ゆるキャラ転生   作:忌野希和

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365話:少年と〆切延長

「というわけでヨルドラン帝国は藤治に全面的に協力するぞ」

 

「え、それなら僕がラディソーマ独立の際の要職につくのは無しで」

 

「それは駄目じゃ。〈神獣〉としての立場で国を監視してもらわねばならん。ただしエルメアとの結婚は免除して、代わりに儂がなろう」

 

「うわ、ずるい」

 

「なんじゃ! 儂よりエルメアのほうが良いと言うのか! 確かにエルメアの発育は良いが、儂だって変化の術を使えばボンキュッボンになるぞ。むしろ大きさを自由に変えられるから色々楽しめる―――」

 

「はいはい、脱線するのはそのくらいにして。だいいち帝国との結びつきのための婚姻なら、秘匿されている梓じゃ駄目じゃないか」

 

「ふっふっふ。帝位継承候補者がどれだけいると思っているのじゃ。其方の元にいるクルールですら継承権代三十位じゃ。適当に空きを作って儂を割り込ませることくらい、造作もないことよ」

 

「やっぱりずるい!」

 

 いずれにせよ、一度アレフ陣営のモーリュ辺境伯たちに二つの条件を打診する。

 そして受け入れるかどうかを確認しなければならない。

 

「ほぼ間違いなく条件を飲むと思うがの。お互いに戦争しないほうが無辜の民が犠牲にならずにすむ。あと新興国内での藤治との結びつきを強めるために、旧ラディソーマ王族の娘あたりを嫁に出してくるかもしれんな」

 

「それってヘルカのこと? 外堀が埋まるどころか詰みあがって囲まれそうな勢いだぞ」

 

「優れた雄の宿命じゃな。さて、残念だが儂は一旦帰らねばならぬ。ま・こ・とに残念だが!」

 

 梓は僕が同郷だと悟ってこっそり王宮を抜け出してきたという。

 妖術で飛行も出来るそうで、これから空をかっ飛ばして帰るそうだ。

 

「三日後の結果報告を楽しみにしているぞ。あ、あと儂がここに来るときは皇帝ではない。帝位継承権未定の狐人族のアズサちゃんってことで宜しく。そちらの面妖なお嬢さんも頼むぞ」

 

 そう言い残して梓は帰っていった。

 

「本当にトウジの周りには変なのが集まるわねえ」

 

 いけしゃあしゃあとリリンがのたまうが君も変人枠だぞ、って言うと睨まれるのでやめて……。

 

「なんで睨むんだ?」

 

「わかってるくせに」

 

 

 

 

 

 翌日、早速旧ラディソーマの王宮に赴いて皇帝との会談内容を報告した。

 

「素晴らしいじゃないか! これでラディソーマは再建したも同然だ! アレンフリューズ様もお喜びになるだろう」

 

 シヴァンは手放しに喜んでいるが、他の面々は考え込んでいる。

 まず発言したのはリカルド・モーリュ辺境伯だ。

 

「仮に我々がその提案を受け入れたとして、〈神獣〉殿はここに残って頂けるのかな?」

 

「うーん」

 

「えっ、残ってくれないのか!?」

 

 シヴァンは驚いているが、何故僕が残ると信じて疑わないのか。

 いや、彼は信じているのではなくて考えてなかっただけか……。

 

「トウジ様、もし残って頂けるなら信仰は元より、この身と心の全てを捧げることを誓います。そして妾で構いませんので、伴侶の末席に加えて頂けないでしょうか」

 

 おおっと、昨晩言っていた通り外堀が迫ってきたぞ。

 伴侶の末席ってなんだ? 一つしかない席に上座も下座もないと思うのだが。

 

「むう、トウジはわたしと番になるの」

 

「はい。もちろんシンク様が先で構いませんよ」

 

「ん、ならいい」

 

 だからよくないよ?

 昨日もエルメア相手に同じことを言ってるし、もはや定型文じゃないですかねシンクさんや。

 

「正直なところ、二つ返事は出来ないです」

 

「何故だ!?トウジ殿。ヘルカでは不満なのか?」

 

「いや、そういうことじゃなくてですね」

 

「兄上は黙れ」

 

 ヘルカが怒気を通り越して殺気を放つ。

 さすがのシヴァンもこれにはがびくりと体を震わせ硬直した。

 

「僕にはやることがあるので、これから先ずっと新しく建つであろうこの国に残ることはないと思います。だからエルメア皇女やヘルカと結婚もできません」

 

 かといって僕が断われば戦争が始まってしまう。

 そうなるとできることはただひとつ。

 

「なのでずっとではなくて、一時的になら国に残って要職に就きましょう。期間は長くても数年、あと外出も多いと思いますが。それでもよければ引き受けます。エルメア皇女やヘルカと結婚はできませんので、婚約までならいいです。そして僕がこの国を去る時に破棄します。なんか上から目線みたいですみませんが」

 

 要は問題の先送りだ。

 一応皇帝の要求に応えつつ、猶予時間を作る。

 僕が去る数年後のことはその時の僕が考えるだろう。

 

「そんな中途半端な―――」

 

「承知しました。その提案を受け入れます。トレーズもヘルカリード様も宜しいな?」

 

 リカルドの問いかけに二人とも頷いた。

 シヴァンだけ不満そうだが皆にスルーされている。

 お労しや兄上。

 

「元より我々の問題を数年間、無血で延命できるだけなく国として独立できるのだ。十分すぎる結果でしょう。それより先は我々自身で解決しなければならないこと。わかっているな? トレーズよ」

 

「はい、父上」

 

「それに数年後、状況はまた変わっているかもしれない。帝国の情勢もだが、ヘルカの頑張り次第では〈神獣〉様も心変わりするかもしれんしな」

 

「お任せください」

 

 ええ……。

 何やら闘士を燃やしているヘルカから、僕はそっと視線を逸らした。

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