・ミンドナファムは己の知識欲のためだけに裏切り、外様の神エリスの信徒となり邪人サイリシアンの姿に変貌していた。更に昔は闇の眷属でリリンと同郷だった
・外様の神エリスは、元々は創造神が生み出した神の一柱だった。エリスの〈開拓の女神〉としての力を使って、ニールを元の世界に戻そうと画策する
・エリスとその腹心ブロンディアと交渉。お互いの条件を呑んで交渉成立
・外様の神〈黒茨卿〉により復活した〈茨棘教団〉の長ラウグストと再戦。〈時と扉の神〉レジータの転移で合流したシンクたちの力を借りて撃破
・ハクアとシンク感動の再会。コラン村で祝勝会
・ニールが元の世界に帰る前にダブルデートで占いをしたり、クッキングしたり、冒険者ギルドの塩漬け依頼をこなしたりする
・ニールがハクアとミンドナファム、〈コラン君〉の人格の核である〈義憤の神〉を連れて元の世界に帰る
・〈義憤の神〉不在の影響で〈コラン君〉の人格が暴走。意識を乗っ取られる
・気が付くと人間の子どもの体になっていた
301話:少年とお姉様方
「あら、あらあら、まあまあ」
「へー、随分とちっこくなっちゃったねえ」
〈地母神〉の神官服を着た栗色の髪の少女は、発見した
そして椅子に座ると自らの膝の上に乗せた。
椅子の後ろからは同じく〈地母神〉の神官服姿で、紺色の髪を編み込んでいる大柄な女性が僕の頭を豪快に撫でまわす。
この二人はマリスとドラミアーデで、レヴァニア王国で知り合った冒険者だ。
少し離れた所からは二人のパーティーメンバーである茶髪の青年、シナンが驚いた様子でこちらを見ている。
「あの二人が子どもを可愛がる、だと……」
驚くポイントそこなんだ。
「はーい、交代。次は私の番」
という声と共に僕の小さい体を掻っ攫ったのは、動きやすそうな皮鎧を装備した金髪碧眼の美少女。
マリスのように僕を膝に乗せて背後から抱きしめると、首を伸ばして頬擦りしてくる。
「くんくん、匂いは〈神獣〉様に通ずるものがあるわね」
「ちょ、やめなよ姉さん」
「すんすん、くんくん」
大柄な美男子の弟が注意するが、姉は聞こえないふりをしている。
この二人も王国で知り合った双子の姉弟、リエスタとライナードだ。
「へーい、パスパス」
「リリエル、あんたは寝てる間に好きなだけ弄ったんだから駄目よ」
「は?」
それを聞いて僕がリリエルを睨みつけると、彼女は視線を泳がせる。
「弄るなんて人聞きの悪いなあ。私はちゃんとトウジ様が人種の男の子として機能しているか確認しただけで……」
確認って何をしたんだ……。
「というわけで次はクルール様にパス」
「えっ、あわわっ」
僕を急に渡されたものだからクルールがふらついている。
冒険者の皆と違って彼女はヨルドラン帝国に属するか弱い男爵令嬢なので、小柄な僕を抱えるのもおぼつかない。
「いや、降ろしてくれていいよ」
「トウジ兄様がこんなに小さく…これは兄というより弟……。弟、欲しかったのよね」
俯き怪しい笑みを浮かべ始めたクルールが怖くなり僕は逃走。
逃げた先には僕と同じくらいの背丈の子どもが二人いて、テーブルの上に用意された朝食を食べていた。
「むう、まだ身長負けてる」
「トウジ様も朝ごはん食べますか?」
「そういえばお腹すいたな」
竜族の幼女シンクは鶏肉を頬張りながら恨めしそうに僕を見る。
その横に座る
すると途端に喉が渇き、腹は空腹を訴えぐうと鳴った。
「それではこちらにお座りください」
給仕として働いていたクラシカルなメイド服に身を包んだ
そこに丁度もう一人の給仕、アナの母で妙に洗練された……ぶっちゃけるとコスプレのようなメイド服を着たルリムが朝食を持ってやってきた。
シンクが食べているものと同じ、鳥もも肉を豪快に焼いたものだ。
「さぁどうぞお召し上がりください、トウジ様」
朝から重たい料理だが、この体なら胃もたれとは無縁のような気がする。
小さくなってしまった手でフォークを持ち、鶏肉に突き刺して頬張った。
「んん、うまい」
なんとなくだが生前や〈コラン君〉時代より美味く感じる。
そういえば子どもの味覚は鋭くて、大人になるほど鈍くなると聞いたことがあるな。
だから子どもの頃は苦いものが苦手でも、大人になると好きになるのだとか。
〈コラン君〉は嗅覚は優れていたが、味覚は生前ベースだったのかもしれない。
などと考えながら一心不乱に鶏肉を貪っていると、いつの間にか辺りが静まり返っている。
皿から顔を上げると全員の視線が僕に集まり、生温かい目で見守られていることに気が付いた。
「な、なんだよ……」
僕がたじろいでいると横に控えていたオーディリエが、鶏肉のタレで汚れた口周りを無言で拭き始めた。
食べるのに夢中になって子どもみたいに汚してしまい恥ずかしい。
自分で拭きたかったのだが、ザ・エルフといった凛とした美しい顔立ちに、母性溢れる微笑みを浮かべているので拒否もしにくい。
彼女は過去の悲劇によって娘を失っている。
もしかしてこれは代償行為だったりするのだろうか。
仕方なくオーディリエにされるがままになっていると、今度は食堂の扉が勢い良く開け放たれた。
現れたのは豹柄の四肢と耳と尻尾を持つワイルドなお姉さんだ。
「トウジ殿! 人種になったんだってな! よし私と子づくりしようぜ!」
そんな「磯野、野球しようぜ」みたいなノリで言わないで欲しい。
言動はワイルドを通り越してアウトである。
「ってなんだ子どもなのか。うーん、三年くらい待てばいけるか?」
「いや三年後でも余裕でアウトだから」
思わずツッコミを入れてしまった。
この体の肉体年齢は九歳か十歳くらいなので、三年経っても精々中学一年生だから。
おねショタになっちゃうから。
「五年後ならいいか?」
「そういう問題じゃないし。てか五年もこのままでいないぞ」
「むう、トウジは私のつがいなの」
「まあまあ、皆の共有財産ということで分け合いましょうよ」
「えっ、じゃ、じゃあ私も」
人は分けられないから。
クルールはリリエルに乗っからなくていいから。
「あはは、完全にハーレムだね。ちょっくら私も混ぜてもらおうかな」
「お、いいねえ」
「トウジさんなら何番目でもアリかしら」
いやいや、なんでリエスタとドラミアーデとマリスも参加しちゃうの?
ほら、シナンが悲しい顔をしているぞ。
いやライナードはなんでちょっと嬉しそうなんだよ、姉ちゃんを止めろよ。
そんな騒ぎに我関せずと別テーブルで朝食を食べていた