FOXに脳を焼かれた、PMC兵士達のお話 作:アッポラピッタポン
入り口から入ってくる男を見る。
あの超人が選んだ、超法規的機関の代表。
だが、RAPTOR小隊の面々は実際にその男を見て疑問を抱く。
こんな男が?と
あまりにも普通だった。
人の良さそうな見た目ではあるが、街中で見かけた所ですぐに忘れてしまう様な、良くも悪くも普通な男だった。
あの超人の様な目を合わせただけで全てを見透かされるかの様な悪寒も感じない。
そこら辺にいるヘルメット団のチンピラにすら負けてしまいそうな無力さ。
あまりにも拍子抜け過ぎて毒気を抜かれかけるが、どこかに違和感がある。
(どこだ?)
ヘイローを持っていない事ではない。
あまりにも柔和すぎる顔ではない。
生徒の力ならすぐに折られてしまいそうな体ではない。
目だ、とRAPTOR1は察する。
あの超人の様な目ではないが、あれは断じて一般人の目ではない。
あの目は今までの作戦中に何度も見たことがある。
澄んでいる様に見えるが、透明に濁っている
(狂人の目……か)
ただの戦闘狂などではなく、目的の為なら生身で凶弾の前に立つような覚悟をもったタイプの狂人だ。
しかも、恐らく本人は自分が狂っている事に気付いていない。
(……なるほど、どうやら……)
簡単に手玉に取れる相手ではないと、内心溜め息を吐きつつ後続の生徒達を確認する。
阿慈谷ヒフミ 制圧可能 というかただの狂人である
黒見セリカ 制圧可能 隊員1人で対処可能
十六夜ノノミ 制圧可能 隊員2人で対処可能
砂狼シロコ 制圧可能? 隊員3人以上を必要とする
小鳥遊ホシノ 制圧不能 現状の戦力では制圧不可
これが、今までの監視から得られた情報から算出された結論であり、隊員達も異論はなかった。
小鳥遊ホシノに有利な近距離戦であったとしても、単独で戦闘した場合である事を考慮すると驚異的である。
中でも、小鳥遊ホシノは現在のカイザーSOF全ての戦力をぶつけてようやく優勢になるレベルの実力者であり、仮に今戦闘が発生した場合、室内で戦闘する都合上すぐに制圧されてしまうだろう。
だが、とRAPTOR1は小鳥遊ホシノを見る。
目の前にいる気の抜けた顔をした『暁のホルス』はかつて程の脅威になり得るのか?と
……かつて1度、彼女の戦闘記録を見た事があった。
ショットガンと拳銃をもち、敵集団を瞬きの間に壊滅させる戦闘力
ショットガンのリロードをしながらも拳銃を連射する技術力
そして、敵に向ける絶対零度の視線
その頃に比べれば……いや、確かに健在ではあるのだろう、戦闘力も技術力も、だが、精神的な面で何かが変わった様に見られる。
彼女の持っている、展開式の盾に目を向ける。
前生徒会長の遺品だと聞いているそれを使っての戦闘は2年前の時よりも安定感をましたが、同時に爆発力を奪ったのだろう。
つまりは……
そこまで思考を巡らせると、RAPTOR1は今考えるべき事ではないと切り替え、目の前にいる客人達に向かい合う。
「……ここの傭兵屋のリーダーを務めているラプターだ、よろしく頼む」
さて、どうしてくれたものか、と目の前で苦笑いをしている阿慈谷ヒフミを見るのだった。
少し気まずそうに笑いながら、ヒフミがRAPTOR1に挨拶をする。
「あはは……えっと、ラプターさん、お久しぶりです……」
「……確かに久しぶりだな阿慈谷、まさか未だにブラックマーケットに入り浸っているとは思っていなかったが……」
「い、いえ!違うんです!今回は100点しか作られなかった限定品で!……つい体が勝手に……」
「前にも似た様な事を言ってなかったか?」
「あ、あうう……」
RAPTOR1からの言葉に萎縮するヒフミを見て、先生が声をかける。
"思っていたよりも仲が良いんだね"
「……こんな場所でトリニティの制服を着てる奴だからな、目立ってしょうがないが、それよりも……あんたが今回の依頼主か?随分と若そうだが……」
"いや、依頼とかじゃなくて……"
先生が生徒達の方を向く。
「なんだ依頼じゃないのか……」
「いいじゃないですか隊長、どうせ暫くは仕事の予定がないんですし、聞くだけ聞きましょうよ」
SRTが動けない為に時間は余っている事を暗に伝えてくるRAPTOR2
「……それもそうだな、座ってくれ、茶菓子くらいなら出せる」
と、席に座らせようとしたその時、ホシノが口を開く。
「ねぇねぇお兄さん達、ひとつ質問してもいいかな〜」
「……構わないが、どうかしたか?」
そこでホシノは部屋の角に立っているRAPTOR5に
突如として
「ッ!?」
RAPTOR5が咄嗟に相手に銃口を向け、RAPTOR1、RAPTOR2以外の隊員も一瞬で小鳥遊ホシノに銃口を向ける。
「え、えっ!?ちょっと急に!」
「ホシノ先輩……?」
"どうしたの!?"
