ゆるキャラ転生   作:忌野希和

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111話:ゆるキャラと進路変更と造形

「三年間ですごい成長したんだな」

「え、そっち?いやまあそうなんだけどね。十五歳の時のライナードは声変りもまだで、見た目はほんと私そっくりだったんだよ。なのに私の体は当時からまるで成長していない……」

 

 ああ、うん、抱き付かれているからよく分かるよ。

 首を動かしてルリムを羨ましそうに見つめている。

 視線がある場所で固定されているが、どこかはあえて言うまい。

 

 リエスタも十八歳とこの世界ではいい大人だが、体つきは十五歳の平均より小柄で色々小さい。

 姉の分もライナードが成長してしまったかのようだ。

 

「姉さんごめん……」

「ちょっと謝らないでよ!余計に惨めになるでしょうが」

 

 体格は全然違うがしょんぼりする姿は双子なだけあってよく似ている。

 後々判明したことだが、双子は某国の王族の血筋だったのだ。

 

 王族の妾の子で、双子は凶兆だと忌み嫌われ片方が殺されるはずだったが、母親が懇願して回避。

 秘密裏に孤児院にあずけられることとなった。

 

 時は流れ某国に政変が起こると、第二王子であった双子の父親が力を強め、二人を迎え入れる体勢が整う。

 成人と同時に迎えに行ったが、双子からは拒否られニール先輩の加勢もあって失敗に終わったというわけだ。

 

「双子が忌避されるなら片方だけ殺したことにして、孤児院にあずければよかったんじゃ?あと孤児院にあずけっぱなしだったのも気になるな」

 

 将来迎えに行くつもりだったのなら、もう少し教育の行き届く環境にあずければよかったのに。

 そうしたならリエスタももう少しお淑やかだったのでは……とは口に出しては言えないが。

 

「当時の父親は相当劣勢だったみたいで、妾の子の存在自体が弱点になりそうだったんだって。だから二人を孤児院にあずけた後も接触は最低限にしてたみたい。ってニール様が言ってた」

 

 母親は王族に代々仕え、影から支えていた護衛兼暗殺者の家系の娘だった。

 彼女は主でも夫でもある第二王子を、第一王子が放った刺客の襲撃から庇った際に死んだそうだ。

 双子を孤児院にあずけた五年後の話である。

 

 なんだかそのお家騒動だけでドラマが一本取れそうな話だな。

 とはいえ双子にとって両親は成人するまで会ったこともない他人であり、孤児院の子どもとして育ったため今から王子、王女として振る舞えと言われてもできない相談というやつだ。

 

 そしてニール先輩たちに連れられる形で遠い帝国領までやってきた。

 半年ほどニール先輩たちの助成を受けたのち冒険者として自立。

 

 暫くは帝国内を転々とした後、縁のあったこのアネアド村に腰を落ち着けていた。

 双子は冒険者を引退したわけではなく、村付きとの兼業だそうだ。

 

「追っ手は来ないのか?」

「自由都市から更に南下した小国らしいから、帝国までは追ってこれないみたい。王族の血筋といっても、所詮は妾の子だしね」

 

 ニール先輩経由で事のあらましは聞いたものの、双子は小国や両親の名前といった具体的な情報は必要ないと聞かなかった。

 面識のない生みの親だからとはいえ、なかなかにさばさばしたものである。

 

 ちょっと両親が可哀そうだ。

 あとニール先輩の謎の情報収集能力には驚かされる。

 

「それであんたたちはハクアちゃんを探してるの?」

「ん、どこに行ったかしってる?」

 

「最後に別れる時は帝都に行くって言ってたかな」

「むう、帝都……」

 

 進行方向から逸れる場所が挙げられて、シンクの眉がハの字になる。

 そして上目遣いでこちらを見つめてきた。

 

「多少寄り道しても問題ないぞ」

「……いいの?」

「もちろん」

 

 了承しつつ頭を撫でてやると、シンクは嬉しそうに目を細めながらゆるキャラの横っ腹に頬擦りした。

 

「それでそれで、トウジたちはどこから来たの?なんでハクアを探してるの?」

「さて、どこからどこまで話したものか……いたたたっ」

 

「全部に決まってるでしょ!ニール様に関することは全部教えなさいよ」

「わかった!わかったから【闘神】の加護パワーで腹をつねるなっ。あといい加減離れてくれ」

 

 結局アレスたちにしようとした上っ面の話だけでなく、ゆるキャラが元人間の転生者であることや、ニール先輩と同郷である可能性が高いという話をするはめになった。

 酒も入ってくると情報量の調整もだんだん面倒になり、洗いざらい話してしまう感じに。

 

「ふーん、てことはトウジもニール様みたいに整った顔をしてるんだ?」

「いや、ニール先輩を見たことがないからどれだけ美形かは知らんが、俺は至って普通だ。そうだなあ、この中の面子だと……」

 

 腹立たしいことにアトルランの世界の住人は美形が多いのだが、地球上の人種に当てはめようと思うとこれがなかなか難しい。

 完全に西洋人と言うほど彫りが深いわけでもなく、東洋人ほど薄くもない。

 人族に限定しても髪の色、目の色、肌の色はバラエティに富んでいる。

 

 範囲を広げて亜人を加えた人種というくくりにすると、更にバリエーションは増えるだろう。

 地域や大陸が違えば変化するかもしれないが、ゆるキャラは王国と帝国の人種しか見たことがないので分からない。

 

 あえて表現するなら、「限りなくリアルに寄せた、日本人好みのゲームのCGキャラクター」だろうか。

 ポイントは「日本人好み」で、洋ゲーにありがちな「これで美形のつもりか!?」という造形ではない。

 

 過去にフィンを見て評した「大きなお友達用のフィギュアっぽい」というのもここからきている。

 月華団の首領ザーツも清潔にして髭を剃れば、悔しいことにゆるキャラの中の人こと益子藤治よりイケメンだろう。

 

 こう言っては失礼だが、ジェイムズは非常に平凡な顔つきをしている。

 良くも悪くも特徴のないというか……ゆるキャラの視線と意図に気が付いて、静かに蜂蜜酒を飲んでいたジェイムズが答える。

 

「俺の顔は潜入に向くようにと、前の買い主によって平凡な顔に弄られてるんだ。元の顔はもう少しマシだよ」

 

 あ、はい。

 勝手に仲間意識を持ったりしてすみません。

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