FOXに脳を焼かれた、PMC兵士達のお話 作:アッポラピッタポン
時刻的にはRAPTOR小隊が対策委員会を事務所に入れていた頃。
カイザーコーポレーションの車庫から、一台の防弾車が出て行く。
本来であれば、多数の護衛といるべきであるその車の中には、カイザーコーポレーションのトップであるプレジデントとNo.2であるジェネラルがいた。
運転をしているジェネラルが、後ろに座っているプレジデントに声をかける。
「……機嫌がよろしいのですね」
その声に窓の外を見ていたプレジデントがこちらを見る。
「おや?分かるかね?」
その声はやはり弾んでいて、後ろを向いて顔を確認するまでもなく、彼が上機嫌である事を示していた。
それを見て、ジェネラルは小言をもらす。
「護衛も付けずに出るのは企業のトップとしてどうかと……」
「No.2が出るのは良いのかね?」
「……」
少しの笑いの入り混じった、その尤も過ぎる返答には何も言い返せなかった。
「…………私は代わりがいますが、あなたが居なくなればカイザーは消えます」
苦し紛れの虚言を返す。
「……成る程な、一理あるか……まぁだが心配する必要は無い」
全く一理あると思ってなさそうな声色が車内に響く。
「何故です?」
そこでプレジデントは足を組み自信満々に言い放つ。
「私の目の前に1人、腕の立つ護衛がいるからな」
「……はぁ」
こういう時、この車の静音性を恨む事がある。
「私は君を高く買っている、『あの事件』の後、たったの1年でカイザーのNo.2の座に登りつめた君の能力を」
だからこそこうして護衛を任せている、と車に備え付けてあったナッツを食べながら話すプレジデント。
「それに、私の直感に付き合わされるのも慣れた物、だろう?」
やはり美味いなコレ、とナッツを齧るプレジデントに対して、僅かに皮肉を込める。
「……最近は胃薬が手放せませんよ」
その言葉にプレジデントのナッツを持った手がぴたりと止まり、面白そうにこちらに視線を向ける。
「……君は昔から飲んでいるかと思っていたが、これは意外だ。君は古巣を居心地良く感じていたのか」
それに対してジェネラルは黙秘を貫きつつ
「……失礼、口が滑りました。約束の時間までに間に合いそうにないので、スピードを上げます」
「はっ?」
そう言うと同時に車は急加速し、プレジデントはバランスを崩す。
それがただの仕返しである、という事は言うまでもなかった。
「待て待てジェネラル!時間には十分に間に合う!やめろ!ナッツが溢れる!」
静音性が高いばかりに、その叫び声を車内に響かせながら、車は密会の予定地へと向かって行く……
D.U.シラトリ区の再開発予定地に存在する多数の廃倉庫の内の一つ、そこが突如として匿名で送られて来た、防衛室長との密会の予定地だった。
その廃倉庫の前に車を止めて、中からジェネラルとプレジデントが出て来た、が……
「……まったく、危うくスーツがナッツ塗れになるところだった」
「……そうですか、大変でしたね」
「実行犯は静かにしててくれ……」
とても重要な会合の前だとは思えない程に軽口を叩きあっていた。
そんな2人も倉庫の前に立つと、流石にふざけた雰囲気が無くなり、話題は密会についての事になる。
「……場所はここで合ってるんですか?」
「流石に私もカイザーのトップだ、場所を間違える事はしない」
「逃走経路については、既にSOFに話がついています」
「……有能な部下がいると仕事が楽で助かるな、では行こうか
そう言うとプレジデントは、扉を開けて中に入っていく。
「……まだ内部の安全確認が済んでいないんですが?」
ドアから顔だけを出し、こちらを見るプレジデント
「相手より早く現場につく事で先手を取る、この様な小手先の技術すらも糧としてカイザーは勢力を伸ばした。今回も同じ事だ。」
No.2ならば覚えておいて損はないぞ、とプレジデントはカラカラと笑い、廃倉庫の奥に歩いて行く。
目の前を歩いている、あらゆる現場を拳銃一つも持たずに渡るこの男はどこで胆力を身につけたのか、と溜め息を吐くジェネラル。
「……せめて私を前にして下さい、護衛ですから」
「そうだな、流石に私も奇襲で脱落なんてのはゴメンだ」
苦笑を溢しながら、プレジデントはジェネラルに先を譲った。