突如として、部屋の中が殺気で満たされると、RAPTOR1は抜きかけた拳銃を腰に戻しながら口を開く。
「…………なんのつもりだ?」
「さっきからずっと銃のトリガーに指をかけててね〜、今にも撃ってきそうだったから少しね」
「…………今のは本当か?クロウ」
「すいません……いつの間にか……」
どうやらプレッシャーに耐えかねて、知らない内に体が動いたらしい事を知る。
「…………はぁ、全員銃を下げろ」
「「「……了解」」」
そういうと部屋の空気が緩み、誰かは知らないがホッと息をつく、あるいは自分の息だったのかもしれない。
暫くの無言の後、RAPTOR1が命令を出す。
「……クロウ、スワロー、アウルは別室で待機……銃の整備でもしていろ」
「……了解しました」
「あービビった」
「黙ってろ!……さっさと行くぞ」
各々が話しながら隣の部屋に出ていき、席が空いた。
その後にRAPTOR1が頭を下げる。
「……すまなかったな、言い訳にしかならないが職業病というやつだ、君達に敵意があった訳ではない事を理解して貰えるとありがたい」
「いやホントに悪いな嬢ちゃん達、後で叱っとくから」
「こっちもゴメンね〜、おじさんも今までの経験でちょっと反応し過ぎちゃったよ」
ニコニコしながら銃を下ろすが、その目はこちらを信用していない、背中を見せたらこちらが撃たれそうである。
アビドスの生徒たちも自身の先輩の姿を見て、少しこちらを疑っている。
阿慈谷ヒフミは混乱状態にある様だが……
この状態では話し合いは望めそうにもないと、内心頭を抱えるRAPTOR1に救世主が隣の部屋から現れる。
「あの……さっき先輩方が死にそうな顔でこちらに来たのですが何かありましたか?……お茶菓子をお持ちしたんですが?」
タイミングが悪かったでしょうか?と心配そうな顔をするHOMEにRAPTOR1はボーナスでもあげるべきかと考えるのだった。
先程までの空気はどこに行ったのか、今の部屋には柔らかい風の様な物が吹いている気さえしてくる。
その要因になっているの間違いなく……
「このケーキ美味しいですね!どこのお店ですか?」
「確かトリニティ自治区のエンジェルパティスリーだったかと……」
「そ、それって最近話題になってる高級店じゃないですか!」
"すごい所なの?あっ美味しい"
「はい、トリニティでも有数の人気店で、高いものだと4万円から5万円する程の物でして!」
「5、5万円!?このケーキそんなに高いの!?」
「納得の美味しさですね〜」
「でも、いつも予約でいっぱいなのによく頼めましたね!」
「先輩の1人が食べたいとぼやいていたので、半分意地ですね」
楽しそうに会話しているHOMEだった。
少し彼についての話をしよう。
このHOMEという隊員は前に話した様にRAPTOR小隊結成後にやってきた言わば後輩だ。
戦闘能力は一般PMC兵よりは強いがSOFという物差しで測ってみると、下の中程度であり、まだまだ経験が浅い。
本来はSOFからの精鋭しか許されないRAPTOR小隊に何故入隊が許されたのか、それは余りにも高すぎるサポート能力が故だった。
戦闘時には8人のオペレーターと電子戦、航空支援を兼任し、離脱の支援までを1人でこなす。しかも、その全てを中途半端ではなく完璧に遂行するのだ。
間違いなくRAPTOR小隊に必要な人材になっている。
だが、今重要なのはそれではない。
彼は隊の中での経験が一番低い、だからこそ感性が彼女達に一番寄っている、という事だ。
彼が隊員達の為に買っていたケーキが好評だったという事もあるのだが……
そこで疑問を抱いたRAPTOR2はHOMEに小声で耳打ちをする。
「てか、マジでどうやってケーキ買ったんだ?最近はずっと書類仕事だったよな?予約取れるとは思えないんだが?」
それにケーキを食べながらHOMEが答える。
「知らなかったんですか?エンジェルパティスリーのスポンサーってカイザーの下部会社ですよ?だからそこのコネです。まぁ、買う時にジェネラルの名前出したのもあると思いますが」
最近はトリニティでの勢力拡大を目指してるらしいですよ、と話すHOME
「待て待て!お前ケーキ買うのにあいつの名前使ったのか!?」
「ラプターを通して許可を貰っています」
何か問題でも、と言いたげなHOME
振り返って、お前マジか?と目で訴えかけるRAPTOR2にRAPTOR1は頷く。
「マジか……あいつも頭抱えてんだろうな……」
ケーキを買う為に名前を使われているジェネラルに心の中で手を合わせる。
後で胃薬でも送ろう、とRAPTOR2は考えるのだった。
誤字脱字ありましたら、ご報告ください