ゆるキャラ転生   作:忌野希和

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347話:少年と海苔

 というわけで大浴場が復活した。

 復活したらどうなるか? そりゃあ利用するでしょう。

 

 功労者である僕が一番風呂を貰えるのは有り難いことだけど、だからって女湯に放り込まなくてもいいと思うんだ。

 

「んあ”あ”あ”あ”。生き返るわー」

 

 おっさんみたいな声を出しながら湯船に浸かっているのはリリエルだ。

 タオルをつけていないので、その肢体を惜しげもなく晒している。

 

「凄いねえ。次から次へとお湯が沸き出ていて、なくならないなんて」

 

「お湯に浸かるなんて久しぶりだわ」

 

 大浴場そのものに感心しているのはルリムのオーディリエの森人族ペア。

 二人が並んでいると、褐色の色白の肌のコントラストが良く映える。

 シンクとアナもその隣にいて、気持ち良さそうに目を細めていた。

 

 視線を巡らせると湯船の中央付近にはフィンがいて、普段のアイドル風衣装を脱ぎ捨て悠々と泳いでいる。

 背中の蝶の翅ががっつりお湯に浸かっているが気にした様子もない。

 前に温泉に入ったときに知ったのだが、風の魔術で空気の層を纏って翅を保護しているそうだ。

 

 泳ぎ方は蝶だけにバタフライってか、ははは僕は突っ込まないぞ。

 湯船で泳ぐのはマナー違反だが、フィンに言っても聞かないし小柄で邪魔にはなってないので放置することにした。

 

 というかその横で競うように泳いでいるユキヨには驚かされる。

 こちらも雪女然とした和風な服を脱ぎ捨て全裸。

 二人の服は魔力で造られているので自由に脱着可能だそうだ。

 

 いや君、雪の精霊だよね? お湯に浸かっても大丈夫なの? 解けたりしないの?

 フィンの翅と同じで体を冷気でコーティングしているから大丈夫だと。

 それは果たして湯船に浸かっていると言えるのだろうか。

 

 ぶっちゃけると仲間の裸は見慣れているが、慣れない人物も多々いる。

 フレン、リリン、リン……はまあいいとして、ジュリア、ジャンヌ、ヘルカは駄目でしょう。

 

 見た目は子ども頭脳は三十歳のおっさんだと再三説明したが、使徒様にご奉仕するのだとフィンとは違った方向性で言って聞かない。

 仕方ないので僕はされるがままに体を洗われたのであった。

 

 さすがに僕以外の異性に対してもオープンなわけではないからいいか……いいのか?

 皆さん清貧な生活を心がけているようで、無駄な贅肉とは無縁で大変お美しゅうございます。

 

 女性は男の視線に敏感だと言うし、フレンの真似をして天井の隅をぼんやりと眺めながら湯船に浸かる。

 ここは異世界だが現実なので、都合よく湯気や謎の光や海苔などで隠れたりしないからね。

 

 ちなみにリンの兄セリは逃げた。

 このあと他の本神殿で働く女性たちが入り、更にそのあと男湯に切り替えてから男衆と入るそうだ。

 僕も逃げたかったなあ。

 

「ハーレムなんだからもっと嬉しそうな顔をしなさいよ」

 

「気疲れして普通に大変なのだが?」

 

 体を洗い終えたリリンがリンと一緒にやってきた。

 その肉体はまだ少女と言って差し支えないが、お湯でしっとり濡れた肌は妙な色気がある。

 

「贅沢な悩みね。もっと気楽に考えて酒池肉林を楽しめばいいのに」

 

「酒池肉林って……性分的に無理だなあ。パートナーとは何事においても対等であるべきだ。僕ひとりで数人と人生を共有するとか正直しんどい」

 

「対等であろうとする誠実さは認めるわ。でも相手を思って真面目に考えちゃう人に限って外堀を埋められて逃げられなくなるのよね。私も埋めようかしら」

 

 おいやめろ。

 ちょっと心当たりがあるんだから、嫌な予言をしないでくれ。

 そしてしれっと参加しようとするな。

 

「それにしてもすっかり馴染んだな。〈闇の眷属〉が纏う魔力は異質なんだろう? 僕にはわからないけど」

 

「露骨に話題を変えてきたわね。まあいいけど。人は慣れる生き物よ。異質でも害がないと分かれば意外と理解してもらえるものよ。魔力の異質さを例えるならそうね……不本意だけど、納豆やくさやのような個性的な匂いみたいなものかしら」

 

「確かに異質な匂いだけど、忌避するほどか?」

 

 リリンにとってはトラウマだろうから言わないけれど、リンは初めてリリンと対峙した時、恐怖のあまり大泣きしていたのを思い出す。

 

「もし納豆やくさやに人を殺すほどの猛毒があったとしたら?」

 

「あー、なるほど。理解した。魔力の異質さそのものが脅威なのではなく、異質なものを纏っている存在が脅威ってことか。無害とわかれば、リリンの魔力が臭くてもそれがやみつきになる人もいるか」

 

「ちょっと言い方。さっきの意趣返しのつもり? 異質といえば貴方の魔力量も異質ね。ほぼ一人でこの大浴場の魔力供給をしたんですって? 竜族のシンクも魔力量なら相当あるはずなのに、全然足りなかったそうじゃない」

 

「単純な魔力量なら僕よりシンクのほうがあるんじゃないかな。予想だけど大浴場がわりと簡単に復活したのは、〈混沌の女神〉の使徒である僕の魔力の質が関係している気がする」

 

 僕の魔力量は多いが、数百人分かと問われるとそこまでじゃない。

 なのに混沌の女神像に魔力供給してもたいして魔力が減った感じもしなかった。

 

 ということは僕の魔力自体が、この本神殿の施設を稼動させるのに適しているのではないのではないだろうか。

 精霊にとって僕の魔力はご馳走だったり、相手との魔力の相性によっては魔力酔いなんかも引き起こしてしまうことも経験したし。

 

 ティッシとリーシャの例を交えてリリンに説明したのだが、何故かジト目だ。

 

「前言撤回。貴方は誠実そうなふりをしたハーレム糞野郎ね」

 

「いや、魔力酔いの件は不可抗力だが!?」

 

「だったら尚のこと気を使いなさいよ。不可抗力だからって現地妻を増やすつもり?」

 

「ぐぬぬ……わかったよ」

 

 魔力酔いは相手の体質次第だが、そもそも過度なスキンシップをしなければ起こらないので、そこに気をつければいいだけだ。

 

「……あ」

 

「なによ?」

 

「この大浴場はほぼ僕の魔力供給で復活したわけだけど、このお湯とかに魔力の質が影響してたりしないよね?」

 

「……」

 

 怖くなるから黙るのやめてもらっていいですか?

 

「ユキヨ」

 

(なあに~)

 

「冷気を解除して直接お湯を浴びたらやっぱり溶ける?」

 

(少しなら大丈夫だよ~)

 

 早速実行してくれたが、体に纏っている冷気とやらのオン・オフは視認できなかった。

 観察していると、少しずつユキヨに変化が現れる。

 いつのまにか赤ら顔になり、ぼんやりしだして溺れそうになったので両手で掬い抱きかかえる。

 

 ユキヨの身長は四十センチくらいで、それよりも長い青髪が湯気や謎の光の代わりに体の繊細な部分を隠していた。

 まあ色々豊満なのでちっとも隠れていないのだが。

 

 僕の胸に体を預け、とろんとした表情で見上げてくる。

 あ、これ駄目なやつだ。

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