2人は電気の通っていない薄暗い廊下を歩く、外が昼間とは思えない程に外が静かで、カツカツという足音が不規則に響き渡るのみだった。
まるで夜の廃病院肝試しにでも来たのか、とふざけた思考に浸る位には変化がない。
そんな中、先を歩くジェネラルが口を開く。
「少々お待ちください、プレジデント」
「どうした?遂に幽霊でも出たか?」
「いえ、先に誰か入っている様です」
プレジデントの軽口を無視して、ジェネラルはドアノブを指差す。
「……確かに、ここだけ埃が無いな……」
「はい、間違いなく直近に誰かがここを出入りしているかと」
「少なくとも、イタズラ電話の可能性は消えたな」
「……今ならまだ引き返せますが?」
安全性の観点から遠回しに撤退を進言するジェネラル、だが
「まったく……密会相手を待たせてしまうとは、これではカイザーの名折れだな」
プレジデントは聞こえていなかったかの様に、襟を正しドアノブに手をかける。
「では行こうかジェネラル、蛇が出るか邪が出るかは分からないが、面白い事になりそうだ」
やはり直感には従うものだな、と笑いながらドアノブを回し、開ける。
ギイィ、という錆びついた音と共にドアが開き、僅かに埃が舞い、それに倉庫の窓からの光が当たって幻想的とも言える光景が目の前にあった。
だが、プレジデントとジェネラルはそれには目を向けず、倉庫の中心を見ていた。
「あら?案外早かったですね」
薄暗い廃倉庫には似つかわしくない、純白の制服と桃色の髪色はその少女こそがキヴォトスの防衛を司る者達の長である事を何よりも証明していた。
「えぇ、早く来て正解でしたね」
そしてその横には、純白の制服とは対照的な兵士の装備に身を包んだ少女、胸に付いている羽の生えたヤギのマークと特徴的な耳、そして威圧感が彼女がキヴォトス最高の特殊部隊である事を示していた。
数秒の沈黙の後、プレジデントが口を開く。
「我々の間に挨拶は必要かな?」
「いいえ?昔からの付き合いでしょう?
「……そうだったな」
そう言いながら、プレジデントはカヤの後ろに立つユキノに目を向ける。
「……こんな場所で密会とは不用心ではないか、と思っていたが狐を連れているのならば納得だ」
「はい、流石に私1人では心許なかったので、護衛として同行して貰いました、FOX小隊ならばカイザー相手にも安心ですから」
小隊と言う事で暗に他のメンバーも居ることを仄めかし、武力によって会話の主導権を握られかけている事を察して、ジェネラルが行動に出る。
プレジデントの横に立ち、不知火カヤと向かい合う。
「……周辺にはSOFが既に待機済みだ、無駄な脅迫は止めた方がいい」
そう言われたカヤは困った様な顔で首を傾げた。
「……困りました、確かに大勢に囲まれては、少しのことしか出来ません」
「……何をするつもりだ?」
「知りたいですか?そうですね……例えば——」
「ッ!?」
カヤが腰の銃に手をかけた事を確認したジェネラルは殆ど反射的に銃を腰から引き抜き、構える。
「…………まさか連邦生徒会にここまでの銃の使い手がいたとはな」
「……あら、残念ですね、早撃ちだけならFOX1にもお墨付きを貰っていたのですが……」
「こう見えても特殊部隊上がりだ」
「……見た目通りだと思いますが……?」
ジェネラルが大口径のマグナムを、カヤは連邦生徒会の制式拳銃をお互いの頭部に向ける。
その速さは、ほぼ同速であり、肉眼でも殆ど差は無かったが本人達の中では決着がついたらしい。
銃を突きつけ合いながら、会話を交わしている時、背後からプレジデントの笑いを抑える声が聞こえる。
「……フフッ……ジェネラル、銃を下げろ、安全確認は済んだだろう?」
「……了解しました……失礼した、不知火防衛室長」
「いえいえ、私としても丁度良い余興になった様で良かったです」
カヤが笑いながら腰に銃を戻し、気付かぬ間に後ろで警戒態勢をとっていたユキノも銃を下げた。
「部下が失礼したな、それで?防衛室が我々に何の様だ?」
プレジデントがカヤに問いかけると、カヤは目を細める。
「では、空気も温まった様ですし、本題に入りましょうか」
「あなた方を私達の
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