアレだが、この後100名までなら払うってのはどうだ?」

 

「……良いのですか?大損では?」

 

「詫びだよ、味の宣伝に使うといい、金はジェネラルにつけといてくれ、じゃ!ドーナツは貰ってくぞ」

 

しれっと、責任をジェネラルに押し付けつつ、RAPTOR5は退店した。

店から出ると同時に、セールを知らせる鐘の音が鳴り響き、多くの生徒が店に駆け込むのを見ながら、帰路へつくのだった。

 

 

 

 

 

 

いや、まだ帰路へはつかないのだった。

 

 

 

「流石に帰りは遠く感じるな……」

 

両手にドーナツの箱を持ちながら、太陽を一身に受けるRAPTOR5。

 

「早く帰りたい……帰ったら寝よ」

気のせいか、足取りはかなり重く感じる。

語彙も減っている気もする。

 

「いや、水を飲んだ方がいいか?どっかに場所は……あそこでいいか」

流石に水分を体に入れたいRAPTOR5が向かったのは、一軒のアイスクリーム屋だった。

 

「いらっしゃいませ!お一人様ですか?」

 

「あぁ」

 

「かしこまりました!コチラの席へどうぞ!」

店員の誘導に従い、席につく。

 

「……バニラとチョコを1つずつ、トッピングはなしで」

 

「分かりました!少々お待ち下さい!」

 

店員が去り、ようやく一息をつく。

「はぁ、かなり時間かかったな……」

 

クーラーが直接当たる様な席であるためか、冷気を叩きつけられるRAPTOR5。

自然と頭も冷えていく。

 

席の横に積み重なった箱を眺めていると、斜め前の生徒が目に入った。

ヘッドホンを頭にかけている、随分と機嫌がいいらしく体を左右に揺らしていた。

 

ヘッドホンから漏れ出ているらしい音楽が、彼の耳に届いていた。

 

涼しい店内に、お洒落な内装、アイスを楽しむ人の声、それらが良いBGMになっている様な気がする。

 

長蛇の列はないが、中々良い店に入れた様だ。

 

「お待たせしました!バニラとチョコです!それでは良い時間を!」

 

ハキハキと喋る店員の声と共に、アイスが運ばれてきた。

 

早速、手をつけようと手を伸ばした所。

 

「…………」

 

僅かに嫌な予感が背筋を疾走し、皿を横にずらすと、その場所に銃弾が着弾する。

 

どうやら、今日は厄日らしいと自嘲する。

 

「オラオラ!テメェら全員!武器を捨てろ!」

「さっさと金取ってズラかるぞ!!」

「痛い目に会いたくなかったら、静かにしてろよ!!」

 

どう見ても、お客様ではない輩の登場に、店員は慌てふためいていた。

 

にしても、正義実現委員会のお膝元で強盗とは

 

「アホな連中だな……」

 

「テメェ!今なんか言ったか!」

「静かにしてろって言っただろ!」

 

口に出していたらしく敵1(アホ)敵2(アホ)に目をつけられてしまった。

 

「オレもお祓い行こうかな……」

 

どうも最近運がない、高名な神社でお守りでも買うべきか?

 

「いや、RAPTORが神頼みは笑えないな……」

 

自分の実力で解決出来るのだから、そうするべきだろう。

やはり疲れているな、と思考を回していた所で目の前で銃を突きつけている強盗に気づいた。

 

特殊部隊を名乗っている癖に、油断しすぎ?

 

小石を恐れるのは精神疾患というのだ。

 

「おい!さっきから一人でブツブツと何を——」

 

早く逃げれば良いものを、別の事に興味を引かれすぎだ。

 

そんな事をしているから、ヘッドホンをつけた生徒に閃光手榴弾を…………

 

閃光手榴弾!?

 

 

咄嗟に片目を瞑り、音に備える。

店の中で激しく光が放たれ、強盗達を包み込んだ。

 

RAPTOR5は経験上、何度も喰らっているので特に問題はない。

復帰までに瞬きの時間すら不要だ。

 

自身の愛銃を構えて、目の前でふらついている相手の頭部を撃ち抜く。

 

対SRT用の銃の火力は、強盗団にとって過剰火力だった。

 

「対象3名のヘイロー消失を確認、対象の捕縛を速やかに……」

 

「う、うぅ……ガッ!?」

 

「訂正、1名ヘイローの点灯を確認……ヘイロー消失を確認」

 

起きあがろうとした強盗に、拳銃弾を撃ち込み、無力化する。

 

 

この後、駆けつけた正義実現委員会により強盗は輸送された。

 

RAPTOR5は長時間の取り調べを受けるも、見ていた生徒からの意見により解放された。

 

アイスはなんとか食べれた。

 

 

 

日もくれかけ、取り調べが終了したRAPTOR5は肩を落としながら、道へと出てきた。

 

「あの、すいません。これを忘れていましたよ」

 

背後からの声に振り向くと、先程の生徒がドーナツの箱を抱えていた。

 

両手の違和感の理由に気づくRAPTOR5、急いで箱を受け取る。

 

「助かった、危うく来た意味をなくす所だった。強盗の時にも助けられたし、礼を言わなくちゃな」

 

「いえ、こちらこそ。私一人では三人を捕まえるのは難しかったので……」

 

「……そうだな、礼だけじゃあ足りないか……なら」

 

「……それは」

懐からある物を取り出す。

 

「アンタ、閃光手榴弾使ってただろ?オレもよく使うからさ、上手い使い手はわかるんだよ。だから、コイツを3発やろう」

 

取り出したものはRAPTOR小隊が使用する強化型閃光手榴弾、通常品よりも威力の上がった一品だ。

 

「これは法律的に……」

 

「安心しろ、一応法の範囲内だ」

 

「一応、ですか……あっ、ちょっと」

 

受け取りづらそうにしている手の内に無理やり押し付け、現場から走って離脱、RAPTOR5はようやく長いお使いの帰路についた。

 

 

 

「名前を聞いてなかったな……」

 

 

 

シャーレがトリニティを訪れた、その日の話である。

 

 

 




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